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星方陣撃剣録  作者: 白雪
第一部 紅い玲瓏 第二章 式神を撃つ目
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式神を撃つ目第四章「交流の条件」

登場人物

あかみやおんそうけんであり陰陽師おんみょうじでもある。

出雲いずもしんけん青龍せいりゅうを持つ炎のしきがみ

しょうらん神器しんきたてごとすいきょう調しらべを持つ、竪琴弾きの子供。




第四章  交流の条件



 斯の人にオレは必要ないのだ、という事実が積み重なり、出雲は重い目であるじ――紫苑を見上げた。

 せいしんれ、力もおよばず、愛――さえ、届かず――。

 何ももがりょくって、紫苑に従って人間を斬る「道具」に成る事さえ、受け入れてしまいそうだった。

 斯の人のに映るなら。

 何も亡くなった自分に目的をくれるなら。

 しかし、かでそれにけいしょうらす意識がって、出雲はなにもできずに、ただただずっとこんらん為ていた。

 紫苑は夫れを知ってからずしてか、とくに美味しい味付けの、いのししにくこうしんりょうりょうを作ったり、鮭のとろみ牛乳汁を作ったりした。

 紫苑たちは、次の町まで行くのにあしがけやまの山道を歩いていた。

 粉っぽいきりかっているのが妙に気になる――。


 あしがけやまを、一人の女性が歩いていた。

 ぬぐいを首に巻き、ごとどうばこを背負った、ぎょうしょうにんである。

 年のころ十八、名をという。

 自分のしょうばいを人に知って貰う為、ゆうふくな女性の多い町にぼしを付けておもむき、自分のわざを売り込む日々だ。

 りょばかりかって、だ元を取り返せるだけのお金はかせげていない。

しょとうよ、初期投資。さいしょから売れるとはおもって無いわ。だって私の商売は、新しいんだもの」

 どくあせりと戦いながら、くらやみよるまでの時間を気にず、山道を進んでいった。

「今日もの山で宿じゅくかな。けいたいしょくりょう足りるかしら。もっと先に進みたかったな」

 やましのゆうを眺めて、寝られるしょを探し始めたとき、大きなうなごえが聞こえた。

「(……魔物……!?)」

 思わずこうちょくした。山に入ればいることくらい分かっていた。女の一人旅に出る時、皆から散々(さんざん)言われていたことだった。「おんな一人で立ち向かうのか」と――。

 か弱い女が戦うほうほうは、どくったがたなをゆっくりと、抜いた。切れ無くても、れただけでだいの大人がそくる、危険なものだ。

 そくる場合もるが、女性は、魔物にきにれるよりはしだと思ってる。

 だん無く小刀をかまえ、しゅうに目を走らせて熬ると、再び大きな唸り声が聞こえた。

「た……す……け……て……」

 人間よりはるかにていおんの声が、弱々しくうめいた。

 魔物が何かで弱って熬るのだ。は、急にせいぞんほんのうに全身の動きが支配された。

 魔物が死ぬところを見られるかもしれない。魔物は如何死ぬのか、如何いうじょうきょうに弱いのか、どんなじょうたいになると負けるのか。

 は、そろそろと声のる方へ歩み寄り、がけと懸にはさまれたたにを上からのぞいた。

 象ほど大きい、明るいうすちゃ色のあつい皮膚をた、手足の大きい魔物が、懸の傍で弱いきゅうを為ていた。

 懸からちて登れ無くなったのだろうかと見て熬ると、左手を右手でにぎめて必死にってる。

「あ。つめが刺さってる」

 其の魔物の爪が懸のいわかべに突き刺さって入るのに気づき、思わず声を上げたは、仕舞ったと思うも無く、顔を上げた其の魔物と目が合った。

「「……」」

 たがいにしばらちんもくる。

「殺すのか。おれを」

 ていおんが、の腹にひびいた。だんならきょうふるえと思ったろうが、今は魔物のあいぜんしんさぶった。

「私を殺さ亡いなら、助けて上げてもいいわよ」

 魔物は、理解出来亡かったような顔を為た。斯の女は自分を殺さ亡くても、無視して去るせんたくがあるからだ。

「此の山にあいだ、私を守ってくれ亡い?」

 こまっている者を助けてしまう人間のじょうが理解されないのは仕方がないから、は魔物にかりやすい取り引きをていあんた。本当にえいて貰えたら、有りがたい。

「……分かった」

 ようやく魔物はなっとくし、ほうに自由な手を差し上げた。

 が其のかわりの長椅子のような大きな手に飛び降りると、手はがけしたを降ろした。

 へいこう感覚を崩しけただが、魔物に怒ってもこじれるだけなので、かく岩にさっている爪を観察した。

 片手に三本ある指の爪のうち、外側二本がいわかべに深々(ふかぶか)とさってた。魔物が、ゆっくりと、辿々(たどたど)しくせつめいした。

がけから落ちて、おれの体重で刺さった。人間の力で、抜けるか」

くのはね」

「……」

「でもあんしんして。私、爪のあつかいは上手いから!」

「?」

 ばやばこを下に降ろすと、しの中からおおぶりの断ち切りばさみを取り上げた。

「爪が伸びすぎた客もいると思って、大きいはさみも用意していて良かったぁー!」

 して何のためいも無く其の刃に爪をはさんだ。

「ま、まて! おれの爪をどうする気だ!」

 どんじゅう調ちょう乍らも、せいいっぱいあせって、魔物が自由な方の手でを押さえ付けた。

 押しつぶされ掛けている恐怖と戦い乍ら、は答えた。

「決まってるでしょ! るのよ!」

 魔物はいっぱいぎょうてんして、できるかぎり何回も首を振った。

「だ、だめだ! 爪はおれの武器! 截るな!」

「爪はまた伸びるでしょ! 其れとも、で死ぬつもり? もう片方の手があるじゃい。爪が伸びるまで、敵が来たら逃げてりゃいの!」

「……」

 の言うことはもっともだが、りがかない魔物に、しょうした。

「截った爪も、きれいに整えてげるから。安心して」

「整える?」

 押さえ付けられる力がゆるんだので、は魔物の手の下をくぐり抜けて、爪を二本とも截って仕舞った。

「おっ……おっ……おれの……!!」

 とつぜん自由になった魔物は、尻餅をついた。がけしたの土地がれて、思わずは、笑って仕舞った。

「もう日が暮れてる。か安全な場所はる? 寝ることるから」

 鉄の剪みをしまい、木箱を背負って、は尋ねた。

「……おれのねぐらへ来い。爪を治してもらう」

 魔物は力をめてを左手に摑むと、がけうえへ飛び上がった。して、暗闇の中を迷わず駆け出した。

「え!? いたいっ!! 木の枝!! 葉っぱ!! ブホッ!!」

 に何が当たろうが、おかまい亡しである。岩にぶつけられ無かっただけ、せきであった。

「いま帰った」

 くらさんちゅう駆けまわり、魔物はようやく火のあかりのある洞窟にとうちゃくした。

 けっこんして家族がるのかしらとふたたこうしんられたとき、中からむかえたのは、がいな魔物であった。

「遅かったではないかツタノジ。めしめてしまったぞ」

 より背が小さく、よこはばが太く、顔に深い皺がいくほんも刻まれた、老人のような姿の魔物であった。

 耳がえらなのと、目が顔の三分の一を占めるほど巨大なのを見て、魔物だ、と判断できる。

「すまんサカナイ。爪がはさまっていた」

 ろして、ツタノジは説明為た。

「ニンゲン! ニンゲン!」

 其のとき、洞窟のおくからちょうちんくらいの大きさのに似た魔物が、粉っぽいりんぷんき散らしながら、ひらひらと出て来た。緑色のはねに白いぶちようがある。

「トブチ、待たせてわるいな。飯にしよう」

「このニンゲン、クうの?」

 トブチと呼ばれた魔物が、かんだかい声でじゃまわりを飛び回るので、は恐怖をおぼえたが、ツタノジがかばうようにに手をかざした。

「こいつはだめだ。おれの爪を治してもらうから」

「ナオしたらクうの?」

 や汗をどっといたとき、ツタノジが首を振った。

「だめだ。こいつはおれの命の恩人だ。この山にいる間は、おれの客だ」

「ふーん」

 別にらくたんもせず、トブチは甲高く無邪気にへんをした。

「娘。ツタノジの恩人のところ悪いが、飯は三体分しかない。今夜は我慢してくれい」

「ご心配なく。食料はあります」

 ここでたびこうしんが起こった。魔物はだんんな食事を為ているのだろう?

 すずしいあきかぜみるいわから、あたたかい洞窟の中にあんないされて、たきを凝視した。

 焚火をかこむ三点に大きな緑色の葉が敷いてあって、その上に木の実や野菜、果物が載っている。そして、焚火の脇に木の枝に縛られた鹿が丸焼きにされて置いてあった。サカナイの言葉通り、だいぶ前に焼き終わっているようだ。

「(ツタノジは体が大きいから、たくさん食べるのね。もし獲物がれない日があったら、代わりに私を食べるかもしれない。長居してはいけないわ……!)」

 は硬くけっしん為ると、三体から少し離れて、携帯食料をかじった。

「さあ、爪を治してくれ」

 鹿を骨ごと丸齧りしたあと、ツタノジがの前に左手をひらたく置いた。外側の二本の爪が、れいに四角くならんでいる。

「ほう、これはまた見事に截られたものだ」

 鹿の血を木のみから飲むサカナイと、鹿の角のかけをしゃぶるトブチがそれをのぞき込む。

「治すのは無理よ。でも、く整えて上げるから」

「整えるって、なんだ?」

 木箱から例のおおばさみを取り出すに、ツタノジはきょはんのうしめすように、体を動かした。

「爪を小さい武器に為るってことよ!」

 う言うとは、りょううでの力を使ってツタノジの四角い爪を三角形に切り、つめやすりけ、角度を整えると、爪の表面其のものも鑢で仕上げてかがやかせてしまった。

 今までこけや傷、汚れだらけだった分厚い爪が、れいみずきした板張りの床の様にこうたくはなっている。

「なんと!? これがツタノジの爪か!?」

「キレイ! キレイ!」

 サカナイとトブチがしんそこおどろいているのに気をくして、油混ゆーこんいていろさらいくつか創り、ツタノジの爪にサカナイとトブチの絵を描いた。

「なんだこれは??」

 サカナイが首をかしげると、とくそうに胸を張った。

爪絵ねいるあーとよ。私のしょくぎょうつめなの、私! 爪のことなら、何でもまかせて!」

「爪絵? 爪屋?」

「うん、しんかいたくちゅうぶんだけど、私は絵を描くのが好きだし、女性は爪までれいに成りいと思ってるって、信じてるから。これからみんなに広めるところなんだ!」

「ニてる! トブチ、サカナイ、ツタノジとみんなイッショ!」

 トブチが粉っぽいりんぷんを撒き散らし乍ら、喜びに舞ってる。

 其れを見乍ら、然ういえば本人にかくにんもせず描いて仕舞ったということを思い出し、いそいでツタノジをうわづかいに見た。

 ツタノジは、長い間自分の爪を見詰めていた。

「……すごい」

 ていおんの声があんていしていた。

「すごく、――」

 あとの言葉が続か亡かった。

「すまん。なんて言ったらいいか、わからない」

「気に入ってもらえたら、私は其れが一番嬉しいわ」

 ほがらかに笑った。

 よくじつ、ツタノジはにぎり、山の外へ出ようとひたはしった。

「人間の足で三日かかる。おれは一日。ねぐらが山の真ん中にあるから」

「助かるわ!」

 こんは、木の枝の中にげきとつしないように、ツタノジは上手くからそれけてくれる。握るげんも、心なしかタマゴを摑む様に包まれて入る気が為た。

 一時間程走った頃だろうか。

 ツタノジは、急にげんそくし、立ち止まった。然して、一歩も動かない。

「……如何したの、ツタノジ」

「しっ」

 ツタノジはをきつく握り締め、うごきが取れない様に為た。がツタノジのせんを追うと、あおむらさき色の、せいじんの人間並みの高さでかまくびをもたげている蛇が要た。地面ではとぐろを巻いて要るから、ぜんちょうはそのばい以上だろう。

「強いどくへびだ。いちげきで象も死ぬ」

「あなたは?」

「……動かなければ大丈夫。げきするな」

「はい」

 も、旅に出るにあたってどくそうや毒を持つどうぶつの本を読みあさったので、斯の蛇が如何にけんかはこころた。

 名前はあおうろこは亡く、れいなめらかなを為ていて、ほっそりとした体でしなやかにうごく、ともすれば見る者にうつくしいとさえ思わせる、どくじゃおうだ。

 青紫は美しい立ち姿すがたで全く動かず、青いこちちょくして要た。

 ツタノジといきを殺し、がんりきり負けまいとひっだった。

 息を詰めたいっぷんほうもなく長かった。ようやく青紫が動き出してかいほうされると思ったのに、事も有ろうに、どくへびは真っ直ぐ此方へ向かって来た。

 なにか、さぐる様な目付きである。

「(ツタノジ! 私たち、何か蛇の気にさわることした!?)」

「(いや、攻撃しなければ去るはずだ。青紫は毒を持ってるやつしか食わないし)」

 其れを聞いて、は全身がこうちょくした。

 自分は毒を持っている。がたなに、だ。し青紫が、毒をまんべんったの小刀にはんのうして煎るのだとしたら、青紫はかくじつに此方へ来る。然して、嚙み付いてくる。

「ツタノジろして! あぶない!」

おおごえ出すな!!」

 そのくうしんどうげきされてか、青紫がでんこうせっで飛び掛かって来た。

「キャアッ!!」

 何かをまわし、何かをはたく音が聞こえた。

 目を閉じて居たが目を開けると、どくじゃきずってって行くよううつった。

 しかしそのちょくぜんらっした。

いたっ!」

 ばこからち、からだへのいたみをやわらげたのもつかきょたいすべるように倒れ込む音が為た。

「ツタノジ!!」

 見ると、ツタノジがみぎくびを押さえて、うめき苦しんで熬た。

 右手のこうに、血をながみ傷が四つ付いている。

 青紫に咬まれたのだ。

「私を庇って……! めんなさい、私……!」

「お前は、命の、おんじん、だから、気に、為るな。其れより、トブチを……。あいなら、なおせる」

 あおめたかおを為乍ら、ツタノジはのどの震えるしんきゅうり返した。

 いっこくゆうも無い。

 ばこから昨日きのう油混ゆーこんの絵の具の残りを取り出すと、木のみきふでで線を引き乍ら、トブチの居るどうくつまで走り出した。道にまよわずツタノジの所へぜんそくりょくもどれるように、あいってはいてトブチがさいそくけ付けられるように――。

 サカナイとトブチはどうくつそばはなみつあつめていた。

 の知らせに、トブチがしていった。り魔族のはやさに、にんげんはついてけ無かった。

 とサカナイがツタノジのもと辿たどいたころ、ツタノジはトブチのりんぷんなかあさねむりにいていた。

「まずはカラダのナカでドクとタタカう。オこさないで」

 トブチがサカナイとした。

。なぜこのようなことに……」

 サカナイにわれ、がたなの事をしょうじきはなした。

「でも、あおが小刀にまではんのうするとは思わ無くて……」

これまでへいだったのなら、きっとツタノジが小刀をにぎかくして、青紫に“このものなかにはどくがある”とかいさせて仕舞ったのだろう。としかえん」

 しょうげきけた。てっきり、てて、はらせに殺すかも知れないと思って熬たのに。其れでもトブチをびにはしったのは、かんぜんぶんの所為だと思ったからだが、魔族のなかんなにれいせいいかりをおさえられるものが居たことが、これまでの「魔族はみなげきじょうこうどうがた」というがいねんくつがえして、にとってはおおきなおどろきだった。

はなせば分かる魔族」も、居るのか――。

 魔族は全てにんげんてきたたき込まれたは、「全て」とか「ぜったい」などという「まんじょういっ」に何時も、「わたしちがうとったら、“絶対”“すべて”じゃ無くなるよね」とかんがえるどもだったが、其の「大人おとなし付け」にはんたいして入たころぶんじつほんとうただしかったのだ、とじっしょうて、ひとちがことを為たがって入たこれまでぶんが、きゅうものになってもいいとおもえて来た。

。ツタノジは我々(われわれ)でかいほうするから、おまえはこのやまなさい。ツタノジのにおいがからだのこっているし、あおふたたねらうやも知れん」

「……のこります」

「ん?」

わたし、ツタノジのかんびょうを為ます!」

 ぶんにもはっきりとこえるように、おおごえせんげんした。

しかし、おまえたびが……」

みずんで来ます! りますよね!」

 もつばこなかから一人ひとりようなべすと、ちゅうにあったがわはしっていった。

「……」

 サカナイとトブチは、わけが分からずかおわせた。


「ツタノジ! ましたのね!」

 は、ツタノジのあせぬぐいでいていため、あんしてりょうかたげた。

「…………」

 居るとは思っていなかったので、ツタノジがこんらんして居ると、サカナイがくちはさんだ。

はな、ずっと付きっりでかんびょうして呉れたのだぞ。おまえおもすぎてはこべ無いから、かぜけのえだめんてたり、めたときあるけるように、ふとえだつえさがしてたり……」

 なぜ、とも亡く、たきかしたなべなかを、わんれてした。

たくさんんでね!」

 なんうらもない其のがおに、ツタノジはますますこんらんした。斯のにんげんまいかいぶんいてせんたくが在ったのに、其れをえらばないのだろう。斯のにんげんは、ぶんが斯のにんげんにしてやったじょうの物を、ぶんに呉れているというのに。

 おなじだけの物をぶんかえせないのに、してこのにんげんは、ぶんそばに居るのだろう――。

 其のこたえをりたくて、らずにツタノジはゆっくりとこしていた。して、した。

「しばらく、居るから」

 それだけって、はツタノジにつえわたした。


 其れからあとは、ツタノジにとってせつめい出来ないことばかりだった。

 は、まいにちツタノジのつめととのえて呉れた。しょくようさいも、にんぶんって来た。ひまができると、油混ゆーこんどうくつないえがいた。いりぐちにはあおそといて、ほんものあおやそのてきおどろいてはいってられ無くなる様にという、けのを込めている。

 トブチののぞみでものえがかれ、次々(つぎつぎ)にかべが亡くなっていくと、サカナイがきを無くしはじめた。

「どうしたサカナイ」

「うむ……その……な」

 しばらろう魔物はあしゆびだけをげしていたが、

「お、おぬしたち、きょうはないかな!?」

 と、けっしてこえげた。

?」

 ツタノジとトブチがくびかしげて、一人ひとりかいした。

しかしてサカナイ、かべいてほしいのね?」

?」

 もういちツタノジとトブチがり返した。

「う……うむ……」

 りそうなこえのサカナイに、あたらしいふでわたした。

きないろいてよ。サカナイがんなきなのか、きょうあるな!」

 ほんしんからほほんでいることあんしんし、サカナイもひょうじょうやわらげた。

じつはわしはむかしにんげんとしたほんんでから、かいきに成って仕舞ってな! ひそかにさくんで、たのしんで居たのじゃよ!」

 ふでったサカナイはじょうげんじょうぜつで、もうれついきおいをせた。

「むずかしそうなばかりだ。でも、そんなにきならえばよかったのに」

「キくのに」

 ぶんうし姿すがたまもって居るツタノジとトブチに、サカナイはだけかえってこたえた。

「おぬしら、そのときたではないか」

「あれがなのか」

「ジュモンかとオモった」

「……」

 サカナイははんろんすることをやめて、くことにしゅうちゅうした。

 一人ひとりだけが、わらいをみ殺していた。


 さんたい一人ひとりの、なごやかな、たのしい、ゆめの様なかんはあっというぎて居った。

 ツタノジのつめは、全てに爪絵ねいるあーとえがかれていた。サカナイとトブチのがいは、みなほのおかぜなどで、其のちからめる様にという「おまも」だ。

 ツタノジも、いまさらけなかった。たびちゅうだんしてぶんたちとらして居るのか。なにもくてきが有るのか。其れとも――。

 其れをいたときって仕舞いそうで、ツタノジはこわかった。もうは、ツタノジたちさんたいがおかんやして呉れる、無くては無らないそんざいだった。

「ずっとみんなで、これがつづくといいな……」

 ツタノジが一人ひとりしあわせと其れのこわれる恐怖とたたかってると、どうくつもどってた。

「ねえ、わたし、さっきにんげんかけたわ」

にんげん?」

 はんぶんけいかいしんってツタノジがかおげたので、された。

にんげんとはなんたたかった。おれたちをころそうとしたからだ」

 へいたちだろうか、ときんちょうした。だとしたら、此迄ツタノジがやさしくして呉れたのは、にんげんぜんが魔族にてきたいしんっているわけでは無いと、しきしてもしていなくても、わかって呉れてるからということになる。

 ほんとうに、魔族はにんげんと分かり合えるのうせいが有るのだ――と思い乍ら、いそいでせつめいした。

だいじょうよ、にんげんさんにんで、一人ひとりおとこ一人ひとりおんな一人ひとりども。きっとぞくなのね。へいじゃ亡いわ」

ぞく?」

 ツタノジのちょくびて、おもわずかおせた。だかは、ぶんでもわからなかった。

かくかおく。やつらのもだ」

 ひだりせて、みちあんないたのむと、ツタノジはみずみからもどってたサカナイとトブチとって、さんにんことにした。がいそうにおもえても、だれてきに成るかわからないからだ。

 しばらあるいて、さんたい一人ひとりは、さんにんにんげんとおながめられるしょいた。

 あいいろかみしょうねん一人ひとりあかかみしょうじょ一人ひとりたてごとったななさいくらいのども一人ひとり

おんなとうりゅうに、あかかみ……もしや!?」

 サカナイがこえげるのと、あいいろかみしょうねんが、みきいちがれているのをつけたのとは、どうだった。

「あの……トブチをびにったとき、わたし油混ゆーこんせんをつけた……!」

 あおめるを、ツタノジがかせた。

だいじょうだ。かわいで、せんはもうのこっていない」

 しかし、あいいろかみしょうねんかわがれたを順々(じゅんじゅん)に辿たどって、さんたい一人ひとりどうくつほうかっている。

「な……なんで!?」

かわどうぶつがいるとおもわせてしまったようだ。今日きょうしょくものにしようというのだろう」

 サカナイがちかづいてしょうねんからはなさないまま、はやくちせつめいした。

「イエがミつかったらタイヘン! トブチ、やっつける!」

て! もっとじゅうようなことがある!!」

 そうとするトブチのあしを、サカナイがかんいっぱつで摑まえた。

「あのしたにいるあかかみおんな、あれは、おそらくにんげんの“さいしゅうへい”、あかみやおんだ!」

「あれが?」

さいしゅうへい?」

 ツタノジとこたえず、サカナイは、るうちにきょめてあいいろかみしょうねんちゅうし乍ら、みなけつだんせまった。

「我々(われわれ)はめねばならん。あのしょうねんどうくつつけられあんぜんすみうしなうか、あかみやおんたたかうか」

ゆるばるかけたのだぞ!」

「此のやまじゅく為ている我々(われわれ)に、は有る。トブチもいる。此の山から追い出すくらいなら出来る」

むくろでさえ……!」

「しかし我々(われわれ)の姿すがたれば、こうはかならたたかいをけてくる。なにしろにんげんがわさいしゅうへいだからな。魔族をほろぼすのに、ゆうなどるまい。其れならさきしゅうすべきだ。此方がゆうなうちに」

 せんこくのすぐとなりくにもので在っても、「さいしゅうへい」のにんしきあやまっていた。其れはむくろてっていてきがいへのじょうほうとうせいしたからであり、ぶんがいの魔族が魔族軍をひきいてさいしゅうへいひとぞくぐんたたかえない様に為る為で在った。

 然うとはらないサカナイたちは、せんせいこうげきけつだんろんっていたのだ。

「ねえ、さっきからさいしゅうへいって、なんのこと? あのひとたち、にんげんじゃないの。わたしはなしてきてあげる。しょうねんに、うちないでとか、おんなほうに、やまぐちまであんないしてあげる、とか」

 わけも分からずが、どうくつ辿たどきそうなしょうねんゆびした。

「それはいかん! こんばんめてくれとわれたらどうする! それに、あかみやおんにんげんへいるぞ!」

「えっ!?」

 どうようして、サカナイとあかかみしょうじょと、こうせんおくった。

ゆるばるかが魔族を殺すように、さいしゅうへいかんたんにんげんを殺すのだ! にんげんしゃかいこんらんするから、これまでおなまちにんげんにしか、らされていなかったのだ!」

「殺人鬼だからさいしゅうへい、それを……」

 あんなれいしょうじょが、とれぬことんだ。

「どのみちはない。どうくつ辿たどいたら、魔族おれたちらしていることがばれる。サカナイのいたは……魔族語だ」

「……!!」

 ぜっし、サカナイはこうかいしたくちびるんだ。

「てっきりだと……わた……」

しゅうしよう」

 ことつづきをさえぎって、ツタノジがたいげた。

 は、其れきりなにえ無かった。


 出雲いずもは、あしがけやまぜんたいかるかかっているこなっぽいきりが、どうもきにれ亡かった。

 どこか、せいぶつざんおもえたからだ。

 おんしょうらんとくに成らないというから、かんかくびんかんしきがみだからこそのかんなのだろうか。

 ひとばん宿じゅくして、よくじつしょうごろ、出雲はやまちゅうしんこなくなってることに気づいた。

 ふと、よりのうたかほうげると、かわてきかれているが、点々(てんてん)とひとつのみちつくっていた。

「このやまの魔族のかしらか? どうぶつか? いずれにせよ、かくにん為ていた方がいいな」

 出雲がつぶやくと、紫苑がこえけた。

どくじゃ亡いならいいじゃない。やぶをつついてへびすってうし、やめときなさいよ」

「いや、オレはしてもりたい。二人ふたりってて呉れ。魔族でもどうぶつでも、かんさつするだけに為るから」

 出雲はうして、かわかれたみちを、辿たどってくのであった。

 其のときこなかたまりはしをよぎるのを、出雲のはなかんした。

 かえった出雲がに為たのは、きょたいの魔物がぞうの様にくだって姿すがたと、おおきなの魔物がたいりょうりんぷんらし、あたいったいくすさまだった。

 したから紫苑と霄瀾のこえこえた。

「しまった! ずっとねらってやがったな!」

 しきがみしていなくてもひとなみじょうかんかくたいきゅうりょくつ出雲には、りんぷんこうげきかない。出雲は、ちゅうやまりた。

 きょたいの魔物のうでが霄瀾にせまったとき、霄瀾はみ乍らもたてごとはじいた。

 とたんに紫苑と霄瀾のまぼろしふくすうあらわれ、魔物はまぼろしひとつにからりした。

 霄瀾のたてごと神器しんきすいきょう調しらべのせいきょくひとつ、「げん調しらべ」である。せたいまぼろしふくすうつくすのだ。

 其のときほかまぼろしすいりゅうにかきされた。

「ツタノジ! こうげきつづけろ! いましかないぞ!!」

 りんぷんの在る今しか、紫苑たちが其れのまるひくみちに居るのあるいましか、どもひとじちれない。

 サカナイは、ぶんたちでさいしゅうへいつのはまずだとかんがえた。だから、どもつかまえて、やまぐちぜんそくりょくことに為たのだ。さいしゅうへいも、しょうねんも、ぐにってるだろうから、しょうねんどうくつそんざいづかないし、どもぐちりに為れば、さんにんまたもどってことも無いだろう。

 れが、さんたいれるゆいいつしゅだんだった。

「サカナイ! どれだ! どれがほんものだ!!」

 しかし、そうがいわざでそのもくさんはずれ、ツタノジはあせりでこんらん為ていた。

 そのを、ひとはらいのかたなりつけられるまで。

「ツタノジ!!」

 トブチのりんぷんがツタノジのてのひらにかれた。すると、しゅうかいれていった。

 紫苑と霄瀾もせきおさまった。

「あ! ごめん、リンプンが……!」

「よい。こちらもじょうきょうあくせねばならん」

 サカナイがトブチたちにごうりゅうした。

 あいいろかみしょうねんかたなかまえてるのがえた。

「トブチのりんぷんかないにんげんがいるのはさんだった。これからはさんたいかたまるぞ。トブチはかいふくにまわれ。しゅうせいこうしなかったじょうかくめろ! もはや、殺すか、殺されるかだ! 我々(われわれ)のへいを、まもるのだ!!」

 さんたいさんにんとっしんしてった。


「なんなの!? こいつら!!」

 のこりのりんぷんはらい、紫苑が霄瀾のまえった。

えんしき出雲、りつりょこうりん!!」

 二人ふたりもとけ付けた出雲のふういんを、かいじょする。

「出雲のしんけん青龍せいりゅうか、霄瀾の神器しんきすいきょう調しらべをねらってるのねきっと! 魔族もじょうほうはやいわ!」

 紫苑のすいそくに、出雲は、ねらわれたのがさいしゅうへいかもれないということは、えなかった。

 其れをってしまったら、ほんとうに紫苑が「かいてき」に成ってしまいそうで、こわかった。

 其のときたいとっしんしてくるひびきが為た。

「出雲はおおきいやつわたしのこり! 霄瀾はわたしえん!」

「「わかった!」」

 紫苑のこえ二人ふたりおうじたへ、すいりゅうかってた。

ほのおげつめいじん!」

 おうぎかざした紫苑のほのおじゅつそうさいし、すいじょうはっせいさせた。

 ると、さかなえらみみに付けたいた魔物が、じゅつたいせいっていた。

「ん……?」

 そのそばの魔物はいない。かでしゅうしようと、かくれた様だ。霄瀾がねらわれてるのだろうか、と紫苑はかんがえ、どもちゅうするように、とささやいた。

 出雲は、あつく、あかるいうすちゃいろおおわれているツタノジと、きょうった。

 たいじゅうまかせてかられたら、いくら出雲でもてきすきあたえてしまうので、きょくりょく其れをけていた。

 しかし、なんかたなつめわせて魔物のクセがわかると、出雲はなんなくばやいちげきで魔物をはらった。

「まずはいったい

 出雲がのこりのたいかおうと為ると、

「ツタノジ!! だめ!!」

 の魔物があらわれて、せられた魔物にりんぷんけた。すると、

「うう……」

 ツタノジがむっくりと、がった。

「! こいかいふくじゅつ使つかえる魔物か!」

 出雲はさきの魔物、トブチにんだ。かいふくやくから殺すのは、せんとうてっそくである。

「トブチじゃない! おれとたたかえ!」

 そのあいだにツタノジがってはいった。

 出雲がなんり付けても、そのたびにツタノジのきずをトブチがふさいだ。其れは、紫苑のじゅつ火傷やけどうサカナイもおなじだった。

 さんたいいちだんと成って、はなれない。たいかいふくやくのトブチをまもり、トブチがたいまもる、てっぺきせんじゅつだった。

 はんえいきゅうてきたたかことに、出雲はあせはじめた。しきがみは、えいきゅうにはつづかない。いち成ったらてきぜんめつさせるまでまらないけんひめとはちがい、紫苑のじゅつりょくきれば、しきがみじょうたいしゅうりょうしてしまうのだ。

 紫苑は、さかなの魔物となんじゅつをぶつけっている。

 全ては、出雲がぞうの魔物をたおまでしきがみけ無い様、ちからおさえておんぞん為る為だ。

 しかし、其れもかいふくやくの魔物をにか為なければ、勝ち目は無い。

「クッ! 今まで……」

 けんひめたよってきたか、たたかいのこころささえだったかが、出雲にはりとわかった。

 かのじょれたものは、たいてい忌み嫌う。だけど、いちでもかのじょったら、たよら無いではいられ無くなる――。

「まさか魔族もきょうりょくってこうげき為てくるとは、おもわなかったわね」

 出雲のかっとうらずに、紫苑がおどろきのこえらした。

「魔族はぶんほんで、ほかどうぞくあやつることはっても、ちからわせることは無いとおもってたのに……」

「オレがあやたびしてたころ、魔族軍はにんげんぐんみたいにとうそつされてたけど、ぐんとしてのまとまりしか無かったとおもう。ういうだいだったから、魔族のほんしつのこと、よくことなかったのかもな」

いずれにせよ、いったいいったいよわいのに、あつまるとじゃくてんおぎなってつよくなるというのは、やっかいだわ。にんげんがそうだけど」

 さいひとことれいすいけたぶんに成った出雲だが、ふと霄瀾にけた。このを、このさきも、ただまもられるだけの子供にしてはいけない。ぶんと紫苑がぞうさかなふうじられているいまたたけるのはこのしかない。

 而して、あるかんがえがひらめいた。

 さいおそってきたツタノジとサカナイに、出雲と紫苑は、こんほんおうじた。

 出雲はツタノジのつめかわすと、わきばらふかきずあたえた。またたまりがひろがっていく。

 紫苑はサカナイのみずじゅつぜんりょくほのおじゅつかえした。サカナイはじゅう火傷やけどい、たおれた。

「ツタノジ!! サカナイ!!」

 トブチがりんぷんこうと為たとき、霄瀾がたてごとかなでた。

「!?」

 とつぜんトブチのに、たくさんのツタノジとサカナイがうつった。どれもおなかっこうで、めんよこたわっている。

「どれ!? どれがホンモノ!?」

 トブチがこんらんしながらまわっている。

「よし……かった!」

 出雲がかたなにぎなおした。霄瀾の「げん調しらべ」を、トブチにけたのである。

 出雲は、ちゃちゃりんぷんいているの魔物へんで、ろした。


 さんたいがいまえに、出雲はかたなを仕舞った。

おもったよりったな……」

たびつづけましょう」

 なんかんそうも無く紫苑が二人ふたりうながすと、

ちなさい!!」

 にんげんじょせいこえが、わないてさんにんすがった。

「……?」

 かえった紫苑のあかいろひとみったときがたなりょうにぎった其のじょせいいっしゅんおびえたようにえた。

為たんだ? このさんたいつかまってたのか?」

 いっあゆった出雲に、じょせいは、

「みんなのかたき!! 殺してやる!!」

 と、した。

「――ッ!」

 しかし、出雲のかたなのどもとけられ、さるすんぜんぜんしんこうちょくしてまった。

「おまえにんげんだろう? 魔族がなか? いうことだ」

 は、もうんなことおくれなのをっていた。なにっても、ツタノジたちはもどってない。は、きっ、と紫苑にいかりのくやなみだけた。

「殺しなさいよ! にんげんいのちなんて、なんともおもって無いんでしょ! このさんにんないなら、わたしだってきるなんか無い!!」

 其れをいて、出雲はかたなろした。

 霄瀾にも、やらこのじょせいがこのさんたいともだちだったらしいことがわかった。

 紫苑がくちひらいた。

「なぜおそってきたの? それとも、なぜめられ無かったの?」

 いて、而して恨みを込めた。

「殺してやる!!」

 出雲はかたなしまった。

「その魔物のつめ……、あんたがいたのか」

「そうよ! 殺人鬼! 斯のひとぶんたちをまもるために……!」

「どんなになかかろうと、どんなゆうがあろうと、しゃいのちうばおうと為るものは、ぶんいのちけ無ければ成らないのよ」

 なんを、紫苑は退しりぞけた。

かねぬすもうと為るものぶんかねぬすまれるかくを為無ければ成らないように、いのちうばおうと為るものいのちうばわれるかくを為無ければ成らないわ。ぜんこうでもあくぎょうでも、ぶんの為たことはおなじだけかえってくるとかく為無ければ成らないの。にどんなじょうはいることはできない。殺すものは、殺されてももんえないの」

 だまって殺意をさんにんつづけるに、出雲がわりにことはっした。

いまオレが殺意をオレたちにけるおまえらないかかるか。おまえまもりたいものをまもためたたかいをはじめてないからだ。オレはまもりたいもののためつよく成ろうと為るものを殺しはしない。つよく成って、オレを殺せるくらいりょくしたとき、オレにかってるがいい。其のときこそりょうでは亡くしんねんたいとうあいとして、かえちに為てやろう。だがいまのおまえなにはじめてない。なにかをまもりたいなら、其れをまもれるようにしきもとめて、ぶんなりにかんがえて、つよく成らなければ成らない。だからいまのおまえはオレが殺すは無い。れからぶんたたかはじめるかやめるか、おまえめろ」

 へんとうまえに、出雲は霄瀾のいてけて、かえらずあるいていった。

 一人ひとりのこった紫苑は、ぶんの為ようとしていたことぼうだいさにぼうぜんと為ているに、ことげた。

「あなたがわたしたちを殺そうとするのはゆうよ。かたきってもたなくてもだれなにわない。けんはない。でも――」

 紫苑から、おだやかなかけえた。

「もしあなたがあの二人ふたりを殺したら、つぎわたしあいに成るわ。而して、きてかえさない」

 紫苑のってさまが、つめたいすいしょうあるってさまおもわれた。

 たった一人ひとりのこされたは、ほうしんじょうたいままつぶやいた。

わたしにとってはそれが……このひとだったのに……ッ!!」

 そしてせきったようにむせくと、さんたいがいおおかぶさった。

 か、ぶんこれまでふかかんがえずにおこなった全てのせんたくに、ぜんしんさされないほどこうかいした。

 それをとおくからうかがっているかげった。

ほどけんひめとおすじだいたいかりました」

 かげがくっくっとさざめいた。きぬれしてそうふくはしひかりびる。

「しかしこれでは、なにらないにんげんだれけんひめかた為ないでしょう……。神器しんきさがす此方にはこうごうですね」

 かげやみんでいった。


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