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イノセント エリート  作者: 明日原 たくみ
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第1話 57回目の帰り道



 暑さに拍車がかかってきた7月下旬、1人の女性が水上(みなかみ)記念病院から出てくる。




「今日も面会謝絶か・・・」




 ブラウン色をしたセミロングの髪をいじりながら、独り言をつぶやく。彼女の名は「天宮(あまみや) 聖奈(せな)」。水上警察署・刑事第二課に所属する捜査官であり、これから起こる一連の悪夢の立役者である。




Chapter7

~ロード・オブ・アポカリプス~





「聖奈さ~ん、待ってくださいよ~!」




 聖奈から少し遅れて、ツーブロックの男が急いで病院から出てきた。


 彼はアロハシャツにデニムという、まるで南国から帰ってきたかのような格好だった。暑い夏にはぴったりのコーディネートなのだろうが、彼も聖奈と同じ刑事第二課に所属する(れっき)とした捜査官なのだ。プライベートとはいえ、とても捜査官らしい格好とはいえない。




「騒がしいな、いくら病院の外だからといって大きな声を出すな。患者に迷惑がかかるだろう。」



「いや、なんで置いていくんですか。俺トイレ行くって言ったじゃないですか。」



「誰も待つなんて言っていないぞ、霧江(きりえ)。」




 あまりにも冷静かつ理不尽な返答に、「霧江(きりえ) 慎一郎(しんいちろう)」は言葉も返せなくなり落胆した。



 強い日差しに焼かれながらしばらく歩いていると、霧江が素直な疑問を口にする。




「また、面会謝絶でしたね。これで何回目でしょうかね。」



「57回目だ。」




 まさか答えが返ってくるなんて思ってもいなかったので、霧江は飲んでいたアイスコーヒーを喉に詰まらせてむせた。それを見た聖奈が、汚いものを見るかのような目をする。何か彼に対する注意めいたことを言いたそうな顔をしていたのだが、ため息をつくだけで何も言わなかった。




「よくもまぁ、2ヶ月で57回もお見舞いに行こうと思いますね。」



「・・・物好きだとでも言いたそうな面持ちだな。」




 にやけ顔で言われ、少し気を悪くした聖奈が彼を睨み付ける。それに(おく)した霧江は、その無礼を払拭するかのように頭を下げた。




「別に、私だって57回も病院に行きたくなどない。たった1度見舞いに行ければそれで解決するものを、面会謝絶のせいで何度も行くという結果になってしまっているんだ。」




 霧江は、「それはそれで物好きだろ。」と思ったが口には出さなかった。また睨まれると思ったからだ。無難に相づちを打ちながらその場を凌ぐ。




「もう2ヶ月になりますか。無事だといいんですけどね、彼。」



「・・・そうだな。」




 その会話を最後に、2人は一言も発さずに署まで歩を進めた。



 2ヶ月前に事故に()い重体となった、御子柴(みこしば) 正義(まさよし)の見舞いもままならないまま。


これは「ギルティ エリート(完結済み)」という作品の続編です。別に読んでいなくても話が分からないとかの問題はないです。ただ、読んでおいた方がより楽しめるといった感じです。山椒みたいなものです。唐揚げに対するレモンみたいなものです。

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