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サウラとキャトルのいつもの休日


「んー……朝、か」


 今日は久しぶりの休日。しかも趣味が睡眠のこの私が3日ぶりに寝たというのに、結局いつも仕事に間に合うような時間に目覚めちゃう。歳のせいじゃなくて仕事熱心なだけよ? いやーそれにしても先週は激務だったわ。疲れは取れてるけどせっかくだからもう少しゴロゴロしてようかしら。


「うっ、ぷ」


 そう思って寝返りを打ったら顔がモフモフに埋もれてしまった。押し退けようとも思ったけどこれはこれでなかなか良い事に気付いたわ。暫くこのままでいようかしらね。


「にゃぅ」

「あら、キャトル。起こしちゃった? ごめんなさいね」


 モフモフの正体は私の愛キャトル。真っ白な毛並みがフワフワで最高のベッド……触り心地なのよね。ある日ギルドの近くで彷徨いてたのを気まぐれで引っ捕まえたのが出会いだったわ。なかなかの闘いだったわよ。ま、トラップで一撃だったけどね! やっぱ獣は力で屈服させるのが1番よ。

 でもあの時は真っ黒だったから、まさかこんな綺麗な白猫とは思ってもいなかったけれど。化けるものねぇ。


 え? 名前? んー、確か何回かつけて何回か呼んだと思うんだけど、いつも忘れちゃうのよ。毎回違う呼ばれ方してもキャトルが混乱するだろうからもうずっとキャトルって呼んでる。ギルドの子達はみんなかわいそうだって言うんだけど、名前なんか呼べればそれでいいじゃない。ウチに他のキャトルはいないし、愛情はたっぷり注いでるんだもの。問題ないわ。ねぇ、キャトル?


「でも、もう少しこうさせてちょうだい。ほら、お腹向けてー!」


 私がそう言うと、少しだけそっぽを向いた後言う通りにゴロンと私の方にお腹を向けるように寝直してくれた。……たまに思うのよね。このキャトル、人の言葉理解してるんじゃないかしらって。普通、亜人になり得る魔力を持った生き物じゃないと人語は理解出来ない筈なんだけど。でも、この子は確かに普通のキャトル。この大陸に住んでるからかなり長寿ではあるらしいけどね。ギルが念入りに調べたから間違いないわ。


 ま、細かいことはどうでもいいわね。今はこのモフモフベッド……毛並みに埋もれましょう。こう言う時は小さな小人族で良かったって物凄く思うのよね。キャトルは2本足で立ち上がれば私の胸の高さくらいまでの大きさだから、私にとっては天然の大きな枕サイズ。最高よ? お腹に包まれながら寝るのって。んー、ダメになりそう。


「っと、ダメダメ。せっかくのお休みなんだもの。今日は動くわよ!」

「うにゃん!?」


 ガバリと突然起き上がった私に驚いた声をあげるキャトル。今腹を貸せって言ったのに! という抗議が聞こえる気がするけど所詮気がするだけだからまぁいいでしょ。いつだったかしら、ケイに私はキャトルより理不尽だって言われたんだけど、そんな事はない。私はちゃあんとご褒美あげてるもの。これでプラマイゼロでしょ!


 早速寝巻きから普段着に着替える。収納ブレスに登録しているのが何着かあるから、今日はその中でもあまり着る機会のない休日スタイルにしましょ。ニカにはどれも同じに見えるって言われたけど失礼よね。襟口の形とかスカートの長さとかブーツの色の濃さとか袖の長さや形とか、全然違うのに!

 まぁいいわ。ニカだもの。分かる人には分かるわけだし、気にするだけ損よね。そんなわけで今日は胸元が開いた、スカートの後ろだけ少し裾の長いワンピースに決定。


「さ、行きましょうキャトル。ちゃんと良い子にしてたらおやつは『ニャオちゅーれ』にしてあげる!」

「うにゃおぉんっ!」


 ふっ、落ちたわね。ニャオちゅーれの魔力に逆らえるキャトルはいないってものよ……別にこれといった魔力なんかないけど、猫系亜人なんかも夢中になっちゃう優れものなのよね。いわく、匂いが食欲をそそるのだとか。考えるわよねぇ。今は便利な世の中だわ。

 ちなみにニャオちゅーれが出来たのは10年前くらいの事で、メグちゃんが開発に関わっているのよ。ほんの少し助言したのと、商品名を決めただけだけどすごい事だわ。頭領ドンがネーミングセンスに吹き出していたけど、ま、2人の元の世界に関する事なんでしょうね。


「よし、まずは買い物よ! 少しだけ大きくなってね、キャトル」


 買い物の時はいつもキャトルに乗っていく。だって私の足だと遅くなっちゃうもの。ミコラーシュに開発を頼んだ特殊魔道具でキャトルの大きさを変化させるのよ! 少し大型のウォウルサイズになってもらえれば、私は軽々乗れちゃう。んー! モフモフ最高ね!


「さあ、行くのよ! キャトル!」

「うにゃあん!」


 こうして私たちは外へ飛び出した。




 街では私を見かけた人たちがみんな笑顔で挨拶をしてくれるわ。大きめなキャトルに乗ってる私を見て最初は驚いていたけど、すぐに慣れてくれたし。さすが特級ギルドのある街に住む住人ってところね。順応性が高くて助かるわ。誰も細かく聞いてこないもの。そういうものなんだろう、って勝手に納得してくれるのよね!

 こうして私はキャトルに指示を出してあちこち走ってもらいながら買い物をして行く。一応買わなきゃいけない物を優先的に買いつつ、あれこれウインドウショッピングを楽しむの。思わず買いすぎちゃうけど、お金は使ってこそのもの。たまにこうしてストレス発散するのって大事だものね!


「うわー! 可愛い簡易テント! これに魔道具を仕込んで中を広くしたらメグちゃんにピッタリじゃないかしら」


 最近は自分の物よりメグちゃんの物を買っちゃうのよねー。なんでかしら? 自分でも不思議だけど、メグちゃんには何故かあれこれ買いたくなっちゃうのよ。

 でもそれはみんなも同じみたいだからそういうものなのよきっと。洋服や食べ物はもちろん、簡易キッチンとか結界魔道具とか他にもそれは一体いつ使うの? っていう道具なんかも山ほど贈られているみたい。

 おかげでメグちゃんは自分の収納ブレスに何が入ってるのか把握出来てないみたいで半泣きだったのよね。入りきらなくなったから容量も増やしてもらってたし。もちろん、それも解決出来るよう目の前に小さなウインドウが出る機能をつけて、リストを目視出来るようにってミコラーシュがつけてたっけ。うーん、みんな過保護って事よね! あの時のメグちゃんは、色々と諦めた顔になってたっけ。


「あっ、キャトル! 今度は例のお菓子屋さんに行くわよ! 新作ケーキ買わなきゃ!」

「うにゃ、おーん……!」


 キャトルが疲れてきているみたいだけど、あとそこだけだからと励ましながら向かう。当然そこでメグちゃんへのお土産もゲットしてからようやくギルドへと戻った私たち。んー、キャトルがぐったりしながら恨みがましい目でこちらを見ている気がするわ。やっぱりこの子って、どこか人間っぽいのよねー。そこがまた良いんだけど。


「お疲れ様、キャトル。今日はたくさん動いてくれてありがとうね。部屋に戻って膝の上でニャオちゅーれ食べましょ?」

「!? うにゃん、うにゃぁんっ」


 ほら、やっぱこっちの言ってる事わかってない? 頭の良い個体って事なのかしらね?


 こうして部屋に戻った私は、約束通りフカフカソファに座って膝をポンと叩く。キャトルは嬉しそうに膝に乗って顔を胸に擦り寄せてきた。んふ、可愛い。

 もちろんサイズは通常より小さめにしてあるわ。だって重たいもの。


「さ、ご褒美よ。味わって食べるのよ?」

「にゃあん」


 手にニャオちゅーれを持った瞬間からソワソワ落ち着かないキャトルに癒される。言いつけ通りゆっくり味わいながら食べるキャトルを見てると、やっぱり普通の愛玩動物よねぇ、と思う。食べ終わるとおかわりが欲しそうな顔でこちらを見つつ甘えた声を出すから思わずあげそうになるけど我慢。食べ過ぎは身体に良くないからね!


「また今度ね。寝るまで撫でてあげるから、それで我慢してちょうだい」


 私がそう言いながらキャトルを撫でると、素直に目を細めて私の手を受け入れたキャトル。いい子ねぇ。そのままゆっくり撫でながら、私ももう片方の手でさっき買ってきたケーキを食べる。お行儀が悪いけどたまにはいいわよね。


 極上のフルーツケーキを食べながら、サイズの変わる魔道具を私に使えばそもそもキャトルに乗らなくても問題ない、という事を、頭の良いキャトルが気付かなければいいけど、なんて事を考えていた。んーっ美味しっ!

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