すべては君に逢えたから
「じゃあ、一体、ネット上に転がってる昔の日本の映画やドラマやアニメは何だったんだよ?『本物の東京』にしか思えねえ場所でクリスマスに雪が降るってシーンは?」
JRの久留米駅に行く途中で雪が降り出した。
一緒に居た関口陽と「多分、今年はホワイト・クリスマスだな」って話をしてる内に、この阿呆がエラい勘違いをしていた事が判明した。
「お前、富士の噴火で『本物の関東』が壊滅した時、何歳だった?」
「7つだけど……」
「なら、何で気付いてない?『本物の東京』では、十二月には雪なんてほとんど降らない」
「でも、ここ九州なのに、十二月に雪が降ってるぞ。下手したら、明日の朝には雪が積ってる。いつ、九州は関東より北になった? いつ地球が引っくり返った?」
「阿呆か。本当に地球が引っくり返ったら、季節が逆になるだけで、寒い場所は寒いままで、暖い場所は暖いままだ」
「意味が判らん」
「そんな調子で大検を受けて大学に行く気か?」
「うるせえ」
「あ〜、阿呆にも判るように説明するとだな、日本は日本海側の方が雪が降るの」
「じゃあ、あのさ……だから……ネット上に転がってる昔の……」
「全部、嘘っぱち。『本当の関東』では、ホワイト・クリスマスなんて、有ったとしても何年か……下手したら十何年かに一度ぐらい」
「じゃあ、時代劇の忠臣蔵は?」
「当時の記録では、冷え込んでたけど快晴だったそうだ。あれも作り話。大体、旧暦の十二月なんで、今の十二月とは一月ぐらいズレてる」
「じゃあ、戦前の2・26事件の写真なんかは?」
「『本当の関東』で大雪が降るのは、逆に春近くになってからなの。気温が低いのに早めの春一番が吹いた時とかな」
「そんなモノか……ところでさ、結局、髪は延ばさないのか?」
「ああ、2〜3年間だけ坊主頭にしてただけなのに……髪の手入れが面倒臭くなっちまってな」
「これからの季節、寒くない?」
「ニット帽でも買うかな」
「そん時は瀾にでも相談したらどうだ? あいつ、ああ見えてお洒落のセンスは有るから」
「お〜い♪」
陽がそう言った時、お洒落のセンスが壊滅的な女の子が、久留米駅の東口で私達に手を振っているのが見えた。
フードの部分が、昔の子供向けのアニメに出て来た恐竜の顔になってる迷彩模様のコート。
しかも、そのコートには恐竜の尻尾まで付いている。
「ところで陽、レナおね〜さんは?」
「高専だ」
「じゃ、陽は、何で、今ここに居るの?」
「高校行かずに、大検を受けてから大学を受験するつもりなの。そう云うお前は?」
「飛び級で高校の課程は終ってる」
私と陽は……顔を見合せた……。
どうやら、この天然にしか思えない奴は……学校の勉強に関しては、超天才か超秀才らしい。
「で……一八になって大学を受けるまで、社会勉強も兼ねて1〜2年、のんびり過ごそうと思ってて」
「はぁ……いい御身分なこって……」