聖女視点
名前は出ません。
聖女に選ばれた僕は、異世界から来た異端人だった。
何故なら大昔から聖女は女だったのに、僕は男だったからだ。聖女は女が当たり前の世界で男の僕が、聖女として国民の前に出るのは大混乱になると危惧した。
現に僕が男だと知った王様は世界の滅亡だと混乱していた。
僕が男ということは、王国のトップの4人のみ知っているが、それ以外の人達には秘密になった。
なので僕の格好は聖女が着るようなひらひらとした可愛らしい服だ。スカートは恥ずかしくてズボンにはしてもらったが、それでも女性らしい可愛い服だから恥ずかしい。
「聖女様、お昼ご飯の用意が出来ました」
部屋で本を読んでいると、僕専属の騎士が扉越しにノックして言った。
「今行く」
僕は本を机に置いて部屋を出ると軍服のような服を着た騎士がいた。
彼は僕が男は知らない。
でも異世界に来て不安な僕に、彼は僕の為に命をかけて守ってくれると言ってくれた。その言葉で安心出来たし、強い彼を見て彼みたいに強くなりたいと思った。
しかし憧れはいつの間にか歪んでしまった。色んなことを話したり、行動を共にしていたら彼の顔を見ただけで胸が高鳴り、声を聞くだけで体が熱くなった。
気づいたら恋心を抱いていた。
僕は男だし彼も男だ。前の世界は同性愛の理解もあったが、こっちはどうなのか分からない。
とても気になる。
「聖女様、何か悩み事ですか?」
お昼ご飯をぼんやりと食べていたら、目の前にいた彼が心配そうに言った。
本当は一緒に食べることは無いらしいが、僕が食べている間ずっと傍にいられるのも気まずいので一緒に食べる事にした。
「あ!いや……」
「俺でよければ力になります」
鋭い目付きで言われて僕は顔に熱が集まるのを感じた。燃えるような赤い髪と輝くような金色の瞳、かっこいい。
「っ……、その、えっと、この世界って男女が結婚するんですよね?」
変なことを聞いた僕だが、彼は真面目な顔で答えてくれた。
「はい、主に男女の結婚が多いですが、この世界には獣人などいます。なので特に性別は関係なく結婚は出来ますよ」
「そうなんですね」
もし僕の本当の姿を話しても結婚出来る。……でも女装した僕に騙されていたと分かったら嫌われるんじゃ?いやいや、でも聖女としての力はあるから嘘じゃないけど…。
「聖女様は、気になる殿方がいるのですか?」
「え?い、いや、その……」
「申し訳ございません、困らせるつもりはありませんでした」
戸惑っていた僕に頭を下げた彼に慌てて首を横に振った。
「そんな!騎士様のおかげで少し悩み事が解決しました」
「本当ですか?良かった」
ニコッと笑った騎士様はとてもかっこよかった。
今ここで告白したい気分になったがそれを抑え込むと胸が苦しくなった。思わず胸に手をやると騎士様が心配そうに見てきた。
「聖女様?大丈夫ですか?」
「はい」
いつか、騎士様にこの気持ちを伝えられたら……。
そう思いながら僕は騎士様に笑いかけたのだった。
聖女(♂)
異世界からやってきた、高校生。
聖女としてお城に住んでいる。毎日騎士を見てはドキドキしている。
未だにスカートには抵抗があるが、可愛い服を着ていると騎士に褒められるのでつい可愛い服を着てしまう。