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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
メグの試練

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裏の裏


 ひとまずラビィさんたちが住んでいる小屋へと向かうことになった私たち。なぜなら私のお腹が空気を読まずに空腹を訴えたからね! うっ、恥ずかしい! でもお陰で空気が和らぎ、クスリと微笑んだラビィさんによって家に招待されたのだ。どうもお世話になります……!

 道中、リヒトがこれまでの事を説明している。その話を聞くうちのラビィさんの表情がどんどん険しくなっていくのがわかった。


「ふぅん、なるほどね。リヒトが突然いなくなった理由はわかった。そこの2人も、突然だったんだね?」


 問われて私もロニーも揃って首を縦に振る。前触れもなく突然だったよ、本当に! マイユさんも驚いてたもんね……でも誰かが見ていてくれた時で良かった。きっと、みんなに報告してくれてるはずだもん。心配、させてるだろうなぁ……


「ま、とりあえずはご飯にしよう! お腹が空いてたんじゃ、何もできやしないからね。さ、座って!」


 私がみんなを思い出して沈んでいくのがわかったのだろう。ラビィさんが突如明るい声を出してそう言ってくれた。頭も優しく撫でてくれたから、きっと私を気遣ってくれたのだ。第一印象はアレだったけど、本当は優しい人なんだね! えへへ。




 食卓に暖かなスープが並ぶ。野菜の入ったコンソメスープに、パン、それから何かのお肉かな? 見た目からすると鶏肉っぽいけど。


「大したものがなくてごめんね。でも人数が増えたから、とっておきの肉を使ったよ!」


 とっておき! そんな物をもらっていいのだろうか……そんな考えが顔に出ていたのか、ラビィさんはニッと笑って口を開く。


「今がそのとっておきのタイミングなのさ。もう調理したものだったし、夜にでも食べようと思っていたしね。気にしないでしっかり食べな」

「あう、ありがとうございましゅ!」


 ああ、やっぱりこの人良い人だ。せっかくなのでお言葉に甘えていただきますっ!

 スープはごく普通のスープだけど、じんわりと身体中に温かさが染み渡っていく。パンは少し固かったけど、スープに浸して食べるとジュワッと味が広がって美味しい。そしてお肉は食感的にやっぱり鶏肉。でも知ってる鶏肉とは違って、一口齧ると肉汁が口に広がってとってもジューシー。香草を使って焼いてるのかな。すっごく美味しい!


「ふふ、美味しそうに食べるね。作った甲斐があるってものだよ! ま、余り物で悪いけどね」

「メグはきっと普段は良いもの食ってたっぽいし、庶民の食事は合わないかもしれないって思ったけど、その様子じゃ大丈夫そうだな!」


 まぁ確かに普段はチオ姉の美味しい料理とか、街の食堂とかで美味しい物を食べてるって自覚はある。でも、こういった庶民の食事? 街にもあるし、たまに食べてるから全く問題ない。というか、それと比べても美味しいと思うしね!


「メグっていうのね? メグは良いとこのお嬢様か何かなのかい? 随分可愛らしいし、納得ではあるけど」


 しまった、まだ自己紹介してなかった! お世話になってるのになんという失態……! あ、でも、ラビィさんにも私の正体、話しちゃって大丈夫なのかな? えっと、と言い淀んでいると、それを察したのかリヒトが笑顔で言葉を引き継いでくれた。


「ラビィは俺の恩人だし信用出来る! だから、話して大丈夫だぞ」

「あんまり信用されてもねぇ……でも、そう言うって事は訳ありなんだね?」


 頬杖をついてそう言ったラビィさんは、私たちを優しい目で見つめた。チラとリヒトを見ると力強い眼差しで頷いてくれたので私は決意を固める。こんなにお世話になってるんだもん。ちゃんと挨拶しなきゃ!


「えと、メグです。魔大陸に住んでましゅ。えっと、エルフ、でしゅ……」


 そう言ってさっき2人に見せたようにネックレスを首から外して本当の髪色と目の色を見せた。すると、ラビィさんは目を丸くしてその動きを……止めてしまった。お、おーい。大丈夫ですかー?


「…………はじめて、見た……」

「まぁ俺らも驚いたけどさ。そんなに声を失うほど?」


 ようやく声を絞り出したラビィさん。リヒトは呆れたような戸惑ったような微妙な顔をしている。


「それほどだよ! わかんないの!? 子どもだよ? しかもエルフなんて希少亜人よりずっとずーっと高値で取り引き……」


 リヒトの言葉に思わず立ち上がって声を張り上げたラビィさんだったけど、何かに気付いて突然言葉を切った。


「……ごめん。言葉の選び方が良くなかった。デリカシーなかったね」


 そして申し訳なさそうにポツリとそう告げた。私としてはそういう事実があると知ってたから気にはならないんだけど……でも実際他の人から聞くと真実味を帯びるというか、なんとも言えない気持ちににはなった。


「……ううん。知ってる事だし、大丈夫でしゅ」

「それでもだよ。嫌な気持ちにさせて、ごめんね」


 けど、ちゃんと自分で気付いて、こんな子ども相手にしっかり謝ってくれたから、この人はやっぱり根が良い人だ。謝罪を受け取らないときっと気にするだろうから、私はニコリと笑って謝罪を受け取った。




「……しかしねぇ、国はそう仕掛けてきたのかぁ」


 ロニーとラビィさんも自己紹介を簡単に済ませると、ラビィさんは椅子の背もたれに寄りかかってそう呟いた。


「何か知ってんのか?」


 身を乗り出して尋ねるリヒトに、腕を組んでため息を吐くラビィさん。それから軽く頷いて語り始める。


「この国と魔大陸の魔王の国が鉱山を通じて貿易をしているのは知ってるね?」


 魔王城に行った時に何となく聞いた気がする。鉱物の取り引きをしたとかなんとか。きっと鉱物がメインでこの国と貿易をしてるんだよね。私は頷いて答えた。リヒトやロニーも知ってるみたい。ロニーは鉱山出身だから知ってて当たり前か。


「基本的には鉱物や食品なんだけどね? 裏では人身売買が行われているんだよ。でも、裏の取り引きとはいえ、どちらの国も公認の取り引きだ。あまり表立って言えるような商売じゃないからね」

「公認なのか……? 奴隷売買みたいなもんなのに」


 リヒトが拳を握りしめて眉間にシワを寄せた。奴隷という身分がある事に、嫌悪感を抱いているように見える。うん、まぁ、気持ちはわかるよ。


「もちろん、誰彼構わずじゃないさ。売られるのは犯罪者のみ。それも死罪確定の犯罪者。表では死刑執行したと思わせて、その実奴隷として売られ、大陸を超えているんだよ。まぁ死刑囚全員ってわけじゃないし、色々検討するんだろうけど。悲しいことに、奴隷を欲しがる悪趣味ってのはいるしね。まぁ大半は国が買って、無償労働させてるんだろうけど」


 犯罪者ならまぁ、とリヒトは少しだけ肩の力を抜いた。生きて償えって事だもんね。

 だけど、とラビィさんはテーブルに両肘を付き、深刻な表情で再び口を開く。


「その裏の取り引きの()で、悪い奴らが悪い事をしてるのさ」

「悪い、こと……?」


 不安になってギュッと膝の上で服を握りしめる。そうだよ、とラビィさんは告げる。


「若く、能力の高い人材を攫って、欲しがる金持ち共に売り捌いて荒稼ぎしてる組織があるのさ」

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