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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第六章~寄生竜~
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~道中で~

 王宮から出たアイン達はアクセスの竜に乗って始まりの樹へと向かうことにした。その傍らではナーガとキーアが並走するように飛んでいる。

 この戦争を引き起こしたのはアルマということを道中で話しながら始まりの樹へと向かう一方。王宮から出る前に、アクセスは団長として竜騎士達がいま何をするべきかを考えさせるように出てきた。ようは共に戦うか否かを問いかけていた。

 このまま世界が消えるのなら一矢を報いようと王宮から出てきた竜騎士たちは多く、アイン達を筆頭に王宮の竜騎士は全員で戦うことを決めた。

「へえ、貴方たちがこの子の言っていた信頼できる友達ねぇ?」

 品定めをするように視線で二人を舐めまわすようにキーアは見つめる。アインに釣り合うような友達なんてどれくらい強いのだろうかと楽しみにしていたキーアは、二人を見つめるや否や、少し不満げだった。

「確かに、そこらへんの大人なんかよりかはよっぽど腕が立つ子だけど、本当に役に立つのかしら?」

「聞き捨てならないなぁ、俺は一応だけど竜騎士の団長を張っていた男だぜ?」

「馬鹿ね、あんた達がこれから行くのは人間を相手にする場所ではないのよ? それが分からないから下等な猿は………」

 鼻で笑うキーアの言葉に煽られたアクセスの額には青筋が立っていた。

 もう数か月前だろうか、アイン達が王宮から指示を出された内容にキーアを捕獲しろという作戦で潰された研究所に一番隊のみでやって来たが、アインがキーアを連れて逃亡する時にアクセスはキーアの顔を把握している。

 子供の姿ではあるが、世界に五人しかいない竜人の一人が目の前にいることに緊張気味のフィンにキーアは目配せをする。

「貴方も貴方ね、足手まといにならないようにってことぐらいかしらね」

 二人に毒づくキーアの言葉についに二人は我慢の限界が来たようだ。

「あっったまきた!!! 竜人だから我慢していたけれど、もう無理!!」

 今にも飛びかかるような勢いでフィンは怒鳴り声を散らすがキーアは素知らぬ態度で聞き流すだけだ。

 騒ぐフィンの体を押さえてはいるものの、青筋が立っているところを見るとアクセスもキーアの物言いに頭にきているようだった。

 三人とも仲良くなっていることに安堵の息を吐きながらアインは向かっている始まりの樹を見つめた。

 遠くからでもその大きさが分かるほどの大樹。遠い地平線の彼方でもその影を見ることが出来る始まりの樹は、混沌の竜が世界の秩序を書き換えた時の名残で出来たものだ。

 今回で三回目の書き換えになるが、一回目は人が生きているのか分からない時にこの大地で混沌の竜が生まれたことで世界に秩序が生まれた。二回目はアインの父スーリヤによって未然に塞がれてはいるものの、母体となったスーリヤの竜の願いにより、竜との共存が出来る世界に書き換えられた。

 では三回目は? 三回目に宿木に選ばれたアルマは何を望んでいるのだろうか?

「なんだダバクの事を考えているのか?」

 考え事をしているアインの頭の中にシュクラが話しかけてくる。

「あ、おじさん丁度よかったんだけど」

「なんだ?」

「その、寄生竜ダバクのことについて教えて欲しい」

 アインの問いかけにシュクラは失笑気味に笑うが、アインは至って真面目な話をしているつもりだ。笑われる筋合いが無いのでシュクラの態度に軽くイラつきながらも平然を装う。

「前に話したじゃないか? お前の敵それだけだろ?」

「世界の秩序がその時の答えだったけど、なんて言えばいいのかな? 少しだけ気になることがあったんだ」

「ほう? 言ってみろ」

「ダバクは宿主となった母体の願いを叶えることが出来る、いわば願望機みたいな機能があるんじゃないのかなって思ったんだ」

 話し始めるアインの推測を始めは笑っていたシュクラもその意見を聞いていくうちに言葉数が減っていく。

 アインの推測はこうだ。

 一度は改変されたこのセトだが、遠い昔のことなので何が変わったのか知る由すらないものの、二度目の改変と言っても未遂で終わっているような記述もされているが、実は既に改変は始まっていたこと。

 歴史として記述されている本には確かに、人間と竜は争っていた痕跡があるというのに、二度目の改変後の世界は手のひらを返したように竜と人とが共存を果たしているのだ。

 それはつまり、ダバクの母体となった者が心の底から願っていることを形として世界の上書をおこなったのではないのかという推測だった。

「つまり、寄生竜ダバクは、世界の秩序を上書できる願望機、いや願望樹? みたいなモノだと思ったの」

「ほう………面白いな」

 アインの推測を聞いたシュクラはそれだけを言葉として発するだけだった。だが、シュクラはアインの推測はすべて当たっていることに笑みを浮かべ続ける。

「おじさんなら知っていそうだけど、どうかな? 当たっているならそれでいいし、当たっていなくてもどうでもいい。それに僕はダバクの事なんてどうでもいいと思っているから」

「うむ、アインの推測通りだ。ダバクの正体は秩序を上書できる創造の竜だ。お前の敵はこの世界のルールということになるのだが、お前はなぜどうでもいいんだ? 願いを叶えることが出来るのだぞ?」

 興味が無いと言い放ったアインの物言いにシュクラは疑問を隠せなかった。

 願望樹として、誰しもが願いの一つや二つが叶うのならばしかもそれは個人だけではなく、この世界そのものを改変できるのならば、それに縋りつくのが人間の欲というものだ。

 だが、アインはそれを捨てると言っているのだ。

「最初から願いなんて無いから………いや、無いなんて言うとそれこそ嘘になるけど、出来る訳がないんだ」

「初めから出来ないなんてことはないだろう?」

「いや、出来ないよ。さっきも言ったけど、ダバクは宿主となった者だけしか願いを叶えることが出来ない。今こうして世界が崩壊しているのは、ダバクが孵化したからという要因だけじゃないはずだよ?」

 アルマが望んだ結果が世界の崩壊を導いているのだとすれば説明はつく。

「まさか、ここまで辿り着くとはな。驚いたぜ。ああ、確かにお前の推測は世界の核心に触れている」

 王宮の考古学者達に話せばどれほどの功績を残せただろう。生憎とアインはこの世界の心理を知りたいわけではない、自分が存在するための価値を知りたいがためにあの狭い村から飛び出していったのだ。

 だから、アインは世界の核心なんてものには興味が無いと言ったのだ。過去のこと、世界の謎はそういう物好きなやつが勝手にやる。

「核心なんてどうでもいいよおじさん。僕はもう決めたんだから。この世界の崩壊を止めるということだけに」

「そうか………」

 二人の会話はそれ以上続くわけもなく徐々に近づく始まりの樹を眺めるだけだった。


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