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弟子として  作者: 枯木人
1/3

大昔

「フン…やはり庶民の血が混じると高潔さが失われるようだな。多少成長すればマシになるかと思ったら…貴様!親子共々出て行くか、その醜い子を殺すか選べ。」


 豪奢な金色の髪をした美男子はブロンドの髪を結わえた母を屋敷の外に追いやり自らは屋敷の入り口に立つとそう言った。母は少し。ほんの少しの時間だけ考えてきっぱりと男に答えを返す。


「殺します。」


 男は薄く笑った。そして宝石がはめ込まれており、見事な意匠が施されているナイフを無造作に母の足元に投げ捨てた。


「ならこれを使って近くの森で殺せ。醜い者など一刻も早く俺の視界から消したいのだが中身・・はもっと醜いことだろうしな。ここで不快なものを捨てると俺の家臣が可哀想だ。」


 そう言って笑うと男は屋敷の中に入って行った。母は無言で私を連れて森へ向かう。


(…殺されるんだな私…)


 幼いながらに分かった。見上げる母は肉親である私が見ても綺麗な顔をしていた。その顔に苦悩と言った表情は見られなかった。当然といった表情だ。寧ろ清々していると言ってもよさそうだ。


(…何で私は醜いんだろ…)


 5歳になった頃。私は初めて魔力測定を行った。結果。私に魔力はなかった。その時から父は私の父ではなくなり他人になった。しかし、万が一にも後天的に魔力を手にする可能性があったため、一般的に魔力が伸びると言われている10歳までは養われることになっていたのだ。結果は今を見ればわかると思う。

 そんなことを思い出していると森の中に入った。母はそこで立ち止まった。


「…行きなさい。」

「…え?」


 私は母が何と言ったのか分からなかった。母は繰り返した。


「逃げなさい。そして南に行くのよ。あそこは今、北から開拓者が向かっているから人が流れても怪しまれないだろうし、困窮してるからこのナイフを売ればしばらくは生きていけるはずよ。」


 そう言って母は私に宝石の入ったナイフを押し付けて来た。


「え、でも…ナイフは…」

「あなたを殺して汚くなったから捨てたと言えば大丈夫よ。」


 その目はどこまでも冷たいものだった。私は母が私を思って逃がすのではないと気付く。


「いい?私はあなたが大事で逃がすんじゃないからここに戻ってこないのよ?…全く、汚いからって押し付けないでほしいわ…あ、死にたかったら私が行ってからそのナイフでどうぞ自殺して。」


 母はそれだけ言ってその場を立ち去った。私は助かったと安堵すると同時に惨めな思いに打ちひしがれつつすぐに南に向かった。


















 南の地方が困窮しているのは本当だった。私は飢えを凌ぐためになんでもした。…ただ、盗みや人殺しはしなかった。あの両親ですらしなかったことをしてしまえば私はそこで人として完全に終わると思っていたからだ。

 そしてそこで暮らしていると革命軍と呼ばれる組織が秘密裏にあると聞く。私は美しくなければ人として見ない貴族たちへの反逆というそのスローガン。それに反発する組織ということを聞いてそこに入ることを決める。それが私の運命を変えたのだ。


 入って1年は大して動くことはなかった。そして動きがあったのはその半年後、革命軍を率いる王族の一人、ルゥリン=アドメルク様が自身の固有魔法で異世界からの召喚を行うと言ったのだ。

 そして召喚は成功した。ルゥリン様の魔力を考慮すると呼べるのは4人とのことでしたが来たのは何故か3人。しかし、皆、美しい方々だった。


 男の方が二人、女の方が一人という組み合わせで彼らは最初戦うことに反対したりしていたが革命が終わらないと帰れないとなるとまず女の方が戦い方を学び始めた。そしてそれに伴い男の方が一人、また一人と続けて稽古を始めた。

 そしてそれを稽古したのは少し前に〈ぎるど〉とかいうものを作って王族やあらゆる貴族の権力に屈することなく完全中立の立場に立ったローシという男だ。


 彼の指導が3ヶ月に達したころ。また新たに異世界人が来たようだ。ルゥリン様は自身の空間を越える固有魔法【ワープホール】でその人を連れてくると言った。そしてその方を迎え入れるために全員が待機となったのだが…来ない。結構待ったが来ない。

 一度ルゥリン様が帰って来て【ワープホール】で皆を解散させることになった。


「…空間を自在に飛ぶルゥリン様が追い付けないって…」


(3ヶ月前とは比べ物にならないほどの恐ろしい位の美形の方なんでしょうね…これなら勝てるかもしれない…そしてこの世界を変えることが…)


 私はそんなことを思いながら南の村に待機した。そしてついにルゥリン様は異世界の方を連れて来たようだ。そのことは噂ではなく伝令が回って来た。


(末端の私まで呼んでくれるとは…何やらその方が全員集めろと言ったらしいけど…)


 私が革命軍全員が収容できる場所の大ホールに向かうと大ホールはすでに人でいっぱいになっていた。そしてそのステージでルゥリン様が何やら黒色のローブに身を包んだ人に声を掛けている。


 そして気付くと何故か私たちは見知らぬ平原に立っていた。


「…へ?」




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