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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第六章~寄生竜~
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~突撃~

 陸竜最速の迅竜と呼ばれていたノラでさえとムシュフシュから王宮まで到着したのは四日間と掛かかる距離だったが、空を飛んでいるだけでこうも違うのかと痛感させられる。

 陸地だとやはり障害物や地形の差が出てくるのだろうか、空の移動だと三日分の速さを稼いでいる。朝日が昇り視界は徐々に晴れていくと、遠目だが王宮を確認することが出来た。

「あれは………竜!?」

 アインが見たのは王都の中心部に位置する宮殿に何頭もの竜が襲撃している所だ。周辺には竜騎士たちが竜を相手に交戦中だ。

「あらら、襲われているわね。どうするの?」

 アインは息を大きく吐き出して立ち上がる。二頭の竜が近づいてくるアインに気がつき首だけを傾けると、本能で悟ったのだろう、強大なモノが来るという事に。

 城壁を崩していた飛竜種の二頭がアイン達に向かって飛ぶ。

 元来、飛竜種は飛行だけに特化されている種族の為、火竜との混合種であるナーガとは違い、竜の皮膚には鱗が無い。

 その代わりに純粋な飛流種は飛行速度という点では随一だ。

「ナーガ?」

「クルッ?」

「左からくる飛竜を頼んでもいい?」

 近づいてくる二頭の飛竜へ視線を向ける。直線軌道を描きながら向かってくる飛竜を相手に自分だけで戦えるのかと算段してみるが、昔とは違う自分を見せてやろうとナーガは笑みを浮かべ頷く。

 ナーガの笑みにアインも笑みで返すと両手に細剣を作り出して構えを取る。

「え、ちょ、まさか貴方」

 キーアはアインが次に何をやるのかを理解した。作り出した細剣は投擲用に放つものではなく、切り込む為に作り出したのだと。

 静止の声を上げる間もなくアインの身体はナーガの背中から離れ、空へと身を投げた。

 空に木霊するキーアの声に軽くアインは苦笑しながら、自分が相手をする飛竜を睨む。飛竜も分かったのだろう、二手に分かれたアインとナーガを一対一でしとめようと右手にいた飛竜はアインへと軌道をそらす。

 二頭の飛竜が雄叫びを上げて威嚇をするが、アインは気にも留めない。

「魔法壁」

 足元に魔力を集中させると魔法陣が浮かび上がる。空中に出来上がった一つの壁をアインは全身のばねを使って蹴り、飛竜の懐まで一瞬で間合いを詰めた。

 飛竜が次に行動するよりも早く、アインは両手に持っていた剣を鉤爪の用に振り下ろす。

「グギャアアアアアオオオオオオオオッッッッ!!」

 絶叫が轟いている最中でもアインの攻撃は止まることはない。飛竜の頭部を掴み、身体を大きく捻じらせる。両足は一本の西洋槍のように重ね合わせ、振り子運動をするかの如く弧を描き飛竜の胴体にその両足を突きたてた。

旋風つむじ!」

 穴が開いた箇所は左胸、心臓が位置するポイントを的確に穿つ。竜の絶命の声が途切れ途切れになりながら少しずつ高度が低くなっていく。

 アインは魔法壁を足元に作り出して飛竜の前で佇むだけだ。

 だが、飛竜にもプライドというものがある。たかが人間に滅ぼされてなるものかと、一矢報おうと最後の力を振り絞ってアインへと飛び掛ろうとした。

「ゴギャアアアアアアアア!!!」

 しかしアインは冷ややかな視線で飛竜を一喝、一瞬怯えた飛竜は攻撃するタイミングがずれる。その間はアインが作り出した攻撃に入る間だ。

 空中に何本もの細剣が飛竜に切っ先を向けるように展開されていく。その数はおよそ五十。

 自分の体に刻まれた六本の傷が疼く。たったの六本で致命傷に近いダメージだったのにそれをこれからあれほどの量を叩き込まれるのかと思うと、ただ絶望しか無かった。

 アインの手が振り下ろされると、下された命令を忠実にこなす僕のように飛竜の四肢を貫いていく。雨に打たれるかのように降り注がれる細剣は留まることを知らない。飛竜の身体はズタズタに引き裂かれていき肉の一片も残ることは無かった。

「ナーガ達は………」

 見渡す景色に紛れて二頭の竜が空で混戦しているのが見えた。一方は火を噴きながら牽制をしつつ、攻撃を掻い潜り近づいてきた飛竜を尾で薙ぎ払う。

 種類が違うだけで、見て分かるほどの優劣が付いた戦いは見ている三者の目からしても一方的な弱者虐めだ。

 飛んでいるだけでも辛そうにナーガと相対している飛竜は荒く息を吐く。これくらいの相手ならば余裕だと言いそうな表情で口角を吊り上げながらナーガは攻撃態勢を取ると、飛竜は身体をビクつかせる。

 これではどちらが敵だろうかと内心呟きながらアインはもう一頭の飛竜に向かって跳んだ。

「少しだけ本気で行くよ?」

 ナーガたちの間に割り込むような位置に一瞬で現れたアインの姿に飛竜は目を見開くだけだ。動くことも出来ず、振り下ろされてくる人間の足には雷が纏われているような気がした。

 打ち下ろされたアインの技によって飛竜の頭部は衝撃の加わった粘土のように頭蓋が砕け、飛竜自身も何が起こったのか分からないまま絶命しただろう。

  一撃、いくら魔力を込めた一撃とはいえ、人間の子供が竜を一撃で倒してしまうほどの強さまで到達していた事にナーガは主人であるはずの少年に恐怖を抱いていた。

 理性が無くなっていたとはいえ、ムシュフシュで戦闘をしたときと同じ感覚だ。

  彼には自分より強大なものであろうと恐れを抱いていない。寧ろ敵にした時にこちらが彼に感じる感情だ。

 それはナーガだけではなくキーアも感じていた。

「正気じゃない、怖くないの!?」

 地面に衝突してしまえば即死は免れない。それはアインとて分かっているはずなのになぜ行動してしまうのだろうかと。

 騒ぎ立てるキーアの意見に謝ってはいるもののアインの中ではそれほど気にかけるような事なのだろうかと疑問に思う。

 何を言っても彼には恐怖の概念を理解する事は出来ない。それが卵から孵り今ままで過ごしてきた中での主人に対する想いだ。

 故に壊れている主人の感情。それがナーガの主人に感じるたった一つの分かりたくない気持ちだった。


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