1、まずは私の事を話そう
これは、ハードボイルド風な犬の主人公が、犬らしく生きるお話です。
本当の犬はこうじゃない! とかいうのはナシでお願いします。
私は主人公ボスの性格が大好きです。
先に自己紹介をしておく、それが礼儀だからだ。
種族は犬、職業は野良。
体高六十センチ程度、体重二十キロくらい。耳は鈍色の銅でできたトライアングルのように凛々しく立ち、体色は焦げ茶に白いアクセント、毛は短め。実は腿の内側のみ一部が金色の毛だ、これは私と親しい者にしか見せない。
私には名前があり『ボス』と呼ばれている。誰が名付けたかは知らないが、いつしかそう呼ばれていた。
喧騒、思惑、争い、それらが入り混じった世界は素晴らしい。
私は私であることに誇りを持ち、同じようにどうしようもない世界の中の、ちっぽけな狛犬町を愛している。
賢明な方ならば名前でお気づきだろうが、私は狛犬町のボスである。
生物はいつか必ず死ぬ。事故に出くわしたり病を患ったり、栄光の末の暗殺もありえる、寿命もそれぞれの生き物に対して定められている。
死ねばどこへ行くのだろうか?
例えば凶暴な肉食獣に喰われたとしても、死んでずっと腹の中にいるわけではないだろう。
私は自分でも現実的に生きていると思う。柄にもなく死後の存在や意義などという、今ここで喰っていけない事柄に思いを寄せたのは、ある事件の証拠品を発見したからだ。