9殺 打ち明けた過去
今回は、ジャスタの過去を打ち明ける話です。ゆうきくんはどんな反応を示すのか・・・
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な・・・名前。だよな、ごく普通の反応だと思うのだが、ここで自分の名前は話すと全てが、バレる気がする。・・・どうする
「質問を質問で返して申し訳ないが、あなたは自分の父親を愛していましたか?」
突拍子のない俺の質問にミッチェルは、何が起きたのか分からない表情になるも、ハッと意識を取り戻し、真摯に答えてくれる。
「・・・私のお父様は私を愛していたのか、最後の最後まで分かりませんでしたわ。いつも家に帰らず、帰っても愛人の家に行くために、準備をして行くだけでした。それでも私にとっては、かけがえのない肉親ですわ。おそらく私は・・・お父様を愛していました。」
おっとぉ・・・ これじゃ「すいませーん。殺したの自分でした~てへぺろ♪」 なんてできないじゃあないか。とことん良い子なんだろうな、この娘は。おかげで気まずくなっただけでないか。
「さぁ、お次はあなたの番ですわ。そろそろお名前を聞いてもよろしくて???」
うへー-・・・ こうなったら言うしかないな。ついさっきこの子を正面から受け止めると決めたばかりだ。それにこの子は言いたくないだろう、過去をここまでさらけ出してくれた。ここで俺が、しり込みするのは男が廃るし、何より自分が情けない。
「ミッチェルさん。私の名前はジャスタ・ハクレイです。あなたもご存知かと思いますが、あなたの父を暗殺した張本人です。」
俺の言葉にミッチェルは、信じられないというより今起こったことが何か分かっていないようだ。豆鉄砲を食らったような顔をして、口が半開きになっている。
「え・・・ なにかのご冗談で・・・?」
ここまで口を閉じていたゆうきが、口を開き俺の正体を保証する。
「いえ・・・ 冗談ではありません。僕の友人の名前は確かに、ジャスタです。このような過去があったなんて初耳ですが・・・」
ゆうきの言葉に救われたようにも、刺されたようにも感じた。そうだったな、ゆうきにも話してなかった。
「こんな自分が言うのもなんですが、お互いすこし冷静になってからもう一度話し合いませんか? 当分の金銭面はこちら側が完全に負担いたしますので・・・」
物事には謝って済む問題と、済まない問題がある。今回は間違いなく後者である。こうなれば双方が落ち着いて話さないと問題解決とはならない。とりあえず、ゆうきと話し合い、5万ルピーをその場でミッチェルに渡すことにした。
「ミッチェルさんどうぞ。いくら自由に使っていただいてもかまいません。足りなくなったら教えてください。いくらでも出しますので。」
俺の声掛けに、 「・・・はい。」 と小さな声で答えてくれた。しかし、その目は濁りきっていて、虚ろになり、今にも泣きだしそうだったがこうするより今は手段がない。
結局しばらくは酒屋に寝泊まりし、ミッチェルの返事を待つことを約束した。・・・ミヤの店に寄るはずだったが結局寄れなかった。
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その日の晩俺はゆうきと酒屋で夕食をとっていた。
「いいのかい? あの子をあのままにしておいて。もう少し話し合わないと何も分からないよ?」
「確かにそうだが、いろいろ話過ぎてパニックにでもなったらそれこそ可哀そうだ。まぁ俺がまいた種なんだがな・・・」
ゆうきは焼肉を、水で流し込み少し苦しそうな顔になりながら、こちらに問いかける。
「まぁ事が大きすぎるからね。てか、君のことは何も知らないや。今日の晩寝る前にいろいろ聞いてもいいかい??」
「もちろん」
俺もゆうきに見習い、目の前の飯をかき込み、水で流し込む。会計を終わらし、大量の荷物と共に、ゲストルームを借りることに成功した。
「あ、あのこちらの大量の荷物は・・・「おかまいなく」
「ですがこれは流石に・・・「いえ、お構いなく」
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無事? にこの部屋を借りられたが、袋を置くとかなり狭い。ぎちぎちである。早いとこ家を確保しないとまずいな。
「さて、君の生きていた話を聞かせてもらおうかな?」
お互いにベッドに入り、寝る準備を済ませてからゆうきに、過去の話をせがまれた。
「もちろんだとも、そうだなどこから話そうかな・・・」
俺はゆうきに自分が元殺し屋であることとを打ち明けた。それとどんな任務をこなしてきたかとか、ミッチェル・オーナとの関係も。ゆうきは、俺を非難することも、敬遠することもなかった。ただ相槌を打ってくれたり、話を催促するだけであった。
おれにとっては、それがどんなに救われたことか、殺し屋と友人だなんて今すぐにでも縁を切ってもらってもなにも文句は言えない。それなのに、ただただ今までの話を聞いてくれた。
「君が殺し屋だったなんて想像もつかなかったよ。今までよく隠せれたね。」
「・・・いや、ゾンビとの戦闘や、武器屋での会話なんかでいろいろ感づいてもいいと思うのだが・・・」
というか、コイツは俺の前職は何だと思っていたのだろうか。
「ゆうきは俺の前職は何だと思っていたんだ??」
「えっと、バイクの整備員とか? 普通に学生とか? かな。良くわからなかったよ」
バ、バイクの整備員・・・ 世の中こんな物騒な整備員がいてたまるか。 てかバイクって限定してきやがった。 そんなにバイクは好きじゃないのに・・・
「うすうす気づいてたけど・・・お前馬鹿だろ。鈍感ってレベルじゃない気がするんだが。」
馬鹿っていう言葉に反応したゆうきは、少し声を大きくして反論する。
「ば、馬鹿じゃないよ! 確かに、商業の検定は全落ちしたけど・・・」
最後の方が小声で、何か聞き取りづらいが・・・って全落ち? あの検定が多いことが有名な商業高校で?? 逆にすごいな・・・
「まじかよ・・・ よくメンタル持ったな。バケモンだよ」
ゆうきがもう一度、布団の中に入り直し、自分の体制のポジションをとり直し、窓を閉める。
「でも、ミッチェル・オーナさんには悪いことしちゃったね。あの人大丈夫かな。」
確かに、あの状況じゃ話をすることは困難だったが、これじゃあ逃げたように図になってしまった。ちゃんと食事をとっているか心配だな。
「聡明な彼女のことだから、多分おそらくもしかしたら、大丈夫だと思うが、明日酒屋で待って居ようか。」
「そうだね。それがいい。」
この日はこれにて眠ることにした。自分でも驚くほど寝ていて朝目覚めると、連日の疲れがきれいさっぱり取り除かれていた。
二人で歯磨きをすまし、酒屋でこの日は一日待つことにしていたのだが、ミッチェルは現れなかった。
いかがだったでしょうか。次回はミッチェルとの対面です。
どんな回答が返ってくるのか・・・ 次回作にご期待ください