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平熱系MMOの日々

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「ゴブリンの……はぁ、名前からして魔術師かのぉ。ちぃとうずろうしぃ(うっとおしい)わ、あんな(あいつ)は。戦士と一緒にゃぁやれんでよ」


 森の中の茂みの中。よく見なくても若干不自然な、葉脈の無い草木に囲まれて膝立ちの状態で、横からの声を聞く。

 外に漏れる事のないパーティーチャットでありながらも、隠密行動をしているという自覚からか、こころなしか抑えめに言われた声。

 それに応じて、盗賊(シーフ)系職業の持つ広い索敵範囲に引っかかったゴブリン種がマップに赤い点として表示され、小さな文字で「ゴブリン・シャーマン:Lv37」という描画が追加される。


 37。今の俺のLvが35だから、適正レベルからすると少々高めだ。追加されたばかりの新マップなので仕方ないといえば仕方ないのだが、フィールドでこれなのだから、ダンジョンはどうやら諦めた方が良さそうである。

 横の相棒―――自分同様に膝立ちの姿勢で周囲に目線を巡らせている、Lv38の探索師(エクスプローラー)も似たようなものだろう。探知範囲の広さと移動・行動速度が売りのパーティー仕様の探索師では、神官戦士(プリーストウォリア)という回復と白兵の両方をこなせる複合職である俺より、条件は厳しいかもしれない。

 その相棒は長くさらりとした銀髪を靡かせながら、切れ長の目を強調するようなレンズの小さな四角い眼鏡越しに視線を向けてくる。『判断材料は伝えた。どうするのか?』と、まぁそういう事だろう。


 膝丈までのモスグリーンのスカートと、素足履きのサンダルのような靴。何やら動物の革を使ったような材質の、茶色のノースリーブベスト。その下はクリーム色のシャツという軽装だ。

 現実での野外行動にこのような格好で行ったならば、山や森を舐めていることこの上ない軽装。加えて現実ならば職務質問を通り越して逮捕待ったなしの細剣を腰に差し、現実では見たこともないような綺麗なロングストレートの銀髪。

 そんな外見の現実離れした美形の、年の頃は20前後の女性がこの世界における俺の相棒だ。まぁ、美形についてはキャラクター造形次第なので、この世界ではそう珍しい話ではない。“ワールド・オブ・ファンタジア”のキャラクター造形はそれなりに自由であり、追加の課金パックによる追加パーツを使ってまでキャラ造形に余念の無い奴は少なくない。

 例えば、隣の相棒―――エルフの探索師、メリー・マリーのように。


「クロウ?」


 そして、そのメリーから俺―――ヒューマンの神官戦士、クロウへと横目の視線とともに、ハスキーな声で催促の呼びかけが飛んでくる。

 やるのか退くのか。結論をさっさと出せと、そういう事だ。


あんなら(あいつら)ぁ、戦士と魔術師でくっつきもっつき(くっついて離れない)よぉ。待っても、はぁ、ぐのこっちょ(無駄なこと)じゃ」

「だな。多分リンクモンスターだから、シャーマン殴れば他の連中もこっちに気付くだろ。今見えてるだけが全部なら良いが、他の群れともリンクしてたら普通に死ぬな」

「ほんなら、いぬる(帰る)?」

「いんや、ギルドの連中には新マップに突撃してくるって言ってきちまったからな。敵が思いの外強かったんで何もせずに帰りましたー、ってのはネタにもならんだろ」

「くっく。確かにそんなら、ふぅも悪い(格好も悪い)なぁ」


 俺が黙っている間にも敵の動きを観察していたらしいメリーから、追加情報が齎される。とは言っても、追加されてから数時間程度のマップなので、その追加情報も、それから来る俺の推測も、完全になんとなくの予測に過ぎない。

 一歩間違ったら余裕で死ぬようなそんな状況だが、喉を鳴らすような笑い声をあげるメリーにも、腰に差していた戦槌(ウォーハンマー)に手をかけた俺にも、緊張感はさほどない。


「まぁ、ここまで来たら死んで戻る(リスポンする)のも帰還アイテム使うのもあんま変わらんし」

「経験値はもったいないけどなぁ」


 くっくっく、と。また喉を鳴らすような笑い声をあげながらも、メリーの方も気軽な様子で腰の細剣を引き抜いた。

 お互い死ぬのに頓着無し。まぁ、それも当然で。


「良いだろ。どうせゲームだし」

「気楽に楽しまにゃあなぁ」


 準VRMMORPGを謳われ、専用ヘッドギアと共に今夏発売された、“ワールド・オブ・ファンタジア”。

 その新追加マップであるゴブリンの森にて、あくまでもただのゲームとして、俺とメリーは気楽な様子でモンスターへの突撃を開始したのだった。



▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼□▼

 


 準VRMMOと謳われて発売されたワールド・オブ・ファンタジアは、実際のところヴァーチャル・リアリティというほどに大それたものでもなければ、身体を動かすのと同じ感覚でゲーム内で動けるというものでもない。

 視界と耳をすっぽり覆うヘッドギアの内蔵モニターとスピーカーにより、あたかもゲームの世界に入っているかのような感覚を楽しめるが、操作自体はコントローラー、或いはマウスとキーボードという、通常のゲームと同様のものだ。

 サーバと専用ゲーム機の非常に高い処理性能から世界への没入感はかなり高いが、一時期小説等の題材として流行した完全な“仮想現実”に至るには、人類は少なくともまだ数十年の時間を必要とするようである。


 ゲーム世界においてはキャラクターネーム“クロウ”を名乗るしがない塾講師な俺が、このゲームを始めた理由はさほど大したものではない。元々のゲーム好きと、ボーナス時期がゲームの発売時期にぶつかったことと、車のローンを払い終えた事による高揚感による勢い任せの買い物が合わさったようなものだ。

 専用ゲーム機とヘッドセットで5万を超える額を高いと見るか安いと見るかは人によるが、恐らくゲーム機の処理性能の高さから察するに、販売のみでは販売側にとって赤字となる価格設定だろう。ここに加えて月額のゲーム料金と追加パックなどの課金要素があるので、恐らくそちらで回収する気だというのがネット上などでの概ねの分析である。


 ―――話が逸れた。


 ともあれ、5万という数字を高いと見るか低いと見るか。専用ゲーム機である故に汎用性は劣るが、他の最新鋭ゲーム機と比べるとやや高い程度で、冷蔵庫やテレビに比べると安い。それくらいの価格設定が良かったのだろう。

 爆発的やら社会現象とやらまで言えるほどの流行ではないが、このゲームは昨今のネットゲームとしては随一の売上を記録し、追加パックなどの売上も好調なようだ。


 ちなみに、高い没入感を得るこのゲームスタイルには一定の懸念も社会から出てきた結果として、何やらよく分からないところでよく分からない熾烈な攻防があった結果、一日のログイン可能時間は3時間までと法律で定められることとなった。

 その法律に従った形で、日に3時間のログインで自動的な強制ログアウトをされてしまうという、ある意味では安全設計だ。

 まぁ確かに規制が無ければ丸一日ヘッドギアを被ってログインする輩も出そうだから、その法律には一定の理解を示すが。そういう意味でも、人類が完全な“仮想現実”へ至るまでのハードルはまだまだ多そうである。


 ともあれ、リアルの方ではそのような経緯を経て発売された、この“ワールド・オブ・ファンタジア”。ある意味コテコテとも言える王道の西洋ファンタジーの世界を、半没入型で楽しめるという触れ込みに釣られた人間は多く、ご多分に漏れず俺もそのパターンの一例だ。


 で、その俺だがゲームにおけるプレイヤーネームは先述の通り“クロウ”。20代も半ばに差し掛かると、コテコテな美形キャラを自身のアバターとする事に照れを感じてくるわけで、アバターは無精髭付き黒髪オールバックの20代後半くらい。ギリギリ青年と呼べるくらいの、“ハンサム”というより“渋い”タイプの男性アバターを使用している。

 装備は状況と向かう先と気分次第だが、主に重装甲系の鎧と盾、威力はあるが動作の鈍い戦槌がメイン武装。装備のカラーリングは多少の種類の中から選べるが、色は主に焦茶。派手は好まないが、黒はキメキメ過ぎる気もして躊躇われた。


 そんな“なんか地味な色合いの重装備に身を包んだ渋いにーちゃん”と化した俺であるが―――

 

「死んだ! 無理だ! ただいま!」

「ゴブリンども、案外におぞい(賢い)なぁ。何匹もリンクしとるけぇ、ねきに(近くに)おる奴らぁ、みぃんな向かって来てん」

「そのくせ魔術師だけ距離取ってんだよ。俺とメリーじゃ遠距離攻撃に乏しいから無理だ。先に魔術師潰さないと回復が追いつかん」


 先の突撃から十分も経過していないうちに、俺達は“はじまりの町”アストラタンのギルドハウスに戻ってきて、数名ばかり溜まっていたギルドメンバーに向けて、開口一番愚痴とも報告ともつかぬ内容を吐き出していた。

 帰ってくる言葉は「おかえりー」だの、「おつかれー」だの、それをより短縮した「おかー」だの「おつー」だのというネットスラングまで様々だ。


 ちなみにギルドハウスとは、ギルドが申請して毎月金―――ゲーム内通貨だ―――を払えば使用できる、ギルドメンバーと招待メンバーのみが入れるプライベートエリアの事である。

 内装は十種類ほどから好きに選べるが、ウチの場合はギルドマスターが課金してまで求めた追加パックの和風屋敷となっている。ファンタジー台無しではあるが、後々どうやら運営は東方―――つまり和風―――のエリアや追加職業も解放するつもりらしい。


 ギルドについて更に詳細に言うならば、ギルドとは5名以上のプレイヤーが集まり、一定額の資金を王国―――つまりは運営―――に収める事で発足させることが出来る共同体だ。

 ギルドに所属しているプレイヤーはそのギルドが持つスキルの恩恵―――特定能力の微強化、軽度の属性防御、特定タイプエネミーへの攻撃力増強など―――を受けることが出来たり、ギルドメンバーのみに通じるチャットが利用できたり、ギルド単位で受ける事ができるクエストに挑戦できたりと、様々な特典を享受する事が出来る。

 代わりにギルドによっては毎月、或いは毎週単位でキャラクターから会費を徴収していたりするところもあるわけだが、まぁそこは個々の運営方針次第だ。ウチの場合は週ごとにレベルに応じた額をギルドマスターに支払い、運営費とする約束となっている。


 そんなわけで、基本的にギルドに入る恩恵というものがあるために、大概のプレイヤーは何かしらのギルドに所属している。

 ギルドの方針もバラバラで、例えば最大手の“腰掛け共同体”などは、ギルド加入手続きが出来る王国政庁の掲示板に、


『ギルドの恩恵が欲しいけど、義務が煩わしい人。どこに所属するか決められず、とりあえずの腰掛けが欲しい人。その他、犯罪者(レッド)プレイヤーでなければ自動受け入れで設定しています。脱退自由。義務無し。活動無し。ギルドスキルは自動回復速度向上と最大HP強化Lv1』


 という内容を提示していたりする。

 特定ギルドに所属しない連中の腰掛け先として人気があり、ギルドとしての大きさは最大だ。ただし、掲示板で書いている通り、ギルドとしての活動は何もしていないようである。というかギルドチャットの使用設定すらされていないらしい。


 ちなみにウチのギルドは人数10名ばかりの小規模ギルド。何かしらの攻略を目的としたガチ系のギルドでもなければ、生産職の寄り合いでもなく、単にギルドマスターが話が合いそうな連中に声をかけて集めただけの、言ってしまえばのんびり系ギルドだ。

 ワイワイやりながらも基本的に個々に、或いは数名でつるんで自由行動。たまに誰かが音頭を取って何かイベントをやる場合もあるし、誰かが困っていたら協力する場合もある。これくらいの適度に緩い身内ギルドというのは、中小規模を中心にそれなりに数が多い。


 その上で当然ギルド毎の特色などがあるわけだが、ウチ―――ギルド“和風喫茶風鳴琴”の特色といえば、攻略に血道を上げているトッププレイヤーに混ざれる人材が2名ほど所属していることだろう。

 1日3時間のプレイ制限があるから、このゲームは幾らでも時間と金をかけれる廃人様有利というネットゲームにありがちな事態には歯止めがかかっている。が、やはりというかだからこそというか、熱意を持って情報を集め、効率アップと早期攻略に情熱を燃やしているギルドが攻略のトップを走ることになるのは当然の流れだ。

 その中に混ざれる位置に居る非攻略ギルド所属者というのは、やはりそれなりに珍しい。―――が、和風のギルドホームのロビーとなっている畳の間には、その2名の姿は無し。推測するに新しいマップの深部まで飛び込んで行っている事と思われるので、彼らについての言及は今度にしたい。


 そして不在の名物プレイヤー2名の代わりというわけではないが、愚痴6割報告4割の内容を吐き終わった俺達に声をかけてきたのは、畳の間の中央にある卓袱台に座っていた青年だ。いかにもファンタジーらしい金髪碧眼、うなじあたりで緩く纏めた長い金髪のアバターだ。年の頃は20前後。いかにも“らしい”美形の西洋風である。


「陛下からの情報でそんな気はしていましたが、やっぱり無理でしたか。お帰りなさい、クロウさん、メリーさん。何かドロップアイテムは出ましたか?」

「ゴブリンの皮と、ゴブリンの角と―――あぁ、ゴブリンの斧なんてのも出たぞ。性能的には大した事無いけど」

「おお、新アイテムじゃないですか! 素晴らしい、ちょっとそれ貸してください!」

「良いけど、今なら市場に流せばそれなりの値で買い手付きそうだから、“読んだ”らすぐ返せよ」

「じゃあ買います! ゆっくり眺めて、スクリーンショット撮ったらwikiに載せるんで」


 そしてその美青年が、心なしかアバターの動きすら飛び跳ねそうな弾んだ声でそう申し出てきた。

 処置なし、とでも言いたげな様子で、メリーが小さく肩を竦める。そういうモーションはアバターの動作に登録されたパターンからワンタッチで選べるものなのだが、メリーはエモーション―――フキダシで漫符が表示される感情表現―――や、アバターモーションによる表現を良く好む。


「使いもせん装備をたんびに(毎度毎度)買ってたら、幾ら銭ぃあっても足りなかろぉ? えぇて、えぇて、買い取らんでも一日くらい貸しとくよぉ」

「ああ、大丈夫ですよ。先日レアドロが3つくらい出まして、これがまた良い値で売れたんで」

「うっわ、『なむる』さんったら、だんなし(金持ち)やぁ」


 くっくっく、と。相変わらずの喉を鳴らすような笑いと共に、メリーが取引ウィンドウを開いて、ゴブリンの斧含めた戦利品を青年―――ヒューマンの魔術師(ウィザード)、『なむる』に渡す。対価で貰った金は、まぁ必要十分かやや多めか。

 ちなみに、平仮名で『なむる』というこの名前は当然ながらファンタジーっぽくないが、MMOではよくある系統だ。むしろ中には英文字+語尾に数字やら、宣伝文句やらが名前という人も少なくないので、『なむる』はまだまだ真っ当な部類に入る。


 そしてこの魔術師『なむる』だが、こいつは言ってしまえばコレクター趣味であると同時に設定マニアのプレイヤーだ。

 使いもしないアイテムを収集しては、その説明文を読んではこの世界の世界設定に浸り、まだ誰も載せていなければ公式wikiにアイテムのスクリーンショットを載せ、ひと通り終わったら売る。

 そういう攻略勢とはある種正反対と言っても良いプレイスタイルで遊んでいるこいつだが、つるんでいるとこれはこれで発見が多い。

 例えば―――


「ふむふむ、へぇ。このゴブリンの皮って、質感が緑蜥蜴(グリーンリザード)に似てるらしいですよ。それを活かしてゴブリンの皮で作ったカバンを緑蜥蜴の皮のカバンと偽って売ってた商会が打ち壊しにあったとか」

「相変わらずどこでどう飛んでくるのか分からん設定が多いなこの世界。つーかそれ、リアルで言えばどういう案件よ」

「……鹿のなめし革と思ぅとぅたら、ニホンザルのなめし革だったとかじゃろか?」

「消費者庁案件待ったなしだな」

「動物愛護団体も待ったなしですよねそれ」


 こんな感じで、このゲームはアイテム1つ1つに妙に詳細で、場合によっては変な逸話が混ざったり、シリアスな伝説の触りが書いてあったりする設定が付属しているのだ。

 で、それらの話題を積極的に収集している『なむる』の話は面白いし、場合によっては何かしらの攻略のヒントになる情報を意図せずして持っている場合もあるので、時々陛下―――あぁ、ウチの2大名物の片割れのことだ―――からなにやら質問を受けている事もあるようである。


 ―――ともあれ、辛うじて数体倒せた敵のドロップアイテムを『なむる』に売りつける事が出来たことで、新しいマップに突入してみた事に対する最低限のリターンは取ったと見ていいだろう。


「ま、これで一先ず新マップ突入作戦は頓挫ってことでいいな。俺とメリーだけじゃ無理。陛下やマスターはレベル高すぎて足並み揃えにくいっつーか、多分トップ連中に混ざって攻略中なんで邪魔するのもアレだ」


 正直なところ、無理矢理自分の適正レベルや適切な相性の無い場所に突っ込んでいくのは末期戦じみて楽しいのだが、効率としては下の下となる。

 戦士系と神官系の複合である俺はそれなりに堅いし強いが、足が遅いし遠距離攻撃手段がない。盗賊系の上位職である探索師であるメリーは投擲などの遠隔攻撃手段が無いわけではないが、探索師は戦闘より索敵に重点を置いたクラスだ。

 あと1人くらい入れて行くとすれば、ステータスは全体に低いが遠隔攻撃手段の多い射手(アーチャー)系か魔法使い(メイジ)系となるわけだが、


「念のため聞くけど、『なむる』って今日これからは……」

「ああ、すいません。夜勤で」

「うん、知ってた。毎週この曜日はそうだったよな。お疲れさん」


 レベル帯として俺とメリーに近い『なむる』はリアルの用事優先で参戦不可。他のメンバーだと―――部屋の奥まったところで、恐らく狩りにも行かずずっとキャイキャイと駄弁っている喋り屋(チャッター)3人娘はレベル帯が離れているため、連れて行っても恐らく即死だ。お祭り好きの奴らなので、誘えば二つ返事で来るのだろうが。

 彼女らは俺とはさほど繋がりが無いが、メリーが仲が良いらしい。赤青黄の三色髪で、畳の間の奥にある椅子をずっと占拠している事が多い。ゲームというより友人とのお喋りツールとしてMMOをやっている類のプレイヤーで、何時の時代も一定程度いる層だ。

 余談だが、彼女らのアダ名は三人揃って“信号機”である。


「そんなら、どうすんねぇー(どうするの)?」

「……諦めて俺らでも無理ない狩場行こうぜ。廃坑で骨狩りとか」

とぃーとこ(遠いところ)からあたしが敵を見つけたげるけぇ、釣り出してクロウのヒールで殺す簡単なお仕事やぁー。ほんならあぐ(飽きる)までなぁ」

「おー、飽きた頃にまた戻ってきて考えるか。その頃には新マップの攻略情報が出揃ってきてるかもしれないし」


 そして、まぁ。

 新マップから背を向けて、とりあえず無理の無いところで経験値とお金を溜めてから考えようとする、トッププレイヤーでも特殊なプレイヤーでもない、上の下程度のラインのレベルをウロウロしている俺達の。

 これはこんな、平熱系のMMOの日々である。

・神戸弁可愛い

・MMOあるあると、フィクションならではの話でなんやかんややりたい


 これはこんな感じのノリで作り上げられた、煎じすぎて味がしていない感のある何番煎じとも言えないMMORPGものの話です。

 そこそこ一般的なプレイヤーと、口調だけ一般的ではない相棒による、なんか普通にMMOやってるだけの日々を、楽しめる方は楽しんでいってください。

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