この体育祭が終わる時が貴様の最期だ
紅子は、白斗に告白しようと決めた。
きっかけは、名字も名前も同じ「あ行」だったこと。
席順、日直、出勤簿。小さなことで一緒に行動することが増え、彼の良いところをたくさん知って好きになった。
絆を深めて早半年。来たる9月の体育祭。
紅子はついに覚悟を決めた。
体育祭が終わったら告白しようと。
「なんて言って呼び出そう」
体育祭の前半戦が終わった昼休み。
人気のない体育館裏で紅子は悩む。
午後は創作ダンスに応援合戦、そして選抜リレーが待っている。
「体育祭が終わったら体育館裏に来てね、かな。体育館裏ってベタかしら……」
ぐるぐるとその場で回って唸る。
誰かが背後に近づいているのにも気づかない。
「うーん。白斗、体育祭が終わったら……、うーん」
「なに? 紅子」
「ひいっ」
後ろに立っていたのは、意中の相手、白斗だった。
「あっ、えっと、その」
「ん?」
「た、体育祭が、おわ、終わ」
白斗は黙って紅子の言葉を待ってくれている。
こういうところも好きだった。
「た、た、体育祭が」
紅子の思考はぐるぐると回る。
焦って、焦って、絞り出した言葉は。
「体育祭が終わるときが貴様の最期だ……!」
三流の悪役みたいなセリフだった。
「…………」
体育館裏に流れる重い沈黙。
「違うのよおおう!!」
「あっ、紅子!」
紅子は絶望の悲鳴と共に走り去った。
体育祭も佳境。
残すはリレーのみ。これによって勝敗が決する。
しかしすでに紅子の勝負は終わっていた。
(終わったわ私の恋……)
虚な目で運動場の砂つぶを数える紅子に、誰かが声をかけた。
「紅子」
「ひゃい!?」
振り返ると白斗が立っていた。
最後のリレーに出るため、緑のゼッケンをつけている。
「俺さ、すごい早く走るから」
「う、うん」
「そんでさ」
白斗が凛々しく笑う。
「ベタだけど、体育祭が終わったら話があるから体育館裏に来てくれよ」
「え」
紅子の返事を待たずに白斗は駆け出した。
紅子は今の言葉の意味を、体育祭が終わった後何が起こるのかを想像する。
心臓が今にも爆発しそうなほど早く動いている。
今でさえこの有様なのに、リレーでカッコいい姿を見せられた日にはどうなってしまうのか。
体育祭が終わった時が最期になるのは、自分のほうかもしれないと、紅子は思った。