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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
未成年部門

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グートvsアスカ


「精霊を体内に取り込んでいますね……いつの間にそんな技術を身に付けたのでしょう、アスカは」


 シュリエさんは感心したようにそう告げた。体内に、精霊を……? そんな方法初めて聞いたよ。


「そんなことが出来るのか」

「ええ。ただ魔力の消費が少し多いのと、よほど相性が良くなければ出来ることではありませんが……ああ、ほら。初めての行使だったから長くは保たないようですね」


 それでも、初めてのチャレンジで成功したというのが驚異的ですが、とシュリエさんも驚いている。もちろん私も驚きだ。本当にそんなことが出来るんだ、と目から鱗である。

 シュリエさん曰く、自分も空を飛んで移動する時は、ネフリーちゃんを体内に取り込んでいるのだそう。だからあんなに自由自在なんだね! 私がフウちゃんの力で飛ぶ時はどちらかというと飛ばされてる感があるから、もう少しどうにかならないかなって思っていたのだ。なるほど、方法が違ったのかぁ。


「本当に相性がものを言いますから、基本的にその方法を教えることはないのですけどね。精霊が出来ると言い出さない限り、不可能な技でもあります」

「じゃあそれが出来たアスカは本当にすごいんだね! 今は使いこなすのが難しそうだけど、練習したらアスカはもっともっと強くなるってこと? すごいっ!」


 さっき観客席でシャイオと会話してた時に、アスカが聞いたんだろうなぁ。それを思い付いたのもすごいけど、すぐ実戦で使えるなんて。

 それにしても、精霊が言い出したら、か。うちの子たちはどうなんだろう? 私も誰か1人くらいは出来たりしないかな? 結構たくさんの聖霊と契約しているし、相性のいい子がいるかもしれない。だからそんな軽い気持ちで私もみんなに聞いてみたのだ……けど。


『出来るのよー!』

『アタシも出来るよっ!』

『オレっちもだぞ』


 妾もだ、ウチも、ボクも、とみんながみんな軽い調子で言ってきたので目眩がしてきた。え、待って。え、本当に? 戸惑いながら聞いてみると、ショーちゃんがさらに爆弾発言をしてくる。


『ご主人様はたぶん、どの精霊とも出来るのよ? ご主人様の魔力の質は、精霊の持つ性質とピッタリだからなのよー』

「……」

「……メグ」


 あまりのことに絶句していると、隣にいたシュリエさんから低くて静かな声が聞こえてきた。そ、そうだ、自然魔術の使い手であるシュリエさんには聞こえてたんだよね。

 ギギギ、という音が出そうな動きでシュリエさんの方に顔を向けると、とても眩しい笑顔が目に入ってきました。それから人差し指を立て、そっと自分の唇の前に置く。わぁ、お美しー……!


「……これで、お願いしますね?」

「は、はぁい……」


 や、やっぱり規格外っぽいな、これ。え、えーと、使うのはよく考えた方が良さそうだね。あはは……ちょ、ギルさん、何かを察したかのように小さくため息を吐くのはやめて! わかってるから!!

 でも一回くらいは試してみたいな。魔力もたくさん使えるならそれに越したことはないし。だって持て余してるんだもん……切実だ。


『おー目にも止まらぬスピードですねー! ややグート選手が押しているようですが、どうですかぁ? ザハリアーシュ様ぁ!』


 そうだ、今は試合中。この試合の解説の1人は父さまなんだね。さっきから試合中の2人はひたすら超スピードで攻防を繰り広げているからあまり進展がないように見えるけど、どうなんだろう?


『うむ、スピードを維持できているグートに対し、まだムラのあるアスカといったところであるな。だが、アスカの方は他にも仕込んでいるようでもある。グートも油断は出来ぬぞ』

『そうですね。たくさんの攻撃手段を持っているのはアスカの方でしょう。グートは少々、攻撃パターンにバリエーションがないようですから』


 お、もう1人の解説者はシェザリオさんだったか。うーん、そうなのか。グートはそのスピードがあるから、いつもすぐに決着がついちゃうのかな? だからワンパターンになってしまいがちなのかもしれない。

 でも、だからって他の手がないわけじゃないと思うんだよね。今まで使う必要がなかったってだけで。お互いに、まだまだ油断は出来なさそう!


 グートは雷、アスカは光を纏ってるから、ジッと見続けていたら目が痛くなってきた。ふと、横に目を向けたら、ハイデマリーとパチリと目が合う。……あれ? ずっとこっちを見てない?


「こら、ハイデマリー。あいつばっか見てないで試合を見るんだし」

「だって見ていても速くて追えないんだもの。それだったらメグ様を鑑賞させてもらった方がずっと目にいいと思って!」

「はー、もう、こいつやだなんだしぃぃぃぃ!!」


 えーっと、あの、うん。私もずっと見つめられ続けるのは居た堪れないな!? ちょくちょくチラッとそちらを見ると必ず目が合って微笑まれるのだ。お、おう……違う、そうじゃない。私は普通に仲良くなりたい!


『おーっと、アスカ選手、仕掛けましたぁぁぁ!』


 ワッと上がった歓声にすぐさまモニターに目を向けた。そこには、光を纏ったアスカが風の魔術でグートを捕らえている姿が! 風に包まれたグートはそのまま浮き上がり、なす術もないっていう状態だ。


『これはぁ、アスカ選手が決めちゃいますかねぇ!? っと、おぉー、グート選手、諦めずに体勢を整えましたぁ!』


 風によって半分逆さまになっていたグートだったけど、どうにか体勢を立て直したみたいだ。でもその時、アスカがグートの懐に飛び込む。そのまま飛び蹴りを繰り出した。グートのお腹辺りを狙って……!


『グート選手! アスカ選手の蹴りを両腕でガードしましたぁ! でもその勢いで飛ばされて行くーっ!!』


 グートは腕を交差させてガードしていたから、直接的なダメージは負ってなさそうだけど、風に包まれてるから勢いは殺せず、アスカの蹴りの勢いのまま飛ばされていってしまう。このまま場外!? と思ったところで突如、グートの周りの風が掻き消えた。え? 何? どうしたの?


『風が消えたおかげでグート選手、どうにか持ち堪えたようです! どうにか着地……ってあれぇ!? 一方のアスカ選手は落下してるぅ!?』


 本当だ! グートに飛び蹴りをしたことで空中にいたアスカだったけど、なぜか頭から地面に向かって落ちていってる! 何があったの!?


『む、感電したのだろうな』

『感電、ですかぁ? ザハリアーシュ様ぁ』

『うむ、ガードした瞬間に雷を放出したのであろう』

『そうですね。そのせいでグートと己に纏っていた魔術が消えたのでしょう。彼は自然魔術の使い手。精霊にも少なからず雷の影響があったのかもしれませんね』


 解説を聞いてアスカの様子を観察すると、確かに風の精霊リルフちゃんも一緒に落下しているのがわかる。あ、光の精霊シャイオくんがアスカの身体から出てきて慌ててる。あの子じゃ落下するアスカを支えられないんだ!


 このままじゃ、アスカが怪我をしちゃう! 心配になって胸の前で手をギュッと握りしめていると、会場の中心に稲光が走るのを目撃した。あれは……グート?


『おぉーっ! 危機一髪ーぅっ! アスカ選手が落下する前にグート選手が受け止めましたぁーっ!! わぉ、かぁーっこいーい!!』


 落ちてくる人を受け止めるなんてかなり重さがかかると思うのに、グートは尻餅を突きつつもアスカを受け止めてくれた。ちょっと顔を歪めてるみたい。大丈夫かな?


『二人とも無事でしょうかぁ!? 審判が近付いていきますぅ……』


 会場の中心でうずくまる二人に、審判であるクロンさんが近付いて行く。心配だな……そう思いながらひたすらモニターをじっと見続けていると、ポンと肩に手を乗せられた。ギルさんの大きな手は暖かくてそれだけでホッをした。大丈夫だって言われているみたいで。


『審判が手を上げました! アスカ選手、戦闘不能によりこの試合の勝者はグート選手ですぅ!!』


 わぁぁっと会場中に歓声が湧き上がった。グートが勝ったことは喜ばしいしすごいけど、今はアスカが心配だ。戦闘不能って言ってたし、気を失ってるのかな。大丈夫かな……?


「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ、メグ。あまりに危険な攻撃の場合はすぐに解説席から誰かしらが手を出すことになってますから」

「え?」

「つまり、手が出されてないってことはそこまで気にするほどの攻撃ではないってことだ」


 だから解説席には仕切りがなくて、すぐに飛び出していけるようになってるんだって。なるほど、だから各ギルドのトップが交代で解説してるんだ……見極めをするのにこれ以上の人選はないもんね。成人部門だったとしても安心感が半端ない。

 でも、心配なものは心配だ。そわそわしながら待っていると、ようやく控え室にアスカとグートが戻ってきた。


「アスカ!」

「大丈夫ですよメグ様。怪我はありませんし、すぐ気付きますから」

「クロンさん……良かった。ありがとうございます」


 アスカはクロンさんに抱かれて控え室にやってきた。そのままアスカを簡易ベッドに寝かせると、クロンさんが微笑みながらそう言ってくれたから心底安心したよ。だって、あのクロンさんが素の笑顔を見せてくれたんだよ? 間違いなく大丈夫だとわかるってものだ。


「……アスカは?」

「レキ!」


 すると、すぐさまオルトゥスの観客席に続くドアが開いてレキが入ってきた。どうやらこの場でアスカを診てくれるみたいだ。ますます安心して胸を撫で下ろす。それなら近くにいたら邪魔になっちゃうよね。私はそっと後ろに下がった。

 それからすぐに、気まずそうに眉尻を下げているグートに気付く。私はそんなグートに歩み寄ってお疲れ様、と声をかけた。


「あ、メグ……その」


 目を泳がせながら口ごもるグート。もしかして、アスカを危ない目に遭わせちゃったからって気にしてるのかな? これは試合なわけだし、ちょっとくらい危険な目に遭うのは仕方ないことなのに。グートはアスカを受け止めてくれたし、気にすることなんてないんだけどな。


「グート、アスカを受け止めてくれてありがとう。それと、勝ち抜きおめでとう!」


 だから、素直にお礼とお祝いの言葉をかけた。それを聞いたグートはパッと顔を上げてほんのり頰を染めたけど、まだちょっと気にしているのか、ありがとうという返事に張りはない。んー、どうしたものかな?


「ね、グート。今の試合、とってもすごかったよ。危うく場外ってところで、反撃したんだもん。見事な勝利だったんだから、喜んでおいた方がいいよ?」

「え、でも……」

「だって、勝ったグートがそんな顔してたら、アスカは怒るよ? ぼくに勝ったのになんだよその顔ーって!」


 きっとアスカは悔しがる。ものすごく。わかりやすくみんなの前で悔しがるか、人のいないところでひっそりと悔しがるかはわからないけど……絶対に勝つぞーって意気込んでたから。それなのに、グートがそんな調子だったらきっとめちゃくちゃ怒ると思うんだ。


「ちゃんと自分の力を発揮して勝てたんだもん。もっと胸を張るべきだよ! アニュラスのみんなも、悲しがるよ?」

「うん……うん、そうだよな。ありがとう。その、嬉しいよ」


 せっかくの闘技大会なのだ。勝ったからには笑顔でいた方が絶対にいいよ! 私はそっとグートの手を両手で取った。


「改めておめでとう、グート! すっごくかっこよかったよ!」

「えっ、う、あ……あ、あああありが……っ!!」


 グートにも笑顔になってほしいなぁと思ってそう言ったんだけど、当のグートは笑顔どころか驚いたように目を丸くして耳まで真っ赤になった挙句、犬耳と尻尾がポンッと飛び出してしまった。あれ?


「きゃっ、メグ様ったら……罪作りですのねー!!」


 なぜかハイデマリーが盛り上がっているけど……あー、面と向かって褒められたから恥ずかしさがキャパオーバーしちゃったのかな? 本当にシャイだよね、グートって。なんか、ごめん?


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