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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
大会準備

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戸惑い


「もうっ、ビックリさせないでーっ」

「え? ビックリさせちゃった? ごめんね、メグお姉ちゃん」


 腰に手を当ててアスカに抗議をすると、シュンと見るからに悲しそうな顔で謝られてしまったのでもう何も言えない。くっ、可愛い! 許す! 私たちのそんなやり取りを見て、周囲でざわついていた大人たちも落ち着きを取り戻し始めた。そうだよね、この可愛さの前にはまぁいっか、ってなるよね、わかる。でも、続くアスカの一言に再びギルド内が凍りついた。


「けどさ、ぼく、メグお姉ちゃんとは(つがい)同士になりたいから。いいでしょ?」

「え? つがい……?」


 番っていうと、あれでしょ? 夫婦みたいな、そういう関係ってこと、だよね? いやいやいやいや、何を言ってるんだアスカは。まぁ年の近いエルフ同士だし、まだ子どもだし、そもそも相手が少なすぎるからそんなこと言ってるんだろうってことは頭ではわかってるんだけど……こう、ストレートに好意を告げられるのは慣れてなさすぎてね? えっと、つまりね?


「あははっ、メグお姉ちゃん真っ赤になってる! 嬉しかった? ねぇ、嬉しかったんだよね?」

「あう……」


 耐性がなさすぎてこれですよ。ごめんなさいね! 人間として生きてきた日々もこんな扱いされたことがなかったからさ! すぐ顔が赤くなっちゃうんだよ! うわぁ、本当に熱い。大丈夫か私。相手は子どもだよ? 私も子どもだけど。


「アスカ、そこまでですよ。メグが困っています。久しぶりに会えたのですから、もっと他に話すことはないのですか?」


 そこへついに助け舟がやってきた。エルフの師匠、シュリエさんである。確かに今、私は困っている。た、助かった。


「えー。久しぶりだからこそ言ったんじゃん。だって、メグお姉ちゃんはこんなに可愛いんだよ? 色んな人が狙うでしょ? 早めにぼくと番になってもらわないと、取られちゃう」

「……一体誰にそんなことを教わったのでしょうね」


 わぁ、子どもとはいえ本気だ。さながら一つしかないオモチャだ私は。早くしないと取られちゃうって、早い遅いの問題じゃないと思うんだけどなぁ。それにしても、シュリエさん相手にこんなにも言い返せる人、初めて見た。曲者になる予感しかしないよ……アスカ、なぜそうなった。

 ふと、ギルさんと目が合った。ギルさん、と声をかけようと口を開きかけて、止まる。なぜなら……。


「え……?」


 ふいっと、目を逸らされてしまったから。


 え? 何? こんなことは初めてで、心臓がドクンと大きく脈打つのを感じた。どうしたんだろう。調子が悪い? いや、ギルさんに限ってそんなことはない。何か怒らせることした? ……いや、割と何をしても呆れた顔をして許してくれるはず。うーん、なんだろう。モヤモヤする。

 ……うん、聞きに行こう。私は元々、何か変だと思ったら自分から行動を起こすタイプなのだ。怖がって聞きに行かない、という選択肢はない。とはいえ、こういう感覚、ものすごく久しぶりだ。メグになってからは常にチヤホヤされていたから、誰かに拒絶って本当に久しぶり。そう、だからそのせい。手や足が震えてしまうのは、そのせいなんだから。


「ギルさ……」

「ね、メグお姉ちゃん! 今日はご飯一緒に食べるんだよね?」


 いざ、と思ったところでアスカに声をかけられる。シュリエさんとの話は終わったのかな? ……いや、シュリエさんがため息を吐いているから、根負けしたっぽい。め、珍しい。

 ギルさんのことは気になるけど、今日明日は、アスカのことは私が案内するって約束だった。だからまずはこっちを優先するべきだよね。それに、なんだかんだで久しぶりに会えて嬉しいし。気に病んでたら、せっかくアスカが遠くから来てくれたのに失礼だし、心配させちゃうかもしれないもん。


「うん、一緒に食べよ! アスカ、もうお腹空いちゃった?」

「えへへ、実はそうなんだ。なんでかなー、お昼にもご飯食べたのに」

「大人と違って子どもはすぐお腹空くっていうし、長い間移動してたから疲れたんじゃないかな? 結構早いけど、食堂に案内するよ」

「そうかも。うん、連れてって!」


 ニパッと音がしそうな勢いで笑うアスカはやっぱり可愛い。男の子ではあるんだけど、まだ子どもで声も高いしエルフだし、女の子みたいに見える。でもこれは男の子にとっては言われたくないことかもしれないので、心の中だけに留めておこう。可愛いけど。すごく可愛いけど。

 じゃあこっちだよ、と私はそっとアスカの手を引き、食堂へ案内した。なんか、ギルドの皆さんがこっちに注目している。そんなに目立つかな?




 食堂にはまだ人がそんなにいない。早い時間だから当たり前だけどね。せっかくなのでのんびりご飯を食べつつ、私たちは精霊の紹介をし合うことにした。契約精霊は多いから、最初の契約精霊だけだけど。


「声の精霊って珍しいね。ぼく、初めて見た!」

「えへへ。一目見た時からピーンときたの。とっても有能なんだよ!」

「能力のことは想像がつかないけど、メグお姉ちゃんが言うならすごいんだね」


 やはりというべきかなんなのか、声の精霊っていうのは珍しいようだ。エルフの郷でも契約してる人は見たことがないんだって。


『声の精霊は、数も少ないのよー』

「そうなの?」


 そこへショーちゃんのお言葉。それは初耳かも! そう思って聞き返すとショーちゃんはくるくる飛び回って教えてくれた。


『まず、人の多いところじゃないと生まれないのよ? 嘘偽りのない言葉の中から生まれるから』

「そうなんだ……でも、人の声じゃなくても声なら聞き取れるんだよね? 人の多い所じゃないとダメなの?」

『よくわからないけどー、たっくさんの言葉が飛び交うのは人だからだと思うのよ?』

「なるほどー」


 しかも嘘偽りのない言葉の中から生まれるってことは……うん、確かに数が少なくて当然だ。ちなみにショーちゃんはオルトゥスで生まれたって言うから、オルトゥスの人たちがどれほど正直者なのかがわかるというものだ。誇らしさに笑みが溢れる。


「それなら、今度エルフの郷でぼくも探してみようかな。声の精霊」

「エルフの郷の人たちもとってもいい人たちだから、声の精霊もきっといるよね!」

「そう言ってもらえると嬉しいな。ありがとう、メグお姉ちゃん」


 私たちはうふふと笑い合う。平和だ。


「じゃあ次はぼくだね。ぼくの契約精霊はこの子! シャイオ!」

「金色だ……じゃあ、もしかして光の精霊さん?」


 名前を呼ばれた精霊は金色に輝いていたから、すぐに言い当てる。すると光の精霊はすぐにその姿を変えていく。瞬く間に私の前には金色の手のひらサイズのゾウが現れた。かっわいいー!


『シャイオである。よろしくである』

「シャイオくんね。私、メグ。どうぞよろしくね」


 長い鼻をゆらりと動かして私と握手? 握鼻? してくれるシャイオくん。そう、光の精霊ってゾウの姿なんだよね。初めて見たときはその意外さに驚いたものである。


「メグお姉ちゃんは、光の精霊とは契約してる? 連絡を取り合える精霊がいたらいいなって思ったんだけど」

「んー、ごめん。光の子はまだ契約してないの。風、火、水、雷、蔦の子がいるよ」

「多くない!? すごいなぁ。ぼくはまだこの子と土の子だけだよ」


 どことなくしょんぼりした様子のアスカ。まぁ、精霊は相性もあるみたいだからね。それに、数が多ければいいということでもないのだ。


「ぼくも、もっと仲良しの精霊増やしたいなー」


 それには同意! だって、精霊はかわいいもんね。人生長いんだからこれから増えていくよ、と声をかければ、そうだねと笑顔で答えるアスカ。うん、可愛い。


「でも、そうなると精霊同士での連絡が取れないね。メグお姉ちゃんとは住んでる場所が遠いから、精霊で連絡出来たらなって思ったんだけど……」

「あ、そっか。同じ属性の精霊がいないもんね……どうしよう」


 属性が同じなら、離れていても精霊が伝言を届けてくれるんだけど、あいにく私たちの契約精霊は属性がバラバラだ。むむ、と少し考えて1つ閃いた。それならば、契約してしまうのはどうか、と。


「風の精霊と契約、しない? 風の子なら私ともシュリエさんとも連絡が取れるし……」

「それはもちろんしたいけど……そう上手く相性のいい子と出会えるかな?」


 風の精霊であればどの子でもいいってわけじゃないもんね。私の場合は精霊たちが紹介してくれたからすんなりいったってだけだし。


「フウちゃんや、シュリエさんの契約精霊のネフリーちゃんにも聞いてみようよ。アスカはしばらくここにいるんだし、もしかしたらいい出会いがあるかもしれないよ」

「いい出会いか……うん、出会いたいな。そしたら、メグお姉ちゃんともお揃いだし!」


 お揃いって。その言葉のチョイスが可愛くて思わずクスッと笑う。よし、あとでフウちゃんに頼んでみよう、と心のメモに記す。


「それにしても……メグお姉ちゃん、食べるの遅いね?」

「うっ、ご、ごめんね」


 相変わらず遅いし食べる量もそんなに多くない私。アスカはすでに食べ終わっていて、私だけがモグモグと口を動かしている。わかってるけどどうしてもー! だからまだ小さいのかな? って純粋な目で聞いてこないで! 悪気がないのがわかるだけにお姉さん、大ダメージ。ぐはっ。


「急がなくていいよ。メグお姉ちゃんの食べるのをこうして見てるの、楽しいし」


 お、おかしい。なんだかアスカの方が年上みたいな態度じゃない? 頬杖なんかついて、余裕を見せてくれちゃって! キラキラとした大きな目は純粋な輝きを放っているけど! そうしてると絵になるというか顔がいいから将来はモテモテだろうな、とかつい考えちゃうな。人懐っこいし……うん、モテるな。でもさ、いい加減さ。


「メグお姉ちゃん(・・・・・)、はやめない……?」


 認めたくはないけどどう見ても私の方が年下に見えるこの状況で、その呼び方はむしろ逆効果である。抉る抉る、私のお姉ちゃんとしてのプライドを!


「そ? じゃあ遠慮なく。……メグ」


 素直に言うことを聞いてくれてすぐに呼び方を変えてくれたのはいいんだけど……その流し目どこで覚えてきたの!? 少年が放っていい色気じゃなくない!? くっ、これだからエルフってやつは! 美形ってやつは!!


「う、はい……それで、いーです」


 美形に慣れてはいるけど、こういう不意打ちというか意外な一面はぐっとくるよね。気恥ずかしいというか、なんというか。なので、こんな情けない返事しか出来ないのであった。あぁ、年上の威厳がー!


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