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特級ギルドへようこそ!〜看板娘の愛されエルフはみんなの心を和ませる〜  作者: 阿井りいあ
それぞれの動向2

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sideサウラディーテ3 中編


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


 次々と面白いくらいに私のトラップにはまっていくネーモのギルド員たち。一言で言うなら落とし穴ってやつ。ただの落とし穴ではないけどね! これ、至って単純な作りなんだけど簡単に引っかかるからお気に入りなのよ。やっぱトラップの原点を忘れちゃダメよね!


「ワイアット! 空だ!」

「オッケー!」


 トラップを上手いこと避けた者たちはさっきの双子や他の人たちが相手してくれてるわ。今のところギルド内に立ち入る者はいない。ルドの張り巡らせた糸がそう示してるから間違い無いわね。


 そうして自分の役目を全うしながらも横目でジュマの様子を見る。もう、心配で仕方ないわ。だってジュマったら……


「なんだ。やはり口だけか」

「うるせぇ……っ! まだまだだっ!」


 ジュマのスピードと重さの込められた大剣の一撃は相当なものなはず。それを見切る事さえ難しいのは確かなの。それなのにラジエルドはそれらの攻撃を全て受け止め、尚且つ反撃のオマケまでしている。ジュマは身体が丈夫だからまず防御をしない。だからそれらの攻撃を全てそのまま受け止めてるんだけど……


「があっ……!」

「ガキの頃から変わらない。お前はずっと、弱いままだ」

「くそっ……まだ、まだぁぁぁぁぁっ!!」


 一方的とも言える戦い。仕掛ける手の数はジュマの方が多いのに! あぁもう! だから防御も少しは覚えなさいっていつも言ってたのに!


 ハラハラと見守っていたらギルド内から人の近付く気配を感じて振り返る。あら、カーターにマイユ。非戦闘員の2人がここまで来るなんて珍しいわね。そう思って何の用かと問いかけた。


「メッ……れっ……!」

「レディ・メグから精霊を伝っての連絡が来たそうだよ」

「メグちゃんから?」


 なるほど、マイユは通訳の為に来たのね。不思議なもので、誰もが何となくしかわからないカーターの言葉をなぜかマイユはちゃんと理解出来るのよね。っと、それどころじゃなかったわ!


「私から説明しましょう。道中聞いて来ましたからね。さすが私! 美しい上に仕事も早」

「はいはい、すごいから報告早く!」


 全く、確かにマイユは有能なんだけど脱線すると長いから困るわ。私はマイユの自己陶酔をバッサリぶった切って報告を聞いた。


「ま、魔王が暴走ですって!?」


 何やってんのよあの残念親バカデレデレ魔王! あー、いや、メグちゃんは超絶可愛いし、気持ちは分からなくもないけど! ったく、色々と計算が狂うじゃないの!

 ううん、でもハイエルフがシェルメルホルン以外協力的なのは嬉しい誤算。起きてしまった事は仕方ないと思わなきゃ。今最も問題なのは……


「魔物の暴走が始まるわね……街には簡単に入ってこられないとは思うけど、強い個体が来たらわからないわ」


 絶賛迎撃戦中なのに、魔物を食い止める人員の確保だなんて。キャトルの手も借りたいくらいよ! 街の人たちを郊外の方へ避難させておいて良かったわ……! あそこは特に強い結界を張ってあるもの。強い個体も近寄れないはず。


「まっ……おっ……」

「え?」

「魔物の対応は自分たちがやる、と。えっ!? 私も入ってないかい!?」


 カーター……! 貴方、実は頼りになる男なのね! で、でもどうやって? そう思っていると、カーターは私たちには聞き取れない言語で何かを呟いた。


『ジグラドナイド』


 聞き取れないという事は、たぶん精霊の名を呼んだのだわ。それも真名を。その瞬間、カーターの周囲にブワッと火が燃え広がったもの。熱は感じるけど、優しい火の熱。悪しき者のみを燃やすカーターの精霊の炎は美しく揺らめいていた。


「ジっ……だいっ……」

「えっと、火の精霊ジグルが仲間を引き連れて街を守護するから大丈夫だそうですよ。ああ、なるほど。カーターと私は精霊が対応しきれない魔物討伐の加勢って事ですか。いいでしょう。やりましょう!」


 カーターの周りで揺らめいていた炎がチラチラと揺れながら散っていく。早速向かってくれたのね。


「助かるわ! あと2、3人適当に連れて行って構わないから。気をつけて」

「わっ……そっ……」

「了解ですよ! 貴女方もお気をつけて!」


 それだけを言い残して2人も颯爽と立ち去っていく。当然、ギルド内地下道からね。さすがにこんな戦地を駆け抜けさせるわけなはいかないもの。地下道は地下で働く者たちだけが使える特別な道。今の状況ではまさにうってつけの道ってわけ。


 それにしても、200年前の悪夢が再びだなんて、冗談じゃないわ。こちらに連絡が来たなら頭領ドンたちにも伝わってるわよね。シュリエがいるし、先に情報を受け取ってるはず。きっと頭領ドンが向かってくれるから、それを信じる事しか出来ないわ。

 つまり、私たちのやる事は変わらない。ギルドとこの街を守ること。むしろさっさとネーモの連中を追い返して魔物の対応を急がなきゃ! だから結局————


「こらぁぁぁっ! ジュマ! 確りしなさいっ!! メグちゃんに情けなかったと報告するわよぉぉぉっ!! さっさと立ちなさい! お兄ちゃんでしょぉっ!!」

「そ、それは嫌だぁっ!! 兄ちゃんは勝ぁぁぁぁつ!!」


 これまで軽く瀕死状態で倒れていたジュマがガバリと立ち上がった。アイツも大概メグちゃん絡むと馬鹿になるのよね。兄馬鹿。元々馬鹿だけど。さて、どれだけ効果があったかしら?


「おぉぉぉぉらぁぁぁぁっ!!」

「馬鹿の1つ覚えみたいに……ぬっ!?」


 立ち上がったジュマは宙を翔けてラジエルドに向かって渾身の一撃をくらわせた。それは今までと同じようでいて、全く違う一撃。ラジエルドが繰り出す無数の蒼い炎を全て食らっているのにその勢いは止まらない。


「……ジュマはね、馬鹿なのよ。馬鹿だから、攻撃のパターンも決まっちゃっててね。だからギルやシュリエ、ニカにはなかなか勝てない」


 ジュマの大剣が初めてラジエルドの腹部にめり込んだ。そのまま何軒かの家々を犠牲にしながら吹っ飛んでいく。丈夫な鬼と言えど、ジュマほどの丈夫さはないだろうから、骨がバッキバキでしょうね。ご愁傷様。


「けど、何かキッカケがあると同じ攻撃なのにとんでもない威力を発揮する、って事スか。……馬鹿?」

「そう。馬鹿なのよ」


 レキが呆れたように吹き飛ぶラジエルドの行方を目で追ってる。気持ちはわからなくもないわよ? 今回のキッカケは兄のプライドを守るためだけなんだもの。思った以上の成果をあげてくれたわね。喜ばしいやら呆れるやら……


「馬鹿は最強なのよ。色んな意味でね」

「色んな意味で、ねぇ……」


 思わず2人で遠い目になってしまったわ。ったく。貫通した家の修理代はジュマの給金から天引きするんだから!


「……見つけたんだし。えげつない小人族ぅ」


 と、背後から聞き覚えのある声。レキがさっと私を背に庇ってその人物と対峙した。


「ご機嫌いかが? エピンク」

「お か げ さ ま で! 借りを返しに来たんだし!」


 あらあら、根に持つタイプなのね。再戦って事かしら。そう思って構えていたんだけど。


「……僕がやる」

「はぁっ!? 小人の次はガキかよっ! オイラ萎える相手ばっかだしぃっ!」


 面倒な事はやりたがらないレキ。こういう場面では私を連れて逃げてたはずなのに、どういう心境の変化かしら。……ひょっとして、メグちゃんを攫おうとした事をいまだに怒ってるとか? まさかねぇ……?


「どのみち僕らを倒さなきゃいけないんだからいいじゃん。うるさい兄さんだな」

「うるさいんだし! 生意気なガキがっ!!」


 こう見えてレキは成人済みなんだけど。まぁいいわ。レキにとってもいい経験になるはず。いざという時の為のトラップを準備しつつ、私は2人の戦いを離れた場所から見守る事にした。

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