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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
未成年部門

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グートvsピーア


 大歓声に包まれる中、試合後の礼を終えたマイケとアスカは、それぞれ控え室に戻っていく。水浸しになった会場のクリーン作業に少しだけ休憩が入るようだ。2試合目が始まるまで、10分くらいはかかるっぽい。

 しばらくして、私たちのいる観客席にアスカとシュリエさんが戻ってきた。もちろん私たちはみんなでアスカを迎える。みんなで拍手を送ると、アスカは照れたように頭を掻いた。可愛い。


「やったねアスカ! すごいよ!」


 シュリエさんの魔術によって濡れた髪や衣服を乾かしてもらっているアスカに声をかける。まだ興奮してるよ! 全力を出して戦えればそれでいいかな、なんて甘っちょろいことを考えていたけど、こうして勝利を目にすると欲が出てくるものだね! 私も勝ちたくなってきちゃった。

 アスカはやっぱり照れたようにありがと、と笑顔を向けてくれた。あれ? ちょっと元気がない? いつものアスカだったらそうでしょ! すごいでしょ! って言ってきそうなものだけど、どうしたのかな?


「ちゃんと隙を狙って仕掛けていましたからね。アスカ、あれはとてもいいタイミングでしたよ」

「マイケはあの水龍を動かす際、一瞬だけ隙が出来ていたからな」


 シュリエさんが微笑みながら褒め、ギルさんが補足説明をしてくれる。なるほど、そうだったんだ。私は全然、見抜けなかったよ。ダメダメだぁ。そう考えるとやっぱりアスカはすごい!

 

「ありゃ癖になっちまってるよな。でもそこを見抜いて踏み込むなんてすごいぞ、アスカ!」


 続いてジュマ兄もワシワシとアスカの頭を撫でながら褒める。そっか、マイケの攻撃に癖があったってことか。それはマイケにとっては課題になっていくのかな。

 一方、アスカはやっぱりどこか呆けていて、いつもと様子が違う。ジュマ兄の手が離れた頃、ようやく戸惑ったようにアスカが口を開いた。


「えっと、実はぼく、隙とかは……わかってなかったんだ。ただなんとなく、あの時跳んだ方がいい気がして、そしたら身体が勝手に……」


 なるほど、アスカとしては無意識の行動だったんだ。だからみんなから褒められても実感がなくて、素直に喜べなかったんだね。どことなく罰の悪そうな顔をしているのはそういうことかぁ。


「あら、それなら余計にすごいことじゃない、アスカ。戦闘において、考えるより先に身体が動く、っていうのはとても大切なことよ。もちろん、隙を見つけられる目も必要ではあるけれど、より実践に必要なのはその要素だもの」

「そうさ、それが出来たことに胸を張るべきだよ。リュアスカティウス、改めておめでとう」


 でも、サウラさんとケイさんの言葉を聞いてじわじわと喜びを実感してきたのか、アスカがようやくいつもの笑顔を見せてくれる。


「そっか、ぼく、勝ったんだ……勝った! ぼく、すごーい!」


 そうそう、それでこそアスカだよね! わーいと言いながら両腕を開いて私に向かってきたので、受け止めるために私も腕を広げた。そのまま飛び込んできたアスカに危うくバランスを崩しそうになったけど、私の背をそっとギルさんが支えてくれたおかげでしっかりとアスカを受け止められたよ。ありがとう、ギルさん!


「っと、いけない! 次の試合も観なきゃね!」

「そうですね、第二試合目で勝ち進んだ者と次に対戦しますから」

「よーく観ておかないと! シュリエ! 膝に乗せて! あ、メグの隣ね!」

「はいはい」


 ガバッと私から身体を離したアスカは、慌ただしくシュリエさんと言葉を交わすと急いで観客席へと向かった。ふふっ、はしゃいじゃって可愛いな。私は後ろにいたギルさんと目を合わせて微笑み合うと、一緒にさっき座っていた席まで向かった。


「えーっと次はグートとピーアかぁ。シュリエは2人とも知ってる?」

「ええ、なんとなくは。グートには会ったこともありますが、ピーアは見かけたくらいですね」


 シュリエさんの膝の上で思い切り寄りかかりながら足をブラブラさせるアスカはなんだか年相応の男の子って感じでなんだか癒される。座らせているシュリエさんはアスカがジッとしてないから大変かもしれないけど、そんな様子を微塵も感じさせないのはさすがである。

 ……私もやってみたくなった。控えめにトンッとギルさんに寄りかかってみる。


「? どうした、疲れたか?」


 相変わらずの過保護な発言が降ってきた。それには答えずに足をブンブンしてみる。お、おぉ? 椅子に座ってやるより安定感がすごい。さすがはギルさんである。


「ふふっ、アスカの真似をしてみたくなったのね。メグちゃんたら」

「え、あ、ご、ごめんなさい! つい……」


 サウラさんに指摘されたことで急に恥ずかしくなってしまった。本当にこういう子どもの精神が突然顔を出してくるのやめてほしいし、やめたいっ!


「別に構わないが」


 口ではそう言ってるけど、その仕方ないな、というような眼差しは地味に刺さるのでやめていただきたい。いやいや、止めるのは私だ! ごめんなさーい! 大人しくしてます!


「あ、オレはそのピーアってヤツに会ったことあるぞ! 訓練中のところを通りがかったことがあんだよ」

「え、そうなの!? どうだったか教えてジュマ!」


 アスカたちの席の後ろからジュマ兄が身を乗り出して口を挟んできた。あ、それはわたしも知りたい! アスカと一緒になってジュマ兄の顔を見上げた。


「なーんか気が弱い感じでさ、ずっとメソメソ泣いてんだよ。だからオレ、苦手だなーって興味がなくなってたんだけどよ」

「直球すぎますよ、ジュマ。絶対に本人には言わないでくださいね」


 確かに直球である。私がこれを面と向かって言われたら普通に凹む。けど、違うんだよ! とジュマ兄が熱く語り出した。


「ダメダメだなって思ってたのが間違いだった! こいつすげぇ魔術使うんだよ! でっかい魔術をバカスカ撃ってさ、見ててめちゃくちゃ楽しかったんだよなー! やるじゃんって思った!」


 やっぱりジュマ兄にとっては強さがバロメーターなんだなぁ。強い人が好き、で一貫してる。けど、私にも良くしてくれるのは基本的に人が好きなんだろうなぁ。お父さんが鬼としては珍しいんだって言ってたっけ。確かにラジエルドさんは怖かったもんねぇ。睨まれないようにある程度、強くなっておこう、うん。


「高威力の魔術ですか……ピーアは海兎(みと)という亜人ですから、また会場が水浸しにはなるかもしれませんね。あ、出てきましたよ」


 シュリエさんの声にふと会場に目を向けると、見慣れたクリーム色の癖毛の少年と白銀の髪を三つ編みにした大人しそうな女の子が出てきた。お目めが赤くてウサギさんみたいだ。あ、ウサギの亜人だったっけ。耳がウサギさんだもんね。え、あの子がものすごい魔術を使うの? 人は見かけによらないなぁ。


『お待たせしましたぁ! 第二試合を始めまぁす! アニュラス所属のグート選手とステルラ所属のピーア選手ぅ! グート選手は人型で出てきましたねぇ! これが吉と出るか、凶と出るかぁっ! 解説のシェザリオさぁん。どう思われますかぁ?』

『そうですね、グートはなんといってもディエガの息子ですから、大方、人型以外は認めないという指示を受けているのではないですかね』

『うーん、スパルタ! 英才教育って感じですねぇ!』


 会場内に響いてきたのは可愛らしい実況の声と涼やかな男性の声。シェザリオさんってたしかステルラのトップの人だったよね。たしかにシェザリオさんの言う通りかもしれない。息子といえど、ビシバシ鍛えそうだもんね。たぶん、ルーンにも。


『でもそっちに気を取られちまっては試合でいい動きが出来ねぇ可能性もあるな。人型の維持ってのは慣れるまでは厳しいんだろ? シェザリオ』

『そうですね、あの年齢でそれが出来るというだけでもすごいことですから、そのまま試合となるとそれがどう影響するかわかりません』


 あ、お父さんの声だ! この試合のもう一人の解説者なんだね。でもそっか。人型を維持するのって大変なんだ。改めてオルトゥス含めた特級ギルドの皆さんがすごい人たちなんだって実感する。


『なるほどぉ、その点に注意して観るのも良さそうですねぇ! あ、両者、位置につきましたぁ! 審判の手が……振り下ろされました! 試合開始でぇっす!』


 クロンさんの手が振り下ろされたその瞬間から、試合が動いた。ピーアがすぐさま足元に大きな魔術陣を作り上げたのだ。

 思わずビクッと身体を震わせてしまう。またしてもグッとギルさんが腕に力を込めてくれたことでどうにか落ち着く。本当にお手数お掛けします……もはや条件反射である、許して欲しい。


『これは……かなり大きな魔術ですね』

『ほー、ピーアの保有魔力量は相当なもんだな。こいつは将来が楽しみだ!』


 マイク越しに感心したようなシェザリオさんの声と呑気なお父さんの声が聞こえて来る。たしかにものすごい魔力量だ。ジュマ兄の話だと、この威力の魔術をポンポン使ってたってことだから、余計に末恐ろしい。あんなに可愛らしい見た目なのに!


『ピーア選手が繰り出したのはぁ、津波だぁぁぁっ! きゃー、すっごい! クロン様並みじゃないですかぁ!?』


 ほ、本当に津波だ……! 目の前でみるとすごい迫力。これを受け止めるグートはさぞ驚くだろうなぁ。私だったら一瞬、足が竦む気がする。

 津波はその威力を保ったまま会場全体を襲う。そんな中、術を放ったピーアの魔術陣周りと審判のクロンさんだけがその場に止まっている。水の膜を張ってクロンさんが平然としてるのもたしかな実力をか感じる……! って、あれ? グートは? まさか、飲み込まれちゃった!?


「決まったな」

「え?」

「ええ、グートの勝利ですね」

「ええっ!?」


 心配になって会場を覗きこんだその時、ギルさんがそんなことを言うので驚いて振り向く。次いで口を開いたシュリエさんの発言にさらに驚いてアスカと一緒に声を上げてしまった。どういうこと? と目を白黒させていると、ツイツイ、とシュリエさんに指で会場を示される。

 目を向けてみるとそこには……津波が引いていく会場の中心でぐったりと倒れ込むピーアを片腕で支えているグートの姿。え、え、何が起こったの!?


『せ、戦闘不能! ピーア選手が倒れてますぅ! ど、どういうことですかぁ! 解説さぁぁん!』


 実況のカリーナさんも戸惑った様子だ。しっかり、実況! でも、実況を頼まれているくらいの実力を持つ人でさえ、見逃したんだという事実に愕然とする。


『グートがやったことは単純ですよ。ただ津波が自身を襲う前にピーアの元へ行き、手刀を食らわせただけですから』

『えっ、それだけですかぁ!?』


 なにそれ、すごい。それだけ? っていう感想はたしかに同意ではあるけど、つまりそれだけの動きをあんな一瞬でこなしてしまったグートがすごいんだ。


『グートは雷速犬(らいそくけん)の亜人だ。爆発的な瞬発力、これがあいつの武器だからなー』

『ほえーっすごぉい! 何はともあれおめでとうございまぁす! 第二試合目はグート選手が勝ち上がりましたぁぁぁっ!!』


 つまり、雷の如き速さってこと? そ、そんなの見破れないよぉ! グート、すごいんだぁ。ふおぉ……!


「さて、次の試合相手が決まりましたね、アスカ」

「うっそ、でしょぉ。グートがあんなに強いなんてー!」


 クスッと笑いながらシュリエさんがそう告げると、アスカが自信なさげにしゅんと項垂れた。うっ、私もそうなるかも……!


「速いことが強いわけではありませんよ。いいですか、アスカ。それは逆を言えば長期戦には不向きということです。彼は人型を維持するのにかなり苦戦していましたし、有利なのはむしろアスカの方です」

「えっ、そうなの?」


 シュリエさんの言葉に顔を上げるアスカ。そうですよ、とシュリエさんは続けた。


「ですから、あとはあの速さを見切れるかどうかにかかっています。貴方なら出来るでしょう」

「でも、ぼく、今の全然見えなかった。何が起きてたのかわからなかったのに……」

「仕方ないですね。ヒントをあげましょう。……貴方の最初の契約精霊はなんですか?」


 その言葉にハッとした表情になるアスカ。何かに気付いたみたい。少しだけ悩み、それから光の精霊、シャイオに声をかけた。


「シャイオ……ぼくに考えがあるんだけど」

『うむ! なんでも言うがいいのである! まかせるのである!』

「もー、まだ何も言ってないよ! あのね……」


 アスカと精霊のシャイオは2人で作戦会議を始めた。よかった、何かを掴めたみたいで。私はホッとして息を吐く。……いやいや、私だって対戦するかもしれないんだから安心してる場合じゃない! 試合観戦で勉強勉強! それに、次の試合で勝った方と戦うんだから。私はドキドキするする胸を押さえた。


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