第1話「はじまりの思い出」
それは私がまだ小学2年生だった頃の懐かしい思い出ー。
私が産まれて、すぐに亡くなったパパに替わって、朝から夜遅くまで働いていたママ。
この頃からおねいはママの代わりにお掃除をしたり、晩ご飯を作ったりしていて、中学が終わったら毎日私を迎えに来てくれていたの。
この日もいつものように、おねいが学校まで迎えに来てくれて、一緒に手を繋いで帰っていたの。でも今日はいつもとは少し違う特別な日…。
「あのね、あのね、今日のお昼休みにママの似顔絵と、肩たたき券とお手伝いします券を作ったの!おねーは何をあげるの?」
「おねーはね、ママにいっぱいご馳走作ってあげるんだよ。ママがご馳走を食べ終わったら、二人で買ったエプロン渡そうね」
「うん、ママ喜んでくれるかなぁ?」
そう今日は大好きなママの誕生日。この日のために前からおねいと一緒にお小遣いを出しあってエプロンを買いに行ったり、色々と計画を立ててたの。
いつも頑張って、お仕事をしているママを今日は沢山お祝いしてあげたかったんだ。
「あ、先にお肉屋さんに寄って行くね」
「わーい、コロッケ食べたーい!」
商店街に入ってすぐのお肉屋さんはおばちゃんが優しくて、今もおねいが変わらずお肉を買いに行ってるし、たまに学校帰りに愛美とコロッケを買って食べたりしてるんだ。
お肉屋さんに着くと、おばちゃんはニコッと笑って優しく話し掛けてくれた。
「美香ちゃんに美月ちゃん、学校お疲れ様。今日もお使いかい?偉いねぇ」
「はい、今日はお母さんの誕生日だから、ハンバーグを作るんです」
「おばちゃん、あげたての熱々のコロッケくだーい!」
「はいはい、美月ちゃんは本当にコロッケが好きだねぇ。いつも頑張ってる美香ちゃんと美月ちゃんにコロッケをプレゼントだよ。さ、熱い内に食べてしまいな」
そう言っておばちゃんはたった今揚げたばかりだったらしい、熱々のコロッケを私とおねいに差し出してくれたの。
「わぁー、おばちゃん、いつもありがとう!いただきまーす」
「おばちゃん、ありがとうございます。えへへ、頂きます」
熱々のコロッケを頬張って、おねいと顔を見合わせて笑い合う。
いつもと同じ事が今日は何だか違って見えて不思議な感じがしたの。
早く帰って、お料理を作って、いっぱいお部屋も飾り付けをして…ママが喜んでくれると考えただけで胸がドキドキしたの。
何故だか早く大好きなママの笑顔が見たくて仕方なかったんだ。