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精霊さんとお話タイム


「精霊しゃん?」

『精霊しゃん? 精霊しゃん?』

「あなたはなんの精霊しゃんでしゅか?」

『あなたはなんの精霊しゃんでしゅか?』


 やまびこさんですか、あなたは。

 ただいま、こんな具合で一向に会話が出来ない現状で困り果てております、メグです。でも、精霊さんが逃げずに答えてくれる、という点では一歩前進なのかな? それにしても、本当になんの精霊なんだろう。


『精霊しゃん? 精霊しゃん?』


 腕を組んでむむむと唸る私を前に、ふわふわ浮かびながら辺りを漂う精霊さん。心なしか光が元気になってる気がする。なんか楽しそうだし、それが原因かな?


『好きにしろ! 好きにしろ!』

「!」


 突然、精霊の声が変わった。さっきまで私と同じ声で私の真似をしていたというのに、レキの声でレキの真似をしたのだ。思わず一度レキの顔を見てしまったよ。


「……なんだよ」

「あ、なんでもないでしゅ」


 気まずくなって目を逸らし、精霊観察に戻る。これってもしかして、あの精霊、なのかな? でも、そんな精霊っている? 馴染みがない感じがするけど……

 でも、何故かこの精霊に言ってあげなきゃいけない。そんな気がした。これがシュリエさんの言ってた「その時になればわかる」感覚なのかな。だから私は心に従って精霊に告げる事にした。


「あなたは、『声』の精霊しゃん?」

『!』


 ぱぁっと嬉しそうな感情が流れてくる。それと同時に光が一際強くなり、私の周りをクルクル回りながら飛ぶ精霊さん。わぁ、綺麗……


「なんだ!?」


 異変を察知したのか、レキが臨戦態勢をとったので慌てて私が事情を説明する。


「精霊しゃんが、喜んでるだけでしゅ! だいじょーぶ!」


 レキは私の言葉を聞いて片眉を器用に上げた。精霊が見えない分実感がないのだろう。まだ緊張感を持ったままだけど、ひとまず納得してくれたようだ。


『うれしい! うれしい! ありがとうなの!』

「わ、あなたの言葉をはじめてきいた……」


 ずっとおうむ返しで誰かの真似だった声が、精霊自身と思われる声で紡がれたことに感動する。これが意思疎通?


『うん! 伝わってうれしいのー! 私たち精霊は、精霊の種類を言い当てられることで言葉を交わすことができるのよー』


 そ、そうなのか。だとしたら、いつも私の周りでふよふよ飛んでる精霊さんたちも、名前さえ言い当てれば会話が出来たって事なのかな?


『そうなのよ! そうなのよー!』


 あれ? 思考読まれてる? 首を傾げたら、何となくわかるのよー! というお返事。精霊すげぇや。


 んん? という事は、だよ。私が中身アラサーなのとかもわかるのだろうか。器と中身が違うっていうの、バレちゃうんじゃ。

 チラチラと声の精霊とレキを見比べる。ここでしっかり聞いておきたいところだけど、どこで何を言いだしてしまうかわからない(私が)ので、場所を変える必要がある。出来れば私だけのプライベートな空間で。……ないなー。無理っぽいなー。幼女を1人放ったらかしにするような人、いなそうだもん。何というか皆さん、良い意味で過保護だし。


『メグ、ふつーと違うの。でも、カラダもココロも、メグのモノ。でもくわしーことは、契約でもしないと、わからないのよー!』


 悩んでいると、声の精霊がそう告げてきた。そ、そうなの? 何がって、身体も私のものっていう部分だ。いやでも、私この身体で生まれた覚えないんだけど。

 脳内で否定してみるも、声の精霊は「メグのモノ!」と言い続けるだけ。まぁ、身体の名前も「メグ」らしいからそういう事なのかもしれない。


 でも契約か。私の最初の契約精霊なら、わかるかもしれないってことだよね。最初の契約精霊……そう思って淡いピンクの光に目をやると、突然声の精霊はその光を弱々しいものに変えてしまった。え? 嫌って事かな?


『イヤじゃないのー。でも、ダメなのー!』

「どうしてダメなの?」


 私が聞いても、精霊はダメなのと言い続けるだけ。んー、理由は教えてもらえないのかなぁ? 私もすぐにこの子に決めようとは思っていないけど、最初から気になって、目を引いていたのはこの子で間違いない。だから、可能性は1番高いかなぁ、なんて思ってたんだけど。


『こわいもんー。ダメなの。私じゃ怒られるの!』

「怒られるって、誰に?」

『エルフ! エルフのおとこー!』


 へっ? エルフの男って、私の知る限り1人しかいないんだけど。そう思ってその人物を思い浮かべたら、キャーと言いながら声の精霊はどこかへ飛んで行ってしまった。


「行っちゃった……」


 もう何が何だか……でもわかった事もいくつかある。どうすればわかるのかがわかったというか。もう、ややこしいなー。

 ひとまず私がするべき事は、最初の契約とやらをする精霊を決めなければいけないって事。契約をしたら、私の事情が少しでもわかるかもしれないからだ。精霊はどうも人の心というか内面を察する力を持っているっぽい。確証じゃないけどね。

 次に、私の最初の契約をするにあたって、選ぶ精霊についてはシュリエさんに相談すべきらしい、という事。声の精霊はシュリエさんが怖いとか、キャーとか言ってはいたけど、それは恐怖の対象というよりは、上司とか先生とか親とかに向ける感情のように思えたんだよね。


 その辺も含めて、シュリエさんに聞くのが1番いい。そういえば今日はシュリエさんに会ってないなぁ。お仕事だよね、きっと。


「もう良いか」


 精霊が去った後もボケーっとしたまま座っていたら、レキにそう声をかけられた。そうでした、待たせていたんでした。


「あい。もう良いでしゅ。ありがとーごじゃいましゅっ……」


 そう言って立ち上がるも、転んで怪我をした所が痛くてうっかりよろけてしまう。転んだことをすっかり忘れてたから、痛みもわすれてて、つまりビックリしたのである。どんだけうっかりなの、私。

 そして、よろけた私がどうしたかと言うと、転びそうになるから側にあった物にしがみつくでしょ? 倒れ込まずに済んでホッとするでしょ? で、何にしがみついたのかなーって上を見るじゃない?


「…………」


 すっごい睨んでるレキと目が合うわけですよ! うっひょー! 事もあろうに私ったら、レキの太ももにしがみついてたよ! 筋肉質ですね! って違うか。


「ご、ごごごごごめんしゃ……ひゃうっ!?」


 慌てて謝ったんだけど、最後まで言う前に感じた浮遊感に間抜けな叫び声を上げてしまった。な、な、何!?


「少し早いけどどっかの間抜けが怪我した事だし、昼飯にする」


 そう言ってレキはスタスタ歩き始めた。私? レキによって右小脇に抱えられています……おかげで手足がぶらーん状態。

 きっとレキなりの気遣い、だと思うんだよね。そ、そうだよね……? でもこの抱え方は食後だった場合リバースコースだよ。抱っこマイスターとしては最低レベルの抱えられ方である! しかーし! 今の私はレキに文句を言える立場にない。無駄な抵抗はせずに、大人しくしていよう……


 こうして私はレキにぶらぶらと抱えられながら食堂へと向かうのでした。うっ、気持ち悪くなってきたぞぉう。


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