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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
魔王城での休暇

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父なのだから


 それから、私たちは公園を散歩したり遊具で遊んだり、のんびり座ってお話ししたりと楽しい時間を過ごした。


 たくさん喋ったなー。特に、ウルバノは人間の大陸のことを興味津々で質問してきた。

 自分もいつか行ってみたいって。きっと、これからはもっと互いの大陸への行き来が出来るようになると思うから、チャンスはあるはず。

 その時は、私も一緒に行って案内が出来たらいいな。マキちゃんの里帰りとかしてみてもいいかも。あまりいい思い出はないかもしれないけど、生まれた土地だし一度聞いてみたいと思う。


「今日は案内ありがとうね、ウルバノ! ぼくたちまだ魔王城にいるからさ、また話そうよ」

「こ、こっちこそ! むしろ色んな話を聞かせてもらえて楽しかった。今度は僕が話す」

「いいねー! そしたら、子ども園のこととかいつもやってる訓練について聞かせてもらっちゃうよー?」


 男子二人はさらに仲を深められたみたいだ。訓練の約束もしていたし、きっともっと仲良しになるよね!

 え、訓練を私も? え、遠慮します。だって二人の訓練内容を聞いたけど、身体を苛め抜くヤツじゃないか。動けなくなるから無理。私には私のレベルにあった訓練をしますのでっ!


 というわけで、子ども園の前でウルバノと別れた私は、アスカと一緒に城内へと戻ることに。陽も暮れてきたから、そろそろ食事の準備になるだろうしね。


「ねー、メグ?」

「ん? なぁに?」


 城門を抜けてお城に向かっていると、アスカに声をかけられる。

 振り向くと意外にもアスカが少し真剣な顔になっていたからビックリした。ど、どうしたのかな?


「今度はさー、ちゃんと2人きりでデートしてよ」

「えっ」


 その言葉に対してなのか、アスカの真剣な目からか。なんとなくいつもとは違う雰囲気にドキッとしてしまう。

 なんだか、改めてアスカも大人に近付いているんだなって気付いたというか。


「だって、約束したじゃない? 人間の大陸で調査してた時にさ、帰ったら2人で一緒に出掛けてくれるって」


 忘れちゃったのー? と少し拗ねたように言うアスカはいつも通りのアスカだったからホッとしたけど。でも、真剣に言うくらいアスカにとっては大真面目で大切な話だってことだよね。


「もちろん、覚えているよ。今日はウルバノも一緒だったもんね。うん、2人でおでかけしようね」

「ほんと!? やったぁ! よかった、2人きりは嫌だって言われたらどうしようかと」


 私が答えると、アスカは安心したように胸に手を当ててものすごく喜んでいた。おおげさな……! とは思うけど、気にしていたのかもしれない。ごめんね。


「嫌なんて言うわけないでしょ? 心配性なんだから」

「えー? わかんないよー? だって、さ」


 私が笑いながら言うと、アスカは意地悪そうに笑ってまた大人びた顔になった。


「ぼくたち、昔みたいに幼い子どもってわけじゃないんだから」


 そして、どことなく寂しそうに、優しく笑う。

 アスカがどんなことを考えて言っているのかはよくわからないけど、大人になるのが嫌なのかな?


 ……ううん、アスカは早く大人になりたがっていたし、それはないか。じゃあ逆に早く大人として見られたいとか? うーん、よくわからない。


「それって、どういう……?」

「わからない?」


 困惑気味に聞き返したら、やっぱり意地悪そうにニッと笑うアスカ。そ、その笑みはちょっと色気が漂っているんですが……!? えっ、あれぇ? アスカって私より年下だったはずなのに、どうしてこんな色気を醸し出せるの!?


「わからないならそれでいいよー。ぼくはどっちでも満足だから」


 ほんのりと熱くなった顔に手を当てていると、アスカがいつも通りにケラケラ笑ってくれた。ホッ。

 わからないならって……。いいもん、気にしないもん。でも、なんだかメグは子どもだなー、と笑い飛ばされたみたいでちょっと悔しい。前世分の経験値、どこいった。


「おー、おかえり。楽しめたか?」

「リヒト! うん、すっごくたくさんお話しちゃったー」

「そか。ウルバノも喜んだだろうな」


 釈然としない気持ちのまま城内の廊下を歩いていると、リヒトに声をかけられる。ちょうど私たちを探しに行く所だったのだそう。


 父様の仕事がもう少しで終わるから、先に私たちを部屋に案内してくれるという。私はいつも泊まる時に使う部屋に一人で向かうので、リヒトにはアスカの案内を頼んだ。


 ここに泊まるのも慣れたものだからね。久しぶりではあるけど。それに魔王城で働く侍女さんや執事さんはみんな優秀な人たちなので、困っていたらすぐに助けてくれるし! 優しい!


 私が来た時用の部屋は、私しか使わないとのことでもはや自室となっている。なんだか申し訳ない気もするけど、部屋は余っているということなので遠慮なく使わせてもらっている。

 ちなみに場所は、父様の部屋と数メートルほどしか離れていないんだよね。執務室にも近い。いずれ魔王として執務に励むことを思えば当然の配置といえる。


 けど、ちょっとだけ複雑だ。だって、父様を見ていたら本当に大変そうなんだもん。私にあの仕事が出来るのか。それだけでなく、一国の王として民を守れるのかって考えるともう。


 いや、考えるのはやめよう。今考えたってウジウジするだけだし、いざとなったらやらざるを得ないんだから。少しずつ慣れていけばいいのだ。……はぁ。


「メグ様」


 自室に戻って部屋の窓を開けていると、部屋を訪問してくる人の声が。これはクロンさんの声だね。

 どうぞ、と返事をすると、予想通り水色の髪をキッチリ結い上げたメイド服姿のクロンさんが姿を見せてくれた。なんでも、父様が呼んでいるという。

 あれ、もうすぐ仕事が終わるからって話じゃなかったっけ?


「夕食前に少しだけ話したいとのことですよ。今日はかなり頑張ってくれましたので、労ってあげてくれませんか?」


 首を傾げていると、クロンさんが僅かに苦笑しながら教えてくれた。

 リヒトと結婚してからと言うもの、表情が柔らかくなったよね。よく笑顔を見せてくれるし。笑顔、というより微笑みって感じだけど。うんうん、いいことだ。


「わかりました。執務室に行けばいいですか?」

「はい。お願いします。私は食堂で準備をしてまいりますので、ザハリアーシュ様と一緒にいらしてください」


 クロンさんはそれだけを伝えると、失礼しますと頭を下げてから部屋を出て行った。

 そっか、父様はたくさん頑張ってくれたんだね。それならぜひ、親子の触れ合いタイムを多めにとってもいいよね!


 正直、私としても二人で過ごす時間を増やしたいと思っていたし。……お父さんの様子のことも考えると、ね。

 というわけで、私はすぐに執務室へと向かった。


「おぉ、メグ。来てくれたか」


 執務室のドアをノックするとすぐに返事が来て、父様が笑顔で出迎えてくれた。それから、来客用のソファに座るよう穏やかに告げる。

 つくづく、父様って紳士的だなぁって思う。超絶美形だし、強いし、優しいし。……残念な人だけど。


「父様、何か話したいことがあったの?」


 ソファに座ったところで問いかけると、斜め前のソファに腰を下ろした父様が気まずげに視線を逸らした。


「あっ、別に特別な用がなくてもいいんだよ? 私も父様と一緒に過ごしたいって思っていたから!」

「ああ、メグ……! 本当に優しい娘であるな!!」


 あっ、感動させてしまった。まぁいつものことなのでニコニコしておきます。嬉しいことだしね。照れ臭いけど。


「我も、メグと一緒ならどんな話でも、話がなくとも幸せなひと時を過ごせるぞ」


 そして、とても嬉しそうに頬を染めてそんなことを言う美形魔王。父親と言えど、この顔面は直視出来ない美しさです……! うっかり照れてしまって視線を逸らしちゃった。だって眩しいんだもん!


「だが、ちゃんと呼んだ理由はあるのだ」


 続く父様の言葉にパッと顔を上げる。そっか、話はあったんだね。なんだろう?


「その。メグの様子が少し、変だったように思えてな……気になったのだ」


 気のせいだというのならそれでいいのだが、とモゴモゴと言う父様を、私は目を丸くして見ていた。


「気付いていたの?」


 確かに、父様に聞きたいことがあった。だけど、そんなに顔に出ないように気を付けていたのにな。まぁ、私だしな。バレててもおかしくはないか。

 それでも、様子がおかしいって他の人には気付かれなかったのに。


「もちろんであるぞ。我はメグの父親であるからな!」


 ドヤッ、と胸を張る父様を見ていたらなんだかおかしくなってきたけれど、やっぱり自慢の父親だなって思う。

 お父さんも父親だし接する時間が多いけど、やっぱりメグの父親は魔王である父様なんだなって思うよ。お父さんに感じるような気安さはないけど、安心感っていうか、愛情っていうか……そういうのが胸の奥の方でじんわり広がっているから。


「……うん。あのね、本当は今回、父様に聞きたいことがあったの」


 だけど、少しゆっくり話したいから食事の後に時間をとってもらえないかと素直に告げた。


「我の勘は当たっていたのだな」


 父様はフワリと微笑んで、膝に腕を乗せて少し身を乗り出す。


「娘が話したいと言ってくれているのだ。もちろん、食事の後にゆっくり聞かせてもらおう」

「ありがとう、父様」


 穏やかで、優しい時間だ。

 だからこそ、話す内容を思うと泣いてしまいそうになるけれど、たぶん泣いてしまっても父様は受け止めてくれる。そんな安心感が私を支えてくれた。


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