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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
未成年部門

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ちょっと変わった女の子


 結局いろんな人から叱られたジュマ兄。しかし心配することなかれ、例の如く鋼のメンタルを持っているジュマ兄はその数秒後にはケロッとしておりました。本当に心も身体も頑丈だよね、尊敬する! おかげで私の罪悪感も吹き飛んでしまったよ。ジュマ兄ありがとう!


「がんばれよ、メグ!」


 ニパッと笑って拳を出してきたので、私も笑顔でその拳にコツンと拳をぶつけた。よぉし、頑張るぞ! その前にアスカとグートの試合も観なきゃだけど。

 うーん、2人の試合かぁ。どっちにも勝って欲しいから複雑だ。悔いの残らないように全力を出せるように応援しよう。


『おまたせしましたぁ! 第4試合が始まりますので、選手の方々は控え室に来てくださいねぇ! 第5試合の選手もですよぉ!』


 そしてついに、可愛らしい声のアナウンスが会場内に響き渡った。ひえぇ、緊張してきたぁ!


「よし、頑張るぞー! あ、メグ、緊張してる? ぼくと一緒だね!」

「え、アスカも緊張してるの? 見えないーっ」

「してるよー。1試合めほどじゃないけど!」


 くっ、やはり1度経験してるアスカは違う! えへへー、と笑いながら頰をツンツンしてくるアスカは絶対に私をからかってる!


「大丈夫だよ。ぼくも一緒に控え室に行くし、シュリエもいるし、ギルだっているじゃない」


 アスカの言葉にハッと顔を上げる。すると、ギルさんとシュリエさんが優しい眼差しでこちらを見ていることに気付いた。そうだ、1人で向かうわけじゃないんだもんね。試合中は自分一人だけど……でも、それは相手だって同じなんだから。


「さ、行きましょうか」

「アスカ、メグちゃん、頑張ってね!」

「アスカー、また勝ってこいよー!」

「メグ、応援、してる」


 みんなからの応援が嬉しい。心がポカポカしてくるよ。よぉし、オルトゥスのメンバーとして恥ずかしくない試合をするぞー! グッと拳を握りしめてみんなに返事をすると、私はアスカたちとともに控え室へと続くドアを通り抜けた。


「わ、結構広いんだね。あ! モニターもある!」


 ドアを開けた先には広々とした部屋が広がっていた。ソファがあって、小さなテーブルがあって、何かあった時のためか、簡易ベッドも置いてある。そしてなにより声にも出してしまったけれど大きなモニターがその存在を主張していた。


「おや、よく知っていましたね。これはオルトゥスが開発した最新式のモニターなのですよ。ここに試合の様子が映し出されますから、待っている間も観戦できるというわけです。私たちのような付き添いにはとても助かりますね。有事の際でない限り、会場への立ち入りは出来ませんし」


 私の驚く声に説明をしてくれたのはシュリエさん。それと、これモニターっていうんだー、というアスカの感心したような声。さっき見ていたからか、今驚いた様子はないけど、説明を聞いてへー、と唸っている。


「ぼく、さっきも今もすぐ試合だからこれで見られないんだよね。いいなぁメグは見られて。それにしてもよく知ってたね?」


 アスカの鋭い突っ込みにドキッとする。私に前世の記憶がある、ということは一部の人にしか知らされてないのだ。だからアスカはまだ知らない。頭領であるお父さんの出自やわたしとの関係性も知らないんだ。

 いつも一緒にいるメンバーがだいたい一緒だし、その人たちはほぼ事情を知ってるから油断してたよ。別に隠しているわけではないけど、今説明すると長くなるからここは誤魔化しておこう。


「えっと、前に見たことがあったから!」

「開発中の時ってこと? そっかー」


 うまく誤魔化せたようである。嘘も言ってないからね! ホッと胸を撫で下ろしていると、シュリエさんとギルさんも苦笑いを浮かべているのが目に入った。私に合わせてくれるつもりなのか、二人から何かを言うつもりはなさそう。とても助かります。


「お邪魔しまーす」


 と、そこへ別のドアからアニュラスのグートと付き添いのアシュリーさんが入ってきた。そっか、次の試合に出るんだもんね。ということは、私の対戦相手も来るのかな?

 せっかくだから一言だけでも声をかけにいこうと私はグートの元へ歩み寄る。側に立つアシュリーさんにまずは挨拶と思って頭を下げると、アシュリーさんも軽く頷いてくれた。目が細いから表情も読めないし無口だけど、絶対優しい人だよね、アシュリーさんて。


「グート、さっきの試合はすごかったね! 次も頑張ってね!」


 それからすぐにグートに向き直った私は、まずさっきの試合の感想を伝えた。本当にすごかったもん。一瞬で試合を決めちゃって、私なんか目で負えないスピードだったし、相手のピーアが倒れて怪我をしないように支える姿なんかカッコ良かったし!

 その辺りを全部伝えたところ、褒められて恥ずかしいのか、グートは顔を真っ赤にさせてしまった。なんだか可愛らしいな。


「え、あ、う、うん。その、ありが……」

「ちょっとメグ!? ぼくの対戦相手だよ!? グートの方を応援するわけーっ!?」


 どうにか絞り出したグートのセリフを、アスカが遮ってしまった。こらこらー! 単純にさっき思ったことを言ってるだけだし、悔いのないように全力で頑張ってねって伝えていただけなのに拗ねないでよー! んー? でも、そんなことくらいアスカだってわかってるよね?


「もう、アスカ! そうじゃないってわかってるでしょ!?」

「あ、バレた?」


 ほらね。チラッと舌を出して笑って見せたアスカは、グートに手を差し出して握手を求めた。最近すぐからかおうとするんだから油断も隙もない。本当に誰に似たんだか、この小悪魔っぷり。


「グート、精一杯やろうね! ぼく、負けないんだから!」

「俺だって、負けないからな!」


 ガシッと手を取り合う2人がなんだか微笑ましい。それに頼もしくも見えるよ。どっちが勝っても嬉しいし、悔しいだろうな。ここでしっかり応援していよう。もちろん、2人ともだよ!


 2人を微笑ましく見ていたら、再び別のドアがガチャリと開く音が聞こえてきたので顔を向ける。あ、あの人はー!


「エピンク!?」

「うっ、絶対言われると思ったんだし! だから嫌だったんだしーっ」


 うわー、懐かしい! 昔この人に攫われかけたっけ。相変わらずボサボサの栗毛は長く、黒い瞳には光が見えないけど……昔よりずっと親しみやすさみたいなものは感じるようになったかも?

 泡のカンガルーな亜人なんだよね、たしか。あの時、泡がしばらく怖かったなぁ。それもいい思い出である。今はマーラさんの下で一生懸命働いているみたいだし、別に思うところはないんだけど……ギルさんやシュリエさんの視線はとても冷たい。それをわかってるからこそ、エピンクも嫌そうな顔をしてるのだろう。

 きっと、行けって言ったのはマーラさんだろうな。リーダーの指示には逆えなかっんだ、きっと。おっと、エピンクに気を取られている場合ではない。せっかく私の対戦相手のハイデマリーも一緒にいるんだもん。しっかり挨拶しなきゃ。


「あの、ハイデマリー、ちゃん? その、よろしくね!」


 近付いて声をかけてはみたものの、ハイデマリーはボーッとしたまま微動だにしない。あ、あれ? 私、まずいこと言っちゃった? そんなことないよね?


「おい、ハイデマリー。声かけられてんだし!」

「はっ!?」


 すると見兼ねたエピンクがハイデマリーの背を軽く小突いた。そのおかげで我に返ったのか、ハイデマリーは深々と頭を下げてようやく声を出してくれた。


「あ、あの、あたしはハイデマリー……って呼んでくれていたわよねやだ覚えてもらってるとかなにそれ幸せメグさんめちゃくちゃ可愛いどうしよう妄想が止まらないきっとたくさんの殿方に声をかけられて戸惑いながらも微笑みかけるのだわそれでますます色んな方を虜にしていってそれで」

「おーい、戻ってくるんだし、ハイデマリー! あー……コイツ、変なヤツなんだし。すぐ自分の世界に入り込んでよくわかんねーことを言い出すんだし」


 やっと挨拶が出来た! と思ったらどうにも言葉が途切れない上に早口だったからビックリしたよ。なんと返せばいいのかわからなくて目を丸くして固まっちゃった。

 そ、そっか、妄想癖があるんだね。妄想は楽しいので気持ちはわかるけど、表に出すのはほどほどにした方が……あと、殿方にたくさん声をかけられたりはしないよ? どこの世界線の私だ、それは。


「えっと、あの、いい試合をしようね! お互い頑張ろう!」

「ああああ優しいのですねメグさん本当に可愛い上に優しいとか天使? 天使に話しかけられちゃうなんて光栄の極み嬉しい頑張りましょうね」


 ど、どこからどこまでが私に話しかけている内容なんだろう。と、とにかく挨拶は済ませられたからいいかな? 大人しそうな美人さんだなって思っていたハイデマリーは、ちょっとばかり妄想癖のある変わった女の子でした。でも、面白い子だよね。仲良くなれたらいいんだけどな。


『それでは第4試合始めますよぉー! 選手のお2人は出てきて下さぁい!』


 と、ここでついにアナウンスが入った。呼ばれたアスカとグートの2人は立ち上がり、それぞれキッと睨み合う。すでに戦いが始まってるという感じがしてビリッとした空気が漂っている。仲は良くなったけど、試合は試合だもんね。


「ふむ、なかなかいい気迫を出している」

「子どもたちの成長を感じられて嬉しいことです」


 ギルさんとシュリエさんが感慨深げに2人を眺めている。完全に保護者の顔付きだ。保護者だけど。


「さ、メグ。あちらに座るといいですよ。試合が終わってもすぐに次の試合が始まるわけではありませんから。アスカたちの試合をモニターで観戦しましょう」

「うん! あ、ハイデマリーもこっちにおいでよ! 一緒に観よう?」


 シュリエさんに誘われてギルさんも一緒にソファへと移動した私たち。せっかくだからと思ってハイデマリーにも声をかけたんだけど……悲鳴を上げられてしまった。なんで!?


「き、きゃぁぁぁっ! き、聞きましたかエピンクさん!? メグ様があたしに一緒に、一緒に観ようってぇぇぇ!!」

「あーっ!! うるせぇんだし! お前さっきもあの2つ結びの子に同じ反応してたんだし! いい加減にするんだしーっ!」


 2つ結びの……ルーンかな? 辟易とした様子のエピンクを見るに本当なんだろうな。というかついにメグ「さん」から「様」になっている。


「仕方ないのよ! あたし、可愛い女の子が大好きなんですからぁ! はぁぁぁ最高、女の子の匂いぃ……お、お隣に座ってもいいの? いいのですかメグ様ぁぁぁ!?」

「……悪いことは言わないんだし、少し離れた方がいいんだし……ハイデマリーは無害だけどちょっと変態なんだし」


 お、おう。ギルさんですら軽く引いている。仲良くなりたいけどこの子の場合は意味が変わってきそうだ……。


 結局、ソファの真ん中だけ1人分開けて私とハイデマリーが座り、私の隣にシュリエさん、後ろにギルさん、ハイデマリーの後ろにエピンクという配置で収まった。私は別にハイデマリーの隣でも良かったんだけど、ハイデマリー本人が興奮しすぎて隣に座れなかったのだ。ま、まぁいいけどさ、別に。居た堪れなさは感じるけど!


「始まるようですよ」

「あ、本当だ!」


 そうこうしている間に、アスカとグートが試合会場の所定の位置についたようだ。ギュッと拳を握りしめてモニターを凝視する。


『審判の腕がー、下げられましたぁっ! 試合開始でぇす!』


 合図が出された瞬間、同時に2人が動き始める。グートは雷の速度だよね。うー、目で追えない! でも、同じくらいの速度でアスカが動いているのは辛うじてわかる。ええい、メグ! しっかり見なさいっ! 集中!


 えーっと、グートはずっとアスカに向かって移動を続けているけど、ギリギリのところでアスカが避けてる、ってとこかな? 運動量は圧倒的にグートが多いみたい。グートの攻撃の基本は体術っぽいなぁ。もしかしたら拳や脚に雷を纏わせているかもしれないから、一撃でも当たったら致命的だ。うまく防御が出来たとしても、痺れて動きが鈍くなるかもしれないね。

 だからこそアスカも避け続けてるんだと思う。グートが息をつく暇もないほど攻撃を仕掛けてくるから、避けるので精一杯って感じに見える。避けられてはすぐに方向転換をして向かっていくグートは、まるで跳ね返るボールのようにその動きを止めることがない。


 攻撃を避けてばかりのアスカだけど……そもそもアスカのこんなに素早い動きを見たことないぞ? アスカは身体能力の強化魔術は使えないし、やっぱり光の精霊シャイオの力を借りているのかな?

 え、でも、どうやって? 説明を求めて顔を横に向けると、ジッと試合の様子を観察をしていたシュリエさんがモニターから目を離さずにああやはり、と口を開いた。


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