第一夜「開会式」
エアコンがガーガーとうなっている。
チョークが黒板をかきむしっている。
筆記用具がノートをえぐっている。
一部の生徒がいびきをかいている。
教室内にはそれ以外の効果音が無い。
時折教師がこちらを振り向いて「ほら起きろ~」と明らかに起こす気の無い声をかけるが、
もちろん全く無意味。
この茹だるような暑さの中、ただただ沈黙と静寂とが無意味に流れていくのである。
午後7時。
不意に鳴ったチャイムの音は寝ていた生徒を叩き起こし、
起きつつも暇をもて余していた生徒に歓喜と空隙だらけの達成感をもたらした。
先生「はいじゃあここまで。おいそこ、もう終わったぞ」
フィヴェ「起きなさい」ベシッ
ティン「ホォッ!!!」
まだ寝ていた生徒が隣の生徒に文字通り叩き起こされる。
先生「それじゃ、しっかり復習しとくように」
一同「ありがとうございました~」
感謝のカの字もこもっていない棒読みな挨拶をすると、居るだけ損とばかりに皆そそくさと教室を出ていった。
シグス「ごめんね~わざわざ待っててもらって」
チフレー「問題ありません。きちんと内容は押さえられましたか?」
シグス「」
チフレー「…」
教室の外で待っていた生徒も居たようだ。
オーネ「まあ…結構時間的にも頑張ってたから…寝ちゃうのは仕方ないんじゃないかな…?」
チフレー「…まあそうだったとして…復習ちゃんとやるんですよ?」
シグス「善処するよ…ふぁ~あ…クッソねみい」
ヤイト「あ!フィヴェ!一緒に帰ろうぜ!」
フィヴェ「嫌よめんどくさい」
ニーネ「むぅ、照れなくてもいいのに」
フィヴェ「照れて…ない」
こんな風に、彼らはごくごく普通の高校生活を送っていた。
ところでここ、私立朱月学園高等学校では近年、怪しい噂が流布している。
ヤイト「あ、トゥオ!お前は一緒に帰るだろ?」
トゥオ「めんどくさい」
ニーネ「照れなくてもいいってのに」
トゥオ「俺はマジだ」
フィヴェ「わっ…私だってマジだっつの!」
ここで青春を送る生徒たち。
ティン「やべー!ションベン漏れる!」シャッ
セヴィン「きゃああ!!!」
先生「アホンダラここは廊下だ!!!ソレをしまえ!!!チャックを上げろ!!!」
喜怒哀楽を仲間と共にする生徒たち。
彼らに、魔の手を伸ばす何かがあるのだと…
フォール「購買のパン買って帰ろー!!!」ドタドタ
シグス「いーねー!!」ドタドタ
チフレー「ちょ、ちょっとここ階段ですってば!」
そして、今日も…
トゥオ「うっさい…」
オーネ「賑やかでいいじゃない」
ティン「そうだね…」キラキラ
先生「チャック上げろっつの!!!」
階段を降り、校舎から出ようとする彼らに…
「魔の手」が。
グォン…
…バクン。