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sideギルナンディオ3 前編


「ここに転移陣がある。俺も、共に向こうへ行く。皆が乗ったら魔力を流せ。ただしこの人数だ、かなりの魔力が必要になる」

「魔力ならいくらでも流してやる。アーシュが」

「我か!? まぁ、構わぬが」


 ドワーフの族長、ロドリゴの後について鉱山を進んだ。内部はかなり入り組んでいて、恐らく俺でも途中迷うだろう作りになっていた。何せ、一度通った道が次も合ってるとは限らないのだ。ドワーフもこうしてその身と鉱山、そして転移陣を守っているのだろう。これは案内がないと無理だ。


 こうして辿り着いたその場所は、重厚な扉に閉ざされた小部屋だった。岩や鉱石ばかりの鉱山内部において、これほどの存在感を放つ鉄扉は異様でもある。かなり複雑な魔術も組み込まれているな……無理に開けようとすると入り口に逆戻りか。随分とえげつない。サウラのトラップを彷彿とさせる。


「よし、開けるぞ」


 そう言ってロドリゴは扉についている魔石に手をかざした。黒く、かなり大きな魔石だ。ドワーフたちの魔力を感知しているのだろう。程なくして扉が重々しい音を立てながら開き始めた。


「あの陣に乗れ。まだ魔力を流すなよ」


 指示通り俺たちは転移陣の中央に立つ。それからロドリゴは頷いた。それを受け、魔王が頷き返す。


「では流すぞ、良いな?」


 それぞれ目で返事をし、それを確認した魔王は強すぎず、弱すぎない絶妙な魔力バランスで転移陣に魔力を流し始めた。

 魔力を感知した転移陣は光を放ち始める。流してから随分と早い魔術の発動だ。流石は魔王、魔力の量もさる事ながら、質も桁違いだな。


「む、着いたようだぞ」

「……やはり魔王だと早いな。俺たちは、倍以上かかるうえに、3日に1度発動させるので精一杯だ」


 光が収まった頃、魔王がそう口を開くと、ロドリゴは呆れたようにそう呟いた。そうか、魔王がこの転移陣を使うのは、初めてじゃないんだったな。


「ありがとな、ロドリゴ。カッとなって怒鳴っちまって悪かったな」

「ふんっ、あれで怒鳴ったつもりか。生温い事を言う」

「こっ、んの、頑固ジジイめ……!」


 根本的に頭領(ドン)はロドリゴと合わないのだと思う。頭領(ドン)は軽く息を吐いて気持ちを落ち着けていた。この人も大概キレやすいからな。


「ロドリゴ、息子の特徴を詳しく教えてくれ。早く見つかるかもしれない」


 俺は1秒でも早くメグを連れて帰ってやりたいと思っている。恐らくメグと息子は共にいるのだろう。だが、それが息子本人だと確認する必要がある。その為にせめて名前を、と俺はロドリゴに尋ねた。


「息子の名前はロナウド。赤茶の髪を俺みたいに後ろに結ってる。背丈は俺より少し低いくらいだ」

「わかった。感謝する」


 その少年がメグとともにいてくれればいいが……2人で協力していたら身の安全性も増す。それに、転移陣の事や鉱山までの道のりも、もしかしたら知ることになるかもしれないからな。


 メグは、あんな見た目だからか、かなり周囲から心配されがちだが、実は頭が良い。まぁ、俺も心配性である自覚はある。魂は成人しているというから、おそらく困難な状況でも、ただ流れに身を任せるような事はなく、色々と考えて行動しているだろうとは思う。

 だが、自分が周囲からどう思われているかの自覚がとにかく足りない。甘やかし過ぎたゆえに、一般常識もなさそうだ。……反省はしている。


 俺たちが思っている以上に、きっとメグはなんとかやれていると信じよう。だが、もしも何かあった時は……いや、今考えるべき事ではないな。俺は軽く頭を振った。


「しかし、相変わらず魔素が少ないな……」

「確かに、少し回復に時間がかかりそうですね……」


 頭領(ドン)とアドルのそんな会話が耳に入る。


「む、甘いぞ? ここはまだ鉱山内部であるからな。周辺もまだ魔素はあるが、鉱山を離れればほぼ魔素はない。思うように魔術を使おうと思えば、自身の体内にある魔力を使うしかなくなる」

「あー、そうだったな。魔力回復も自力だから時間かかるんだよ。うかうか怪我も出来ねぇ」


 そうなのか。俺自身もこの大陸は初めてだからな。しかと心に留めておこう。


「そ、そんな……今でさえ少し怠く感じるのに、メグさんは大丈夫でしょうか……」


 アドルの呟きに俺もハッとさせられたが、頭領(ドン)はあっさりとそこは大丈夫だろう、と答えた。


「メグはまだ幼いからな。子どもの順応性の高さがあればあっという間に慣れるだろ。ただ、怪我なんかは心配だけどな……薬の類は数に限りがあるだろうし、深い傷なんかは治せない」

「む、心配になってきた……ユージン、早く捜索を開始しようぞ」


 怪我をしても、あまり薬に頼れない、か。その辺りも軽傷であれば子どもの回復力もあって問題ないだろうが……いや、軽傷であろうともメグに傷が付くのは許しがたい。帰ったら徹底的にルドに診てもらわないとな。


「あ、あの……私は暫く何の役にも立たなさそうです……」


 そこでアドルが申し訳なさそうにそう言い出した。何を言うんだこの男は。ここまで辿り着くのに自分がどれほど大仕事をこなしたかわかっていないのだろうか?


「そんな顔すんな、アドル。大丈夫だ、俺がちゃんと連れて行ってやるから。まずここまで来られたのはお前のおかげなんだからな」


 俺たちの意見を頭領(ドン)が代弁してくれた。魔王も頷いている。それを見てアドルは恥ずかしそうに俯いた。


「しっかり身体を休めて魔力回復してくれよ。ただ、大仕事をもう一つ頼むかもしれねぇ」

「大仕事、ですか……?」


 頭領(ドン)はニヤリと口角を上げて再び口を開く。


「俺たちはまず、人間の大陸で最も大きな国、トルティーガの中央の都に向かう」


 魔素がない上に、魔大陸よりずっと広いため、魔術での捜索があまり出来ないこの地での捜索は、ひたすら身体を動かすしかないという。その上で、効率よく情報を得るためにそのトルティーガという国の中央部へ向かうと頭領(ドン)は言った。


「だいたいそこに行きゃ、少なくともトルティーガ国内の情報は手に入る。良くも悪くもメグは目立つからな。運が良けりゃその情報も掴んでいるかもしれねぇ」


 頭領(ドン)のその言葉に、アドルが反応を示した。


「……その可能性は高いと思いますね。あれほどの転移陣をこの人間の大陸で使用したのだとしたら……相当数の人員や金銭が動いた筈ですから。よほど大きな組織じゃないと、使えませんよあれは」

「そうだな。だからこそ向かう。……俺たちの敵が誰か(・・)、そこから知ろうじゃねぇか」


 俺たちの敵。その言葉に魔王や俺も魔力を体内に循環させた。流石にこの地で外に放出してしまう、というヘマはしない。魔力は節約しなければならないのだから。だが、体内で循環させただけでもビリビリと空気が震えた。アドルが少々顔を強張らせている。


「……行こうか。皇帝に会いに」


 俺たちは各々頷きを返した。

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