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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第四章~黒竜人キーア~
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~任務~

 ミリが王宮から去ってから、たぶん二年の月日が経っている。アルマの情報は依然として行方がわかっていないままだ。

 情報が掴めない以上ここに居たところでは何も前進しない。

 毎日が王宮に使役される始末。ここに初めて入隊したときとなんら変わりはなく、無駄に時間を浪費するだけの日常。

 変わったことといえば、アクセスが団長になったこと、フィンが一番隊の隊長になったこと、そして、僕が一番隊の副隊長に任命されたことくらいか。

 そういえば、仔竜だったナーガも今では軽く見上げるほどの大きさになった。

 飛竜なので翼の原型はできているが、どうやらとある場所に行かないと飛竜は翼を開放することができないらしい。

 そのために、ナーガの成長はそこで一歩止まりとなっている。

 副隊長に任命されたのはいいのだが、隊長の肩書きを持っているものは、各部隊長を集めての会議に参加しなければならない。

 今を思うと、アクセスもフィンもこの会議に出席していたのかと思うと、他人事のように大変なんだなと思ってしまう。

 新しく総長に任命された、元団長だった人があたりを見渡して僕たちを見やった後、話題を切り出した。

「今回集まってくれた一番隊の隊長と副隊長、並びに団長に三人には礼を言いたい。ありがとう」

 総長ともあろう人が頭を下げるほどの理由とは一体何なのだろうか? アクセスは一言だけ総長の頭を上げるように促すと、単刀直入にアクセスは総長へと質問をした。

「こんかいはなにがあったんですか?」

「そうだな、回りくどい話は面倒なので簡単に話をしていくが、王宮のとある研究施設が破壊された」

 王宮にとって、研究施設は大切なものらしい。アクセスとフィンは顔色を変えながら総長の話を聞いていた。

「研究施設って、まさか?」

 フィンは何か思い当たることがあったのか、おそるおそる総長へと問いただす。

「そのまさかだよフィン。君達が知っている通り、その昔、四代目総長が壊滅させた施設の一つだ」

「でも、あれはすでになくなったのでは?」

「どうやら極秘でもう一つの施設を建設していたようだ。俺たちにも分からないように極秘裏にな」

「………でも、なんでそこが壊滅したの?」

 少しだけ疑問に思ったので僕も会話に参加する。話を聞いている限りだと、ここにいる総長も全くその施設については無知だったからだ。

 竜騎士の総長であるなら、王宮の裏の部分でも介入しているようにも思えたのだが、どうやらなりたての総長にはその辺はまだ教授されていない。

 その上級階級でも分からない施設が、僕たち竜騎士が施設に出向いて壊滅させるには難しい話だ。

 王宮を憎む人がいるのはよく知っているが、施設まで行き当たるには確率が低すぎる。

「報告書の通りで聞くとな、その実験体が暴走して破壊されたらしい」

「は?」

 僕たち三人は総長の話を聞いた瞬間、そろって聞き返してしまう。

「実験体が暴走って、まぁあながち分からない話でもないけれどさ。それって自業自得なんじゃないのか?」

「どうせ、人の命を弄んでいるからそうなるんじゃないのかしら。だからアルマさんだって……」

 王宮の施設が昔、一般人をさらって実験しているという話を姉さんから聞いたことがある。そして、その施設を憎みきって、破壊して王宮から追われる身となってしまったが、今回のケースも同じように感じる。

 実験体が暴走。当たり前だ。

 非人間的に弄ばれるように身体を改造されて快く思う人間なんて聞いた事がない。

「それで、その実験体をどうすればいいの?」

「あ、ああ。察しがよくて助かるよアイン」

 話はこうだ。

 研究施設にいたのは一人の実験体だったらしい。その実験体の少女は竜人であり、怒らせてしまったから壊滅に至ったらしい。

 しかも、その竜人は殺しても死なないという性質なので、なんとしても捕縛をして欲しいとの事だった。

 そして、その研究施設に行くのは一番隊と団長の一小隊だけだ。王宮もこのことを極秘に納めたいからなのか、それとも。

 それとも、ただの厄介払いがしたいからなのだろうかと、ふいにそんなことを思ってしまった。

 会議が終わったあと、僕達はアクセスの部屋に集まっていた。

「これ、どういう意図だと思うよ?」

「厄介払いがしたいとしか言いようが無いわね。ミドさんもいないし、ミリも出て行ってから王宮の雰囲気が一気に変わってしまったし、ただでさえ、反抗勢力だった私達もこの任務で殺してしまおうって魂胆じゃないのかしら」

 反抗勢力とは、今までの王宮のやり方に反抗の意識を持つものたちの事を指している。この施設の内容だってそう。一般人を実験体にするなんていうことをさせないために、ミドさんが生きている時代はなんとか拮抗していたらしいが、そのミドさんも殉職してしまった今、元の王宮になりつつあるらしい。

 抗おうとした所で、強大な国家を少数で相手をするとなると、血をみるのは当たり前だ。

 作戦日時は今夜から。

 唐突といえば唐突過ぎる。なんの作戦も練られるわけでもなく、武器を調達することすらろくに出来ないまま、僕たち一番隊とアクセスは問題の施設にやってきてしまった。

「な、なんだこりゃあ」

 アクセスがその有様を見て驚愕の意をしめす。それはアクセスだけでなく、他の竜騎士たちもそうだった。

 森に囲まれて建築されていた第二研究施設は、極秘と謳われていたからか、建物を分散して森に隠すように建てられていた。

 そのため、周りの森林を眺めるだけでも点々と施設が建っているのがわかる。

 そして、どの施設が壊滅したのかも一目で理解した。

 隕石でも落ちたかのようなクレーターが地面と森林をごっそりと抉り取られている。丘の上からでも分かるが、規格外の惨事だ。

 これから相手する相手が竜人なら尚更、勝てる見込みがないと直感的に考えた僕達は貧乏くじを引かされる思いに駆られる。

「各員、散開して実験体を探せ。相手は竜人だ四人一組で行動しろ。それと見つけたのなら合図をして回りに知らせるようにしろ。いいな!」

 アクセスの指示のもと、一番隊の竜騎士全員は森の中へとそれぞれバラバラになって捜索を開始した。

「さてと、それじゃあ俺たちも行くか」

 フィンは頷いてアクセスの後を追いかける。

「アクセス。僕だけ単独行動していい?」

「は? 待て、待て、お前今何を言っているのか分かっているのか?」

「分かっているよ。だからこそ一人で行動したい」

 僕の半分は竜人の血が混じっているからか、同じ種族の気配を感じ取ることが出来る。多分ミーナほどではないけれど、微弱ながらも確かに同じ竜人の気配が肌に伝わっている。

 他の人たちが竜人を見つける前に、何とか話をしたいと思っている僕は無茶な話をしているのだが。アクセスはあまり乗り気ではない。

 僕のことを竜人だと知っているのはミリだけだ。この二人には僕の中身が竜人だとかは一切喋ったことない。

 でも、もしかしたらミリも駄目だと言ってくるかもしれないな。

「………いいわ。気をつけて行きなさい」

 その言葉はてっきりアクセスが言うものだと思っていた僕は、フィンから発せられた言葉に少しだけ驚いた。

「いいの?」

 問いかけには頷くだけで応じる。

 僕はフィンに礼を言って竜人の気配が感じる場所にまで一直線に駆け抜けていった。

「なんで行かせたんだよフィン」

「なんでって、もうアインは帰ってこないかもしれないと思ったから」

「は?」

 それならば、尚更行かせたら駄目ではないのか?

「でもね、それでいいのよ。アインは元々留まるような子ではないって思っていたから」

「それは、やっぱりアルマさんのことを?」

 アクセスもなんとなくだったが、フィンが何を考えてそう口走ったのか分かっていた。二年前の任務でのこと、自分達は彼女に完膚なきまでに倒された。

 王宮にとっては人員が二分の一にまで減らされたというのに、未だにアルマを指名手配犯として追いかけていた。

 しかし、この二年の間で有力な情報は一切あらず、のたれ死んでしまったのではないのかという噂話が持ち上がってくるほどだ。

 元々アインは彼女を追いかけるために竜騎士に入隊したために、もうこれ以上はいる必要性が無くなりつつある。

 だからと言って、フィンの発言にアインがもう帰ってこないという理由にはなんら関係の無い話のはずだ。

「私も確証はないわよ。女の勘ね。これだけは」

 女の勘で色々と大当たりしたらそれはそれで重大なのだが。

「それじゃあ、行きましょうか。私達もこんなところにいたら兵士たちになにを言われるかわかったものじゃないから」

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