篠原千晶(3)
「じゃあ、これは?」
瀾がいくつかのハンドサインをする。
「最初が『少し待て』」
まずは関口が答える。
「次が『私が安全を確認する』」
続いて私が答える。
「その次が『確認出来た限りで敵5名』」
更に続いて緋桜。
「最後が『内3名が銃器を所持』」
最後に関口が答えた瞬間……。
「はい減点」
「はあ?」
「『確実に何人』と『確認した限りでは何人』では数字のサインが違う」
「意地悪クイズか?」
「どこがだ?『銃器を持ってるのが確実に3人しか居ない』と『銃器を持ってるのは確認出来ただけで3人。もっと居る可能性有り』のサインを読み間違えたら命に関わる」
「いや、どうせ、あたしとお前はアレを着るだろ」
そう言って関口は強化装甲服の「護国軍鬼」と「水城」を指差すが……。
「まぁ、あれなら大概の銃弾は防げる。万能とまではいかんが、銃弾に対しては軍用装甲車級の防御力が有る」
「だろ」
「だが、あれにも欠点が有る」
「お〜い、悪いけど、JR久留米駅近辺で『妖怪系』の暴力団同士の抗争が発生。準備して」
その時、後方支援要員の権藤さんがそう言った。
「了解。さて、早速だが、『護国軍鬼』と『水城』の欠点だ」
「何だ?」
「着装するのに十数分かかる」
「あ……」
「じゃあ、私達が先に行く」
「ラン、陽と気が合うね」
「そうか?」
「いっそ付き合えば?」
「やだ」
「何で?」
「こいつとは性格が似過ぎてる。こいつとやったらS*Xかオ*ニーか判んなくなる」
「お前、理屈っぽいのはいいけど、何で、色恋まで理屈で考える?」
「そう言えば、コードネームは決ったか?」
私は一緒に出る緋桜にそう訊いた。
「うん、エメラルド・ダイナソー」
「はぁ?」
「『はぁ?』って何が『はぁ?』」
「えっと……そのコードネーム、能力とか得意技と何の関係が有る?」
「逆だよ、逆。コードネームから能力がバレない」
「あ……そうか……」
「そう言えば、千明のコードネームは?」
「……ミラージュ」
「密教系、守護神は摩利支天」
「……」
「何で、能力がバレるようなコードネームにしたの?」
「……」
「あと、今日、着てきたスカジャン、やめた方がいいよ」
「何で?」
「背中の絵は何?」
「子猪……」
「一理有るな……猪は摩利支天の使いか……。正体がバレる要因になる可能性が有る」
瀾は「護国軍鬼」用のアンダースーツを着ながら、そう言った。