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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第三章~王宮~
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~思い出~


 さて、王宮から任務に出て二日が経過したが、ムシュフシュまではあと一日掛かるらしい。飛竜ならば、既に到着しているらしいが、僕達は陸竜を使って地上から攻め入る作戦のようだ。

 アクセスの陸竜で僕たち四人はムシュフシュに向かっている。

 ちなみに、アクセスの竜は土竜種の中でも一番の速さを誇る迅竜と呼ばれる陸竜に区分されている。

 そのため、他の陸竜種よりも一足先に早くムシュフシュに着くのだという。

 三人とも目を瞑りながら向かい合っているが誰も会話を始めようとしない。無言のまま二日が経過していて、なんだか重苦しい雰囲気にも感じたけれど、僕としては三人とも集中しているのかと思って遠慮していた。

 流れ行く風景を眺めているのもそろそろ飽きてくる。

 やがて日没もやってきて、空が暁に染まった所でアクセスが大声を張り上げた。

「うがああああああああああああ!!!!!!」

「うおっ!?」

「なによ!?」

 二人ともアクセスの怒声に驚きを隠せていなかった。

 それも当然か、二人とも目を瞑っていたわけだし、かくいう僕でさえぼーっとしていた訳なので、アクセスの急な行動には驚いている。

「なんなんだよこの空気!? 俺は静かなのは嫌いなんだよ! 誰か喋れよ!」

「それは俺も思ったんだが、なんか喋るタイミングを見誤った。そんなことを言うアクセスだって失敗したんだろ? おあいこさ」

「そうよ、私だって二人のどっちかが先に話すと思っていたらどっちも喋らなくなっちゃったから、私も言い出しづらくなっちゃって…」

 三人とも全員がこの空気に耐え切れていなかったようだ。むしろ会話をするという前提だったのにもかかわらず、誰も先陣を切らなかったからこうなってしまったのか。

「僕はてっきり、みんなはこれから向かうムシュフシュに、意識を集中しているのかと思っていたんだけど、違うの?」

「「「それはない」」」

 三人一緒の動作だったからすこしだけ笑ってしまった。

 がりがりとアクセスは頭を掻きながら和らいだ空気を維持しようと喋りだす。

「なぁアイン。俺はお前に聞きたいことがある」

「うん、なに?」

「アルマさんの事についてだ」

 その瞬間、僕たちの間で空気が張り詰めた。せっかく和らいだ空気だったのに、ぶち壊してくれた本人が、また凍りつかせるとは思わなかったけれど。

 たしかに、話す内容としてはこれくらいの方が丁度いい。

 フィンやミリも僕の方を向いてお姉ちゃんの事を聞きたがっている。

「お前はさ、王宮を出たアルマさんに会ったって歓迎会の時に話していたよな?」

 僕は頷く。

 歓迎会の席でいろいろと僕に質問攻めが三人から来たのだが、それは祝いの席だということで、話すのは有耶無耶になったのだ。

 だからアクセスはこの場を借りて、全て聞きたかったのかもしれない。

「どうだった?」

「どうだったかって言われると………哀しそうだった」

「哀しそう?」

 フィンが口を挟み、僕は静かに頷く。

「初めて会ったのは、レーゲン湿原っていう場所だった」

 雨が止まない奇妙な場所だった。

 その時の僕はある場所に行くために親代わりとなった人と旅をしていたんだけど、ちょうど通り道がそこだったんだ。

 でも、雨はずっと降り続けるし、親とははぐれるし、右も左も視界不良の中で僕はあの人と会ったんだ。

 それがアルマお姉ちゃん。

 一目見たとき、この人はすごく嫌な世界を見てきたんだなって思った。すごく哀しそうな目をしていて、それでいて少し怖かったんだ。

 でも、一晩一緒に過ごす間は色々と話をしたよ? その時はすごく優しかったは覚えている。

 竜の謎を解かない? そうお姉ちゃんは僕を誘ってくれた。目標も何もなかった僕にやることを与えてくれた人に付いて行きたくてずっと探していたんだ。

 お姉ちゃんは王宮の人って知ってからは、ここを目指した。

 でも、世界中はお姉ちゃんを探し回っていたんだ。あの人が何をしたのかもわからなかった。けれど、ミドさんの話を聞いて分かった。

 お姉ちゃんは僕の家族だって事に。

「やっと、お姉ちゃんに会えるんだって思うと、わくわくする筈なのになんでかな? すごくここが痛むんだ」

 僕は胸を押さえる。

 ずっと追い続けた人は、明日になれば逢えると分かっているはずなのに、お姉ちゃんの事を考えると、心が痛んだ。

 それがなんなのかは自分でも本当に曖昧で、表現できないのがすごく悔しかった。

「そうだ、ねえ。みんなも教えてよ。お姉ちゃん王宮ではどんな人だったのか」

 三人は息をのむ。僕の話を聞いていてなぜ不思議そうな顔をしていたのか疑問に思っていたけれど、王宮ではどういう風に自分を振る舞っていたのかを知りたかった僕は、気にしなかった。

 しかし、ミリから発せられた一言で僕の中の優しかったお姉ちゃんは一変した。

「いいか、アイン。ショックかもしれないが、よく聞いてくれ。俺たちが知っているアルマさんは―――」

 ――――ただの狂人だったよ。


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