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sideメアリーラ


 全く。赤鬼はこれだから嫌なのです!


「ジュマぁ! おいっ、止まれぇ!」

「ダメだよニカ、あの状態になったジュマは周りの声なんか聞こえてないよ!」


 久しぶりに不死鳥の姿となった私は、ニカさんとケイさんを乗せて北の山まで来ていました。私は戦闘力がないので、北の山にいるのは結構怖いのです……! もちろん、そう簡単には死んだりしないのですよ? 死にそうになった時には、私は一度燃え尽きて生まれ変われるのですから! でも怖いものは怖いのです。生まれ変わった瞬間は力が弱るし、無防備になってしまうのですからね。いやいや、今はそれどころではなかったのです!


「くぅ、俺も力を解放するかぁ! ケイ、俺が抑え込んだら直ぐに拘束してくれぇ!」

「了解だよ。まかせて」


 魔物型になっている赤鬼はとにかく大きいのです。私もかなり大きいのですけどね! でもあんな風に野蛮に暴れまわったりはしないのです!

 自我を失っているわけではないので、こちらを攻撃してくる事はないのですけど、あの状態の赤鬼は標的を仕留めるまで周りが見えなくなるのです。そこで今すぐやめてギルドに戻るだとか、細かい説明をしても聞くわけないのです。厄介なのです!


 燃えるような太陽のごとく獅子に変わったニカさんが、前足で地面をグッと抉りました。駆け出す予備動作ですね! ああ、綺麗なお姿です。赤鬼とは違ってメラメラ燃える様が本当に太陽のようで気高く見えるのです。同じ火を纏う者として誇らしいのですー!


 そんなニカさんが駆け出しました。ドラゴンを仕留める最後の攻撃を繰り出したばかりのその瞬間を狙って。仕留めた感覚があっただろう赤鬼には隙がありました。

 赤鬼の首筋に噛み付いたニカさん。あの程度では首に傷が付くことすらないのですけど、むしろ穴が開いてしまえばいいと思っているので心配など全くしないのです。一方で噛み付かれた赤鬼は新たな敵かと身構えましたが、それがニカさんだと一瞬で気付くと少し力を緩めた様子でした。


「オーケィ。ニカ、離れて」


 そこへすかさずケイさんの拘束魔術が発動されました。ケイさんの伸ばした細腕から無数の白い蛇が飛び出します。華の模様がチラチラと見えるのはとても可憐です。これで女たらしなところさえなければ憧れの対象になるのに勿体ないのです。本人に自覚はないとはいえ、ケイさんは色々とこう、は、は、破廉恥なのですよ!


「がぁっ!?」


 白い蛇に拘束された赤鬼は一瞬そんな声を上げると、慌てていつもの人型に姿を変えました。しかし白い蛇たちはその変化に合わせて拘束を変えていくので逃れられないのです。赤鬼の目論見も潰えたのです!


「ちょっ、待っ、ニカ! ケイ!? なんでこんなとこ、むぐぅっ!」


 わーわー騒がしくなりそうなところでケイさんの一際大きな白蛇さんが赤鬼の口を塞ぎました。どうにか逃れようと赤鬼がもがくのですが、白蛇さんたちはビクともしません。すごいのです!


「暴れても抜け出せないと思うよ? 拘束の強さは魔力の強さだからね。ジュマの魔力量じゃ解けないよ」


 ケイさんは華奢ですから、あまり力はないのですけど、魔力量はギルド内でも5本の指に入るのです! 赤鬼はどちらかというと脳筋なので魔力でケイさんに勝つのは無理ですね!


「よし、ありがとな、ケイ」

「ニカもご苦労様。あ、ジュマ。こんな仕打ちで悪いとは思うんだけど、今はすぐにこの場から去らなきゃいけないんだ。ちゃんとギルドに着いたら説明されると思うから、しばらくそのままでいてよ」

「簡単に言うとぉ、ジュマよ。お前さんはうるさいんだぁ!」


 ケイさんがせっかく遠回しに伝えたと言うのにニカさんたらストレートに伝えたのです。でもそのくらいでいいのですよ! この単純脳筋赤鬼にはっ!


「むー……」


 当の赤鬼は暴れても無駄らしいと悟ったのか、突然大人しくなったのです。後で教えてくれるならいいか、とでも思ったのかもしれません。この赤鬼はお気楽馬鹿でもありますからね!


「…………むぐぅ」


 そしてあっという間に寝はじめやがりましたよ、赤鬼。能天気すぎるのです!

 その寝顔は……悔しい事にか、か、か、格好良いのです! いえっ! 好きとかではないのですよ! あれは、その、若気の至りだったのです!


 初めて赤鬼を見た時に、まだ若かった私はただの面食いで、赤鬼に一目惚れしてしまったのです。よく知りもしないうちに赤鬼に「お付き合いしてください!」と言ってしまったのが良くなかったのです。

 おう、いいぞと即答してくれた時は舞い上がりました。馬鹿でした私はっ! それから1週間くらいは私、アイツと恋人同士なつもりでしたけど……アイツはそんな事微塵も思ってなくて! 「で。いつ何に付き合えばいいんだ?」と言われた時には羞恥と怒りと幻滅となんか色んな気持ちがごちゃ混ぜになって平手打ちしたのですよっ! だというのに全く動かないわ気にもされないわで……!!


 乙女心をズタズタにされた恨みは一生忘れないのですよっ! 私は不死鳥ですからね、生まれ変わっても忘れないのですよっ!

 だと言うのに悔しいかな、赤鬼の顔が好みなのですよぉ! 顔だけ剥がして飾りたいのです!


「……メアリーラちゃん? そろそろ、出発したいんだけど、いいかな?」

「おっかない顔してジュマを睨んでどうしたんだぁ? メアリーラよ」


 おっといけませんね。あの時の屈辱を思い出したらつい。スーハーと軽く深呼吸をしてから口を開くのです。


「大丈夫なのです! 行きましょうか! でも……1つだけワガママを言ってもいいですか?」


 私がそう言うと、2人とも快く承諾してくれたのです。この先輩方は優しいのですよ! 少ぉしだけ女たらしなのと、少ぉしだけ豪快すぎるだけで。でもそれも個性ですよね!


「この赤鬼は乗せたくないのです! 吊るしてくださいっ!」


 両拳を握りしめてそういうと、2人とも苦笑いを浮かべました。わかりますとも、言いたいことは! でも、あの屈辱を思い出して正気を保てそうにないので危険なのですよ!


「仕方ないね。メアリーラちゃんはジュマの事好きだったもんねぇ」

「複雑な乙女心ってやつかぁ。ソイツァ、仕方ねぇなぁ」

「ちっ、違うのですよぉっ!」


 うぅ、ケイさんには何故かお見通しなのです。でも否定しておくのですっ!


「あぁ、ごめん。今はオーウェンだったよね」

「だっ、だだだだ誰があんなっ! 女癖の悪いオーウェンなんかっ!!」


 そ、そりゃあ赤鬼ほどじゃないけど、ワイルドやんちゃ系なオーウェンは好みの顔ではあるのです! でもそれは外見だけの話なのですっ! というかなんでケイさんってその辺鋭いのですかっ!?


「ケイ……あまりからかっちゃ可哀想だろぉ」

「クスクス。ごめんね、あまりにも反応が可愛いから、つい」

「かっ可愛っ……!?」

「おい、ケイ……ってこれは無自覚か。厄介だなぁ」


 お喋りしてる場合じゃないのです! それだけを告げて私は不死鳥の姿へと変化しました。まだ少し拗ねていた私ですけど、お願いをきいてくれたケイさんが白蛇さんで赤鬼を吊るしてくれたのです。だから、からかわれた件については許してあげるのですよっ! 私は大人で、メグちゃんのお手本となるような立派なレディなのですからねっ!

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