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第七話

お待たせしました!

ヤツとの遭遇からもう二時間ほどが経過しただろうか、未だに膠着は続いていた。


弾幕は全て避けられ、以前使っていた武器系のスペルカードも、隼人と出会ってから使用者が隼人に移行し、使うことは出来なくなっていた。


攻撃は当たらず、ただただカサカサと這い回る音だけが耳に残り、精神を一方的にすり減らすだけの膠着を打破しようと、ついに春花が動き出そうとする。


「………アレを殺すときは頭部を狙うこと。ネズミの場合も同様である。いずれも一撃で……」


まず、昔聞いた言葉を小さく呟き、覚悟を決める。


「よし…………」


そうして動き出そうとした瞬間、


カサカサカサカサカサ……


ヤツは先手をとり、春花に向かって高速で動き出した。


その瞬間、春花の精神のメーターが振り切れた。


「う………うわぁーーん!!もうやだぁー!!ゴキブリいやぁぁーーーー!!!」


かつてないほどの悲鳴と身体強化でところどころ床板を破壊しながら疾走、玄関から飛び出す。


そしてそのまま階段を駆け下りていたが、そこに不運が重なる。


「ばぁー!」


いきなり草むらから多々良小傘が現れた。


実際には草むらからは小傘が持つ(本体)が見えていたのだが、春花はそれに気づかず、なおかつ小傘の能力「人間を驚かせる程度の能力」が、何故か人ではない春花に完全(・・)に発動した。


つまり、


「きゃぁぁあ!!」


春花は見事に驚き、そのまま腰を抜かす。


ちなみに、この悲鳴はほかの山にも聞こえ、それを聞いた山彦がその悲鳴を反射し、それによる騒音被害が発生したのは余談である。


「わぁーい!驚いた!驚いた!!こんな真昼にでも驚かせれた!」


小傘が両手を挙げて喜びを表現する中、春花は腰が抜けたため動けずにいた。


「あわ……あわわわ……」


まだ驚いた際のショックが抜け切っていないのか、軽く震えながら目に涙をためていた。


「わーい!わーい!……って、ちょっと、あなた大丈夫?」


しばし喜び続けていた小傘だが、流石に春花を気の毒に思ったのか、依然腰が抜けたままの春花にしゃがみこんで手を差し延べる。


「う………うん。ありがとう………」


春花もその手を握り、なんとか立ち上がる。


と、その時、春花の耳がひとつの音を感知する。


カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ………


「ひっ!!」


なおも迫るヤツの足音に、春花は再び逃走を開始する。


「………そう言えば、今の人、誰だったんだろう?」


いきなり風圧とともに消え去った狐耳の女性を見て、小傘は一人首をかしげた。


「………はぁ…はぁ、こ、ここまで来れば…」


ヤツから逃げるため人里まで走り抜いたのだが…


カサカサカサカサカサ……


「ひぃーん!」


その後も、魔法の森では隠れていた木の陰から現れ、妖怪の山では姿は見えずに足音だけが響き、その度に逃げ出した春花は、最終的にどこかもわからない野原にたどり着いた。


カサカサカサカサカサ…カサカサカサカサカサ…………カサカサカサカサカサ……


「もうやだ………」


なおもしつこく現れるヤツ。


ヤツは何も語らず、ただ足音を響かせるだけだった。


そのとき、


ブチッ


春花のなにかが切れた。


「フフフフフフフフフフフフフフフフ………」


俯いたまま笑い出す。


その様子は、他の者が見れば気がふれたかと思うだろう。


「もう………いいや……」


春花は、右手を上に上げると、その手に神力を圧縮し、溜める。


そのまま数分が立つと、春花の手の上には巨大な光弾ができあがった。


「この土地ごと跡形もなく吹き飛ばす!!」


そしてそのまま手を地に振りおろそうとした瞬間、


ガツンッ!


「はぅっ!……………」


バタッ


春花が急にたおれ、その後ろには隼人がハンマーを振りおろした体制で肩で息をしていた。


「はぁ…はぁ…手間、かけさせるな…。俺が偶然通りかかったから良かったものの、幻想郷を焦土に変える気か…」


「偶然というか、ご主人が道に迷っただけですけどねー」


ハンマーをそこら変に投げ捨てた(途中で神力に還元している)隼人は、そのまま肩に春花を担ぐと、来た道を戻りはじめ………ようとした矢先、後ろを振り向く。


「俺に直接的な被害が出ないうちはある程度までなら見過ごすが、度を越すようならこちらにも考えがあるということを覚えておけ」


そう言い放つと、今度こそ神社へと帰っていった。


「………ふぅ、危なかった〜」


隼人が通り過ぎたあと、近くの木陰から緑の少女が現れた。


名をリグル・ナイトバグ、蟲を操る蛍の妖怪で、今回春花の元にヤツを仕向けた張本人である。


妖怪のちょっとした好奇心の悪戯から、あやうく幻想郷を吹き飛ばしかけたという事体があったことは、もはや一部にしか知られていないものとして歴史に埋もれていくのであった。

なんとなく微妙な終わり方ですみません…

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