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親と娘


 私の勇気を出した発言だというのに、ギルさんもマイユさんも一瞬目を見開いただけで、後は穏やかに微笑まれてしまった。やはり子どもが何を、と思ってるのかな? いやいや、それにしたって限度ってものがあるでしょ! いくらなんでもこんな高級品、子どもだからとホイホイ受け取れないよ、ご令嬢でもあるまいし!


「なるほど、噂に違わぬ聡明っぷりだね、レディ・メグ。貴女の言いたいことはよくわかるよ。けどね……」

「……その続きは俺から話そう」


 どんな噂が流れてるんだろう、と少し気になったけど、ギルさんがひょいと私を抱き上げて、目線を合わせてそう言うものだからこちらに集中。


「メグ。子どもが大人になるまでに、どれほどの金が必要か、知っているか?」


 子どもが大人になるまで……そうだ、日本だと食費や日用品にかかるのはもちろん、学費とか習い事とか諸々でかなりの金額が必要だって、前に何かで読んだ覚えがあるよ。

 この世界に学校や習い事という概念があるのかはわからないけど、人間より長寿だし成人するまでの年数もずっと長いから、やはりかなりかかるはずだ。


「えっと……い、いっぱい、でしゅ」


 あれこれ考えた結果とは言え、頭の悪そうな回答になってしまった。とほり。でもギルさんはそれを汲み取ってくれた様子。


「そうだな。個人差はあれど、とにかくたくさん金が必要だ」


 そうだね、個人差は確かにある。一般家庭があれば、貧困家庭もあって、裕福な家庭もあるわけだし。


「ではもう1つ聞く。そういった、子どもにかかる金は誰が払ってくれる?」

「……親、でしゅ」


 そう。でも私には今の所親がいない。だから出来るだけ自分でなんとかしなきゃいけないんだ。けど、それが出来ないからギルドに好意で預かってもらってるに過ぎない。ギルドは決して孤児院ではないけど、孤児院にいるのと考え方は変わらなくて、つまり贅沢はしちゃいけないって思うんだ。

 そんな風に考えてたんだけど。


「そうだ。子はそれを自然と受け入れるものだ。そしてメグ。お前の保護者は……俺だ」

「え……?」


 なんとなく私の保護者はギルさん、という図式は出来上がっていたけど、ギルさんの言葉にはそれがまさに真実であるかのような響きがあった。


「お前に許可もなく悪いとは思ったんだが……いつまでも身元不明のままというのは色々と危険が多い。だから……俺が保護者として書類も作成させてもらった。今の所メグは俺の娘、という立場になっている」


 な、な、なんですってー!? 驚愕の事実にただただ驚く。


「もちろん、本当の保護者が出てきて、お前の安全に確証が持てたら変更出来るようにもしてある。まぁ、仮ではあるんだが、俺とメグは親子になった。嫌だったか……?」


 ……ほんと。私はバカだ。中身は立派な大人の気分でいたけど、甘ちゃんで子どもだった。


 私の周りでは、こんなにも私の事を真剣に考えて保護してくれようと動いていたというのに、全く気付かなかったんだもん。


 ぽたり、と生温い雫が頰を伝って手の甲に落ちた。


「嫌なはず、ないでしゅ……ありがとー、ごじゃいましゅ。ありがとう、ごじゃいましゅ……」


 血の繋がりもなくて、出会ってほんの僅かな時間しか経っていないけど、深く、確かな愛情を注いでくれるギルさんたちに対して、私の中でも確かな愛情が心に根付いた瞬間だった。




 私の涙が収まるのを待って、ギルさんは続けた。


「お前の本当の保護者が現れるか、お前が大人になるまで、俺が親として必要な物は与えるつもりだ。この魔道具も、俺が必要だと判断したからお前に与えるに過ぎない」


 そう言いながらギルさんは片手で器用に私の右腕にブレスレットを付けてくれる。


「高価なのは確かだ。だが、親娘となった記念としてメグに贈ろう。娘として、受け取ってくれないか?」


 うぅ、ギルさんがイケメンパパ過ぎてツライ。またじわりと涙が浮かんでくるよ! 慌てて左腕でゴシゴシ涙を拭き、出来る限りの笑顔を向けて。私は元気に答えた。


「あい! ありがとうでしゅ! ギルパパ!」

「ごっふ!!!!」


 あれ? 思い切って言ってみたんだけど……なぜかマイユさんがむせ返っている。ギルさんは驚いたように目を見開いているけど、あれぇ?


「パパ、ダメでしゅか……?」

「い、いや、ダメではないが……不思議な気分になるな」


 まぁ突然パパなんて呼ばれたらビックリするよね! 私的にもこんなに若いとパパって感じはあまりしないけどね。……200年は軽く生きていたとしても、だ!


「ごほっ、失礼。あまりにも意外な発言だったからつい。えーと、レディ・メグ? ギルをパパと呼ぶには周囲が騒ぎになりかねない。だから、2人の時にたまに呼ぶ、というのはいかがかな?」

「ふむ、それなら悪くない」


 ふぉぉ、ナイス提案だマイユさん! 確かにこのままギルさんをパパと呼び続けてたら、色んな人の耳に入って噂だけがひとり歩きしかねないもんね。その提案、喜んで受け入れようと思います。


「さて、話を戻そうか。レディ・メグ、そのブレスレットにほんの少し魔力を与えてごらん?」

「う?」

「水を作り出すのと同じだ。そのブレスレットも身体の一部と思って魔力を流すんだ」


 2人に言われた通りにブレスレットに魔力を流すイメージをしてみる。すると、ブカブカだったブレスレットが私の腕にピッタリのサイズに! どんな仕組みだ。魔術だろうけど。


「オーケー。これでそのブレスレットはレディ・メグ、貴女専用の魔道具と認識されたよ。それは君を守ってくれるだろう。大切にするんだよ」

「ふわぁ……! あいっ! ありがとーごじゃいましゅ!」


 続いてギルさんにもありがとーと抱きついてみた。ギルさんは軽く抱き返してくれ、ポンポンまでしてくれました! これぞ、娘の特権だね!


「そろそろ次へ向かおう。マイユ、邪魔したな」

「おじゃまちまちたー!」

「邪魔だなんてとんでもない。またいつでも来ておくれ! あなた方なら大歓迎さ。インスピレーションが湧いてくるからね。やはり私のような美しい者が美しい方々と接するのは互いを引き立て合う……それどころかより一層輝きを増して……」


 あ、あれ。マイユさん、話してる内にまた自己陶酔モードに……?


「……行くぞ」

「い、いいんでしゅか?」

「キリがないからな」


 こうして、ギルさん抱っこのまま私たちは次の場所へと向かった。マイユさんはまだ浸っているけど。心なしかギルさんの歩くスピードも速く感じたよ……!

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