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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
異世界の落し物

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お疲れメグ


『ご主人様ー? お疲れなの?』


 部屋に戻った私は、辿り着くなりベッドにダイブした。そしてそのまま指一本動かす気力がなくて、うつ伏せになったままだ。

 元気がないことに気付いたショーちゃんが心配して声をかけてくれる。無視をするのはかわいそうすぎるけど、どうしても動く気になれなくて枕に顔を押し付けたまま答える。


「うん、ちょっと元気が出ないだけ。寝たら戻るから大丈夫だよ」

『そうなの……?』


 まだ納得はいっていないご様子だ。ショーちゃんは私の心が読めるとはいえ、今の私は自分でも頭の中がグチャグチャだからショーちゃんにもわからないのだろう。困ったような、そして心配そうな様子が伝わってきた。


「久しぶりの魔大陸だから、遊びに行っていいよ。みんなも」

『……わかったのよー』


 一人になりたい。無意識にそう思っていたのが伝わったのかもしれない。

 ショーちゃんは特に反論することなく、何かあったら呼んでなのよ、とだけ告げて他の精霊と共に飛び立つ。他のみんなも心配してくれているのは伝わったけど、何も言わずにその場を去ってくれた。

 もう、みんな優しいな。ごめんね。それと、ありがとう。


「やっぱり、いつもと様子が違ったよね……」


 ギルさんと、なんだか距離が開いた感じがしてショックだった。ショックだったんだけど、考えてみればこれが普通の距離感、なんだよね。これまでが仲良し過ぎたのだ。

 冷静に考えて、成人間近の少女と大人の男性の距離じゃなかった。ここ最近は、それなりに物理的な距離は開いていたはずだけど。


 私とギルさんは、同じオルトゥスの仲間というだけの関係だ。幼い頃は保護者だったけど。今も私は子どもだし、周囲の大人たちも色々と手助けしてくれている。過保護なくらい世話を焼いてくれたりね!


 でも、それは子どもだからだ。成人したら一人前とみなされ、これまでのようにはいかなくなる。急に態度を変えるわけにはいかないから、少しずつ手や目を離していくんだってサウラさんが前に寂しそうに言っていたよね。


 だから、今回のギルさんの対応もそういうことなんだと思う。ただ、それだけ。私が大人になっていくのを邪魔しないようにしてくれているんだ。……きっと。


 えー、本当に? 本当にそれだけ、かな? 武器屋さんでのことも覚えていなかったのが引っかかるんだよね……。

 心がけで態度を変えることまではわかるけど、あれは間違いなくギルさんだって気にしていたはずだもん。たぶん、なんとなくそんな確信があるだけだったけど。

 でも、さっきは本当に覚えていないみたいだった。あー、もうわかんなーい! 


「聞いたところで、覚えていないと言われたらそれ以上は踏み込めないもんね」


 はぁぁ、と自分でもビックリするくらい長くて大きなため息が出た。なんだこれ、私ってば思っていた以上にショックを受けてたってこと? ギルさんの態度が変わってしまったことに?


 よく考えたら、いやよく考えなくても私、甘ったれすぎでは? だってそれってさ、つまり私はまだまだギルさんに甘やかされたいって思ってるってことでしょ? 

 そりゃあ甘やかされるのは嬉しいけど。アラサーの魂で甘やかされ続けたことで、物足りなくなっているということだろうか。うわ、引く。自分で自分に引いてしまうよ、これはっ!


 同時に、早く自立したいとも思っている。大人になって、もっといろんなことが出来るようになりたい。オルトゥスの一人前なメンバーになるにしても、いずれ、その、魔王になるにしても、私は未熟すぎるんだよね。

 だから、お父さんや父様にはあまり甘やかされたくないって思っているんだけど……。


「……あれ? 甘やかされたいって思うの、ギルさんだけかも」


 これはこれで考えが変態っぽいな、私。まぁね! ギルさんはスーパーイケメンだからね! 要するに最推しという存在なのだ。仕方ないことなのである、うん。


 いやいや、こういうところだよね。まだ甘えを捨てきれないのだから困ったものだよ。


「変わらず優しいし、いつでも助けてくれる。これ以上を望むのは本当にただの甘え、だよね」


 言葉にするとようやく落ち着いた気がする。そう、ただそれだけのことなのだ。私がまだ子どもみたいなことを言っているだけ。親離れをしないといけないのは私の方だったね。反省である。


 だけど、ほんの少し。ほんの少しだけ、もう前みたいに気軽に抱きついたりは出来ないのかなぁって思う。

 どうしようもなく寂しい気持ちを抱き締めるように丸くなると、私はそのまま眠りにつくのだった。




 次の日はうっかり寝過ごしてしまった。しばらくはお休みを貰っているからどう過ごそうがまったく問題はないんだけど、まさかお昼近くまで寝ているとは思わなかったよ……。

 しかも、起こされなかったらまだ寝ていた気がする。


『ビックリしたのよー? 全然、目を覚まさないからー!』

「あ、あはは、ごめんね。私もビックリしちゃった。疲れが出たのかな?」


 起こしに来てくれたのはショーちゃんである。昨日、あんな風に部屋から追い出すことになったというのにとても優しい。心配だからチラチラ様子を見には来ていたっていうから余計に愛おしいよ!


『人間の大陸という環境で、魔力を使い続けていたからなのだ。ちょっと疲れた程度ではあろうが、疲労は蓄積するものなのだぞ、主殿』

「やっぱりそれかぁ。あのペースで使って1年でこのくらいの疲労度、か。覚えておく!」


 疲労度を覚えておけば、今後どの程度までなら安全に魔力を使えるかわかるもんね。自覚症状がなくても蓄積された疲労で急に倒れる、なんてことになったら大変だもん。自己管理は大事だ。


 んーっ、と声を出しながら両腕を上に伸ばす。本当に良く寝た。夢も見ずにぐっすりと。せっかくだから今日は1日のんびりペースで過ごすことにしよう。

 のそのそとベッドから下りると、久しぶりに自分のクローゼットから服を選んで着替えた。自室、最高。簡易テントも快適具合ではあんまり変わらないけどね!


 部屋を出て食堂に向かうと、色んな人に心配された。ちょ、ちょっと寝坊しただけだよ!? 皆さん、相変わらずの過保護である。

 時間も時間なので、会う人はオルトゥス内部で働く人ばかり。他の人たちはとっくに仕事に行っている時間だもんね。


「チオ姉、こんにちは。軽く食べられる物をお願いしても大丈夫ですか? カフェに行った方がいいかな……?」


 朝にしては遅く、お昼にしては早い時間だったので、まずはチオ姉にご挨拶とお伺いを立てる。チオ姉は驚いたように珍しいね、と目を丸くしたので寝坊しちゃったと笑って見せた。


「それもまた珍しいねぇ。ま、疲れていたんだね! ここで食べるのも久しぶりってわけだ。待ってて、朝食の残りとお昼のおかずを少し持ってきてあげるよ」

「えっ、いいんですか?」

「いいのいいの。こんなこと滅多にないんだから、今日はのんびりしな!」


 朗らかに笑うチオ姉のお言葉に甘えて、私は特別プレートをいただくことにした。朝食用のパンとスープに、昼食用の鶏肉のトマト煮。うわぁ、美味しそう! 朝ごはんにしては量が多めだから、ブランチってことでしっかりいただきまーす!


 食べながら今日は何して過ごそうか頭の中で考える。ロニーやアスカはどうしてるかな? とっくに起きてどこかに行っているかもなぁ。受付で聞いてみよう。

 その後は少しレイピアの練習をしよう。人間の大陸に行っている間、基礎練習は出来たけどレイピアを使った訓練はあんまり出来なかったからね。

 前にアドルさんに教えてもらったことを思い出しつつ復習ってところかな。受付に行った時、アドルさんに訓練のスケジュールの確認もさせてもらおう。


 その後は地下に行って、セトくんやマキちゃんの様子を見に行こうかな。夕方前なら2人の仕事終わりに立ち会えるかもしれない。そうしたら、夕食を一緒にって誘ってみようかな。


 まだ頭がぼーっとしているのか、食べ進めるスピードは遅めだ。計画は立てたけど、もしかしたら疲れちゃって全部は達成出来ないかもしれない。

 せめて、夕方にセトくんとマキちゃんに会う予定だけはこなそう。そうしよう。


「あ、メグだー!」


 少しずつお昼を食べに来る人が増え始めた頃、混む前に片付けようと立ち上がると明るいアスカの声が耳に入ってきた。今日も元気いっぱいである。


「アスカ、今からお昼?」

「そーだよー。メグは早いね?」

「あはは、実はその逆なんだー」


 うっかり寝坊して今遅い朝食を食べ終えたところなのだと言うと、アスカはビックリしたように目を見開いた。


「メグが寝坊なんて珍しくない? 大丈夫? どこか具合が悪かった?」

「ないない! 大丈夫。気が抜けてたくさん寝ちゃっただけだよ」

「そうかなー。やっぱりちょっと声に元気がないように聞こえるしー」


 アスカが心配そうに顔を覗き込んでくるので頬に手をあてて首を傾げる。そうかな? 元気ないかな?

 まぁ、そうかもしれないな。それが疲れによるものなのか、ギルさんの件でまだショックを受けているからなのかはわからないけど。面倒臭いヤツになってるなー、私。


「今日はのんびり過ごす予定だから。訓練しようと思ったけど、明日にしようかな」

「それがいいよ! メグは体力がないんだから、無理は禁物だよっ」

「うっ、おっしゃる通りです……」


 アスカは体力の塊みたいな子だからいつも通りの時間に起きて訓練までしたそうな。くー、自分の体力のなさがここで思い知らされるー! いいの、自分には自分で出来る範囲でやるのが一番なのっ。

 悔しがっていると、アスカは冗談だよーと笑いながら私の頭にポンと手を置いた。


「うそうそ! メグはさ、たくさん魔力を使ってたでしょ? たぶんそのせいだよ!」

「そう、かなぁ?」

「そうそう! 加えて体力のなさが拍車をかけてるとは思うけどー」

「上げて落とすのやめよう!?」


 アスカは楽しそうにキャッキャと笑っているから、からかわれたのだろう。もーっ。


 気を取り直して夕方にあの2人の様子を見に行くことを伝えたら、アスカも一緒に行くと右手をビシッと上げた。元気だなぁ。

 もちろん、否やはないので夕方ホールで待ち合わせをして一緒に行く約束をする。


 そのままアスカは食事をもらいに、私は訓練場へ向かうべくその場で別れた。うーん、まだ疲れが取れてないなら軽い運動だけにしておこうかなー?


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