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星方陣撃剣録  作者: 白雪
第一部 紅い玲瓏 第十章 心は結実に伸びる
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心は結実に伸びる第五章「それぞれの喪失」

登場人物

双剣士であり陰陽師でもある赤ノ宮紫苑あかのみや・しおん、強大な力を秘める瞳、星晶睛せいしょうせいの持ち主で、「水気」を司る玄武げんぶ神に認められし者、紫苑と結婚している露雩ろう

紫苑の炎の式神・出雲いずも、神器の竪琴・水鏡すいきょうの調べを持つ竪琴弾きの子供・霄瀾しょうらん、帝の一人娘で、神器の鏡・海月かいげつと、神器の聖弓・六薙ろくなぎの使い手・空竜くりゅう姫。聖水「閼伽あか」を出せる、魔族の格闘家の青年で、はちまきの神器・淵泉えんせんうつわの持ち主で、「金気」を司る白虎びゃっこ神に認められし者・閼嵐あらん。輪の神器・楽宝円がくほうえんを持つ忍の者・霧府麻沚芭きりふ・ましば

 反乱を起こした忍集団・靫石ゆぎいし一派。

 竜の体の一部を使って人間を操り、人族を滅ぼそうとする者・知葉我しるはが




第五章  それぞれの喪失



 造血剤を揃えて紫苑が一目曾遊陣ひとめそうゆうじんを海岸に描こうとしたところへ、残る出雲、霄瀾、空竜の三人も、霄瀾の絶起音ぜっきおんの力で泡の中に入り、フヨフヨと海の上を飛び漂ってきた。

「神剣・玄武の波動に向かってきたんだよ。みんなが元気にそろっていて、よかった!」

 霄瀾が無事な一同を見て、固く身を守っていたつぼみが花開いたように、顔をほころばせた。

「……で、お前誰?」

 出雲が素早く麻沚芭に質問した。星方陣のことも、これからの計画のことも、一同は話さなくてはならない。部外者には話せないので、ただの旅人なら、とっとと追い出さなければならない。

 麻沚芭が男にも女にも好かれそうな、輝く魅力の持ち主で、しかも必要以上に紫苑のそばに近づいていることが、出雲に警戒態勢をとらせていた。

「オレは霧府麻沚芭きりふ・ましば。瞬殺の麻沚芭と呼ばれてた。素早い暗殺が得意だ」

「霧府? あなた、霧府雅流選きりふ・がるえらの一族なのかしら?」

 空竜が反応した。

「露雩は秒殺だけど、こっちは瞬殺か。おもしろいな」

 のんきに笑う閼嵐を、秒殺された出雲が横目で睨んだ。麻沚芭が露雩をふーんと眺めた。

「そうかあ、お前は秒殺か。じゃ、素早い者同士、よろしくー」

「……ああ」

 面白くなさそうに露雩が麻沚芭を見たとき、麻沚芭は刀を両手で持って片足打法の素振り直前だった。

「今殺すつもりだったろ! 殺すつもりだったろ!」

「やだなあうそうそ言いがかりでーす」

「そっちこそ真顔で嘘つけ! じゃなぜ刀を構えてた!」

「ちょっとお! 私の露雩に何してんのよ!」

 麻沚芭は怪訝けげんな表情で空竜に振り向いた。

「何言ってるんだ? この二人はもう結婚してるのに」


「な・ん・とーッ!?」


 初耳の三人の声が天へ突き抜けた。そこから互いの身に起きたことを説明しあう時間が始まった。

 そして、すべての話が終わったとき、霄瀾の肩に十二支式神「とり」(鳥)がとまった。赤ノ宮殻典あかのみや・からのりのものである。

 紙の鳥が手紙に変形したものを読んだとき、霄瀾は一点を凝視して、一本の指も動かせなかった。

降鶴ふるつる様が病で亡くなりました。「霄瀾、いつまでも元気で暮らせ。強くなって、みんなを守れる人になりなさい」。これが最期の言葉です。お葬式は、こちらでしておきます。霄瀾には旅を続けてほしいということが、降鶴様のたっての願いです。霄瀾が苦しいとき、くじけそうなとき、きっと守ってみせるとおっしゃっていましたよ。だから、霄瀾は前を向いて歩いていきなさい。降鶴様も、そんなあなたを見ることができたら、きっと嬉しいはずですよ』

 一座の人たちの字だった。だが、どこか蛇がのたくったあとの塊が並んでいるように見えて、解読しかねた。

 ありえない。おじいちゃんがいなくなるなんて、ありえない。

 霄瀾は手紙を落としたことも忘れてふらふらと森へ入っていった。

 他の大人も、一人になりに散っていった。


 露雩は黒水晶の表紙の本を眺めていた。

 失われた記憶と、星晶睛せいしょうせい

 すべてが元に戻ったとき、自分の運命はそれの作る流れに沿うような気がしている。

「紫苑と結婚したことを、覆させはしない」

 露雩は失われた過去の自分と戦う日が来ても負けるまいと、今の自分で認められた神剣・玄武げんぶを握りしめた。


 閼嵐のもとには、姉の閼水あみから、里の魔族の小鳥に運ばせた手紙が届いていた。

 そこには、「知葉我しるはが」なる魔物が「魔族王」を名乗ったこと、都で「帝」を名乗った忍者の靫石偉具炉ゆぎいし・いぐろと手を結び、「魔族と人間の手を取り合う平和な世界」を実現すると宣言し、人心を前帝から靫石に傾けようとしていることが、慌ただしい筆致で書かれていた。

「知葉我め……! オレの魔族王の称号を盗んだな!」

 神剣・白虎びゃっこをひび入れんばかりに握りしめる。

 人間との関係に決着をつけられるのが魔族王なのだろう。

 だが、知葉我が平和な世界など作るはずがない。これまで、人間の国を崩壊させることばかりしてきたのだから。

「『自分に従う魔族と人間だけ』、平和にしてやるのだ……! 剣姫は正しい者を守るために人も魔族も倒すからその後の世界を平和にするのに、こいつらは自分の支配欲のために、力で中身のない見せかけの平和な世界を作るのだ! 支配者に見られていなければどんな悪事をしても構わない、結局支配者が何人代わっても中身の変わらない世界になってしまう! 知葉我を王にするわけにはいかない!」

 王位を盗まれた王は、真の平和のため知葉我を討つことを決意した。


 麻沚芭は一本の木の幹に背を預けて、父と母と兄、そして左京と里の者たちのことを想っていた。

 一度に失ったものが多すぎた。

 幹を挟んで反対側には、紫苑が同じく幹に背を預けて立っていた。

 父を失い、紫苑もまた少ない思い出を繰り返しては、目を潤ませていた。

 お互い同じ傷を支え合っているところへ、帝位を盗まれた帝の娘、空竜が来た。

 手に、十二支式神「とり」(鳥)の手紙が握られている。

「九字紫苑。霧府麻沚芭。たった今、千里国せんりこくの帝から、私のもとにふみが届きました。これから帝の名のもと挙兵し、反乱軍靫石一派を誅殺ちゅうさつする旨を宣言しています。ついては、靫石を討つのは帝の軍が行い、靫石と手を組んだ魔族王知葉我を倒すのは私たちに任せたいとのことです。人も魔族も救わない偽りの王者を討つために、新たな九字と霧府よ、私に力を貸してくれますか」

 堂々とした重みのある声だった。九字と霧府は帝の娘の前に片膝をついて、こうべを垂れた。

「あなた方の家族や仲間は、よく人々の平和のために命を懸けてくれました。帝国にこのような者がいたことを、帝の一族として誇りに思います。ありがとう」

 頭を垂れたまま、二人の目から一筋涙が流れた。この言葉で、天国の皆は報われたと思った。


 出雲は不愉快だった。

 紫苑が結婚してしまったことももちろんだが、麻沚芭の手に神剣・青龍せいりゅうが現れたことが、腹立たしかった。

 青龍に認められるのは自分だと思っていたのに――。待っていてくれると、思っていたのに――。

 神に裏切られたというのは、相当精神にこたえた。

 自分にできることがもう何も残されていないのではないかと思いながら森を歩いて、ぽつんと草むらに座っている霄瀾を目にとめた。

 啾々(しゅうしゅう)と泣いて、小さな肩を震わせていた。

 霄瀾の落とした手紙を読んで、出雲は降鶴のことを知っていた。

「……まにあわなかったよ……」

 隣に立った出雲に、霄瀾が声を押し出した。

星方陣せいほうじんが、まにあわなかったよー!!」

 大声で空に向かって泣く霄瀾の肩を、出雲が抱いた。

「ボクがっ、旅に出なければっ! もっといっぱい、お話したかったようー!! わああー!!」

 霄瀾は出雲にしがみついた。

「霄瀾、降鶴さんは、霄瀾が旅でいろんなことを経験して、立派な大人になってくれることを望んだんだぞ」

「え……?」

 霄瀾が涙だらけの顔を上げた。

「人はいつまでも子供のままじゃいられないだろう? 降鶴さんはいつか霄瀾を置いて先に死ななければならない。そのとき、誰が霄瀾を守るんだ? お前自身だろう!」

「う……」

 霄瀾が今度は恐怖から震えた。

「大人になるためにはいろんな大人と関わって、いろんなことを教わらなければならない。降鶴さんはどうしてもまだ幼い霄瀾をかわいいと思って、厳しく育てられない……。この旅が始まるとき、霄瀾を引き止められたのにそうしなかったのは、それが霄瀾のためだとわかっていたからだ。降鶴さんの、霄瀾への深い愛情なんだぞ」

 霄瀾は、すぐに千里国へ帰れると思っていた。

 だが、老人の一年は確約されたものではない。

 降鶴は、二度と会えないかもしれないことがわかっていて、霄瀾に行ってもいいよと言ったのだ――。

 ようやくそれがわかって、霄瀾の目に再び涙が溢れた。

「優しいおじいちゃんだったな」

 出雲に抱かれて、霄瀾は腕の中でうんと頭をうなずかせた。

「これからはオレがお前を守る!」

 天涯孤独の子供は、自分の頭をなでる若者を見上げた。

「お前が立派な大人になるまで、オレがお前のお父さんになってやる!」

 子供が目を大きく広げた。

 霄瀾が紫苑と出雲の旅について行ったのは、自分が神器の使い手だからという理由だけではなかった。自分たちの守ってきた青龍せいりゅうの刀がこの先どうなっていくのか知りたかったことと、剣姫という強大な力の行く末を見てみたいという思いと、そしてもう一つ。

 紫苑と出雲を、触れたことのない母と父の姿に見立てようとしていたからであった。

 父親になってくれたら嬉しいなと思っていた、既に霄瀾の中では父同然であった出雲に、本当に言ってもらえた。天涯孤独の身に、導きの星が灯ったようであった。

「ボク、早く大人になるよ。もうだれも待たせない!!」

 霄瀾は、涙の乾いた顔で叫んだ。乾いた分、目が引き締まって見えた。


 麻沚芭は、はっと顔を上げた。

 空竜を狙う手裏剣を小太刀で弾く。

「ようやく姫が見つかったぜ!」

「十二支式神で探し出せないなんて、どこにいたんだ?」

 霄瀾の絶起音ぜっきおんは、術から隠れられるのかもしれない。

 忍者が十人、木の枝に足をかけ、空竜と紫苑と麻沚芭を取り囲んでいた。

 今空竜を狙いに来る忍は、靫石ゆぎいし一派しかいない。

「紫苑は姫を! 忍には忍、オレが戦う!」

 麻沚芭に三人、空竜に七人が向かった。

「オレもなめられたもんだ!」

 いつものように、左京と共に戦っているかのような軽やかな足さばきで三人の間を駆け抜けると、三人は物言わぬ死体となった。しかし、麻沚芭はこれで足止めされた。

 七人が一斉に空竜に手裏剣を投げ、紫苑が炎の術で落としている間に、四人が紫苑に襲いかかり、その足止めの間に三人が空竜を殺そうと小太刀を構えた。

「空竜!」

「なるほどね。今までの私だったら、これで終わりね」

 空竜は冷静に聖弓・六薙ろくなぎに神器・海月かいげつから生じた矢をつがえた。

「千の悪気を射貫け! 聖弓六薙・迎破栄戦ごうはえいせん!!」

 六薙から六本に分かれた矢が放たれ、六人の忍に命中した。

「くっ……!」

 紫苑は忍者の小太刀を扇の炎で弾いていた。

「紫苑!」

 麻沚芭がプッと吹き矢を吹いた。

 ピッと赤い色が目についたとたん、忍は苦しみだし、絶命した。

「オレの血だよ。霧府の頭の一族は代々毒の血を持っているんだ。武器にもなるし、毒の効かない防御の体にもなるんだ」

 麻沚芭が靫石一派の懐を探りながら説明した。何らかの情報を求めてのことであった。

「最初の奇襲が失敗した時点で全滅するとわかっていたのに、なぜ別の機会を狙わず、逃げもせずに向かって来たのだろう? 結果を急ぐ必要があった……?」

 しかし、十人からは何の手がかりも得られなかった。


「おのれおのれおのれおのれ!!」

 帝の間で、靫石偉具炉ゆぎいし・いぐろが目を血走らせ、足を踏み鳴らしてぐるぐる回っていた。

 一本一本が嚙みつくように大きい歯を、黄色い筋をつけて剝き出している。目玉の血管が浮き出て、常に対象を凝視する視線を持っていた。

 たった今、偉具炉いぐろ千里国せんりこくで帝が挙兵したという一報を、忍から受けたのである。

 帝になるには絶好の機会だった。五十個の神器の占いで帝は指揮能力を奪われるほど疲労していたし、知葉我しるはがと手を組むことによって帝国の武器庫で手に入るその五十個以上の神器を、自分の戦力にする皮算用ができあがっていたのに。

 知葉我の要求はただ一つ、「自分を魔族王と認めること」であった。

 ただの呼び名が欲しいとは、お安い御用だ。こちらは痛くもかゆくもない。勝手に魔族をまとめるがよい。知葉我がただの非力な知恵者魔族だということは、調べがついている。実力のない知葉我に、魔族がついて来るはずがない。

 魔族と手を結ぶことで新政権に対する人心の混乱を鎮めることにした偉具炉は、未来の帝への道筋とその後が見えた時点で帝暗殺を決行した。

 それなのに。

 帝の名において、全国に「靫石を討て」という勅命が発せられた。

 せめて空竜姫だけでも殺し、「天は人間の最高祭司の位を帝の血筋から靫石の血筋へ下賜かしし直した」と宣言し、兵をこちら側に引き寄せたかったが、失敗している。

「くそっ! 勅命を出したのは帝の偽者なのか!? 奴は確かにオレがこの手で殺した! あの混乱の状況で逃げ惑わずに、最後まで帝の威厳を保っていたぞ! 声も帝のものだった! 九字もついていたのだぞ! なのになぜ……!」

 各国に勅命を出すとき、帝の玉印が必要である。それは術がかけられていて、帝の血が印面につかなければ刻印が出ない特別なもので、偽造はできない。

「本物なのか! しかし、あれだけ完璧に帝の替え玉を演じるには、帝を見慣れたオレと同じくらい見慣れていなければ、オレをだましきれないはず! 帝の替え玉は三人、そのいずれもオレは殺しておいた。では、誰が帝のふりを――?」

 そのとき、偉具炉は、「自分と戦わなかった」者を思い出した。

「――霧府飛滝きりふ・ひだき!!」

 空竜姫を陰から守り、帝にも近い場所にいた、霧府雅流選きりふ・がるえらの長子。十五年前、この男が成年であったなら、雅流選の跡を継いで忍頭になり、靫石一族の出る幕はなかったであろう程の技量の持ち主であった。

 帝暗殺をはかった日、飛滝は帝の命で一目曾遊陣ひとめそうゆうじんでも使って空竜のもとに飛んだのだろうと勝手に思い込んでいた。

「飛滝が帝に変装し、帝のふりをして逃げ回っていたのか! 見抜けぬわけだ……! あの忍術の達人が、一度も力を使うことなく、ただ刺されるがままに死んだのだから。愚かな男よ。帝などのために、己の技でオレを倒す機会より、帝に代わって無抵抗に死ぬことを選ぶとは。まったくの馬鹿だ……!」

 飛滝を憎み、再び蹴るように歩き回りだす偉具炉の側に控えていた白髪の隻眼せきがん高毛たかげは、飛滝を敵ながら真の忍だと思った。主君のために九字万玻水くじ・よろはみと打った大芝居。九字がいれば、飛滝がならなくとも帝の替え玉を本物と思わせられただろうに、替え玉が取り乱すことを考えて、自ら戦わずに主君の身代わりとなり、主君が安全に脱出する時間を稼いだのだ。今、偉具炉を討っても、靫石の軍勢が数に任せて帝を襲ったら、防ぎきれない。だから、帝を守るために、帝を演じきったのだ。

 いつか帝が靫石を討ち、再び人々を平和に治めてくれる日が来ることを信じて――。

 高毛は、自分もそうありたいものだと感心して片目を伏せた。

 偉具炉は怒りで目を充血させ、怒鳴り散らしていた。

「騙された!! どうしてくれる、オレの天下だと思ったところを!! 今オレは全国から追われる身だ!! 帝の民を強制的に兵にしても、数で負ける!! 知葉我はなんと言っている!!」

 そこへ知葉我からの文が届いた。

「靫石の里へひとまず退け……とな。そこで知葉我の部隊と合流し、人と魔族の国家を樹立する……。魔族がいては、人間も簡単に攻め入ることはできない……か。うむ、そうするしかないな。皆の者に靫石は里へ撤退すると伝えよ」

「お待ち下さい」

 高毛が両手をついてあぐらをかいた体を向けた。

「この知葉我は、何を考えているのでしょう。金も神器も求めず、ただ魔族王の称号が欲しい。知葉我一人で魔族の国が作れるところを、靫石を守り、共同統治してもよい。おかしいとは思われませぬか。世の中は与えたら、与えた分だけもらうものでございます。この者は、我々に与えすぎています。何かよからぬたくらみの刃を、懐に隠し持っているように思えてなりませぬ」

 しかし、偉具炉は牙を剝いた。

「うますぎる話なのはオレも先刻承知よ! だが世の中は利用した者勝ちだ! 奴にどんな策略があろうと、こちらはそうなる前に利用するだけ利用して、逃げればいいだけの話よ! 我々も忍、相手の意図を探れなくてどうする! 既に潜入させてある、案ずるな!」

「……。出過ぎたまねをいたしました」

 高毛は一礼して下がった。

「知葉我に気を許すな。しかし、奴の誘いに乗ってやろう。してくれることを全部してもらったうえで、出し抜いてやればよい。そして、我々はもう魔族と手を組む以外に、生き残る道がないことを忘れるな!」

 知葉我と偉具炉様は対等な関係ではない。他人の力をあてにした反乱首謀者に、主導権はない――。反乱を思いとどまるよう最後まで説得し続けていた高毛の隻眼を、それが険しくさせた。


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