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野営


「さて、逃げるって言っても状況によって多少異なる。けど大体やる事は一緒だ。目の前に危険人物がいて、今にも襲われそうになったとしよう。そうしたらね、まず大きな声を出すんだ」


 私の食事が終えるのを待ってから、ラビィさんな講義を続けてくれた。大声を出す、か。でも怖くなると意外と出来なかったりするんだよねぇ。


「この時、さっき言った深呼吸が大切になってくる。深呼吸をした後なら、きっと大声も出せるからね」


 あ、なるほど。思わずおぉ、と声を漏らした。


「とにかく大きな声を上げながら逃げるんだ。突然大声を出されたら、相手だって一瞬怯むからね」


 その後、もし掴まれてしまったどうするか、口を塞がれたら、など色んな状況を上げて説明してくれるラビィさん。とってもわかりやすくて感動したよ! 喉を狙うとか目を狙うとか他にも色々。実践出来るかはわからないけど、知ってるのと知らないのとじゃ大きな違いだもんね!


「いいかい? 相手だって人なら必ず隙が訪れる。突然殺される、なんて事になったら流石にどうしようもないけど……捕まったという状況ならきっとチャンスは訪れるからね。その時を待って、隙を突き、逃げるんだ。これをしっかり頭に留めておくように!」

「はいっ! ありがとーごじゃいました!」


 とっても身になるお話だったよ。ふぅ。見ればロニーも頭を下げていた。うんうん、一緒にがんばろう!


「さ、講義はこのくらいにして。そもそもメグの場合は体力が無さすぎるね。今日はしっかり働いてもらおうかねぇ?」

「ひょっ、が、がんばる……!」


 ほんの少し意地悪く笑ったラビィさんに、背筋を伸ばして答えると、クスクスと笑われてしまった。か、からかわれた!


「さぁ、荷物をまとめたら買い出しに行くよ。そしたらすぐに出発だ!」


 ラビィさんの声に私たちは揃って返事をすると、立ち上がって準備を始めたのでした!




 次の村へ着くまでに必要な水や食料、それから地図を買い足すのに、さほど時間はかからなかった。途中でジェットさんに会えたらもう一度挨拶を、とも思ったんだけど、すれ違ったのか会えなかったので、お店の人に言伝を頼んでおいた。イケオジ様にお別れを言いたかったなぁ。しょぼん。

 けど、しょぼくれてばかりもいられない。次に立ち寄る予定の村までは結構距離があるみたいだから、何日か野宿の予定なのだ。野営ってはじめて! ……ってワクワクしてる場合じゃなくて。つまり結構ヘトヘトになるだろうなぁ、ということが予想されるのです。


 しかぁし! 今のメグさんは一味違うのである! 体力をつけるためにも、せっせと歩きます。出来るだけみんなの速さについていけるようにね!

 でも、もちろん無理してたら続かない。だから、様子を見てまたしてもロニーの背中に頼る事になるそうだ。で、出来るだけ自分の力でがんばるけどね!




「はふぅぅぅ……」

「お疲れ様、メグちゃん。よく歩いたね! ここらで休憩にしようか」


 村を出て日が高くなるまでひたすら歩き続けた私たち。泣き言も言わずにしっかり自分の足で歩いたけど、もうガッタガタである。生まれたての子鹿状態です。な、情けない……! しかも私がそんな調子な上に元々遅いから、進むのも遅かっただろうなぁ。申し訳ない……


「大体何考えてしょぼくれてるのかはわかるけど、文句も言わずにしっかり歩ききったんだから、初日としては上出来さ!」

「そうだぞ、メグ。フラフラになるまで歩いて偉かったと思うぜ? いつ泣き出すかなーって思ってたのに」

「な、泣かないもんーっ!」


 励ましてくれるラビィさんと、微妙にからかうリヒト。もう無理だからって泣いたりしないよ! ヘロヘロすぎて今は涙目だけどっ!


「ま、お昼食べた後はロニーに背負ってもらいな。無理すると明日歩けなくなるからね。毎日少しずつ、歩ける距離を増やしていけばいいのさ」

「ん、まかせて」


 そ、そうだね……さすがに私もお昼食べた後歩ける気がしないもん。むしろ立てるかさえ怪しい。素直に甘えようと思います。


「ごめんね、ロニー……ありがと」


 申し訳なさからモジモジしていたら、うっ、と顔を赤くして呻かれてしまった。ああ、ごめんよ! 早く体力つけるからね!


 こうして、昼食後にはロニーに背負われつつ移動をした私たちは、午前の遅れを取り戻す勢いでさっさか進んだ。……この速度についていける日は来るのだろうか? ちなみに私はあっという間にロニーの背中で寝てしまったけどね! 睡魔には勝てない……!


 そして陽が沈む少し前くらいにラビィさんは立ち止まる。いつの間にか山道を歩いていたようだ。木々に囲まれてはいるけど道はあるから、みんなここを通っているのだということがわかる。そして、立ち止まった位置は少し開けた場所。道はまだ続いているけど、森の中に入り込むと少し木のない空間があった。やはり定番の野宿場所みたいになってるのかな?


「陽が落ちる前に野宿の準備をしなきゃなんないからね。今日はここらでいいでしょ」

「野宿の準備かぁ……」


 薪を集めたりとかテントを張ったりとかかな? そういえば私、テントをつい最近サウラさんにもらったっけ。んー、でもここだとちょっとなぁ。


「ラビィさん、あの、もう少し先に行けましぇんか? あの、特殊なテントを持ってるから……」


 ゴニョゴニョと口ごもる様に言うと、何かを察したらしいリヒトが口を挟む。


「きっととんでもない魔術が付いてたりすんだよ……そんなものが、人の目に触れちゃまずいって事だな?」


 散々私の非常識具合に驚いていたからか、さすがである。仰る通りです、と首を何度も縦に振ると、ふむとラビィさんは腕を組んだ。


「そのテントにはみんなが入れるのかい? でもあんまり時間を取ると野営の準備が……」


 暗くなったら準備も大変になるもんね。でも大丈夫である!


「外から見ると普通のテントだけど、中は広い普通のお家みたいになってるの。キッチンもあるし二階建てでお部屋も2つはついてるから……」


 私がそう説明すると、リヒトとロニーが呆れた様な眼差しを向けてきたのに気付く。な、なんだよぅ。


「……つまり、野営の支度をしなくて済むって事かい? またとんでもない物を持ってるねぇ……」


 ラビィさんまで呆れたようにそう呟いた。ち、違うの! 私が欲しがったわけじゃないんだよ!? というフォローもはいはい、と流されてしまった。くぅっ!


 そんなこんなで私たちはもう少し先まで進み、森の中の木が多そうな場所を探した。うん、この辺なら大丈夫そう。早速収納ブレスレットからテントを出す。


「……おい、こんなのに泊まるのかよ」

「ぴ、ピンクなのは外側だけだからっ!」


 テントは淡いピンク色なのでリヒトの口元が引き攣る。気持ちはわかるけど大丈夫だからっ! そして続けて簡易結界の魔術具を取り出す。小さなランプ型になっていて、半径10メートルくらいは侵入者を許さない作り。保護者の本気を感じる……! 3人の物言いだげな視線を意図的に気付かないフリをする。気にしない、気にしない。


「ま、まぁほら、どーじょ! 中に入って!」


 こうして半ば無理やりテントの中に3人を押し込む。そしてみんなが入ったところでテントのステルス機能をオン!


「……もう、驚かないぞって、思ってたんだけどな……」


 テント内の様子やステルス機能など、諸々を目の当たりにしたみなさんは、リヒトの呟きに心の底から同意を示していました。……え、えへ?

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