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星方陣撃剣録  作者: 白雪
第一部 紅い玲瓏 第三章 一滴(ひとしずく)の夢
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一滴(ひとしずく)の夢第五章「玄武神殿」

登場人物

双剣士であり陰陽師でもある赤ノ宮紫苑あかのみや・しおん、神剣・青龍せいりゅうを持つ炎の式神・出雲いずも、神器の竪琴・水鏡すいきょうの調べを持つ竪琴弾きの子供・霄瀾しょうらん、強大な力を秘める瞳、星晶睛せいしょうせいの持ち主の露雩ろう




第五章  玄武神殿



「大丈夫か紫苑!」

「ええ……、それより、急いで」

「くるしかったら言ってね、毛布があるから」

「ありがとう、霄瀾」

 出雲におんぶされながら、紫苑は熱で充血した目を下に向けた。町でもらった毛布を抱えて、子供が心配そうに隣をついてくる。

 魅競町みせるまちで高熱を出して倒れた紫苑は、安静にすべしと言う医者に逆らって、玄武神殿へ出立することを強引に決めたのだ。

 玄武の刀が魔族に狙われたらという理屈はもっともだが、原因不明の高熱を意に介さない紫苑に、出雲たちは真意をはかりかねて、困惑するしかなかった。

 人から隠された場所のため、街道から外れて草むらの中を進んでいく。

 出雲は、自分を長時間式神化したせいで紫苑が無理をしたのではないかと、気に病んでいた。自分に気を使って紫苑が原因を黙っているのではないかと、ぐるぐると考えていた。そのおかげで、紫苑の大きな胸の柔らかい感触を背中に受けても、正気を保っていられたのかもしれない。

 紫苑の熱い体が出雲に密着しているのを時々支えながら、露雩は己の手に触れる熱を眺めた。

 露雩は他人に対して、全く愛という欲を感じたことがなかった。

 他人のそばに寄るときも、触れるときも、何も感じない。いつも自分と相手の体は冷たい流水で覆われていて、あっさりとした感覚しかなかった。他人の身体は引力も掛け金もなく、露雩にとってはただの流体、いわば滝の柱が近づいてくるという認識しかなかった。

 人間はこの世のすべての命、自然とつながっているから、どれかを特別扱いするつもりはない。だから、世界の調和を乱す者は許さない。自分は調和を保つべきなのだ。それゆえ、何か一つでも気にかけてはいけないのだ。それは等しき思いに違反する――。

 露雩の右腕の白いあざが脈打ったとき、ゆるやかな坂に、こけの間からところどころ欠けた石畳いしだたみが現れた。

「ここだな……!」

 出雲が紫苑を背負い直して、ゆっくり石畳を踏みしめていく。

「あれ……、石が六角形になってる」

 つまずかないように下を向いて歩いていた霄瀾が気づいたのを聞いて、一同は玄武の亀に由来するのだと、確信した。

 その一行のうしろ姿を、十二支式神「」(鼠・ねずみ)がじっと見つめていた。

 夕刻、出雲たちの目の前に、黒塗りの神社が姿を見せた。夕陽に照り映えて、あけ色に黒い。

「何用ですか? このようなさびれた場所へ。道に迷ったのならこの階段からまっすぐお戻りなさい。街道に出ます」

 水の入った小さなびんを首からさげた、黒い袴の祝女はふりめが、社の前で一行の行く手をふさいだ。片手には、薙刀なぎなたが握られている。

「道には迷っていません」

 紫苑が熱をおして返答した。

「玄武の刀を、所望いたします」

 そこで紫苑は力つき、意識を失った。


 目覚めたとき、紫苑は真っ白い布団の中に横たえられていた。

「事情はわかりました。帝の勅命はともかく、出雲さんが手にしているものはまさしく神剣・青龍せいりゅう。神器・水鏡すいきょうの調べもそばにある……。ある程度は信用いたしましょう」

 さきほどの祝女が、出雲たちと話している。

「神剣・玄武をいただけますか」

 出雲の問いに、祝女は言いよどんだ。

「差し上げられれば……」

「え? それはどういう……」

「試練があるのです」

 別の祝女が入ってきて、紫苑の額の手拭てぬぐいを冷たい水の張った桶に入れた。夕刻の祝女の瓶を、今度はこの娘が首から下げている。紫苑が起きあがった。

「初めまして紫苑さん、私はこの玄武神社の祝女、くぐるです」

 手拭をしぼると、紫苑の首の後ろに当てた。

「私は妹の水菜みずな、同じく玄武神社の祝女です」

 出雲たちの側にいる祝女も挨拶した。

 二人とも黒髪で、姉は細面の切れ長目、妹は少し広がった骨格であっさりした目をしている。

「夜は姉の私が、日中は妹の水菜が番をしています」

「玄武神殿への不法侵入を防ぐために」

「玄武神殿……そこに四神の刀の一つ、玄武があるのですね」

 紫苑に対して、姉妹は表情を曇らせた。

「神殿までご案内することはできます。しかし……『試練』に合格しなければ、神に挑戦した報いで、死が待っています。あなたは、死ぬ覚悟がありますか?」

 紫苑は、ほてった顔をさらに熱するように強く笑った。

「か! これはおもしろい、この私に死ぬ覚悟が、だと! あるに決まっている、生半可で、この世に生きているわけではないのでな!」

 姉妹は死に急ぐ者を眺めるような目つきをしてから、

「では、あなたの体調が改善され次第、玄武神殿へ参りましょう。的確な判断力がなければ、とても試練に耐えられません」

 しかし紫苑は首を振った。

「明日にでもお連れ下さい。神剣は魔族も狙っています」

「紫苑!」

 仲間が紫苑を翻意させようと立ち上がったとき、潜と水菜がはっと薙刀をつかんだ。

「ここが玄武神殿か? 真っ暗に真っ黒で全然わからねえな!」

「ここに玄武のお宝があるのか!」

「チッ、こんなに競争相手がいちゃあ、盗んで逃げるのも手間がかかりそうだぜ……」

 神社の外が男たちの声で騒がしい。

「皆さんは紫苑さんを連れて奥の間へ。水菜、見に行きましょう」

 姉妹が出ていくと、神社の境内に、百人ほどの武器を持った男たちが、固まって群れていた。姉妹は卒倒しそうになった。

「誰がここの場所を!? まさか花初かはつ国王を始めとした、秘密を知る者の中のいずれかが!?」

「落ち着くのよ水菜。紫苑さんたちがつけられていた可能性もあるわ。いずれにしても、不法侵入でないなら、彼らを受け入れざるを得ない。神からの試練は万人に等しく与えられた権利だから」

「この数……! 誰かが意図的によこしたとしか思えないわ!」

「水菜、急いで紫苑さんたちにお知らせして。裏にいる人間の意図がはっきりわからない以上、彼らと会うのは得策ではないわ。紫苑さんが病気だと、余計な情報を与えることになる。それでも明日は、彼らと共に試練を受けることになる、と」

「はい」

 水菜がさがるのを見届けてから、潜は百人へ扉を開いた。

「百人と競合するのか……! もし試練が体力で決まるものだったら、お前には無理だ、紫苑!」

 出雲は寝ている主の額の手拭に手を当てた。

「大、丈夫、私は……やる……!」

「お前は今、剣姫じゃないんだぞ! 動きもただの人間だ! 玄武と剣のやり取りをしたらどうする!」

 うっ、と紫苑が薄目に力をこめた。普通の人間以下の体力で、百人が参加する競争に勝てるわけがない。

「でも、私しか、いない」

 出雲は青龍、霄瀾は水鏡の調べの所有者だ。一つの神器をすでに持っている者を、玄武が己の所有者に認めるとは思えない。

 出雲と霄瀾が必死に言葉を探していると、

「……オレが行く」

 静かで、水のように透明な声が響いた。

 露雩が紫苑の枕元に座った。

「あなたは、記憶が……。試練の最中に意識が飛んだらどうするの、誰も支えてあげられないのよ」

 露雩は、以前そうしてもらったように、熱く握られている紫苑の手をほどき、両手で力強く握った。

「オレは『オレ』を作りたい。何か一つでも、成し遂げたい」

 この人が死ぬかもしれないのだと気づくと、紫苑は息が止まる思いだった。だが、彼はしたいことに挑戦しなければならないのだ。成すのは問題ではない。為さないことは、一生後悔する。

「……わかった」

 うるんだ目の充血を見られたくなくて、紫苑は目をつむった。


 翌朝、露雩と百人は水菜に連れられて、玄武神社のさらに奥、玄武神殿へと向かうこととなった。

 道すがら、滝の清冽せいれつな音があちこちで響き、緑葉に覆われて日の遮られた川辺には、緑あふれるしめった苔が生え、鼻の奥を安らげる、心地よい水の空気をかがせてくれた。

 どちらを向いても小さな滝が点在する、そこかしこに水のあふれた地だ。水を司る玄武神が、鎮座したがるわけである。

 やがて、前方から、獣の咆哮ほうこうのような爆音が響いてきた。

 縦に長く、横に広く、噴き出すように勢いよくほとばしる巨大な滝が、人々の耳をろうしていた。滝の水の流れる岩は、黒一色で、影もない。滝の左右に、黒白赤青黄の五色のはくが、一束ずつ垂れ下がっている。水煙にあおられて、柔らかな金属のような、なめらかな光沢を踊らせている。

「ここが玄武神殿です」

 振り返った水菜に、男たちはどよめいた。

「建物じゃないのか!」

「真の神殿は神がお創りになるもの。我々は奇跡の場所の近くに建物を建てているだけです。我々がここに手を加えたのはこの五色の帛だけです」

 水菜が水煙に舞う帛を眺めた。その行為すら畏れ多いという視線が、そこにあった。

「おい! そんな能書きはいい! 入れるんだな? オレは行くぞ!」

「あっ! 待ちやがれ! あの野郎、抜け駆けしやがった!!」

「先に試練を受けた奴が有利だ!! 早いもん勝ちなら、てめえら、どけ!!」

「このやろう!!」

 百人の男は、押しのけあいつつ、玄武神殿になだれこんだ。

 ここで死ぬかもしれない。

 だが、何かを為さなければ、彼は初めから死んでしまうのだ。

 露雩は意を決して、滝を抜けた。

 黒い岩の洞窟内は、真っ暗だろうという予想に反して、ときどき天井から差しこんでくる淡い光が岩に反射し、なぜか道や壁を水色に浮かびあがらせていた。

「……意外に寒い……」

 露雩は自分の外套の上から二の腕をさすると、体を温めるため駆け出した。百人の走る足音が遠くで反響している。

 道は一本で迷いようがなかったが、百人が止まっている広場に追いついたとき、辺りはまるで水の中に入ったような、身を切る冷気がたちこめていた。

 広場の先に、光のない、真っ暗なほらがあった。そこで行き止まりのようだった。広場と洞の間には縦十メートル、横二十五メートルの水色の光を放つ広い湖があって、百人に、泳いで渡るべきか躊躇ちゅうちょさせている。

「どれくらい深いんだ? お前、入ってみろ」

「バカ言え、てめえが入れ!」

 二人が騒ぎだすのを、周りが突き飛ばした。

「た、助けてえ!!」

 二人はもがく間もなく、まったく浮力というものを見せずに、鉛のように沈んでいった。

「あいつら二人ともかなづちとは考えにくいぜ」

「この水、何でできてんだ? 入ったらおしまいだ。向こうには渡れねえぞ」

 約百人の男たちは、百人入るといっぱいの小さい広場で、ひしめきあった。

「向こうの穴にも何もねえし、どこにも玄武の刀は見当たらねえし。情報が嘘っぱちだったってことか」

「バカバカしい。オレは帰る」

 一人が帰ろうとしたそのとき、その男の目の前に、地中から刀がせり上げられてきた。

 黒い刀身に水色の湖の光を透き通らせた、亀甲模様の柄に蛇が絡みつく、見事な装飾の施された刀であった。

「亀に、蛇……? あっ! 玄武だ!! 玄武の刀だ!! やったぞー!!」

 男は一息で黒い刀を引き抜くと、狂喜しながら出口へ向かって駆け出した。

「えっ!? なんだって!?」

「何があった!?」

「しまった!!」

 露雩は脇を駆け抜けていった男に向かって身を翻した。男たちもようやく理解して、男を追うために武器を構えた。


 出雲は青龍せいりゅうの刀を眺めていた。

 自分は、青龍の技を、一つも使えない。

 それは、

「あなたが真の青龍の使い手ではないからです」

 昨日、祝女姉妹にそう告げられてしまった。

 燃ゆるばるかの封印のために託されただけで、確かに出雲は青龍の試練を受けてはいない。認められぬ者に、神の力は厳正である。ふさわしくない者に、少しも力を与えないのである。

「青龍神にそのお力を貸していただきたいのなら、青龍神殿へ参り、あなたが試練を受ける以外に、方法はありません」

星方陣せいほうじんを成すのなら、四神の加護は必須です。あなたは行かねばなりません」

 くぐると水菜にはっきりと言われ、出雲は自分の命の重みを思ったとき、青龍を手放してでも紫苑のそばにいたいという思いと、命を失っても紫苑の役に立つことをしたいという思いで、板ばさみにあった。

「オレは、どっちが正解なんだろう……」

 答えの出ない悩みに、出雲の頭は出口のない迷路をたどるようであった。たまらず青龍をさやに投げこんだ。そして大きく息を吸いこんで肺に冷たい空気を取りこむと、清く澄んだ川へ頭を突っこみ、思いきり冷たい水を飲んだ。


「おい坊さん! やったぞ! 玄武抜いてきたぞ!!」

 玄武神殿からいち早く駆け出た男は、真っ先に苔むす岩の陰にいる僧侶に走り寄った。

 編み笠を軽くあげて何の毒もなさそうに微笑んだ僧侶のその顔は、河樹かわいつきのものだった。肩に十二支式神「」が乗っている。

 紫苑たちが玄武の刀を狙っていることを知り、急いで町の酒場に行って、金のためなら命もいとわない荒くれ者たちに刀のことを教えたのだ。「持ち帰ったら、言い値で買い取る」と約束して。河樹は既に神器しんきを持っているので、自ら神の試練に赴くのは危険だと判断して、行かなかったのだ。

「これが玄武ですか……」

 男の握る黒い刀を見て、河樹は神気を感じ取った。いくつもの神器を持っているからわかる、これは本物だ。

「……ご苦労様でした」

 河樹がニヤリとわずかに奥歯を見せた。

「いくらにするかはもう決めてある。五千万イェンだ! どうだ、仏像の一つや二つ売れば、坊さんでもそれくらい払えるだろう!」

 金を受け取ったらてめえを殺して刀を奪い返してオレのものにするけどな、と男もニヤリと目を細めた。

「では玄武を持ってきてくれたお礼に、」

「へへっ、五千万イェン!」

「ここで死なせてあげましょう」

「なにっ……!?」

 河樹の「子」が巨大化し牙をむきだすのを見たとき、男は恐怖で頭が真っ白になった。そのとたん、

なんじ、我を恐れり!』

 男の頭に滝の瀑音(ばくおん・意味『滝の轟音ごうおん』)のような声が響いたかと思うと、玄武の刀の柄の蛇があごを外し、男を頭から丸呑みにしてしまった。そして、玄武の刀も消滅していた。

 あとに一人残された河樹は、呆然とこの有様を眺めていた。

「……何が、どうなった……?」


 玄武神殿の中で露雩が走り出したとき、広場から騒ぎが起こった。

「玄武だ!! 玄武の刀がいっぱいだ!!」

 露雩が慌てて戻ると、確かにさきほどの男が持ち去ったのと同じ形の刀が、広場のあちこちに、人々の数ほど出現している。

「どれが本物だ……!?」

「あの野郎、バカめ、本物かどうかも確かめねえで浮かれて出て行きやがった!」

「今頃あの坊さんに説教食らってるぜ!」

 露雩は「坊さん」という言葉に引っかかった。

「あの、皆さんにここのことを教えたのはその『坊さん』ですか――」

「片っぱしから引き抜いてみるか!」

「オレの刀の目利きにかなう奴なんていねえ! 本物を探し出すのはオレだ!」

「あの……!」

 しかし人々は露雩を無視し、めいめいが無造作に神剣を抜き取った。

「へえ……。きれいな剣だ」

 人々はその刀身が湖の光を透過するのを目の当たりにして、深く呼吸した。人の姿は透けない。つまり、光しか通さない、素材不明の奇跡の刀なのだ。

「こんな剣を持ってたら、見物料だけで一生楽して暮らせるだろうなあ……」

「これを献上すれば国王から官位をせしめることだって……」

 人々がうっとりと刀に見入っていると、急に滝の瀑音ばくおんが聞こえたような気がした。

なんじ、死するを恐れるや否や』

 音は、はっきりとそう言った。

「はあ……? 死?」

「あ、あれ!? 刀が手から離れないぞ!?」

 神の問いに答えを出すまでは、逃れられない。答えが出せなければ、神に挑んだ報いで死があるのみ。

 それに気づいた何人かは、絶対に逃げられない恐怖で悲鳴をあげながら手を振り回し、刀を放り投げようとして、蛇に呑みこまれた。それを見た他の面々は、

「死を恐れなきゃいいんだろ! はい神様、オレは死など平気です。死ぬのが怖くて賞金稼ぎなんかやってません」

「違いねえや。オレなんか追いはぎもやったことあるぜ」

 男たちがげらげらと笑った。そのとき、彼らの視界に変化が生じた。

 ある男は賞金首の魔物の前に立っていた。戦おうとすると、急に男の妻子が現れた。この二人のために死ぬわけにはいかないと思ったとたん、玄武の蛇に呑まれた。

 ある男は、魔物によって仲間が次々に殺されていく現場にいた。男が最後の一人になって、逃げのびて生きたいと思ったとき、蛇に呑まれた。

 ある男は、新しい手術を試すとき、自分の代わりに他人を実験台にして、だって他人の命より自分の命の方が何万倍も大事だからと思ったとたんに、蛇に呑まれた。

 その他、玄武を手にしたほとんどの者が死の試練に脱落し、蛇に呑みこまれていった。

「死なんて遠い出来事だな。死ぬまで今の仲間とバカ騒ぎしてりゃ、恐くないんじゃねえ?」

「死ぬなんて実感わかねえから、考えねえ」

 若干の男は、かろうじて残っている。すると、急に玄武の刀が残りの男どもにからみついて、湖へ引きずり落とした。入ったら絶対浮き上がれない湖の中で、男たちは恐怖でただ叫んだ。

「助けて!! まだ死にたくない!!」

 玄武は消滅し、男たちも湖の底へ沈んでいった。

 百人の男たちは全滅し、あとには露雩が残るのみとなった。

「どれも、本物だったのか……?」

 玄武の試練に応えられれば、刀はその者の所有となる。失敗すれば偽の刀となり、消え失せる。

 露雩の目の前に、玄武の刀が一本、地中から現れた。

 手に取って死の試練に命を賭けるか。

 この神をおそれて試練を受けないのもまた一つの道である。

 だが、他の四神も、きっと同じだけ命と勇気を要求するだろう。ここで逃げても、問題を先延ばしにしただけで、何も変わらないのだ。紫苑たちには、露雩しかいないのだ。露雩もまた、自分を確定するために、今為すしかないのだ。このままいけば、二つの星晶睛せいしょうせいに人生を引きずられてしまう。露雩は、たとえ命を失ったとしても、自分の心を守るために、神の試練を受けるしかないのだ。神の加護を受けた自分は、二つの星晶睛と渡りあえるはずである。

 露雩は、玄武の刀を握りしめた。

『汝、死するを恐れるや否や』

 瀑音ばくおんが響いた。

「死を恐れるかだって……? 生きることすら覚束おぼつかないのに、どうして死ぬことまで気が回るんだ」

 露雩の憂鬱ゆううつそうな答えにも、刀は反応しなかった。刀は露雩に巨大な魔物の幻を見せたが、露雩は動じなかった。

「オレ自身の手で倒してみせる、負けたら死ぬまでだ」

 刀は露雩に明日死ぬ呪いをかける幻を見せた。

「いつ死んでもいい。どうせやっておきたいことも目的もない、からっぽの人間なのだから」

 刀はしばらく考えこむように静まった。露雩もまた、今の答えで漠然と自分に疑問を持った。もし自分が死んだら、紫苑たちは悲しむのだろうか? もし自分に何か大切な目的ができたら、自分も命を惜しみ、死を恐れるようになるのだろうか?

「それはないな」

 彼は呟いた。

「オレが死んだら、代わりの者が世界のために生きればいい。時代が求める者が、この世界で生きていけばいい」

 不意に、奈痛希なつきの四十三才の姿が目に浮かんだ。

「どうせ死ぬし、今さら自分を大切にしたって、意味ないよ……」

 彼女の言葉。本当にそうだろうか? 人は死から逃れることはできない。死ぬまでに何かを為すために生きているのだ。では――

 玄武が光を放った。

『では、何も為せないことを知った死を待つばかりの老人になったら、どうする?』

 露雩が考えようとしていたことを先回りされて、露雩は答えにつまった。神は、こちらの弱さを見逃さない。奈痛希を前にして出なかった答えを、今、出せと言うのだ。

「あなたは、十分に生きた、知らないところで何かの役に立った……」

『老人の存在を確定するには至らない』

 玄武がはねのけた。

「自分を養ったことを誇ればいい。ここまで生きて、何も知ることがなかったとは言わせない。残りの時間は誰かにそれを伝えていけばいい……」

『否。他人に顧みられない老人には適合しない』

 露雩は考えこんでしまった。老人の人生を肯定する言葉しか思いつかないのに、その内容は、それを考えることを本人に丸投げして、それでいてこちらは、他人事として本当に肯定はしていないのだ。奈痛希の死を待つ瞳が目に浮かんだ。だめだ、違う、諦めるな!

『老人に何かを期待するなど、間違っておる。生ける屍だ。社会に迷惑をかけてまで、生きる価値はない。お前も、認めてしまえ。すべてを終わらせる死の絶望から、何人なんびとも逃れることはできないのだ!!』

「生きていて迷惑な人間は一人もいない!! 死を待つだけの人間なんて、いない!!」

 露雩の叫び声に、玄武が反対した。

『何の役にも立てぬのにか!』

「何かを行うことだけが人間の価値じゃない! いるだけで社会の信頼の和の構成員となり、思いやりや老いたからこそ時間をける心のつながりから、たった一つの言葉を言うだけで人を救えることは、たくさんある! 若い頃に比べて力が衰えても、能力が落ちても、心の知力は誰よりも高い! 人である証を最も備えた彼らを一部の者たちの物差しで断じることは、許さない! それにあなたは思い違いをしている!」

 玄武の刀は息をひそめた。

「人間というものは、死ぬ一秒前まで学ぶものだ! 六十才になろうと、八十才、百才を超えようと、ずっと成長する生き物だ! 年だからと諦めてはいけない、年だからと何もしない、何もさせないのはいけない。毎日、知識でも、人の心でも、何かを学ぶのが人間だからだ。そして、次に生まれ変わったとき、その知識や心を学んだことを理解する回路は、引き継がれる。次の人生で早く次の段階へ行く助けになる。だから、老いても何かを『卒業』することはないんだ! 次の人生もさらにもっと強く生きていけるように、最期の瞬間までなんでも学び続ければいい!

 一人の人間が生まれてから死ぬまで、役に立たない時代などない! 『もう年だから?』 自分に弱音を吐くな。『無駄に生きてる身』ではない! 自分のために、存在する価値はある! 死ぬ一秒前まで、一つも諦めるな! そしてそんな自分のがんばる姿が、他人をもどれだけ勇気づけるか、あなたは知らないのだ!!」

 露雩に呼応して瀑音ばくおんが鳴り響いた。

『それこそ老いた者が死の恐怖を取り去る境地。死を恐れぬ波一つない水面みなもの心は示された』

 玄武が輝きだした。

『若者は死が遠い。ゆえに能力の衰えの恐怖を知らず、老人を“いたわる言葉”しか思いつかぬ。それでは死の恐怖は取り除くことはできない。他人からの力や言葉はきっかけにはなる、しかし、真に答えを出すとは、自分の今持てる力や言葉で自分の直面する現実と向き合うということだ。それがこの世のことわりなのだ。汝は、死の問いから逃げずに、汝の答えを出した』

 露雩の手から、玄武の刀が光と共に失せた。

『この理を守れるというのなら、それを守るための力を貸してやろう。

 さあ、玄武の刀を、手に取るがよい!!』

 湖の向こうのほらに、光をまとった黒い刀が現れた。

 この湖は、完全に浮力を奪う、何者も泳げない湖である。

 玄武の最後の問いなのだ。

 果たして、命を捨てる覚悟はあるかと。

 露雩は、満足していた。

 たとえここで死んでも、自分は今、死を恐れぬ心に到達することができた。

 次に生まれ変わったとき、きっとこの心で誰かや自分を助け、またそれを、より困難な問いに答えるための足がかりにすることができるだろう。

 この世に無駄なことなんて、一つもないのだ。

 人はずっと、成長していくのだ。

「だから、今死んでもかまわない」

 露雩は迷わず湖に足を踏み出し、そのまま沈んでいった。

 薄れゆく意識の中で、それでも露雩の心は穏やかだった。

 最後の空気が肺から出て、彼は微笑んだ。湖の水が一瞬で消え去り、塊にまとまった。

 意識の遠のきつつある露雩を黒い甲羅に乗せた巨大な玄武が、二つの絡みあう黒い蛇の鎌首と亀の目でじっと彼を見下ろしていた。

 そして洞から刀を抜くと、露雩に刀からの水を浴びせた。

「ん! ……冷たい……」

 目を覚ました露雩に、蛇の方の玄武は刀をくわえて差し出した。

『最後の試し、見届けた。汝、死を司る我を使うに、ふさわしきなり!』

 露雩は初め、自分が生きていることに呆然としていた。

「あれ? オレを生贄にして、オレの体を使って玄武神がみんなと旅をするのかと思ってた」

『神気は人間の体では耐えられぬ。我は汝を刀として守り、助けるのみ。汝の我を使う力が及ばなければ、汝は敵に負けるであろう。神の恩寵を引き出すのは人間の役目である。神は望まれない願いをかなえないし、分不相応な力も与えない。我の力の一部を使いたくば心の力を成長させ、汝の器を広げよ。その分、汝は多くの我を手に入れることができるであろう』

 露雩は真の玄武の刀を受け取った。そして、改めて四神の一柱、玄武を眺め渡した。

 湖と同じだけの大きさで、黒く輝く亀甲が露雩の姿を反射すらしている。そしてその亀に絡みつく二匹の黒い蛇。その鱗は光を透過しながら深淵の濃い艶を放ち、黒いものの中で最も美しい反射を誇っていた。

 玄武の放つ気、その一息が鼻に入ったとき、露雩は柔らかなせせらぎの音が聞こえたような気がした。その心地良い響きが自分の血液の流れの音だと気づいたのは、神と話をするために息を吸うたび、自分が神の声を聞くのとは別にそのせせらぎの音が流れたからであった。その香気が吸う者の水、すなわち血液までも清める、まさに神の威力であった。

「この湖はあなただったのですね」

『そうだ。正確には“死の塊”だ。我に挑む者に完全なる死を突きつける、最後の試練だ』

「じゃあ、消えていった男たちは、もう……」

 いつのまにか湖の穴は消え、玄武は広場と洞がつながった地面の上にった。露雩は足の裏をつけないように、丁寧に玄武の甲羅から降りた。部屋中に玄武の声である滝のような瀑音ばくおんが響いた。

『我を力ずくで引き抜いて、無理矢理所有することは、できる。実際、これまでの歴史でも、皆そうだった。だが、我の問いに答えを出せない者たちだから、死の恐怖を味わった瞬間に、我つまり死を克服できず、我に呑まれていった。問いに答えられない者は、その時点で既に負けなのだ。強引に進んでも、解決したことにはならない。それがわれの答えだ』

 神は、問題を放置することを赦さない。たとえ時がたって人間が逃げられると思っても、神の時間に時効はないのだ。

 二匹の蛇と一匹の亀の漆黒の瞳が六つ、露雩を真正面からとらえた。

『もし汝が死の恐怖に襲われたら、我はその刀で汝を呑みこむだろう。だが、汝は一生我を手にできるだろう。老いても、死を恐れないのだから。死する一秒前まで』

 そこで六つの目は興味に揺らいだように見えた。

『しかし、その最後の一秒は何をするつもりなのだ。汝は先程湖の中で笑っていたが』

 露雩は湖のときと同じく微笑んだ。

「今までの人生を振り返って、ありがとうと言うんです」

 瀑音ばくおんが立て続けに響いた。

『は、は、は! そうか。そのときはその言葉を、我が聞いてやろう!』

 呑みこむことのない使い手のために、玄武は身を翻し、光る水となって刀に入っていった。玄武の振り飛沫しぶきが丸く固まって氷真珠となって、散らばった。

「お願いいたします」

 露雩は穏やかに目元をゆるめると、神剣・玄武を腰に差して、玄武神殿をあとにした。

 出口の瀑布を抜けたとたん、露雩は百体の魔物に取り囲まれた。

「あの腰に差しているのが玄武か!」

「魔族のために奪え!!」

 成人より二回りも大きいもぐらやコオロギ、三角葉の植物の魔物などが、爪やとげを構えて口々に叫んでいる。

 露雩は玄武に手をかけた。

「さっきから、なんなんだ!? お前たち、誰に玄武のことを聞いた!!」

「殺せー!!」

 百体が一斉に露雩に押し寄せた。

 目醒めてから、星晶睛せいしょうせいなしでこれだけの数を相手に戦うのは、初めてである。露雩は、一瞬震える手を玄武に吸いつかせた。

「オレは、玄武となら、戦える! 確かな自分を、持っている!!」

 星晶睛ではなく、オレの人生を歩むのだ!!

 玄武が咆哮した。

われに捧げよ、その剣舞!!』

 露雩は神剣・玄武を抜き放ち、百体のただ中へ突進した。魔族は滝の急流のごとき彼のあまりの速さに、集団の中心への侵入を許してしまった。

「うおおっ!」

 玄武が滝のように重く、叩きつける音をたてて舞った。魔族の足、腕、血肉がはねる。

 爪をかわし、肩のつけ根から突き裂く。飛びかかってくるその足をひっかけて転倒させ、刺し通す。体を縛りつけようとするつるを、後ろの地面から前の地面へ剣を半円に振り、何重にも迫っていたのをばらばらに落とす。一度に二体の腹を斬り薙ぎ、一体の足を刺して別方向の数体へ投げつけて押しつぶす。

 露雩は、足さばきで螺旋らせんを描きながら、百体の魔物を倒すことに成功した。玄武の刀をしまうとき、その音から水の波紋が広がるような波動が生じた。

「オレが、やった……」

 達成感を胸に、露雩は渦巻き状に横たわる魔族たちを一望した。星晶睛の生じない自分でも、為したいことを成せたのだ。

「オレは一つ成長した……!」

 喜びがこみあげて、露雩は歓声をあげながら玄武神社へ駆け戻っていった。

 それを岩の陰から、河樹が苦々しげに見ていた。

「やはり、雑魚ざこ相手では玄武の万分の一も力を使わせることはできませんね……!」

 玄武を紫苑たちが手に入れたときに備えて、河樹は百体の魔物を用意していた。玄武の力を知るための、捨てゴマである。弱い人間ではすぐに斬られて終わりだから、魔物を選んでおいたのだが、雑魚は雑魚でしかなかったようだ。

「滝に、渦。水に関係した剣舞を玄武に捧げる、それが玄武の使い手の務めですか」

 渦巻き状に散らばる魔物たちを、河樹は術で燃やした。

「私以外に、この情報は知らせない」

 河樹が笑いながら去ったあと、魔物は跡形あとかたもなく灰になり、風で川に流されていった。


「みんな! やったよ! オレ、玄武神に認められて、神剣・玄武を手に入れたよ!!」

「本当か!? やったな露雩!!」

「すごいよ露雩!!」

 出雲が露雩の肩を抱いて叩き、霄瀾が露雩の腕をつかんで飛び跳ねているのを、玄武神社の祝女はふりめくぐると水菜は言葉もなく目を丸くして見つめていた。

「失礼いたします」

 妹の水菜が、首からさげた小さな瓶のふたを取り、神剣・玄武に近づけた。すると、瓶の中の水が水色に淡く光った。

 それを見て、姉妹は驚いて即座に地にひれ伏した。

「真の神剣・玄武! お目にかかれて光栄に存じます!」

 強引に引き抜かれた玄武なら、聖水は輝かないのだ。

「オレが死ぬまで、しばらくの間神の御不在をどうぞお許しください」

 露雩が頭を下げると、姉妹はいよいよ頭を地にこすりつけた。

「神のお認めになったあなたに、どうぞご武運が味方しますように」

「ありがとう」

「できれば今日はお祝いしたいところなんだけどな、露雩」

 出雲が沈みきった声を出した。

「紫苑の熱が、さがらないんだ……」

 霄瀾が障子を開けた。

 熱気がたちこめていた。真っ白な布団の中で、紫苑が赤い髪を千々(ちぢ)に乱してうなっていた。時折体から白き炎が噴き出そうになり、すんでのところで食い止められている。

「原因がわからないんだ。熱のおくすりは、もうちゃんとのんだのに!」

 霄瀾が泣きそうな顔で露雩を見上げた。

「つまり、ただの熱ではありません。病気とは違います」

 潜が玄武を示した。

「その神剣の聖水なら、熱を抑えられるかもしれません。呪いにしろ何にしろ、神の聖水が効かないとは思えません」

 呪いと聞いて、そんな呪われる場面があったただろうかと旅を思い返している出雲と霄瀾を残し、露雩は紫苑の部屋へ一人入った。

 神剣・玄武を抜く。

「玄武神は水を司ります。望めば聖水が現れるはずです」

 潜と水菜は顔をそむけて目を隠していた。神の力を目にするのが、瀆神とくしんにあたるとでもいうかのように。

 露雩は刀の切っ先を紫苑の口の中へ垂直に入れ、歯がかむのに任せて固定した。

「玄武神、お力をお貸しください。神流剣しんりゅうけん!」

 頭に浮かんだ言葉が力の解放の鍵となって、紫苑の口の中へ玄武の神水が流れこんでいった。

「ん……がポッ!」

 呼吸を妨げられた紫苑が跳ねるのを、露雩が押さえた。真っ赤に見えていた顔の色も、神水が体中の血液に行き渡るにつれて、徐々に引き、元の透き通った白い肌に戻っていった。

 刀を口から抜いたとき、紫苑はやや重たげにまぶたを開けた。

「あ、露雩……。どうしたのかしら、私、頭がすっきりしてて……」

「え!? 紫苑、目が覚めたのか!?」

「ほんとだ! うわーい、紫苑ー!!」

 露雩が答えるより早く、出雲と霄瀾が部屋に飛びこんできた。

 三人で仲良く話しているのを見て、露雩も口元をほころばせて刀をしまった。今日からは、この中に一人の確固たる存在として、堂々と入れるし、意見も言えるのだと安心したのであった。

 露雩が「死」を克服したことを知って、玄武の刀を手に入れたお祝いをしている出雲たちと祝女たちのそばで、紫苑は一人料理の箸が進まなかった。

「(死を恐れない、いつ死んでもいいと思っているということだわ。誰かを守りたいという思いに直面しても、この人は『世界のために』生きることが勝ってしまう。全く自分を顧みないのね)」

 そして、力ない眼で、露雩を見つめた。

「(そのときこの人は、私をも救えるだろうか。『世界のために』――)」


「露雩様。神剣・玄武を得たということは、あなたはこれから玄武を奪おうとするやから、使い手を滅しようとする敵勢と果てしなく戦わねばなりません」

「しかし、それが神の加護を得た者の義務です。あなたは神の与えたもうた力に一生応え続けなければならないのです」

 玄武神殿を守ってきた潜と水菜からはなむけの言葉をもらうと、露雩は亀甲紋の凹凸おうとつが巧みなさやに入った神剣・玄武を、腰に差した。

「大丈夫です。オレは玄武神を裏切りません」

 姉妹はもうそれ以上は黙って、うやうやしく玄武に頭を下げた。


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