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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第六章~寄生竜~
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~空中庭園~

 長いようで短かった戦いも終わり、アイン達は上を目指して進んでいった。ミリの方が人竜との受けたダメージも多く、ナーガの背中に乗せてもらい頂上を目指す。

 キーアが居なくなったことでアインは喋らなくなり、ミリやナーガもそれ以上話しかけるのを止めている。

 天井から光が差し込まれていることに全員の意識が上に集中する。頂上に着いたのだろうかと思ってが、その場に着くと目の前に広がった光景にアイン以外が目を奪われた。

「………庭園かこれは?」

 体を起こしてミリは庭園を眺める。周りは天高い空の上に属するために雲が斑に点在していたりする。

 まるで地上と同じような風景に喧騒としていた戦争のことを忘れてしまいそうだ。

「ていうか、ここからどうやって上に行くんだよ?」

 ミリの発言は確かに的を射ている。ここが頂上だというように周りを見渡してもどこにも上に行く順路が無い。

「本当にここが頂上ならアルマさんはどこだ?」

 だが、一つだけ妙な場所があった。建物が存在していなかった庭園の一端に作られた妙な塔。塔の頂上には嫌な空気を感じたミリは、あそこにアルマがいることを予想した。

「多分あそこだな、よし、行くぞアイン?」

 ミリの言葉にアインは幽鬼のように歩き出す。その姿にずっと我慢していたミリはアインの頬を殴った。

「いい加減にしろアイン。死んだ人間は帰ってこないのは分かっているだろう!!」

 ミリの行動にナーガは驚きつつも、今のこの状況は全てミリが正しいことをナーガも気付いている。止めることは出来たが、あえてナーガは止めなかった。

「分かっているよ………けど」

 何かを言う前にミリはもう一度アインの顔を殴る。

「うじうじしている暇があるなら次の事を考えろ。俺だって悔しいんだぞ!? アクセスもフィンも死んだ。俺があの二人と一緒に行けば良かったなんてことも思った。

 だが、もう終わっちまったんだよ。見てみろこの下を」

 ミリが促した場所は庭園から眺められる地上の姿だ。そこにあったのは地上という概念を無くし、地表という物を取り払った大きな穴だ。

 落ちてしまえば一生這い上がることも出来ぬ大きな穴はまさに奈落という表現が当てはまる。

「きっと人類はここにいる俺たち二人とアルマさんしかいないだろう」

「じゃあ、もう世界は終わりだね。このまま消えようよ?」

「ふざけるな! お前は何のためにここに来たんだ。アルマさんを助けるためじゃなかったのか?」

「そうだけど………」

「なんだよ、なにが言いたいんだ?」

「疲れたよ、何もかも。僕は誰も助けることは出来ない。家族さえも助けられないのに、どうしてお姉ちゃんなんかを助けることが出来るのさ?」

「お前っ!!」

 逆上したミリをナーガは体を張ってアインの前に躍り出て頭を振る。それ以上は止めて欲しそうにナーガはミリをじっと見つめた。

「止めてくれるなナーガ。俺はこいつをいっぺん殴らないといけないんだ。こいつが今やらなければならないことを見失っているのなら、俺がこいつの目を覚まさせなければならないんだよ」

 ミリはナーガを押しのけようとするが、それでもナーガは頑なに拒む。一体ナーガは何を思ってアインを守っているのかと疑問に思うものの、怒りが収まらないミリは声を荒げる。

「俺にはアルマさんを倒すことが出来ないのは分かっている。親父の仇を取ってやりたいと今でも思っている。皆の仇なのに、強くなったと実感しているのに俺はまだあの人に届いていない。

 お前しか託すやつがいない、それなのにお前は―――」

 ミリの言葉を遮るように巨大な影が庭園に現れたと思った時、大きな地鳴りと煙が舞い上がっているところに全員が反応する。

 煙が晴れるとゆっくりと姿を現したのは、この庭園に相応しくない黒々とした巨体。竜の中でも個体数が少なく、非常に珍しい黒竜は他の空海陸の属する竜種よりも抜きん出ている。

「最悪だ………こんな所でアルマさんの竜に会うなんて」

 戦力はたったの三人、そのうちアインだけは戦う意識を出していないために現状では二人しかいない。

 警戒態勢を取ったミリに、黒竜ルナは口を開いた。

「私は戦いに来たわけではない」

 しっかりと耳に届いた声音は、ルナが発した物だ。竜が喋ったことにミリは驚愕するも、ルナが言った単語が気にかかる。

「戦いに来たわけじゃないってどういうことだよ?」

「言葉の通りだ、アーランバの息子よ。私はお前たちを迎えに来たのだ」

 ルナは真剣な眼差しでミリをにらむ。罠のようにも思えたミリだったが、今更罠だとしても誰も得をする筈がない。

 ならば、ここはこの話に乗りかかった方が良いとミリは考えた。

「我が友スーリヤの息子よ。お前は、我が主を助けてはくれないのか?」

「僕が………お姉ちゃんを助ける?」

「そうだ、主は既に限界を超えている。それでも尚、主は貴方を待ってくれているのだ」

「一体、何の為に?」

「貴方の顔を見たいからだと言っていた」

 僕の顔を見たいからずっと待っているとか、世界を滅ぼしかけている人間の最後の願いがまさか身近な人間との相対だなんてアルマらしいとも言えるのか。

 今を思えば、ずっと目標という物が無かった僕に目標を与えてくれたのがアルマだ。ずっと彼女を追い続け、彼女の事を知って、彼女の苦悩を晴らしたいと思ったから僕はここにやってきたのだ。

「分かった、連れてってよ」

 アインの言葉にルナは頷くと、翼を羽ばたかせて宙に舞い、少し離れた場所に点在する搭に向かう。アインとミリはナーガの背中に乗り込みルナの後を追う。向かい風が強く吹き荒れる中でもルナはその速度を一定に保っている。

 対してこちらは付いていくのも大変そうにナーガはルナに食い付いていくが、やはりどこか加減をされている。

 自分の手のひらを見つめながらキーアの言葉を思い出す。未来は自分の手で作り出すものだと。

 人類は三人しかいないこの世界にどうやって未来を見出すことが出来るのだろうかと考えると失笑しか浮かばない。

 それでもやらなければいけないのだろう。誰も手にかけることが出来ない人間なら、僕がこの手で殺そうと誓ったのなら、やり遂げなければならない。目的とした人物がそこにいると分かっているのならば尚更だ。

「さっきはごめんねミリ」

「ああ、立ち直ったのならばそれでいい」

 空の上を飛んでいるのに空を飛ぶという行為は何やら不思議な感覚だ。空の上にはまだ空があり、果てなく上に行けばその先は何になるのだろうか。

 ナーガの背中から眺める地上の景色は見る影もないものとなっている。世界の崩壊が近いと言ったキーアの言葉は嘘ではなく、正真正銘の言葉であり、地鳴りと思っていた音は一つの世界が崩壊している音だったのだ。

 黒々とした何かが少しずつ世界を浸食しては塵になっていく。

本当に僕は世界の崩壊を止めることが出来るのだろうか?

考えているうちに搭へと到着したアイン達はナーガの背中から降りると、上へと続く階段の前でルナがこちらを見つめて待っていた。

「この先に主が待っている、どうか行ってやってくれ」

 アインは頷いて階段を進んで行くと、途中で足を止めて後ろを振り返る。付いてきていると思っていたミリとナーガが付いて来なかったからだ。

「ミリ?」

「はっ、俺達のことは通す気が無いらしい」

「え、なんで――」

「私が受けた命令は主に貴方を合わせる為です。他の人間の事は何も命令されていません。なので、ここで足止めをさせていただきます」

 ルナの体がアインの通り道を完全に封鎖する。

「ふざけるな!! そんなの、それじゃあ!」

 また、大切な人たちが殺されてしまう。

 アインはルナの背中を叩くが、ルナには何も感じていない様子だ。

「おいおい、アイン。舐めてもらったら困るぜ?」

 遠くからミリの声が聞こえ、顔を上げて耳を澄ませる。気取るような声音は心配無用だと言うような心意気だ。

「俺が一体誰だと思っているんだよ。お前の次に強いんだ。それにそこから先はお前が行かなければならない場所だ。俺がそこに行く道理は特にない」

 ミリの言いたいことはアインにもわかる。だが、相手にする敵がアルマの竜であるのなら話は別だ。ムシュフシュで戦ったことがあるアインだけが分かるルナの強さを。

 だが、またうじうじとしていてはせっかくミリが作ってくれたチャンスを無駄にするだろう。

「死なないでよ………ミリ」

「善処はするさ」

 手伝いたいという気持ちを押し殺しながらアインは階段を駆け上る。この先にはずっと追い続けた姉がいる。そして、この世界を崩壊している元凶がいる。迷うことは何もない、たった一人の人間を救済するだけだ。

 行こう、みんなの気持ちを無駄にしないために。


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