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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
窮地

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201/506

sideザハリアーシュ


 突然、我らの前に姿を現した精霊にはとても驚いたが、同時に安心もした。無論、怒りはピークに達しておるし、焦ってもいるが……まだメグが生きているという事実にまず、安堵の気持ちが勝ったと言えよう。

 それに、最も気になっていた疑念もこれで晴れたしな! 疑って悪かった皇帝よ。ソナタらはシロ(・・)だ。


「さて、ギルもとりあえず話を聞いてから行けよ? どのみち待つのが1番の近道だからな」

「……わかっている」


 ユージンも我も、すぐにでも駆けつけたい気持ちは同じ。影鷲……ギル殿もそうであろうが、一瞬で辿り着ける分、ギル殿の方が余計やきもきしているかもしれぬな。メグを思う気持ちは皆、等しい。我の方が、と思う気持ちもないではないが、そんなものの大きさは測れぬし、意味もない。

 ならば、今出来ることを全力でするのみ。どう足掻いても、ギル殿が最も早くメグを救出できるのだから。


「皇帝、置いてけぼりにして悪かったな。だがお陰で娘が見つかったようだ。それに……」


 ユージンが呆気に取られている皇帝に向き直って声をかけた。そうであったな。忘れていたわけではないぞ? だがこの皇帝、なかなかの器を持っている。すぐに我に返ると、ユージンの言葉を引き継いだ。


「私たちが長年追っていた組織の尻尾を掴んだ、という認識で良いだろうか」

「ふっ、さすがだな。その通りだよ」


 ユージンは軽く目を瞠ると、ニヤリと不敵な笑みを見せてそう言った。相変わらずその顔は悪人面である。


「だからまず、ギルはこの後すぐに精霊が言っていた場所に行き、メグの元へ案内してもらえ。その道中、俺たちにも場所を伝えること」

「わかった。頭領(ドン)に影鳥を1羽預けよう」


 そう言って自身の足元の影から黒い鳥を1羽生み出すギル殿。黒い鳥はフワリと飛んで、ユージンの肩に乗った。その光景を人間たちは驚いたように見つめている。本当に魔術が珍しいのだな。


「その後は、当然メグの救出だ。好きにしていい、と言いたいところだが」


 ユージンは一度そこで言葉を切ると、チラと皇帝を見た。皇帝はそれを受けて軽く頷き、口を開く。


「お気持ちはお察しする。だが、犯人たちは生かしておいて欲しい」

「色々、聞かなきゃなんねぇだろうし、そもそも禁忌だしな。そういうことだ、ギル」


 ふん、何とも命拾いしたものよ。だが、ここはギル殿で良かったかも知れぬな。我なら制御が出来ず、たとえ細心の注意を払ったとしても、敵を本拠地ごと消し炭にしてしまいかねぬからな。


「…………善処する」

「…………いや、まじ頼むぜ」


 気持ちはよくわかるぞ、ギル殿よ。




 こうした話し合いを経て、ギル殿は少し早いが影に潜り込んだ。おそらくもう目的の地に着いているのであろう。羨ましい……我にもそんな能力が欲しかったぞ。


「ったく。そんなに早く行っても向こうで待つだけなのに」

「きっとじっとしていられないんですよ、ギルさん」

「俺たちも同じだっつぅの」


 ユージンの言葉は完全に同意である。だが、気持ち的にはゆとりが生まれたのも確かだ。ギル殿が向かった事で、もうメグの安全と組織の捕縛は約束されたようなものであるからだ。そのくらい、彼は信頼に値する。ただ……


「このほんの僅かな時間に……メグが傷付いていないと良いのだが」

「組織にとっちゃあ大切な魔力源だろうから、殺しはしねぇだろうが……全く手を出してないとは、言えねぇもんな」

「まっ、待ってください2人とも! ここで殺気を放出しないでくださいよっ」


 アドル殿の声でハッとする。しまった、またしても2人ほどの意識を奪ってしまったらしい。


「……悪かった、皇帝よ」

「い、いや……仕方のないことだと、理解はしている」


 皇帝の笑顔が少々引きつっておる。それを見て、我は再度反省した。気を付けよう。


「さて、じゃあ俺たちも動くとしよう。皇帝、そちら側もな」

「そうだな……こちらは準備に少し時間がかかりそうだ。だがこの国の問題だからな。途中にあるロウデンスという大きめな都市にいる騎士団を待機させよう。申し訳ないがそこまで組織の者たちを全員、連れてきてもらえないだろうか?」


 確かに人間の騎士たちが移動する速度と我らとでは日数単位で変わってくるであろう。国の者たちはそれぞれで犯人たちの護送や、現場の調査などを行うという。事後処理や残党狩りも各地で行なっていくそうだ。かなり時間はかかりそうであるが、それらはこの国の仕事。我らは我らの目的を果たそうぞ。


「そのくらいなら問題ない。組織の奴らを捕縛して、はい、さよならってわけにもいかねぇしな。引き渡しまでは付き合う。だから1つ、許可をもらいてぇんだが。許可っていうか、各地への通達?」


 そう言ってユージンが提案したのは、我が魔物型となって移動する許可であった。確かにその方が移動がしやすいし、それなりにいるであろう組織の者たちも纏めてロウデンスという都市まで連れていくことができる。

 ただそうなると、犯罪者の意識は確実に持たぬが。気付いた時には収監されていることだろう。我が魔物型になると、亜人でさえ気の弱い者は意識を保てぬからな。


「なにも知らずに龍が飛んでたら、騒ぎになるだろ? だから通達しといてほしいんだよ。見かけても害はないってな。……それでも姿を直視したら、普通の村人は気絶するかもしんねぇけど」

「わかった。今すぐに国全土に知らせておこう。用のない者は暫し外出も避けるように、と」

「助かるぜ」


 ふむ。これで気兼ねなく魔物型で移動ができるな。それでもメグのいる現場まではそれなりの時間がかかるが、走るよりは遥かに早く着けるのは確か。


 こうして、皇帝は手際よく周囲に指示を出し始めた。まだ若そうだがかなり有能であることがわかる。まるでクロンを見ているようだ。……わ、我だってやろうと思えば出来るがな!?


「よし、んじゃ俺らも向かおうぜ。ほれアーシュ、そっから飛び降りろ」

「くっ、ユージン、人使いが荒いぞ!?」

「つべこべ言ってねぇでほれ!」

「ゆ、ユージン殿……一応この方は魔王なのでは」


 ユージンのあまりの態度に、皇帝でさえ顔を引きつらせておるぞ。というか一応は余計である!


「じゃあ、突然悪かったな、皇帝ルーカス。会う機会はもうないかもしんねぇが……」


 そう言って少し眉を下げたユージン。うむ、別れの挨拶は大事だからな。


「困った事があればいつでも連絡してくれ。アーシュに」

「我か!? 依頼はユージンの元に流すからな!?」


 ギャーギャーと面倒ごとを押し付け合う我らに頭を抱えたアドル殿。そして皇帝は……


「くっ、くくくっ……! 2人はとても仲が良いのだな。うむ、何かあれば頼らせてもらうとしよう」


 そう言って笑う。なんだ、無表情な男だと思ったが、ちゃんと笑えるのだな。


「もちろんそちらからも有事の際は声をかけてくれ。力仕事や魔術では力になれないが……人手がいる時や物作りは我々の方が得意だ」

「お、そりゃ助かるな!」

「うむ、心強い。いつも送られてくる人間達からの輸入品は素晴らしいからな。引き続き楽しみにしておるぞ」


 では今度こそ、と我らは客間のバルコニーまで歩を進める。何事かと首をかしげる皇帝らに、我は最後に一言声をかけた。


「気をしっかり持つのだぞ。……気を失わぬようにな!」

「えっ、あっ!? ここは王城でもかなり高い場所に……っ!?」


 我らは戸惑うことなくバルコニーから飛び降りた。もちろんユージンもアドル殿もだ。我は落下しながら魔物型へと変化する。そのタイミングでユージンとアドル殿も上手いこと我の背に乗った。

 それを確認した我は、皇帝への挨拶と、これから向かう先にいるメグを想って、1つ咆哮をあげてから飛び立ったのだ。

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