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「まぁ……」リブは、口に手をやった。


 そんな様子におかまいなしにつづける。

「父さんが亡くなる間際に、はじめて母さんのことについて聞いたんだ。ガイア古書籍図書館に行けってね」

 まるで、リブにというより自分にいいきかせるように話した。

 今でも、ありありと思いだせる。顔色が土気色になっても、自分に、伝えようとする父の姿。じょじょに冷たくなってくる父の体。

「ごめんなさい、聞いたりして」

「いや、いいよ。この図書館に来たら、聞かれると思っていたからね」と笑った。

 ふたたび、二人は書庫へともどった。今度は二人ともしゃべらずに作業をつづけた。

 三冊すべて終わった時にはすでに真夜中になっていた。

「あなたのお母さまは、いらっしゃいましたか?」リブは、綾介の手もとにあるリストをのぞき見た。

 リストにずらりと書かれた名まえ。明らかにちがうものに、横線をひいて消す。

「さぁ……。いっぱいいるからわからないよ」

 しばらくして、

「ああ、絶望的だよ、この数!」

 綾介は、ぽんと、シャーペンを机の上に投げつけた。両手を頭の上で組んで、ため息をついた。

「見つかるのかなぁ……」ぼそっと、綾介はつぶやいた。

「せめて、祖父さんのプロフィール判ればなぁ」

 リブはそんな綾介を見て、

「そんなに思いつめたら、よくないわ。明日にしたらどうかしら。休めばいい案がでてくるわ」と、ふわりと、笑いながら、言った。

 そんなリブを見て、綾介は苦笑いを浮かべる。

「そうだな。もう、明日にするか」

 そう言って、立ちあがって、かるく背のびをした。相当疲れていたらしく、腰がゴキッとなった。

 ラウンジにあるソファは、そうとう良いものらしく、寝心地は抜群だった。

「じゃ、おやすみなさい」リブは、そう言って、去ろうとした。

「待って!」

 自分で意識するよりも早く、綾介はリブを呼んだ。

「どうしたの?」首をかしげるリブ。

「そう言えば、君にはじめて会った気がしないんだ。何か、どこかで会ってたような気がする。

 ……ごめん。変なこと言って」

 そう言って、布団がわりのコートを頭からかぶった。

 背中ごしで、リブがふっとほほ笑む気配がした。

「そうね。わたしも、あなたに会ったことがあるような気がするわ」


 うす暗い図書館の中に、規則正しい安らかな寝息が聞こえる。

 よっぽど疲れていたのか、綾介はすぐに眠ってしまった。

 リブはそのかたわらで膝を抱えて座っている。まるで瞑想するかのように目を閉じていた。

 ふいに痙攣したかのように、ピクリと身体を動かす。目を開けて、視線を綾介の方に向けた。

「やっぱり、この子がそうなのね。この日のためにわたしを造ったのかしら……」


 リブの呟く声は図書館の闇に吸われ、やがて消えていった……。

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