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アイドルなエルフさん


 さて、シュリエさんに手を引かれてギルドを出た私たち。ただいま恐ろしいほどの注目を浴びながら街を歩いております。どうしてこうなった。


 いや、ある程度予想はしてたよ? シュリエさんの美貌は本物だし、この街でも有名なのはわかる。けど、ここまで大事件! って、勢いで驚かれるとは思ってなかったんだよ!

 すれ違う人が必ず二度見してきて、そしてそのまま硬直する。硬直が解かれた人から話を聞きつけたらしい人たちが集まり始めて同じ状態に陥り、そして復活した人たちがコソコソ話を始める。

 わーわー大騒ぎしたり、直接声をかけに来る人とかがいるってわけでもないんだけど、こう、静かに大騒ぎしているという矛盾が成立していた。シュリエさん……どんだけアイドルなんですか。


「本当はギルド内でも美味しい食事が出来るんですけど。それはこの先いくらでも食べられますからね。せっかくメグと2人なのですから、私の行きつけへご案内しますよ。人を連れて行くのは初めてです」


 周囲の反応へはガン無視を決め込んでいるらしいシュリエさんは、それはそれは普通に、そして笑顔でそんな事を言う。さっき、ケイさんって人が1番のイケメンだって言ってたけど、シュリエさんよりも? と思うとなんだか怖く感じる。そのくらいシュリエさんのエスコートはスマートなのだ。

 シュリエさんからは、小さい子ども、それもきっとかなり貴重な同族の子どもに対する庇護欲というか保護者的な愛情しかないように思うから、プレイボーイやロリコンといった危機を全く感じないけどね。むしろ、特別待遇みたいで嬉しい! って素直に甘えられる何かを感じる。この身体が同族のお兄さんに歓喜しているかのようだった。


「えへへ、楽しみでしゅ!」

「ええ、楽しみにしていてくださいね」


 お互いに顔を見合いながらニコニコと会話をする。時折聞こえてくる「ごふっ……!」とか「ぐあっ……!」とかいう悲鳴はきっとシュリエさんの笑顔にやられているのだろう。羨ましかろう、羨ましかろう! でもこの妹ポジションは譲らぬよ!

 せっかくなので、私も周囲はガン無視姿勢で挑もうと思います!




「いらっしゃいませ。これはこれは、シュリエさん。いつもの席でよろしいですか?」


 歩く事20分ほど。私の歩幅に合わせたから時間がかかっただけで、本当は10分くらいで着いたと思う。時間かかってすみません、と謝ると、道中も楽しいのでいいですよ、という天使のようなお言葉をいただきました。そうして到着した綺麗な外観のお店。シュリエさんが慣れたように店内に足を踏み入れると、すぐさま店員さんの声が聞こえてくる。


「ええ。ただ今日は連れがいるのです。この子用に少し高めの椅子の用意をお願いします」


 シュリエさんがそう返すと、店員さんは私に目を向け、軽く目を瞠った。それでも流石はプロ。すぐに眦を下げ、軽く会釈をしてから私に向かって挨拶をしてくれた。


「これは失礼いたしました、可愛らしいお嬢さん。どうぞ、ごゆるりとお過ごしくださいね」

「あ、ありがとーごじゃいましゅ……」


 丁寧な対応にドギマギしながらも返事をすると、微笑まし気に笑う店員さんとシュリエさん。だ、だって、こういう高級そうなお店って慣れてないのよっ! 750円で食べられるお得な定食屋さんとかラーメン屋が行きつけだった私ですからねっ!


「ではこちらに」


 店員さんの案内に付いて行くと、窓際の日当たりの良い席には既に子ども用椅子が置かれていた。仕事が早い!

 シュリエさんが優しい手付きで私を椅子に座らせてくれる。背の高い椅子によじ登られるよりいいのかもしれない、と思って大人しく受け入れた。とほり。

 それからシュリエさんも席に着くと、店員さんがグラスに水を注いでくれた。


「では、ご注文が決まりましたらお呼びください」


 シュリエさんほどの有名人がちびっ子を連れているというのに、余計な詮索を一切せずにスマートに去って行く店員さん。素晴らしい。

 コクリ、と水を一口飲むと、爽やかなレモンの香りが鼻に抜けていく。


「リモネ水ですね。苦手ですか?」

「いいえっ! ふつーのお水じゃなかったから、ビックリしただけなの。さわやかで、おいしーでしゅ!」


 それは良かった、とシュリエさんが笑う。そうか、レモンはリモネっていうのね。ミカンの時もそうだったし、色々と名称が違うんだろうな。少しずつ覚えなきゃ。


「さて、何を食べましょうか。メグは苦手なものはありますか?」

「特にはないでしゅ。あ、でも辛いのは苦手なの……」


 メニューをこちらに向けて広げてくれるシュリエさん。なんて紳士! 好みを聞かれているようだったので、とりあえず辛いのは無理、と伝えておく。お子様味覚でごめんなさいね。でも今はどうせ子どもだから問題なし!

 メニューを眺めてみるけど……文字が日本語じゃない。まあ、それは当たり前なんだけどさ、不思議なことにちゃんと読めるんだよね。異世界転移補正なのか、この身体の記憶なのかはわからないけど。まぁ、読めるならなんでもいっか! ほっと胸を撫で下ろしつつ、気になったキノコのリゾットを指差した。


「キノコのリゾットですね。これは私もお気に入りの一品です。なかなかお目が高いですね? メグ」


 本当にこの人は口が上手いんだからっ! ごめんね、相手が大人な美女ではなくてこんなちんちくりんで……

 シュリエさんは緑野菜のサラダとミネストローネスープ、それからビーフシチューとパンを選び、店員さんを呼んでこれまたスマートに注文した。サラダとスープは私の分も頼んでくれた模様。野菜もしっかり食べましょうね、とお母さんのような事を言われてちょっと面白かったです。


 食事が運ばれて来た後も、サラダを取り分けたり、スープを冷ましてくれたり、リゾットを別のお皿に取り分けて食べやすいように準備してくれたり、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。ギルさんもそうだったけど、お世話好きなのかしら? 久しぶりの小さな子どもだから嬉しいのか、こんなちびっこがちゃんと食べられるかが心配なのか。たぶん、両方っぽい。


 世話を焼かれるのは大変恥ずかしいし、中身が大人な分、恐縮してしまうんだけど、やっぱり嬉しい。素直に世話を焼かれた方が、きっとこの人たちは喜んでくれるから、されるがままにしている。もちろん、ちゃんとお礼は言いますよ!


 でも、人に甘える心地良さに味をしめてしまいそうだ。甘える時は甘えて、しっかり働く時は働く。メリハリをつけられるように気をつけよう。


 こうして、シュリエさんとの楽しいランチタイムを存分に楽しんだのでした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] レストランの食事シーンでも和やかで癒しの小説だ。 読みやすいし、雰囲気でいいね、したくなる。 [気になる点] くそう。 中身が転生者なのにメグのかわいさにやられてしまう。 [一言] ロリか…
2021/02/09 22:38 退会済み
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