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ただいま


 マーラさんたちにお別れの挨拶をした後、行きと同じように私はギルさんにコウノトリ式で運ばれ、ニカさん、クロンさんはドラゴンな魔王さんに乗って大空へと飛び立つ。いつまでも手を振ってくれるマーラさんたちに、私もその姿が見えなくなるまで一生懸命手を振り続けた。


《メグ、落ちないように気をつけてくれ……》


 あまりに身を乗り出しすぎてバランスを崩したらギルさんに懇願されてしまった。申し訳ない……もっと魔力が増えたら、ギルさんの背に直接乗りたいな。メグと一緒になったおかげでかなり魔力量も増えたけど、まだまだ足りないからね。少し成長した私がカッコよく影鷲ギルさんに跨る姿を密かに想像しながら、私は空の旅を楽しんだ。


 世界は相変わらず綺麗で、現実的で、そして異世界で。でもここが私の故郷なのだと受け入れる事が出来た。私はようやくこの世界の住民になれたんだ。


 山がだんだん小さくなっていく。私の生まれた場所。今度来る時は、綺麗な花束やハイエルフのみなさんにお土産なんかも持って行こう。……受け取ってもらえるかわからないけど、一応シェルメルホルンにも。だって私のお祖父ちゃんだし。

 というのも、どうも憎めないというか、ね? いや、酷い人だとは思うんだよ! だけど良く考えてみたらただの極悪人ではない気がしてきたわけ。なんだかんだで、手加減してくれてたと思うんだよねぇ。みんなかなり血を流したけど、致命的な怪我はしてないし。


 チラと上を見る。影鷲姿のギルさんの腹部がちょうど見える。羽毛がもっふもふ……じゃなくて、ここからは怪我が見えない。つまり、あの背中から貫かれたと思った攻撃は、貫通まではしてなかったという事だ。みんなの手当てをしていた時にギルさんも言ってた。


「ギリギリ急所は外れているから問題ない」


 きっと、わざと外したんじゃないかなぁ、って。だってあの至近距離であのシェルメルホルンが急所を外すと思えないんだもん。

 それにね? 致命傷を負わせたことはあってもとどめを刺した話は聞いた事がないってみんなが言ってたんだ。人に対して扱いは酷いし暴力は振るうで、それはそれで良くないけど……ちょっぴり。ほんのちょっぴりだけ、その、人らしいとこがあるんだなって。そう、思ったんだよね。


 でも、まぁ。知るのは本人だけ。聞いたところで答えちゃくれないだろうし、単なる私の勘でしかないんだけどね。

 夢を諦めて、私からもギルドからも手を引いた理由も本人にしかわからない。真相は闇の中、って事になるのかな。




 空の旅はいつの間にか終わっていた。え、えへ、だってつい寝ちゃったんだよね! 空飛ぶ影鷲籠はゆりかごの如し。抗えまい。色々と頑張った後なんだから抗えるわけがないのだ。きっと朝まで起きなかった自信はある。それなのになぜ目覚めたのかというと……


「うおおっ! メグ! 兄ちゃんはやったぞぉぉぉっ!!」

「んにょっ!?」

「馬鹿ジュマっ! メグちゃんが起きちゃったじゃないのっ!!」


 あれ、デジャヴ? 前にも似たような事あった気がする? きっと気のせいではない。と、こんな感じで叩き起こされてしまったのだ。ちなみにギルさんも魔王さんも人型に戻っており、私はギルさんの腕の中である。

 まだ眠いは眠いけど、ギルドの皆さんとも会いたかったし、起こされて良かったと思ってるよ!


頭領ドンたちはまだなのかぁ?」

「たぶん明日の朝には帰ってくると思うわ。シュリエの精霊からカーターの精霊に連絡があったから」


 ニカさんの問いに絶賛トラップでジュマくんをお仕置きしながらサウラさんがそう答えた。逆さ吊りにしているだけなので、たぶん優しい処置だ。たぶん。


 でもそっか。お父さんに会えるのは明日かぁ。安心したような寂しいような。


「わ、我はやはり城に……」

「あらどこへ行くおつもりかしら、魔王様? ちょぉっとばかり手伝って欲しいことがあるんですよねぇ。何故か街の周囲が荒れているものですから。な、ぜ、か、ね?」

「よ、夜通し手伝おう……」

「話が早くて助かるわっ!」


 サウラさんの笑顔が怖いっ! 魔王さんも顔が引きつってるよ。威厳はどこへ。でもまあ、たぶん魔物被害がここまで来ていたのだろう。早めに収束したとはいえ、魔物が集まって暴れたのならそれなりに荒れているよねぇ……


「城に戻るのはこちらでやる事を終えて、各地の魔物被害状況を見て回り、可能な限り後始末をしてからですね。……書類で部屋が埋まらないといいですね、ザハリアーシュ様」

「恐ろしい事を真顔で言うでないクロンよ!」


 当分魔王さんの休息はなさそうである。南無……




 さて、ギルドに着いたところでお腹も空いたしいざ食堂へ! の前に寄らなきゃならない場所、それは医務室。みんな大怪我してたんだから当然ですっ! それなのに。


「よし、まずはメグから診察しような」


 ルド医師の言葉には誰もが当然というような顔を見せている。なぜか私がトップバッター。解せぬ。というかみんな過保護なのよね、きっと。


「うん、擦り傷が少しあるくらいで問題ないようだね。ただ魔力総量が一気に増えたみたいだ。身体に負担がかかっているはずだから、今日はしっかりご飯を食べて早めに寝るようにね」

「あい!」


 たくさん食べてたくさん寝るのは私も大賛成なので元気よくお返事。だって疲れたのは本当だもんっ。だからみんなその生温い眼差しやめてっ!


「……今日は医務室で寝ろ」

「う? どーちて?」


 すると、レキからそんな指示が。大変な1日だったから心配してくれてるのかな? そう思って首を傾げると。


「いいから、黙って言うこと……!」

「レキ。ちゃんと患者に説明しなさい」

「うっ……」


 有無を言わさずなレキの対応にルド医師からお叱りの言葉。おぉ、レキが言葉を飲み込んだ!


「……夜中、僕が診ててやる」

「レキが?」


 何が恥ずかしいのかレキは顔を真っ赤にしてそっぽ向いたままそれだけを言う。脳内は疑問符だらけである。すると仕方ないな、といったようにルド医師が補足説明してくれた。


「レキの癒しの効果は知っているんだよね? メグが寝ている間にレキが側で手を握っていてくれる。そうする事で疲れた心を癒し、ぐっすり眠れるよ。人型でも癒しの光を出す訓練にもなるんだ」

「ふぉぉ、レキ、しゅごい。お願いちましゅ!」

「う、わ、わかったらさっさと飯食って戻って来いよ!」


 なるほど、手を握ってくれる辺りに抵抗があった模様。さてはあわよくば私が寝ている間にこっそり握って気付かれないように、とか思ってたな? 全く照れ屋さん!


 その後、ギルさんやニカさん、クロンさんや魔王さんも診てくれたルド医師。傷口の処置をした後、暫く大暴れさえしなければ大丈夫だと聞いてすごくホッとしたよ! たくさん血が出てたのに、みなさんすごくタフですね……!

 それから私の、というかシズクちゃんの治療薬の話を聞いてすごく褒めてくれた! うふふ。今度研究させてくれと言われたので2つ返事で了承したよ!


 こうして医務室を後にした私たちはみんなで一緒に食堂へ。ウトウトしながらご飯を食べる私に魔王さんがあわあわしてたり、ギルさんに世話焼かれたりした気がする。ごめんなさい。もう、眠気は限界なの……!


 ああ、でも。

 帰ってきたんだなぁって、しみじみそう感じた。ここが私の居場所だ。


 ただいま、オルトゥス。


 その後の記憶は本当に曖昧だ。気付けば医務室のベッドの上で朝になり、レキの手繋ぎの記憶がない事にがっくり項垂れたのであった。かなり清々しい目覚めだったからちゃんとやってくれたのだろうけど……くっ、恥ずかしがるレキを見たかった……! 

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