8殺 けじめと新たな仲間
今回は8話目となりました。新たな仲間ということで新キャラが登場しますが、どうやら訳ありみたいですね・・・
*感想・ブックマーク・評価していただけると嬉しいです。宜しくお願い致します。
悲鳴が聞こえ、俺とゆうきは互いに目を見合わせる。とにかく、悲鳴の聞こえる方へ急ごうと荷物を、ミヤの店の近くのベンチに置く。ゆうきは丁寧に置いていたが、俺は、放り投げたので何個の袋がベンチに着地したのか分からない。
「急ぎましょ!! ゆうきさん。村の外から聞こえたぞい」
「村の外ということは、モンスターに襲われたのかな!? だったら急がないと、手遅れになったら・・・」
想像するだけで寒気がする。人に殺されるならまだしも、モンスターに殺されるなんてまっぴらごめんである。どんな殺され方をするのやら、どのみちむごい殺され方には違いないだろう。
柵を潜り抜け、悲鳴のする方向に急いで駆ける。装備も何もつけてないのでいつもと変わらない速度で走ることができた。
「おー---い!!! どこにいるんだ! いたら返事してくれ!!!」
ゆうきが大声で悲鳴の主を探し出す。・・・だが返事がない。
「ゆうき。東側に空気の乱れを感じる。何かしらの物体があるのならあのあたりだが・・・ 助けを求める人かどうかは分からんぞ。」
「い、一旦そっちを探そうか。・・・てかよくそんなことがわかるね君??」
ゆうきに尋ねられたのだが、これも殺し屋の一つの技術だ。屋外での障害物の有無を、風向と風圧で探し当てることができる。
東側を探索すると、俺の予想通り一人の少女が、へたり込んでいるのが見える。傷がないものの、人型で緑色の何かに襲われていた。
「良かった!! まだ死んでねぇ! おー--い!! そのまま動くなよ!!」
まだ少女との距離が遠いのだが、俺が大声で少女に呼び掛ける。よほど怖いのか、震えながら返事も返すことができないでいた。
「ジャスタさんどうするおつもりで!!??」
俺の隣を並行するように走っていた、ゆうきが俺に問いかける。
「投げナイフを使うんだよ!!」
その言葉と同時に俺はナイフを取り出し、刃をつまむようにして持ち、手首のスナップを効かせて思いっきり投げ込んだ。
きれいに縦方向に回転するナイフは、今にも少女に襲い掛かりそうなモンスターの、急所かもしれない額を撃ち抜いた。打ち抜くと同時に後方へモンスターが倒れこんだ。
「よし!! なんとかなった! にしても危なかったがな」
あと15センチでも右側にずれてたら、少女の耳を貫通していたことだろう。隣でゆうきの顔が真っ白になる。・・・だってこれが一番手っ取り早いもん。
ようやく少女の所に到着することができた。幸いあの一撃でモンスターは、仕留められたようだ。
・・・しかし、改めて見るとなかなかグロテスクな見た目をしている。体はネバネバで、目や口なんかが付いている。中途半端に人間に似ているのでグロさが増しているのだろう。あのゾンビと言い、モンスターはグロいのばっかだな・・・
「あ、あれもう倒したんだね・・・ やっぱゾンビが異常に強かったのかな」
隣でゆうきが不思議そうに、モンスターを眺める。
「おっと・・・ 大丈夫ですかお嬢さん。もうおそらく多分大丈夫なはずです。立てますか?」
モンスターに気を取られ、一番大事な存在を忘れていた。とにかくこの子が無事でよかった。
「あ、ああ、はっ! あの、助けていただきありがとうございます! わたくしこの世界にきて何分、そんなに時間がたっておりませんくて・・・あ、あとわたくしの名前は・・・」
うー--ん・・・まだ動揺が収まっていないようだな。状況の変化についていけず、パニックを起している。
「と、とりあえず、村の中に入りましょうか・・・ここならまた襲われてもおかしくないですし・・」
おぉ、ゆうきナイスフォロー!!
「そうですね。道中護衛いたしますのでご安心を。俺らの後についてきてください」
「あ、ありがとうございます・・・」
”””””””””””””””””””
とりあえず、ミヤの店の近くのベンチに座る。よかった荷物の袋は誰にもとられてないようだ。
改めてこの少女を見ると、とてつもない美人だということがわかる。年は俺らと同じくらいか、青色の目と、金色の髪。服装はtheお嬢様と言わんばかりのフリフリの服だが、この美貌に驕ることのない凛々しい顔立ちは、さながら女騎士のようだった。パニックが収まりこちらを見つめる目は、一点の曇りもなかった。
「あの・・・ 危ない所を助けていただきましてありがとうございます。実は経済的に余裕がなく、近くのモンスターの討伐を行っているところでしたが、こちらが倒されるところでした。」
丁寧すぎる物言いに若干の違和感を覚えながら、この子もジョブ選択者なのだという真実に親近感がわく。
「あの失礼ながらお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
とりあえずこの方の名前を聞くために、質問を投げかける。言葉遣いに細心の注意を払いながら。
「申し遅れてすみません。わたくし、ミッチェル・オーナと申します。この世界に来たのは、4,5日前のことでして何も分からないことだらけですが、何卒よろしくお願い申し上げますわ。」
え??? この人今なんて言った?? 嘘だろ?? ミッチェル・オーナ?? まずいその名前は非常にまずい。どれくらいまずいかと言えば、今俺の背中は冷たい汗で覆われている。やっべえええ
「どうもご丁寧にー 僕の名前は宮下ゆうきです。で、こっちの名前はジャス・・・ グフっ!!」
俺は素早く、ゆうきの溝うちにエルボーを食らわす。このゆうき! 有機物! 何勝手に人の名前をしゃべってんねん。
「(い、いきなりなにするんだよ。ジャスタ・・・ 痛いじゃないかい」)
「(やかましい。てか勝手に人の名前を言うんじゃない。この有機物)」
「(ゆ、有機物・・・ ひどすぎない?)」
ミッチェルに背を向けながら、俺達は小声で話す。ゆうきの言い分はぐうの音も出ないほど、ごもっともであるが、これには訳がある。
なぜここまで俺が名前を言われるのを嫌がるのか、それはそう。俺がこの世界に来る前に殺した、軍の少将の娘だからである。 なぜこの世界に来たのか・・・ 来たならば死んだ以外に考えられない。ということは誰かに殺されたのか? 聞きたいことだらけだが、この子に俺の正体がバレたら何をされるやら・・・
「ゴホン・・・ 失礼しました。我々も実はこの世界に来たばかりでして。して・・・ミッチェルさんはどうしてこの世界へ?」
目の前に繰り広げられた数分の出来事を不思議そうに見つめながら、質問に対して真摯に答えてくれた。
「実は、わたくし元の世界で殺されまして。というのも殺し屋に殺されまして・・・ 父が世間にかなり不評を買っており、その流れで私も殺されたのでしょうか?? 私自身よくわかっておりませんの。」
この娘の父なら嫌というほど知っている。名前は、ルセフ・オーナ。軍の少将で地元の紛争の指揮を執っていた。己の経済的な欲のため、大国と手を結び紛争を意図的に長期化させていた。紛争や戦争は、物資や人、装備とかなりの金が動く。そのため長期化になればなるほど、一部の人間が得をする。そのため昔から、戦争や紛争は経済の一つの手段として用いられていた。
当然だが、こうなると一番苦しむのは一般市民である。多くの無駄な犠牲が積み重なり、悲劇しか生まなくなる。最終的にはどの大義があって戦っているのかさえ見失ってしまう。今回はバックに大国が付いているため、正攻法では終わらせることができないため、俺にお鉢が回ってきたのであった。
「あ、あのどうかいたしまして??」
覗き込むようにこちらの様子をうかがうミッチェル。それに俺はハッとし思考を張り巡らす。
「申し訳ない。少し考え事をしておりまして。」
「そうですか・・・ あの。重ね重ね申し訳ないのですが、私をあなた方のお仲間に入れていただきませんか? あなた方のこの世界に来たということは、元は同じ世界の住民なのでしょう? 助けていただいた礼も兼ねて、あなた方の手助けがしたいのです。」
まじかよ。断りずらいな。というか今回ばかりは確実に俺が悪い。人の命を奪うということは、その人だけでは終わらない。その人の家族や友人が必ず悲しむことになる。今までやってきたことが帰ってきただけである。
「えぇもちろんですよ!!! こちらも大歓迎です!! お互い共に頑張りましょう!」
俺が考える間もなく、ゆうきが答える。・・・仲間が欲しかったし、何より今はこの娘を真っすぐ見ることが何より一番である。家柄や自分勝手の理由で決めつけるのは、俺らしくない。
「もちろん俺も賛成です。これから宜しくお願い致します。ミッチェル・オーナさん」
俺らがそう言うと、ミッチェルの顔が笑顔になり、女の子らしいという形容詞が最も適している表情になる。
「ありがとうございます!! 必ずやご期待にこたえられるように精進いたしますわ!」
「ところで・・・ あなた様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
あ・・・・
いかがだったでしょうか? 次回は新たな仲間とともに、新たに動き始めます。
次回作にご期待ください。