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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ


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未来


「うわぁ! 可愛いっ! ランちゃんありがとーでしゅっ!」

「喜んでもらえて嬉しいわ。でも、そんな真っ黒なぬいぐるみで良かったの?」

「これがいいんでしゅーっ!」


 今日は空いた時間にギルさん、ケイさん、メアリーラさんの4人でランちゃんのお店に来て例の物を受け取りに来ております! 例の物、それはもちろん、ぬいぐるみである!


「まさか影鷲のぬいぐるみをオーダーするとはねぇ。ギルナンディオが大好きなんだね、メグちゃんは」

「あい! だいしゅき! もっふもふぅ!」

「メグちゃんらしいのです! ケイさん、あの、私にもキャトルのぬいぐるみありがとうなのです! 大事にするのですーっ!」

「気に入ってもらえたのなら良かったよ」


 店の外でキャッキャと喜ぶ私とメアリーラさん。そして1人微妙な表情のギルさん。


「難しい顔になってるわよぉ? こんなに懐かれて嫌なわけぇ?」

「いや……」

「あはは、嫌なわけじゃないのさ、ラグランジェ。ギルナンディオはどう喜んでいいのかわからないだけさ」

「んまっ、難儀な性格ねぇ」

「……それより、注文を頼む」


 良かった、嫌がられてるわけじゃなかったようだ。安心してぬいぐるみに頬擦りする。あー至福ぅ。

 ギルさんはボロボロになってしまった戦闘服を新調するために来たんだったよね。なんでも、マイユさんのデザインする服はどうしても派手になるからランちゃんのお店で頼むのが良いという。ランちゃんも派手好きだけど、客の注文にはキチンと答えてくれるところが信用出来るんだって。さすがプロ。というか私の戦闘服の時も思ったけど、オルトゥスの技術をいとも容易く取り入れて作り上げるランちゃんは只者ではないよね。ミステリアス……!


 こうして、用を終えた私たちは足早にギルドへと戻った。まだまだやる事は色々あるからね。


 あれから1週間ほど宴会ムードが続いている現在。その間ずっと滞在してそうな魔王さんは3日目くらいでいい加減にしてくださいとマジギレしたクロンさんによって、引きずられるようにオルトゥスを去って行きました。


「メグーっ! 必ず、必ず魔王城へ遊びに来るのだぞ! 迎えに行くからなっ!」


 魔王さんには私としてもまた会いたいし、魔王城にも少し興味があるからもちろん喜んで行きたいところだけど、そのあまりの必死な様子に笑顔が引きつってしまったのは仕方ないお話。ま、また会おうね、父様っ!


 宴会ムードは続いたけど、当然復興作業も同時にやってたんだよ? 避難していたという街の人たちも戻ってきて、魔物の襲撃で荒れた街の外壁周辺を整えたり、ギルドでの戦いで壊れたらしい家屋の修理をしたり。みんなテキパキ手際よく動いていてカッコよかった! ジュマくんが「当分禁酒だな……」と遠い目になっていたのは、まぁ仕方ない。どうもジュマくんが破壊した家々だったみたいだしね! 今後依頼をこなして取り戻すんだと立ち直りも早かったジュマくん。頑張れ!




「オイラはお前らとなんか仲良しごっこしたくないんだしーっ!!」


 ギルドに到着すると、かれこれ5日ほど眠っていたエピンクが目覚めて騒いでいるようだった。私たちは顔を見合わせてその現場へと足を運ぶ。なんでも、レキが懐柔を試みて、なんとオルトゥスに勧誘までしたみたいなのだ! でもどうやら素直に「はい、よろしく」とはいかなそうである。精神的な元気を取り戻したエピンクは、面倒くさい年頃の少年みたいになっていた。やれやれ、思春期大変。


「あらあら元気な子ね。それなら私の作るギルドに来ない?」

「ああんっ? 誰だし、お前」

「マ、マーラしゃん!?」


 みんなで腕を組んで今後のエピンクの処遇について悩んでいた時、いつの間にかマーラさんが背後に立っていた。その気配を感じさせずに背後から近付くのって、エルフの特徴なのかしら? ドキドキ。


「郷の方はもういいのか」

「ええ。後は郷に残る者たちで何とかやるわ。それよりも、人員確保の為には早めに動かないと、と思ってね?」


 ギルさんの問いに、ウインクして答えるマーラさん。まるで少女のよう。エルフ族は本当に年齢を感じさせない種族である。


「ね、どうかしら。あなた、とても元気があって気に入ったわ。これまでのネーモを基盤にして、体制だけは一新するつもりよ。賃金は頑張り次第だけれど、住む場所には困らせないわ」


 エピンクに近付いて柔らかな微笑みを浮かべながらマーラさんは勧誘をし始める。エピンクはたじろいでいるけど、話は聞いてみる気があるようだ。


「だ、だからあんたは一体何者なんだし……っ!?」

「この方は前ボスの姉君だ。失礼のないようにしろ、エピンク」

「ラ、ラジエルド!?」


 エピンクの疑問に答えたのは蒼炎鬼そうえんきのラジエルド。とっても大きくて目つきがこわぁい鬼さん。連行されて事情聴取されていたみたいなんだけど、この通り。今はマーラさんに付き従っているように見える。一体何があったんだろう?


「ま、まぁ、ラジエルドが信頼してるなら、仲間に入ってやってもいいんだしっ!」

「カンガロが偉そうな口を……!」

「ひっ……っ」


 仕方ないから、といった風にエピンクが答えると、怒気を込めた声でラジエルドが凄む。怯えるエピンクとついでに私。仕方ないじゃん! 怖いものは怖いのっ! そしてラジエルドを制したのはマーラさんであった。


「あらあらやめなさい、ラジー。新しいギルドは自主性を尊重するのよ?」

「し、失礼しました、マルティネルシーラ様っ!」

「ラジー……!?」


 もの凄い従順なラジエルド。あんな強面な鬼が愛称で呼ばれ、マーラさんに飼い慣らされている……!? ひょっとして猛獣使いかな? 誰もがそんな疑問を込めた眼差しでマーラさんを見つめると、それを正確に汲み取ったマーラさんは人差し指を口に当てて妖艶に微笑んだ。


「ひ・み・つ」


 ああ、うん。もはや誰も問い質すまい。新しいギルドはきっと大丈夫だ。それどころかあっという間に特級称号を手に入れるようになる気がする。更なる勧誘のために立ち去るマーラさんとラジエルド、それにエピンクの後ろ姿を見てそんな事を思った。私たちも負けてられないね! 




 それから私たちは各々仕事に戻るべく、持ち場へと向かう。私はもちろん専用のカウンターだ。ギルドの入り口をくぐると、休憩中なのかニカさんとケイさんが立ち話をしていた。


「あ、おかえりメグちゃん。ちょうど今メグちゃんの話を聞いていたんだよ」

「ふぇっ!? 私の?」

「それにしても、今思い返してもあの時のメグは凄かったなぁってな!」


 あの時は必死だったからなぁ。なんだかそこまで褒められると嬉しさよりも恥ずかしさが勝る……!


「なんであんなに思い切った行動に出れたんだぁ、メグよ」

「あ、それはボクも気になるな」


 まぁ確かにいつも自信なさげで怖がりですぐ泣く幼女がいきなりあんな風に行動したらどんな心境の変化? ってなるよね。ここは正直に話そう。


「あの時、少し先の未来を視たから大丈夫だって思ったんでしゅ。なんとかなるって」

「エルフの特殊体質か。……どんな未来だ?」


 ギルさんの問いに、みんなが期待のこもった眼差しで私を見つめてきた。んー、教えてもいいんだけど、ここはやっぱり。


「ないしょでしゅっ!」


 えぇー、という声と仕方ないなと諦めたように口を開くみなさん。深く追求してこないあたり、心得ているなぁって思う。

 秘密にしなきゃいけないわけじゃないけど、何となく、そんな曖昧な未来であんな行動を? って思われるかなぁ、なんて思っちゃってさ。


 でも、私はその未来だけで十分だった。自信しかなかったのだ。みんな無事で、この問題を乗り越えられるって。


「すみませーん。ちょっと聞きたいことがあるんですが……」

「あ、はーい!」


 ギルドに初めて見るお顔のお客さん。私のお仕事である! トテトテと駆け寄るとみんなが笑顔で私を見守ってくれる。


 そう。

 だって私が視た未来は————


「いらっしゃいましぇっ!」

 

 まさに、今のこの光景。みんなが笑顔で、オルトゥスで楽しそうにしている姿だったんだ!


「特級ギルド、オルトゥしゅ()へようこしょっ!」


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悲しき別れを乗り越えて、メグが世界を救う!ついに完結☆
【特級ギルド13巻☆2024年3月19日発売☆】


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― 新着の感想 ―
[一言] お父さんと環がお互いを把握した場面。すごく感動しました。 涙が止まりませんでした。 出会えてよかったです。 続きもまだまだ気になりますが、もう少しこの物語に浸りたいので、最初から読み直そうと…
[良い点] 最高にニヤニヤした
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