表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

喧嘩も華の一つ(4)

「はい、それじゃあ! 折角の楽しいイベントが先送りになった腹いせに!」


「剣条先輩、オブラート、オブラート」


「そ~~れ~~で~~は~~み~~ゆ~~き~~ちゃ~~ん~~」


「ビブラート」


 無用なまでの美声を発する裕也は、顔にべったりと、テンプレート的な笑みを貼り付けている――怒っているのだ。

 それでも、己のキャラクター性を崩す事はしない辺り、徹底して陽気な人物ではあるのだった。


「……茶目っ気の有る先輩だね」


「……まあなぁ」


 もはや日常風景となった流れ、裕也がふざけて、修が窘める。その光景を御幸が、道場のマットに正座しながら見ていた――ちなみに慶次はその横で相槌役になっている。

 何をしているかと言うと、御幸から話を聞くという名目の詰問会である。尤も、主催も詰問役も裕也ただ一人で、慶次と修は巻き添えを食った形ではあるが。


「ではっ、御幸ちゃん! 彼とお知り合いの様ですが、彼は一体、何者!?」


「は、え、はいっ!?」


 マイクを向けるようなパントマイムで、裕也が話を促すと、御幸は眼鏡のフレームを、親指と薬指を使って、くいと押し上げて姿勢を正した。

 何処かで見た動作だ――慶次は首を傾げ、直ぐに思い当たる。

 つい先程、玲がしていたのと同じ動作だ。微妙な手首の角度やら、指の配置やら、そっくりそのままの動作である。

 印象があまり強かった為、御幸の手をじっと見ていると、それに気付いた御幸は、気恥ずかしげに手を膝に置いた。


「えっと、玲ちゃんは……私の従弟なんですけど……ちょっと行き過ぎなとこが有って……」


「確かに行き過ぎてたねー。ああいう跳ねっ返りは嫌いじゃないけど!」


「先輩、話をさせてやりましょう」


 修が手で裕也を制し、顎をしゃくり上げて話の先を促す。


「……昔っからそうなんですけど、あの、過保護なんです。私が男の子と喧嘩すると、そこに飛び込んできて相手の子を蹴ったり、私が学校で嫌な事有ったなんて言うと、その原因の子を蹴りに行ったり、先生を蹴りに行ったり……止めてって何度も言ったんですけど……」


「愛が重いねぇ……ふんふん、それでそれで?」


「それで、さっき追い掛けて話を聞いたんです、なんであんな事を言うのって。そしたら……」


 一度言葉を区切り、息を吐く。

 御幸にしても、従弟の行動が理解出来ていない部分は多々あるのだろう。困惑がかなりはっきりと浮かぶ。

 横に座る慶次は、でかい体をぐうと曲げて、その顔を覗き見ている。多弁にならずとも、興味は津々という事だ。


「そしたら?」


「……『格闘技は怪我するから危ない』って……言われました」


「はぁ……うん、まあなぁ」


 スパーン、と心地良い音が響いた。裕也の平手が、慶次の頭を引っ叩いた音である。


「痛ってえ!?」


「そこ、同意しない! ……しかし、ふんふん、読めてきたようなそうでないような」


 抗議の声もどこ吹く風、すこうしばかり笑みを薄めて、事情を把握する体勢になる裕也。御幸は、また続ける。


「玲ちゃん、私が総合格闘部に入るんだって勘違いしたみたいで……部が無かったら、そんな事も無いだろうって」


「また極端な……」


「そうなんですよ、もう……」


 疲労した様子で俯く御幸であったが、ともあれ、元凶は玲の過保護であると知れた。

 そうなれば、慶次も修も、後はやる事は決まっている。出迎えて叩き伏せると、ただそれだけだ。

 相手は二日停学処分。その間に、対蹴りに絞った練習を重ねれば良い。

 二人は、別に言葉は交わしていないのだが、これは慶次の方が向いていると感じていた。頭の位置が高く、かつ自分も蹴りを撃つのに慣れているからである。

 だが――


「……ふふ、ふふ、ふっふっふっふっふ……ふっはははははははっ!」


「うぉっ……どうしたんすか、裕也さん」


 裕也は一人、 別な事を考えていた。

 不気味な笑いを上げながら、倉庫兼更衣室へ飛び込んで行き、直ぐに、封筒と一冊の本を持って戻ってくる。


「御幸ちゃーん、悪いんだけどさー、玲ちゃんにこれ渡してくれないかなー?」


「こ、これですか……? これは……?」


「正式な挑戦状――と、ルールブック」


 ルールブック――言わずと知れた、高校総合格闘の公式ルールである。

 これを見た瞬間、慶次と修は揃って、部長の悪巧みの一部を悟った。


「剣条先輩、そこまで行くとむしろ尊敬します」


「だろ? もーっと崇めてくれて構わないんだよー、修ー。……それから慶次」


「押忍」


 挑戦は確かに向こうから受けたが、ルールの指定は無かった。それを先んじて押し付けようというのである。自分から喧嘩を売って来た以上、玲も、そのルールを突っぱねる事は中々難しいだろう。

 その上で裕也は、慶次にも何か命令を飛ばそうというらしい。呼ばれ方のイントネーションから何かを感じ取って、慶次はすうと立ち上がる。


「明日の練習にさあ、〝先生〟をお招き出来ないか、ちょっと聞いて見てくれない?」


「えっ……!?」


 慶次は硬直した。聞こえた言葉を信じられぬという顔で暫く棒立ちになった後、目の前の人間が、そういう事を好む性質だと思い出して、間違いではないと確信する。


「俺がさ、〝道場破りへの作法を習いたい〟って言ってたって伝えてくれれば――」


「い、嫌です! んな事したらどうせまた、俺が――」


「拒否権はユーにはナッシングよオーケイ?」


「ノットオーケイ!」


 こてこてのジャパニーズイングリッシュに対し、同じような東北訛り気味のイングリッシュで返答した慶次は、練習中にも見ないような量の汗を掻いている。

 こうまでの狼狽え方は、部活でも日常でも、どちらでも見たことが無いと、修は思い切り眉根に皺を寄せて、


「先生……誰だそりゃ? 慶次、何かあ――」


「裕也さんはそりゃいいかも知れねえけど、俺は! 俺がヤバいから!」


 必死の形相で叫ぶ慶次をよそに、裕也は上機嫌が振り切った様子で、思い切り飛び跳ね回っていた。壁を駆け上がって宙返りなどする様は、軽業師にも見えて――余程、明日が楽しみなのだろう。


「さーあ、明日に備えて解散! 間違っても明日に向けて、一片の疲労も残さないように!」


「勘弁してくれえええぇ……――――」


 慶次の叫びがデクレシェンドを奏でる中、この日の部活は終了した。






 翌日である。

 この日の顔色は三者三様で、全く平静の修に、絶好調が浮かぶ裕也。そして、少し青ざめた慶次という様子であった。

 彼らはこの日、正面に向かっての礼を終えてから、かれこれ二十分程正座を続けている。

 その理由は、本来裕也が立つ筈の正面に、どっかと胡座を掻く女性にあった。

 彼女は、空手の道着を着ているのだが、腰から下は袴である。髪はかなり短く、前髪は整髪料か何かで後ろへ流して固め――染めてはいない。

 身長は170cm有るか無いかで、裕也と殆ど変わらない程度。女性としては高めであるが、目を引くのは背の高さでは無く、寧ろ内面に留めているものであった。

 凶暴な臭いを、あまり隠していない性質の人間である。視線の移動、呼吸の間隔、ただ座っているだけで、そこに獣が居ると分かるような類の人間である。

 そういう人間が、高校総合格闘のルールブックを読んでいた。


「よーっし、覚えたっ! このルール良いわねぇ、安全。うちでもやろうかしら……はい、起立!」


 そのルールブックを脇に置くと、袴の女性は素早く、だが音も無く立ち上がる。


「お、押忍っ!!」


 慶次が、普段の三割増しの声量で応じて立ち上がる。他の二人の声を、ほぼ一人で掻き消す勢いである。

 冷や汗の量、表情筋の強張り、やけにまっすぐ伸びた背中――いずれを見ても、緊張が明らかな慶次に、修は違和感ばかり抱いていた。

 その一方、裕也は、これからの出来事が本当に楽しみというような――いつもの事やも知れないが――顔である。


「松風先生、良く来てくださいました!」


「うむ! 裕也くんは元気で大変よろしい! ……で、そっちの子が修くん? あらやだかーっこいー」


 まるで裕也が二人に増えたかのような賑やかさに押されながらも、修は首を横に向け、慶次に訊ねる。


「慶次……あれ、お前の道場の先生だよな」


「師範代、だな……尚武館師範代」


「それがなんで、裕也先輩と」


「俺だってこの前まで知らなかったよ……」


 正確に言うと、知らなかったのは裕也である。

 数日前の事、修が委員会活動で少し遅れてくるという時に、慶次と裕也は、各々の流派について語っていた。

 慶次は、自分の学ぶ尚武館流がどれ程に実践的か、強いものであるかを語ったのだが、


「俺はね、我流なんだ。道着はお下がりで、まともな道場に通った事は無い。背が伸びなくて良かったねー、本当に!」


 そう言ってから、続けて語った。


「社会人の大会とか有るでしょー? あれを見に行って、強そうな人を追いかけてって、弟子にしてくださいーって頼むんだ! そーするとたまーに、本当に教えてくれる人が居て……」


 無茶苦茶な、と呆れる慶次だが、裕也はそれが、然程の事でも無いと思っているようだった。


「色んな強い人がいたけどねー、一番凄い人は、まだたまに俺に教えてくれたりしてるよ! ……月謝払ってないから、道場じゃなく、その辺の体育館とかでだけど……その人はね」


 松風まつかぜ 紗織さおり――それが、裕也の師の一人にして、慶次の同門の大先輩であった。裕也は、師の流派の名を、聞こうとした事が無かったのだという。


「そりゃ裕也さん、強えに決まってんじゃん……あの人、俺が四歳で入門した時、もう十年選手だったんだぞ……」


「うん! 花も恥じらう女子高生空手小町とは私の事よ――訂正、私の事だったのよ。今は二十七歳で、尚武館は二十二年目になりまーす。

 ……私の頃に総合格闘あればなー、優勝してたのにー。空手だけだと準決勝止まりだったのよ、もー」


「ん……空手じゃ、ないんですか?」


 言葉の中に何かひっかかる物を見つけて、修が問う。答えの代わりに鼻先まで帰ってきたのは、親指をぐっと立てた紗織の拳。

 それは、異形と呼ぶべきものであった。

 骨の凹凸というものが、その拳には無い。その代わりに、皮膚の全てが、例えるなら畳のように、分厚く、ざらざらと固まっているのである。

 突き出た親指の爪も、常人の数倍も分厚く見える。手刀――掌の小指側、側面は、ぼこりと盛り上がって、踵のように化けている。

 平常の競技者では無い――悟ってたじろぐ修に、紗織は言う。


「然ぁり! 尚武館流は総合武術! 打撃・投げ・極め・絞め・武器・裏技、なんでもござれなんだから!

 ……でね、話も聞いたわよ裕也くんから。なんだか強い子が居るって話じゃない」


 これもまた、そういう事は大好物という口調、顔。そしてその顔が輝く程、慶次の顔色は悪くなるのである。


「それじゃあ……慶次! 早速だけど、ちょっと私を蹴ってくれる?」


 理由は直ぐに知らされる事となった――不幸にも、慶次の身を用いて。

 紗織は構えを作ったが、それは慶次が普段やるような、腰を落とした構え方である。

 左手が前、右手は鳩尾。分厚い構えであった。


「じょ、上段……? 中段……?」


「中段。前蹴りが良いかなー」


 さあ! と、紗織が呼ぶ。そこへ慶次は、全力の中段前蹴りを放った。

 少し離れて見ていた修が思うに、己にさえ、練習では滅多に撃たないような威力である。当たれば、足が浮いて飛ぶような蹴りであった。

 それを、紗織は受けなかった。

 慶次の右爪先がマットから浮いた瞬間、紗織は、早回しの映像の様な速度で動いていた。

 傍目に見て、そこだけ映像の速度が間違っていると感じてしまう瞬発力。慶次の右脚が伸びきった時には、その膝の下に、紗織の左肩が入り込んでいた。

 次の瞬間には、慶次の左膝を紗織の右手が掴み、更に紗織の左手が、慶次の右脚の下を潜り、背中側の帯を掴んでいた。


「ぃいいやあぁっ!」


「うぉ――」


 一喝、紗織が立つ。慶次は脚を持ち上げられ、腰を支点に後方へと回転した。

 受け身は両腕で取るが、その回転の速度は尋常では無い。支点が腰、力を加えたのは膝と帯――支点に比較的近い位置。そうすると、必要な力は大きくなるが、回転速度は相当に大きくなるのだ。

 ずどんと大きく音がして、慶次は強かに背を打った。受け身は成功したというのに、それでも衝撃は相当なものであった。


「尚武館流脚取り技、『抱雷かかえいかずち』! 脚なんてデカい的よ、こうすればいいの……はい慶次、次、中段回し蹴り!」


「ったたたた……えっ? あっ……押忍!」


 慌てて立ち上がり、右回し蹴りを撃つ慶次。

 その足首に右手を当て、蹴り足の勢いのままに流しながら、紗織は左肘で、慶次の右膝裏を押した。

 すると慶次の右脚は、踵が尻に近づくように畳まれて――片脚立ちを強制されている間に、紗織の左下段蹴りが、慶次の左膝を裏から刈り取っていた。


「脚取り技、『束鎌そっけん』! 次!」


「お、押忍……!」


 再び背中を強かに打って、休む間も与えられず慶次は立ち上がる。

 下段左回し蹴り――慶次の左膝を左足裏で受け、踏み台として跳躍する『跳鎌ちょうけん

 右足後ろ蹴り――向かってくる右足裏に左手を触れさせつつ反転、右膝を脇の下に抱え込んで腰を落とす『逆跳ね橋さかはねばし

 上段前蹴り――足首を腕で上へ押し上げながら、膝を肩の上に担ぎつつ反転、背負い投げのように放り捨てる『梯子割はしごわり』――尚、これだけは実際に投げる前に腕を解く、言わば寸止めである。

 慶次は幾度も幾度も蹴りを打たされるのだが、その度に紗織は、あっさりとその蹴りを捌いては、慶次を床に転がして見せた。


「えー、この通り、蹴りが単体で向かってくる場合、恐れる事はありません。総合格闘ルールだったら、これ全部セーフの筈だから! ……よね?」


「はいっ! 間違いなく!」


 ルールは覚えたと豪語する紗織の背を、裕也が押して裏打ちする。

 実際、これらは反則にはならない技ばかりだ――実際に出来るのであれば。

 向かってくる脚にタイミングを合わせ、自分は負傷せず、相手だけを思うように動かすなど、容易く出来る技では無いのだが――肝心なのは技術より、寧ろ運用思想である。


「今日はね、こんな風に、蹴りを捕まえる練習をしましょう! 慶次が修くんと、裕也くんは私と組んで、交代で蹴ったり捕まえたり。まず、掴む事だけ考えてやりなさい。捕まえたら後はなんでも出来るんだから」


 当たり前の事ではあるが、蹴りを打つ時、人は片足立ちになる。つまり、姿勢が不安定になるのだ。

 そこで蹴り足を捕まえてしまった場合、相手は殴る事も防ぐ事も、逃げる事さえもままならない。

 かと言って、その距離ではこちらも、殴る蹴るは難しい――ので、投げ落とす。

 この日、紗織が教えに来たのは、そういう一連の流れであった。

 技術とは、思考を内包する。

 知らない技は使えないが、知っている技なら、体力が許す限り使えるのである。

 つまり紗織は、慶次を実験台として、その思考方法を叩き込もうとしているのだ。


「それじゃあ、質問は?」


「し、師範代、一分だけ休ませてくださ――」


「無いわね? はーい、始めー!」


 頑強な慶次がぜえぜえ言うのを聞こえないように振舞って、紗織は練習開始の号令を掛けた。






 どったん、ばったん、騒音が続いている。

 普段の、足を踏み鳴らす落とす音よりも、よっぽど喧しいし、埃も酷く巻き上がる。人間が丸ごとマットにぶつかるからである。

 修が、慶次へ蹴りを打つ。慶次がその脚を脇に抱え込んで、拳を修の顔面へ寸止めする。

 慶次が、修へ蹴りを打つ。修がその脚を肩に担ぎ上げて、拳を慶次の腹部へ寸止めする。

 普段がどうであれ、いざ練習を始めてみれば、中々に息の合った二人である。双方時折は手を止めて、あれがいい、これがいいと言い合っていた。


「んー……やっぱり〝取る〟のは修くんの方が上手いわね」


 その光景を、道場の壁際まで寄って、裕也と紗織が眺めている。


「そりゃ、あいつは根っからのオールラウンダーですから! 慶次も強いんですけど、なんていうか、こう……」


「あの子は頑固だったからねぇ。私、慶次が空手以外の技を習ってるって聞いてビックリしたもん」


 しみじみと、思い出すように、紗織は言った。


「そうなんですか?」


 裕也はそれを聞いて、へえ、と確り音に出して驚いた。

 確かに最初に見た時は、他の競技を下に見て、空手だけやろうという気性だった。

 だが、それもあっさりと翻って、今は組み技も学ぶ日々。根は融通の利くものだと思っていた。

 然し紗織の口振りを聞けば、どうもそうではないらしい。


「長いこと道場に通ってるからさ、投げ教えちゃろかーとか、武器術教えちゃろかーとか、色々言う訳よ。でもそのたんびに、いやだ、俺は空手一本で行くって意地張っちゃってさ。それがあの通りだもん、ビックリもするわよそりゃ」


「……修がいたからでしょうね」


 裕也も、今にして思えば、慶次を深く知っている訳では無い。慶次と修が組手をしたその日、初めて龍堂慶次という人間を知ったのだ。

 その前の慶次が、どれだけ凝り固まっていたかは知らない。

 けれども、あの組手の最中――破顔していたのは間違い無く、あの慶次だ。

 新しく体験したルール、戦った相手が楽しくて、別れ難くて、其処に止まった。何年も掛けて作った偏見を、投げ捨てられる程、その体験が強烈だったのだろう。

 そんな体験を、誰もが出来る訳ではない。

 出来上がった考え方が曲がらないまま、何十年も生きる人生だって有る。


「……青春っていいわねぇ」


 紗織は、しみじみと言った。


「ところで先生、折角教えてくれてるのに悪いんですけど……」


「ん? なによぅ、人が黄昏てる時に」


 そのしみじみとした顔の前に裕也が飛び出して、


「実はあと一人、指導して欲しい子がいるんですけどー」


 俺は企んでいるぞと、誰にも分かる顔で笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ