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星方陣撃剣録  作者: 白雪
第二部 常闇の破鈴 第二章(通算二十一章) 神の強制
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神の強制第四章「賢者の自由」

登場人物

阿修羅(ヴァン=ディスキース)。神の発音で「あじゅら」、人間の発音で「あしゅら」。邪闇綺羅(神の発音で「じゃぎら」、人間の発音で「じゃきら」)の弟。神刀・白夜びゃくやつきを持つ。神に背いた罰を受け、この世界ではヴァン=ディスキースと名乗って旅をする。

セイラ=サザンクロスディガー。栄光の都レウッシラで阿修羅が助けた星羅せいらと同じ姿をしている。歌姫。

ザヒルス。十五才。ザヒルス村の領主で、斧使い。

黒魔。星の持つ、憎しみと絶望の権化。すべての命を喰らい、すべてを葬ろうとしている。

ラウクゼーク。ラウクゼーク教の教祖。教えに従わない地を侵略している。




第四章  賢者の自由



「あっ紫の川だ」

 山中を歩いていて、ふとザヒルスが足を止めた。淡い紫色の水の小川が、足元を流れていた。

 ザヒルスは斧の刃を紫の川に浸した。ヴァンが水中の刃をのぞきこんだ。

「何をしているのだ」

 ザヒルスは意外そうな顔をした。

「鍛冶職人なら知ってると思ってた。紫の川は金属のへこみや刃こぼれを修復してくれるんだよ。戦場では、紫の川を確保できる場所は、陣地に適した地形の一つだぜ」

「そうか」

 ヴァンは紫の川に指を浸し、何も起きないので、それをなめた。

「えっ!? 大丈夫なのヴァン!?」

 セイラが驚いて真水の水筒を用意する。ヴァンは目を閉じていた。

「金属の純度が高い。どの武具を浸けても同じ成分で修復されるようだ。やはり鍛冶職人にはかなわないな。戦時の急場しのぎに使うのがいいだろう」

 目を開けるヴァンをザヒルスが口を開けて見守った。

「お前さ、一回なめただけでなんでもわかっちゃう系の人なの? オレをなめるなよ、既にけっこうお前に知られてるけど」

「安心しろ。もうオレはお前の全生涯を知っている」

「ほばー!!」

 ザヒルスは自分の黄緑色の鍾乳魔法石の首飾りを握って、ぶんぶん振った。自分の恥ずかしいことも知られていることに、もだえている。

 セイラは、ヴァンに自分のどこをなめてもらおうかと、一人で恥ずかしがっている。

「……?」

 ヴァンが同行者二人の思考が読めず立ち尽くしていると、

「おや、先客さんだね!」

 川下から川に沿って上がってくる女性が、度胸のありそうな声をかけてきた。前髪を作らずに伸ばした黒髪をきれいに一つにまとめて、後ろで縛っている。額にはサングラスゴーグル。顔は化粧せず、日焼けをしてしみだらけであり、野性的な細い目とピンク色の厚い唇をしている、二十五才くらいであろうか。長袖に長ズボン。右手首のバンドにはナイフが収納されている。登山靴を履き、旅行用一式の入っていそうな、大きな四角いリュックを背負っていた。

 女性は右手首を振ってナイフを半回転させて右手の中に柄を握ると、紫の川でナイフを浸し始めた。

「安全にナイフを修復できるとこ、探してたんだよね。私はナーリ=ハスト。地理学者よ。あなたたちも、このマクマキ山に用があるの? 何か情報があると、お互い助けあえると思うけど……」

 何か含みのある言い方である。

 ヴァンは自己紹介をし、自分たちがラウクゼーク教の情報を集めていることを話した。果たして宗教として認めていいのかということを、疑うことから始めている、と。ナーリはへえー、と感心した。

「みんな死後の世界や呪いを恐がって、宗教に何か言うのをためらうのに、あなたたち、勇気があるね! 自分の意思を言える人ならこっちも言ってもいいかな。

 私がこれからこの山で会おうとしてる人たちは、世界のことをたくさん知ってるのよ。各国で賢者と呼ばれてた人たちでね、政争に巻きこまれた人、追放された人、嫉妬で無実の罪を着せられた人、いろいろいるの。逃げて、このマクマキ山で、みんなで暮らしてるわ。ラウクゼーク教の研究をしている宗教学者の賢者も、いるんじゃないかな。

 私も、教えてほしいことがあって、ここまで来たの。ただ、山のどこにいるかまではわからなくてね……。紫の川をたどれば、行き当たるかと思ったんだけど」

 ナーリが掌でポンポンと、額と両目を覆うように叩いた。ヴァンは「そういうことか」と言って、ナーリを含めた四人を風魔法でくるみ、空高く上げた。

「ええっ!? 何!?」

 度胸のありそうな声を少し戸惑わせて、ナーリが両手で頭をかばった。いつ落下してもいいようにだ。ヴァンが四方を見渡した。

「ナーリ。それらしい集落があるかどうか、お前が見つけろ。普通の町や村かどうかの判別は、オレにはできないからな」

 ナーリはおそるおそる両手を頭から離して、ヴァンを見上げた。

「あんた……超便利ね」

「早くしろ」

 四人は風に乗って、マクマキ山を丹念に見た。森が深く、動物が動く影さえ見えない。しかし、現代の人間が生きていく以上、どうしても必要なものがある。畑だ。ばれないように少ない面積で散らばっているが、確かに作物の栽培をしている場所があった。

 そこからは簡単だった。住人が使っている小さなけもの道を、阿修羅の星晶睛せいしょうせいで見抜くだけだ。

 四人は、賢者の集落とおぼしき入口に降りた。ナーリが三人に囁いた。

「ここは地図に載ってないところよ。これだけ言えば、わかるわね」

 つまり、賢者たちの住む集落ということだ。叩き出されないように、友好的に接触しなければならない。

 そこへ、声に気づいた、白いローブ姿で頬に皺のある五十代の男が一人、近づいてきた。

 ぼさぼさの短い髪の上に、みかんを一つ載せていた。

 友好的に接触しよう。

「ここが賢者の集落だと、一発でわかりました!」

「ザヒルス、しっ! 直球よそれ!」

 ザヒルスとセイラが互いに押しあっている。

「修行者であったか。感心だな」

「ヴァン、賢者とはいえそういう修行者じゃないよ」

 微笑むヴァンを、ナーリが訂正した。

「君たちは、なんだ? 山道に迷ったのか?」

 賢者の頭上で、みかんが心配そうに揺れている。修行の邪魔をしてしまったようだ、悪いことをした、とヴァンは考え、急いで目的を告げた。

「ラウクゼーク教について、ぜひご存じのことをお教え願えませんでしょうか」

 続いて、ナーリが自分の目的を話した。

「私は、人間の理想郷、一樹千鈴いっきせんりんの地について、お話をおうかがいしたいと存じます!」

 聞き慣れない若者の声を聞いて、賢者たちが集まってきた。全員、白いローブを着ていて、中年から老人だ。

「もちろん、謝礼はご用意いたしております」

 ナーリはリュックの中から、最新の地図と国際情勢をまとめた軍事本、そして各国の政治指導部と軍部の姿絵一覧の本を取り出した。賢者たちが生唾を呑みこんだ。世界情勢は賢者の一番欲しい情報なのだ。

 姿絵本を囲んでいる賢者たちを見ながら、ヴァンがナーリに聞いた。

「よくあんな本を出せるな。普通、姿絵など描かせないだろう」

「お金で機密を売る人間はどこの国にもいるわ。秘密を隠し通せる国はどこにもないのよ……」

 ナーリは賢者たちを見つめていた。

 賢者たちはナーリの謝礼をたいそう気に入り、にこにこと笑顔を向けた。そして、ヴァンにもにこにこと笑顔を向けた。「で、君は?」らしい。

「よし……。では一つ創ってやろう」

 ヴァンは両手をかごのように広げて、掌を上に向けた。

「発現せよ!!」

 ヴァンの声で、右手に炎の玉、左手に風の玉が渦巻いた。それを押しつぶすようにして両手を組んだ。指の間からもれた光が光線となって、その光が固まってから光が失せたとき、紫玉を持つ一本の杖になっていた。

いやしの紫杖しじょう。武具を修復する紫の川の力を、魔法で与えることができる。紫の川に浸けている暇がないとか、場所が離れているとかしたときに、使うといいだろう」

 賢者たちは、ほおー! と、鍛冶をしたヴァンと癒しの紫杖を、輝く目で見比べた。

「この杖はすごい! 紫の川の力を魔法にした武器など、聞いたことがない!」

「その鍛冶の方法といい、君は名のある鍛冶職人だね? 知らなくて悪いね、我々はこういう暮らしだから……」

 ヴァンたちは、杖に触って出来上がりを確かめている賢者たちに、自己紹介した。賢者たちがめいめいうなずいた。

「いいだろう、お入りなさい。攻撃する意図のないお客は、歓迎するよ。ようこそ、賢者の隠れ集落へ。大したおもてなしはできないが、ゆっくりしていきなさい」

 みかんを頭に載せた賢者が再び現れ、代表で歩み寄った。

「私はカッペウス。ここでは皆、名字は捨てるよ。今夜皆で食事をするとき、改めて全員に挨拶するといい。それまでは、私の家にいるといい。この集落では珍しく、客間があるんだ」

 そして、四人を案内するように歩き出した。ヴァンは興味深そうに集落を見回した。

「犬も猫も鶏も豚もいないんですね」

 セイラが動物のいない地面を隅々まで眺めた。カッペウスのみかんが揺れた。

「動物が思考のヒントに役立つ可能性があることは知っているが、我々は動物を感染源としかみなしていない。熊や猪や鹿は魔法で倒せるし、ねずみは毒餌で殺して魔法の柵を作れば大丈夫。肉はときどき手に入る鼠以外のそれで足りる。

 結局他人の世話をするようにはできていないのだ、我々は。自分の思考が始まると一日経つのも忘れるくらいだから、無秩序に動物に鳴かれたり食事の世話をさせられたりして、つかみかけた答えの思考が霞のように消えてしまったら、もうその動物に殺意しかわかない。この畜生一匹のために人類の叡知が一つ失われたとね。

 そういうわけで、我々は静かにできない動物を飼うことはしないのだ。ここでは治療薬も限られているから、排泄はいせつ物による感染は、本当に危険だしね。一般の国家の町民や村人なら平気だろうが、閉鎖された集落ではやめようということで、話がまとまっているんだ。ペットではない自然から、思考のヒントを得ることにしよう、とね」

 みかんが歩くたびに揺れているが、落ちない。木箱の鳩の巣を大きくしたような形の、一間の家々を眺めながら、ザヒルスが尋ねた。

「じゃ、主な食物はみかん――いや果物とか、野菜とかだけですか?」

「さすがに思考にはパンが必要だよ。穀物の小麦は作っているね。あとはお察しの通り、野菜スープかな。果物は贅沢ぜいたく品。私はそのごちそうを作っている、みかん農家の役をしている。本当は数学の学者なんだよ」

 おいしそうな色のみかんが、誇らしげに揺れていた。ナーリが聞いた。

「ここには、何名の賢者がいらっしゃるのですか?」

 カッペウスが、ハッと振り返った。

 みかんは落ちなかった。

「……この集落のことを、あまり聞かないでくれるかな」

 みかんの影がいやにはっきりと見えた。ナーリは、こんなに反応されるとは思わなかったので、目を大きく開いた。

「君も学者ならわかるだろう。人は、持っている知識を、必ず誰かに言いたくなる生物いきものなんだ。言ってはいけないとわかっていても、他者への優越が欲しかったり、脅されたり、相手の役に立ちたいと思ったりして、言ってしまうものなんだ。だから、知らないでおきなさい。それが身を守る術だ」

 ナーリは、空気を呑むように口をつぐんだ。思い当たる節があるのだろう。

「……すみません」

 カッペウスは、謝るナーリに笑った。

「いいんだよ。我々は、『知りたがり』なんだ。知って自分で判断したいし、知らせて人の役に立ちたいんだよ。賢者、学者というものは、人一倍それが強い人々なんだよ」

 カッペウスの笑い声に合わせて、みかんも踊った。ナーリは、ほっとカッペウスを見上げた。

 カッペウスの家は、木箱の鳩の巣を二つ並べて、壁を取ってつなげた、という形だった。一応客間に通されたが、主人の部屋は丸見えだった。大きな三角定規や分度器、何度も消して白く汚れている黒板、飲みかけの水。床には巻尺まきじゃくが埋め込まれていて、一メートルごとに目印の棒が立っている。目視で距離を測れるようにするためらしい。

「それはカッペウスの家の紋章か」

 ヴァンが暖炉の上にかけられている白い布を指差した。盾の上に兜が載っている図だった。

 カッペウスは寂しそうに眺めた。

「いや。昔いた国の国旗さ。この集落にはルールがあってね、出身国の国旗を家のどこかに飾らなければならないんだ。それを見れば、今に見てろと思って、研究にも熱が入るだろう。身の安全が確保されて安心して暮らすと、人というものは向上心を鈍らせるからね。この集落はただ時を費やすところではない。あくまで、成し遂げたい研究を安全にするためのところだ。だから一番気力に火をつける復讐心を保つために、国旗を飾らなければいけないんだ。このままにしておくものかと、私も毎日思っているよ……」

 ナーリは、今度は、カッペウスに何があったのかは、聞かなかった。なんとなく、この人の作るみかんはきっとおいしいだろうと思った。

 そのとき、カッペウスの家の扉をノックする音がした。扉を開けると、緑のローブを着た男が二人、立っていた。四十代の二人は瓜型の坊主頭で、そっくりな顔立ちをしていた。一人は右頬をくぼませて左寄りに口をへの字に曲げ、もう一人は左頬をくぼませて右寄りに口をへの字に曲げている。

 カッペウスが挨拶した。

「ベサ、ペウ、こんにちは。お客人方、この双子はベサとペウ。世界屈指の雷魔法の使い手で、自然の雷を詳しく研究している賢者だ。二人とも、こちらの方々はもう知っているね」

 右の頬をくぼませていたベサと、左の頬をくぼませていたペウが、うなずいた。

「まあな。特に鍛冶職人の技はすごかった。とても興味がある――が、我々ものんびりはしていられないぞ、カッペウス」

 ベサとペウは交互に言った。

「我々の班の、感謝祭での演劇も、練習の仕上げに入らないといけない」

 カッペウスは、うーんとうなった。ナーリが尋ねた。

「感謝祭での演劇って、何ですか?」

 カッペウスが苦笑した。

「我々は、出身国の神話やおとぎ話を、毎年作物の収穫を神に感謝する感謝祭で、劇で演じるというルールがあるんだよ。三グループに分かれてお互いの劇を観あうんだ。賢者の集落の、唯一の娯楽かな。集落の全員の交流になるように、毎年グループがくじで変わるんだ。その感謝祭が近くてね」

 練習の場に様々な賢者が集まると考えて、ナーリがすかさず言った。

「どうぞ、お稽古をなさってください。私たちも見学していいですか?」

 ベサとペウがうなずいた。

「集落を調べられても困るし、そうしてくれ」

 短い丈の草むらで、賢者が十人ばかり集まっていた。

 長い黒髪を胸までたらした中年の男が、流れる水のようになめらかな美声で、朗読している。どうやら、劇における場面の、説明係のようだ。白いローブの男たちが、白いローブに鎧や竜の翼をつけて、木の剣で何やら戦っている。

「何の神話だ?」

 ヴァンにカッペウスは答えた。

「竜の宝を人間が奪う獲得神話だよ。世界中どこにでもある話さ。竜は人間と敵対したから、人間が竜を見つけては、囲んで倒していった。その言い伝えだね」

「……」

 ヴァンは、竜族が変われなかったことを知った。セイラは、そっとヴァンを見つめた。そのとき、セイラのタロットカード・奇術師が朱色の光を放った。

 朱色の光に照らされたとたん、場面が劇的に変わった。白いローブは銀の鎧兜になり、木の剣は白刃になった。竜も巨大になり鱗のびっしり生えた、詳しい形の装置になった。稲妻の走る草原で、竜と人が戦っている。

 カッペウスが目をこすった。

「あれ? 神話そのものの舞台だ。私は夢を見ているのかな?」

 こうやって竜族は倒されていったのか、とヴァンが場景を隅々まで見ている横で、セイラはタロットカード・奇術師を見た。

「このカードは演劇を意味するカードです。舞台のセットを本物と同じに見せるのでしょう」

 ベサとペウたちが、自分の衣装に喜んでいる中、カッペウスがすかさず聞いた。

「そのカードは何だね?」

 ヴァンがさっと回りこんだ。

「幻覚の魔法を使える武器だ。これもオレが作った」

「そうか。君はなんでも作れるな。各国から引く手あまただろうな」

 カッペウスは瞳の色を隠してヴァンを見つめた。セイラは輝く瞳でヴァンを見つめた。

 ベサとペウが、ぜひそのカードをもう一枚作って、この集落にくれないかと言ってきたが、ヴァンは、今は材料がないから難しい、とやんわり断った。


 朝食と昼食は各自とったりとらなかったりと自由だが、夕食だけは集落の者全員でとる。ここで獲物や収穫物を分け合ったり、学説の議論をしたりする。ただし、寝食を忘れて研究に没頭する賢者もいるため、全員が揃わない日もある。

 広い平屋の建物内に、丸テーブルがいくつも置かれていて、そこにいくつか付属しているイスに、一人ずつ座っていく。今夜の夕食には、三十二名の賢者が集まった。賢者が一人ずつ立ち上がって、自己紹介を始める。皆、名前と出身国、専門の学問くらいで終わり、なぜここに来たかは言わない。

 彼らが国名を言うたびに、セイラがヴァンに小声で簡単な国の説明をしてくれた。ヴァンたちも自己紹介を終えると、まず、六十代で少し細身の考古学者、タルキタが語り始めた。

「ナーリは一樹千鈴いっきせんりんの地を探しているというが、探してどうしたいのだね」

 穏やかに、しかし硬い芯があった。ナーリは、地理学者として名をあげたいからなどと答える人は、教えてもらえないのだろうなと思いながら、慎重に答えた。

「私は、一樹千鈴の地を拡げて、最終的に世界そのものを一樹千鈴の地にしたいです。種を持ち出して世界各地に埋めたり、気候を調べて、同じ気候にコントロールできる建物を建てたりしたいです」

「世界が一樹千鈴の地になる資格がなくてもかね? 我々はそこまで善人になれているかね? 世界を搾取している罪を償っているかね?」

 タルキタから、穏やかに、硬い芯のある質問が返ってきた。今度は宗教レベルの話だ。ここで人間は何をしても救われるべきと答える人は、教えてもらえまい。ナーリは慎重に答えた。

「一樹千鈴の種が芽吹かなければ、私は人間の分をわきまえて、神の御意志に従います。そして、人々に理想郷に入る資格を得よう、と説き続けます。世界に存在しているのだから、ここにも作ろう、と」

 考古学者タルキタは、ゆっくりとうなずいた。

「心のない者に、知識が与えられることはない。知識を得たあと、君がどうするのか教えてもらったから、私も伝えよう。一樹千鈴の地は、古代の各王朝の文献を組み合わせてみると、おぼろげながらわかる。かつて人間が繁栄していた幻の地、栄光の都レウッシラが存在したところだ」

「栄光の都レウッシラ! 人類最初の都だとされる、あの伝説の!」

 ナーリが興奮している。ヴァンは、早まる心臓の鼓動を抑えるのに苦労した。タルキタは続けた。

「各国は古代王朝の遺跡を秘密にして、古代の神々を隠してしまう。現在の神と違う神で、民衆を迷わせるからだ。私はたまたま各国の考古学発掘調査を手伝いに行ったことがあって、文書を盗み見てきた。それで、どの遺跡も同じような場所を理想郷と呼んでいることに気がついたのだ。それが栄光の都レウッシラだ。世界のどこかまではまだ誰もわからないが」

 ヴァンは、いや阿修羅は座標を知っている。赤ノ宮九字紫苑たちのいた頃の時代に旅したときは、特に何も残っていなかったが――。

 ナーリは頭を下げた。

「ありがとうございます。栄光の都レウッシラの伝説を、もっとよく調べてみます!」

「各国の図書館の職員と親しくなりなさい。禁書も見せてもらえるだろう」

 タルキタはナーリに、レウッシラに詳しい学者の名前を教えている。ナーリは熱心にメモをとっている。一人の賢者が笑いだした。

「ハッハッハッ、わかるだろ。あいつは学問に『心』を持ち込んだから、学会で鼻つまみ者になって追放されたのさ。名をあげて歴史に名を残したいっていうギラギラした連中が、いちいち人の心まで成長させるかよ。ま、確かに心がなくちゃ奇跡は起きないがな……お勉強だけできる学会のギラギラ野郎には馬の耳に念仏だわな。『人間だけに通じる』世紀の大発見のためだけに生きてる連中は、タルキタみたいなやつを絶対上層部に上がらせない。なぜって? 人の心を何も考えてない自分が、タルキタと比べられて他人の目から惨めに映るのに耐えられないからさ」

 タルキタを笑っているようで、どこか自嘲の色を帯びた声だった。眼球が人より少し出ていて、細長い尖り鼻、受け口に、尖った顎の、黒髪のもさもさした男だった。自己紹介でジャダと言っていた。専門は宗教学だ。

「ここにいるのは人から理解されなかった天才たちだ。かく言うオレもその一人だけどな。オレはある宗教の矛盾を暴こうとして宗教界から追われた。人々の救済を偽っているから、偽の宗教を暴き、倒し、人々を救おうとしたのに、人々はオレを信じてくれなかった。所詮しょせん人間は数の力でなんでも決まるんだ。一人が言ってることと大勢が言ってることを比べたら、大勢が言ってることを選んでしまう生物いきものなんだ。オレにはもう虚しさしかない。世界は偽宗教に覆われて、滅びればいい。ラウクゼーク教がそれをやってくれるだろう」

 ヴァンが尋ねた。

「ラウクゼークは、偽りの教祖ですか」

「あいつと近辺の者たちは黒魔だ」

 ジャダは断定的に言い放った。

「ラウクゼークは降って湧いたように突然、武装集団を率いて現れた。これまでに三国が占領され、住民は強制的にラウクゼーク教を信じさせられている。ラウクゼーク教の神はラウクゼークに降臨しているらしいから、全員ラウクゼークを信じなければならない。冠婚葬祭は無料、そして信者は全員平等。いいことしか言わない宣伝で各国に信者が現れ始めているが、真実を知れば目が醒める。

 被占領民は様々な支配のされ方をする。朝起きてから夜寝るまですべて全員が同じことをする管理社会、何か一つ失敗するたびにラウクゼーク様の名においてこの悪しき心を鍛えよと言わされる反省社会、ラウクゼークについてはたたえる感想しか許さない思考操作社会、独自の貨幣で経済をまわそうと試みる実験社会。ラウクゼークの一強で、あとは全員平等ってわけだ。ラウクゼークだけが上等で、あとは下等に平等なのさ。なぜって、一人ひとりの力を信じてないだろ。

 だが、どうもラウクゼークは、権力の栄華を極めたいわけじゃなさそうなんだ。それがあれば人間だと思っていたのだが、ラウクゼークは占領した町村で何種類もの社会実験をして、最も早く社会を崩壊させる方法を、見つけようとしているようなんだ。

 オレは信者のふりをしてラウクゼーク軍に参加したことがあるのだが、ラウクゼークのいるテントに直撃しそうになった魔法を、周囲にいた奴が身を投げ出して受けたら、そいつ、空間を黒く汚して消えやがった。黒魔だ。その汚れは、すぐにテントの中に吸い取られるように入って、消えていった。ラウクゼークは黒魔だから、汚れを吸えるんだよ。少なくとも、黒魔と共にいる。

 そんな奴に神が降臨? 人間を救う宗教を標榜ひょうぼうしているなんて、笑うよりむしろ恐ろしいね。こんなに人間の社会に浸透してしまったのかとね。しかしラウクゼーク軍が強いわけだ。黒魔が主力なのだからな。

 オレはラウクゼーク軍の戦いで死んだふりをして行軍から外れ、逃げて、各国でラウクゼーク教の真実を人々に教えた。もうこれ以上信者を増やしてはいけないと思った。だが、理解されなかった。いい情報に心を安んずる人々は、それを乱す説に関心を持たなかった。あれだけ戦いに勝利し、信者数を増やす宗教の神が、黒魔なわけがない。もし黒魔なら、神がいなくて負けるはずだし、人々も従わないはずだと」

 宗教界すら、ラウクゼーク教を数ある宗教の一つとして擁護した。戦争に勝っているという結果を、無視しないわけにはいかないのだ。黒魔だから勝ったのだとしても、それを認めれば三国にいらした様々な神々、そして自分たちの神々も、黒魔に負けたことになる。宗教界は一般人へのメンツで、ラウクゼーク教が黒魔であることを認められないのだ。情報が制限されると、入信する犠牲者、侵略の犠牲者の拡大は止まらない。数の力に惹かれて、ますます信者数が膨らんでいく。

「黒魔を信じるようじゃ、世界は終わりだ。オレはもう世界を守ることに疲れた。ここで隠れて暮らしていく」

 ジャダは、大きなため息を一つついた。当時のことを思い出して、本当に心身共に疲れきった息だった。ヴァンが太鼓を叩くような張りのある声を出した。

「宗教界こそ神を信じていない」

「えっ!?」

 ジャダは、突き出た眼球に力を込めて、髪を揺らした。ヴァンは張りのある声を続けた。

「何度も戦争に負けたくらいで己の神が負けたと思うのは、人間の思い上がりである。すべての神は、等しい力を持っている。神の力を引き出せるかどうかは、信じる人間の心の力次第である。お前たちは自分が神の力を自在に引き出せて、神が絶対の加護を与えてくれると思えるほど潔白なのか。そんな人間はいない。

 そして、勝つことが神のすべてではない。

 負けることで他を救うこともある。

 人間には神の考えをすべて理解することはできない。だから、人間の望みで神の御業みわざを判断してはならない。勝ち続ける民も国もあり得ない。

 話を聞く限り、宗教界ではずいぶんこの真実がすたれているようだ。それを隠さなければ、信者が離れていくからか。黒魔がここまで勢力を持っているのは問題だが、神の力を自分の利益でしか解釈できない宗教界も問題だ。利他を説く言葉がない。

 世界の悪はすべて現れなければならない、なぜそれだけでも言ってやれないのか。そしてそれと戦えと言うのが神の望みでもあると、なぜ励まさないのか」

 ジャダは、ヴァンの声に鼓舞されるように、背筋が伸びていった。

「そうだよな、神のお考えを宗教界が全部知ってるわけないよな! 負ければ自分たちの責任を追及されるから、勝つ神を重んじようとするんだ! 黒魔と戦うには、神のお力が必要なのに、宗教界がこれじゃあ……。うーむ、早く残った国々で団結しないと、世界は本当に黒魔のものに……」

 ジャダは火を取り戻したように、受け口の口を結んで真剣に考えだした。ヴァンがラウクゼーク教のことを教えてくれてありがとうと伝えたとき、建物の入口が開いた。

 もみあげ以外の頭がはげあがり、鼻から顎までもじゃもじゃに白髪交りのひげが生えている、六十代の男が立っていた。鼻と耳が尖っている。下がり眉だ。

 賢者たちは一目で、それが誰だかわかった。カッペウスが、心を落ち着けて近づいた。

「失礼ですが、もしやあなたはナスーム国の大賢者、コーネ=コップス様ではございませんか? あの、一度の回復魔法で千人の兵士を治療できる、一騎当千の!」

 コーネは素早くうなずいた。賢者たちがどよめいた。大陸中探しても、この大賢者の右に出る回復魔法の使い手はいない。どの国も金と地位を約束し、ナスーム国から引き抜こうと図ったほどであった。誘拐もされかけたので、国家が厳重に守っている、国王に次ぐ要人である。

 ナスーム国はラウクゼーク教に占領された。コーネはラウクゼーク教に捕まらず、ここまで逃げて来たということなのか。コーネが素早く話した。

「私は皆さんに、今すぐ荷物をまとめて逃げるようにと、伝えに来たのです。ラウクゼークは私を捕まえそこなって、ナスーム国中を捜索するつもりです。このマクマキ山も既に包囲されています。間者によると、悪いことに、周辺国も、ナスーム国なき今、私を連れ去る好機とみて、軍を進めているようです。ナスーム国は戦場になります、逃げてください。

 ナスーム国のみならず各国は、この山に賢者の集落があるのを、公然の秘密で存じておりました。しかし、ナスーム国が賢者の集落にいかなる国も手出し無用という立場を貫いたので、各国は手出しできずにいたのです。しかし、ナスーム国なき今、各国はあなた方を奪い取ろうとしています。各国が、自国から逃げた賢者を見つけ次第、殺そうとしていることも私は聞いております。他の国に逃げた賢者を、その地で役に立たせるわけにはいかないからです」

 賢者たちは、真っ青になったきり言葉を失った。ラウクゼーク教に活路を見出すしかないのか。コーネは続けた。

「ただし、各国は、自国から逃げた賢者以外は、欲しいと思っているようです。頭のいい人間をこれだけ大量に、一度に獲得できる機会は滅多にありませんから。つまり、各国は全員欲しいのです。自国の賢者だけ死刑にして」

 カッペウスが叫んだ。

「勝手なことばかり!!」

 そして、よよと机に突っ伏した。賢者たちは混乱しながら、いくつか案を出しあった。

「一に、逃げるか、二に、降伏するか、三に、その中でもどこに降伏するか、四に、やはり全員助かるラウクゼーク軍か」

「一の逃げる場合、ラウクゼーク軍の包囲網を突破しなければならないだろう! 奴らにナスーム国の人間がいるだろうから、こちらのルートは読まれるのではないのか?」

「ジャダの話が聞こえていなかった者に伝えるが、ラウクゼークは黒魔だそうだ。そんな組織に入ったら我々は全員殺されかねない。ラウクゼーク軍に捕まるのだけは絶対になしだ」

「じゃ、どうする。我々は別れ別れになって、自国以外の他国の軍に保護を頼むのか」

 皆が「別れる」と聞いて、黙った。これまで仲良くやってきた親友と、離れ離れになる寂しさに、胸が迫った。

「……しばらくしたら、また国を脱出して、どこかでまた一緒に暮らそうか。国に居づらくなっている者も、出てくるだろうし、そしたら、また――」

「それはだめだ」

 突然、乾いた空気が賢者たちを包んだ。ヴァンが立って、全員を見ていた。

「あなた方は、賢者として、一般人にできない研究をしている。しかし、その研究結果はどうするつもりなのか」

 賢者たちは答えに詰まり、顔を見合わせた。

「論文に残して、賢者の誰かが伝えていければ……」

「そうだ、伝える相手がいなければ無意味だと、あなた方も気づいているではないか」

 ヴァンの言葉で、賢者たちは誰とも目を合わせられない。

「結局、あなた方は研究して何がしたいのか? 認めてくれる人と、役に立ててくれる人がいなければ、研究論文などただの日記だ。あなた方は、神から与えられた知能を、まったく無駄にしている。自分の力は、使い尽くしなさい。何のためにこの力があるのか、どうして他の人ではなく自分にあるのか、自分はその責任を果たせるか、期待に応えられるか考えて、よく自分を見なさい。そのことができない他人ではなく、できる自分の使命をよく見なさい。戦争に勝ち続ける民がないように、人生で成功し続ける者もまたいない。天才でさえ、一人の人間なのだから、不幸もある。国王に疎まれる時期があっても、負けてはいけない。国王や時代が変われば脚光を浴びることもあろう。そのとき悪事を暴かれて追い落とされないように、不遇のときでも自分を律して、正しくあれ。良いときも悪いときも自分というものを持つ人は、どこへ行っても戦える人になれる。必ず正しい心に比例して、報われる。

 天才だからといって、一生国王に好かれてお金持ちになって平和に暮らせる、などと幻想を抱くな。人間である以上、人並ひとなみに不幸は必ず起きるのだから、逃げるな。才能が理解されないと言って逃げるのは、賢者のおごりだ。

 頭がいいことと、人物が立派であることは、別だ。人に理解され、信頼されるというのは、この両方が揃うことでかなう。自分の考えを人々に役立ててほしいなら、人々を知ることもしなさい。正直すぎて世渡りが下手なのはわかる。だが、逃げるのは負けることだ。勝ち組の中にいられない自分が恥ずかしいというのは、自分の価値を誇大にしている。

 学者の資格を剝奪されても、惨めでも汚くてもいいから、自分を頼りに生きろ。あなた方は人から尊敬されるためではなく、人々を守るためにその知能を授かったのだから。不遇から逃げるな」

 賢者たちは、しいんとした。呼吸音さえ静まった。しばらくして、誰ともなく、全員が抱きあった。

 全員で輪になって、お互いのために神に祈りを捧げた。

 そして、全員荷物をまとめに自宅へ戻った。ここに来なかった賢者にも、知らせが行った。

 ヴァンは建物を出て、空へ上がり、山を見回した。ラウクゼーク軍の旗が、山をずらりと囲んでいる。その遠くの三方に、それぞれ国旗の違う三国の軍が野営している。周辺国だろう。夜に攻撃しては賢者を何人か捕まえそこなうと考えたようで、今はどの軍も動いていない。

 それを確認すると、ヴァンは賢者の家々をまわった。全員、持って行くべき論文が大量にありすぎて、袋に詰めても底が抜けそうになって、焦っていた。論文は自分の人生である。食糧と水を捨ててでも持って行きたい、命そのものである。

 弱っている賢者たちのために、ヴァンは家中の物と論文を風魔法で宙に浮かせると、鍛冶を行って、「家財の鎧」という名の、鎧にしてしまった。論文ばかりでできた、紙に近い鎧で、軽い。脱げば元の論文に戻るから、身を落ち着けるまでその鎧でがんばれとヴァンに言われ、賢者たちは、全財産を鎧に変換して身軽に運べるようにしてくれたヴァンに、涙を流して感謝した。

 ヴァンはいやしの紫杖しじょうを、コーネ=コップスに渡した。

「全員の鎧がもし破けたり壊れたりしたら、ここからこの杖で回復させてあげてください。全員が各国に保護されたら、あなたは私が責任を持って、どこへでもお送りします」

 コーネは癒しの紫杖に目をみはりながら、回復の大賢者として力強くうなずいた。

 ベサとペウがセイラに提案した。

「あのカードで、神話の劇を軍勢に見せたらどうかな。竜族と人々の戦いを見せれば、この山に竜族の軍勢が現れて、隠れるか、戦うか、逃げるかで、相手は混乱すると思う」

「その隙に、全員で山を駆け下りる」

「それは名案ですね!」

 セイラは了解した。

 カッペウスはみかんを四つもいでいた。ヴァン、セイラ、ザヒルス、ナーリに一つずつくれた。

「何から何まで、ありがとう。生きていればまたどこかで会えるといいね」

 四人は、大切に食べますとお礼を言った。

 ナーリは、ヴァンたちに振り向いた。

「私は、タルキタ様と逃げるわ。まだいろいろ詳しく教えていただきたいし。ここでお別れね」

「一樹千鈴の地が、見つけ出せるといいですね」

 セイラの言葉にヴァンは複雑な思いがしたが、黙って二人を眺めていた。

 ジャダが先頭に立った。

「オレはラウクゼーク軍にいたことがあるから、各隊の配置も、太鼓の合図で変わる陣形も知っている! 山を出るまではオレに続け! 行くぞみんな! 絶対生きよう!!」

 そして、全員はヴァンに一礼して、駆け下りていった。

「タロットカード・奇術師!」

 セイラの奇術師のタロットカードから、朱色の光が放たれる。一瞬で、マクマキ山に二百体の竜が現れた。この演劇で人間の兵士役をしているのは、山の下にいるラウクゼーク教と三国の軍である。竜の咆哮で、全軍が波のように乱れて、のちにてんでんばらばらになっていく。混乱しているのだ。

 竜の影に隠れながら、ヴァンの風の力で空を飛んでいたコーネは、その様子に驚きながらも、慣れない夜道で鎧を破いたり傷つけたりする賢者たちのために、一定の間隔で癒しの紫杖を使って、武具の回復を行った。

 ジャダたちはラウクゼーク軍の囲みから脱出することができた。そして、その全速力のまま、自分の目指す国へと、分かれていった。

 ヴァンはコーネに聞いた。

「お疲れ様でした。では、あなたをお送りしましょう。どこがよいですか」

「ラウクゼークを倒す意志のある国が、よいと思っています。祖国のかたきを討たなければ」

「ナスーム国王は亡くなられたのですか」

「……そうです……。回復魔法の甲斐かいなく」

「ナスーム国を再興したいのですか」

「少なくとも、国民を救いたいです」

「では我々と共に来なさい」

「えっ」

 急に威厳のある声を聞いて、コーネは耳を動かした。ヴァンはコーネを真正面から見た。

「私はラウクゼーク教を倒すつもりだ。お前の力が必要だ。一騎当千コーネ=コップス、私に力を貸しなさい」

 コーネはこんな圧倒的な波動を放つ人物と、今までに出会ったことがなかった。コーネは一歩よろめいて下がって、礼をした。

「お世話になります」

 ヴァンは、人のいなくなった隠れ集落が無音になったのを確認してから、セイラにカードをしまわせ、ザヒルスとコーネと四人で、ラウクゼーク教の最初の占領国へと飛んだ。ラウクゼーク教にもしいるとしたら、「神」の存在と正体を見極めるためである。


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