~終わりの時~
「………あれ? 僕は一体」
「ん、目が覚めたか」
目が覚めたアインは身体を起こす。数時間たっていてもまだ消えていないスーリヤに軽く安殿の息を吐く。
「お父さん、僕は」
「言っただろう? お前には覚悟が足りないってこと」
「覚悟はしているのに、それでも足りないの?」
「ああ、足りない。これをやりきるぞっていう意志だな。さっきよりは少しはマシになったけど」
「じゃあ、どうすればいいの?」
スーリヤはアインの胸に手を宛がってしゃがみ込む。父の真っ直ぐな瞳に当てられてしまいそうになりながらも父の言葉を聞く。
「アインが今のアルマのやろうとしていることを止めようと本気で思うのなら、その決意を曲げないで挑みなさい。アイン。お姉ちゃんを助けてやってくれ」
スーリヤの身体が徐々に消えてゆく。
「どうやら時間切れみたいだな」
「そんな、待ってよ。僕、僕はまだお父さんといっぱい話がしたいのに」
しがみついた所でスーリヤの身体が消えることに変わりは無い。既に下半身は消えうせてしまい、残る上半身も胸まで光の粉となって消えていく。
「嫌だ、行かないでお父さん。僕は!」
何を話せばいいのだろう、もうすぐ父はこの世を去る。奇跡のような時間も今しかない。色々考えても刻一刻と消滅していく。
あたふたしているアインの額にスーリヤの額が重なる。
「アイン、俺のこと憎んでいるか? なにもしてやれなかった父さんのこと憎んでいるか?」
真剣な眼差しで問いを投げたスーリヤに、アインは頭を弱々しく振る。目尻には涙が溜まり、そんなことはないと声を出そうとすると嗚咽で上手く言葉を出す事ができなかった。
「俺が後悔しないで決めた道だったのにな、こんな事になって悪かった。全部お前に託すようでゴメンな? 姉ちゃんを、アルマを助けてやって欲しい」
スーリヤの言葉に何度も頷いて決意を固めていく。自分に足りなかった物を、一人で意気込むように固めた決意は何度も揺らいでしまっていて、陽炎のような意志だった。
誰からもその存在を恐れられているアルマをどうやって助ければいいのだろうかと、殺すしかないと決めた時でも、アイン自身がその行為を拒んでしまっていたのだ。
だが、今は違う。
同じ家族であった父親から、姉であるアルマの存在を自分の手で救って欲しいと望まれたのだ。後押しをしてくれた父にはただ感謝するしかなかった。
「姉弟で殺しあうのは心が痛いが、こうするしか他にないんだろう? 話を聞いていても俺もそうするしかできない。だから、お前の選択は間違ってはいないと思う」
ぎゅっと、力強くスーリヤの腕に抱きしめられる。父の腕は何もかもが温かかった。緩くなっていく力に違和感を抱いたアインはスーリヤの身体へ視線を向けると、首の下までが消滅していた。
これが最後の会話となることを悟りながらも、アインは最後になるであろう、質問を問いかける。
「お父さんは、僕たちのことをどう思っていたの?」
アインの質問にスーリヤは照れくさそうに笑みを浮かべる。当たり前な事を聞いてくれるなと思いながらも、真剣な質問には真剣に返さないといけない。
頭だけしかない今でも、きっちりと言葉を返せばいい。アインだってそう望んでいるのだから。
「今も変わないさ。ソーマもアルマも、アイン………お前も。みんな大好きだよ。愛している」
光になったスーリヤの体はもうどこにもない。だが、ずっと聞きたかった事を聞けた事で今まで埋まっていなかったアインの心の穴が埋まった。
―――迷わず前に進んでいけよ。頑張れアイン。




