第六話
春花、人生最大の危機!?
「……く……………」
彼女………鈴風春花の額から一筋の汗が流れる。
しかし、彼女はそんなことにも気付かずに周囲を警戒していた。
彼女は今、強大な敵と戦っていた。
それ(・・)は地を駆け空を飛び、壁までも走り抜ける。
また、それはどんなところにも現れ、人々に恐怖と絶望を与えていく。
それはいつの時代も人々に恐れられ、一部の人間以外には抗う術はなかった。
名前を言うのもはばかられるそれは、春花を確実に追い詰めていた。
「…………一体、どこにいるの……?」
彼女は生まれてから今まで苦戦という苦戦は両手で数えられる程度しか経験したことがなかった。
しかし、今回の戦いは今まで経験してきた死闘がまるで子供のお遊戯のように感じられるほどだった。
彼女は全神経を尖らせ周囲を警戒するが、それでもそれを見つけられない。
それでも春花は必死にそれを探すが、見つからずに時間を消費してばかりいた。
「……………はぁ………はぁ……」
極度の緊張により春花は自分自身の息が上がっていることにも気づかず、警戒を続ける。
――――カサカサ――
「ッ!?そこ!!」
一瞬だけたった音を彼女の狐耳は聞き逃さず、大量の弾幕を放つ。
大粒と小粒の弾幕が入り乱れ、その中を追尾性能を持つレーザーが迸る。
そのどれもが一発でも当たるだけでそれを消し飛ばせるのだが、一向に当たることがない。
大粒と小粒は全て避けられ、レーザーはレーザー同士をぶつけられ相殺される。
恐ろしいのは、それがわざとその現象を起こしているというわけではないということ。
オーバーキルにも程がある弾幕を全て避けたそれは、なおも無傷で君臨していた。
「うぅ………なんで私がこんな目にぃ…………」
春花は涙目になりながらも(というより少し泣いている)、ひたすら警戒を続ける。
彼女はなぜこうなったのかをふと思い出していた。
〜数時間前〜
「……ふぁ〜あ……むぅ……今日もいい天気だねぇ〜」
早朝、起床した春花は外に出て伸びをしていた。
と、そこに一人の男性が少女を引き連れて神社から出てくる。
「あ…おはよう。隼人、白ちゃん」
「………むにゃ…あぁ、春花さんですか…おはようございます」
「ああ、おはよう」
白は未だ眠気が覚めないのかすこしボーっとしながら挨拶を返す。
隼人は対照的に既にしっかりと眠気を覚ましたようで、外出の用意をしていた。
「でかけるの?」
「ああ、すこしそこらを歩いてくる。………行くぞ、白」
そういって隼人は長羽織を羽織って階段を下りていった。
「あぁ〜!待ってくださいよご主人〜!」
眠そうに目をこすっていた白も慌ててそのあとを追っていった。
「………私も里に行こうかなぁ〜」
「あら、悪いけど、少し留守番していてくれる?」
春花がボーっとしながらそんなことをつぶやくと、箒を持った霊夢と桜が現れた。
「霊夢、おはよー」
「おはよう、私今から桜を連れて魔理沙のところに行ってくるから、戻ってくるまで残ってて欲しいんだけど」
「実は魔理沙に用事がありまして、主様を一人にするのは非常に心苦しいのですが、今日一日
、お暇をいただけないでしょうか?」
「桜、桜はしたいように動いていいんだよ?事情はわかった。じゃあ、留守番して待ってるね」
「ありがとうございます」
「悪いわね。じゃあ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃ〜い」
箒を置いてきた霊夢は、刀になった桜を持つと、ふわりと浮かび上がる。
そして、魔理沙が住んでいる魔法の森へと飛んでいった。
それを見送ったあと、春花は神社に戻り、いつもの家事(洗濯など)を終わらせ、お茶でも飲もうと台所を訪れたときに、それは現れた。
逃走録での無双っぷりが嘘のようですよね。