篠原千晶(3)
「帰んなくていいのか?」
ドローンを操作してる瀾の妹の治水に、関口がそう声をかけた。
「ん〜……レナさんと緋桜ちゃんがウチに泊ってるから、当分は、ここに泊まる」
「そう言や、そのPCたしか……」
「あたしが家で使ってるゲーム用のヤツ」
「わざわざ、これも運んだの?」
「うん」
「なんで、あいつらがお前ん家に泊ってんの?」
「高専の寮が狭いからだって」
「お前、あいつら嫌いなの?」
「そ〜ゆ〜訳じゃないけど……ちょっとね……夜中に変な声が響く」
「ああ、そんな事やってんの?」
「多分、陽ちゃんが想像してるより変な事」
「何だ、そりゃ?」
PCの画面に写っているのはドローンの空撮映像。
私達が、この前、侵入した安徳セキュリティ本社だ。
「あ〜あ……」
建物の周囲や窓ガラスから、時折、閃光が見える。
その度に画面の一部が枠に囲まれ……その枠の中に拳銃のアイコン。
「銃声らしい音を検出した」と云う意味だ。
もちろん、その銃声(らしい音)がしたのは閃光が漏れた箇所。
「ん?」
その時、ドローンのセンサーが別のドローンの稼動音を検知した。
「ちょっと2つ目のモニタの電源ONにして」
「これでいいか?」
次の瞬間、2つ目のモニタにウインドウが開き、そっちに画像処理済みらしい映像が表示される。
カメラに写っている物体の輪郭だけを表示している……らしい。
「どうなってんだよ? 音は検知してるのに、方向や距離は不明って……?」
「複数台居るんじゃね?」
「ああ、そうか……」
治水は更にPCを操作し……。
「なんだよ、これ……」
「推定で4台から6台……?」
「とりあえず、一番、近いのにカメラ向けてみて」
ドローンのカメラからの生映像は……ほぼ真っ暗。
しかし、画像処理された映像には……別のドローンの輪郭が……おい……。
向こうのドローンも、ゆっくりとカメラの向きを変えていた。
やがて……。
ここまでロマンチックじゃない「目と目が合う」も、そうそう無い。
「同業の他チームの可能性は?」
「今、確認中……あ〜あ、どこも覚えが無いって……」
「おい、戻ったけど……どうした?」
その時、瀾の声がした。




