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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第三章~王宮~
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~歓迎会準備~

「私達で、アインの歓迎会でもしない?」

 俺たちを挟んだフィンは、唐突にそんなことを言い放つ。

「どうしたいきなり?」

 アクセスも唐突に提案してきたフィンの趣向に頭が追いついていないようだ。かくいう俺もフィンの言いたいことが少し理解できなかった。

「だってさ? アインもここに来てから一ヶ月も経ったことだし? そろそろ歓迎パーティでもしたいって思ったの」

「といってもなぁ? 俺達はここからまだ動けないしなぁ?」

「はぁ? 何言っているのよ? 私は分かっているのよ? あんた達の傷が既に完治しているっていう事ぐらいね!」

 フィンの剣幕に俺達は押されてしまう。

 ちなみに、フィンが言っているのは事実である。だいたいあの対決から一ヶ月も経っているのに、傷が治らないというのは俺たちではありえない話だ。

 まぁ、今回初めて長期の診療だったのは確かだがな。完治したのは二週間後だったから、意外と長かったのもある。

「しょうがないな、アクセス。ズル休みも今日でおしまいだとさ?」

 横目で俺を見てくるアクセスは、やれやれといった感じで布団から身を乗り出し、俺も合わせるように布団から出た。

「体も鈍っているから、俺的には丁度いいんだけどさ」

 患者用の服から私服に俺たちは着替える。

「それで? 歓迎会って言っても、具体的には何をやるんだよ?」

 俺は提案者のフィンに問いただす。

 フィンはもう少し俺たちがぐずついてベッドから叩き起こそうとしたのだろうか、キョトンとした顔で俺たちを見ていた。

「あ、うん。えっとね。私の部屋でやるから、そうね、あんた達には買出しに行って貰うわ」

 ポケットから髪とペンを出してさらさらとメモを書き綴ると、俺に王都での買出しようのメモを渡された。

 メモの中身には、肉(なんでもいいから大量に)後は適当に野菜。

 と書かれていた。

「なんだ? 適当に野菜って?」

「葱とか、あ、そうだキノコも追加でお願い」

 俺からメモをひったくって、メモの内容にキノコが追加される。

「なんだ、すき焼きか?」

 メモの内容から察するに、確か醤油で煮る鍋のようなものだ。こう見えてフィンは、料理の腕は上手い部類に入る。

「そ、そうよ、なんか文句ある?」

「いや、別に? まぁ、妥当だとは思うが」

「そうだぜフィン? 俺は好きだしな?」

「分かったんなら、さっさと行きなさい! 時間は夕暮れに私の部屋! それまでに買い物を済ませてきなさい!!」

「へ~い」

 怒鳴りつけられながら俺達は王宮から外出し、王都に買出しをしにいくのだった。


 両手に大荷物を抱えながら、俺達は王宮に帰るところに差し掛かっていた。

「ひえ~。本当になんでもかんでも買いやがって」

「こんなに買い込む必要があったのか?」

「知らね。あいつのこった。俺たちの中にはまだアインに負けたっていう意識が残っているんじゃねえの? 俺はもう蟠り的なものは無いんだがな?」

 アクセスは平然と言う。こいつは昔からそうだ、自分の中でいらない物だと判断したらサッパリと割り切ってしまうのがコイツの良い所でもあり、悪い所でもある。

 俺は………どうなんだろうな。あいつのことは好きなんだが、あいつの正体をしってしまった身としては、どういう風に接すればいいんだろうか?

 あの戦いで、あいつは確実に身体に変化が起きていた。自分の考えでも合致した考えとして、アインは竜人であると分かっている。

 俺は、竜人が嫌いだ。別に親が竜人に殺されたとか、友人が竜人の手に掛かったっていうのも、俺の周りでは起きていない。

 そうだな、何で嫌いかと言うと、俺の親父が竜人に執着していたというのが一番の理由だろうか?

 母さんは俺を産んでから死んでしまったらしい。体が病弱と言うほどに母さんは弱くない。出産で体力を消耗していた時に病にかかり、病に蝕まれたまま俺を産んでこの世を去った。

 母さんの顔は一切覚えていないし、過去の人を忘れるのは心苦しいが、会えないものは会えないと、俺の中でも母さんについては割り切っている。

 親父も母さんが死んだときは泣いたそうだ、一人の女が慰めるまでは。

 兵士の時から仲がよかったその女、名前はラーミアだ。俺も物心が付いてから別れてしまった女なのだが、今でも忘れない赤い瞳は、闘技場で見せたアインと同じ目をしていた。

 子供心ながらに感じ取っていたんだ。この女は普通ではないと。そのことを親父に話したところで、うやむやにされるが、俺は、ラーミアから竜人と正体を明かされたことがある。

 俺たちの前から姿を消したラーミアに、親父は嘆いていた。愛していた母さんが死んだ時と同じように。

 なんだろうな? 俺はどうしてこんなにも竜人のことになるとイライラするのだろうか。

「もしかして、お前はアインのことが嫌いなのかミリ?」

「いや、嫌いではないさ。ただ、俺はアイツとどういう風に接したらいいのか分からないだけさ」

 考え事をしていたせいか、アクセスが神妙な顔つきで聞いてきたので、茶を濁すような感じでその場を流した。

「それにしても、こんだけ買い込んだら、食べるのもえらくないか?」

 場の空気を変えるために、俺は両手の食材をアクセスに見せ付けるようにガサガサと音を鳴らす。

「いや、それは問題ない」

 声色を変えてアクセスはにやりと笑う。

「なぜなら俺は、最大に腹が減っているからな」

 白い歯をキラリとでも光るような爽やかな笑顔をやるのを止めなさい。そんなキャラ立てになってしまうのだからって、もう遅いか。

「確かに患者用の飯だと、毎日腹が減っていたからな。うん、俺も早く飯が食いたい」

 うん、自分でも言っておいてなんだけど、ずっと腹がなりっぱなしだから、早く帰りたくなった。

 そんな時だった、食い逃げだぁ!! という喧騒した声と共に、俺たちの前に躍り出た一人の男がこちらに走ってきたのだ。

 距離は百メートルぐらい離れているので、何かと余裕はある。

「本当、食い逃げが絶えないなぁ。城下町は?」

 アクセスは呆れるように、一目散にこちらに走ってくる男を迎撃するために荷物を下ろした。

「あのおっさんには悪いけれど、俺たちの前に出てきたことを後悔させてやるか」

 荷物を下ろし、俺達はおっさんの前に立った。無論、前から走ってくるおっさんは俺たちを払いのけようと、ポケットから小ぶりなナイフをチラつかせて向かってくる。

「おらおらぁ!! どけぇガキィィィ!!」

 声を荒げて男はナイフを振りかぶる。

「俺は足元払うから、後は好きにしろアクセス」

「あいよ、それじゃあ」

 俺は公言通りに男の足元を払った。前のめりに倒れるような体勢となった男の顎を打ち上げるようなアクセスの三段蹴りが決まった。

 腹部、胸部、頭部へと叩き込まれた見事な三連撃の蹴りの前では、男の意識は既に彼方へと旅立っていた。

 店主からお礼を言われているのを背中で受け取りながら王宮へと再び帰路につく。

「さてと、それじゃあこれからはファイの出番となるわけだ?」

 俺はアクセスにそう促すと、俺の手荷物を見ては唖然とした表情を取った後、眉間に皺を寄せる。

「どうしたアクセス?」

「お前と俺の手荷物を見てみろ?」

「ん? わ~お………」

 先ほどの一件のせいだろう、買ってきた材料もろもろ全てがおしゃかになっていた。

 そういえば、さっき男を飛ばした方向が思い切り俺たちの荷物の方向だったのを今更になって思い出す。

「どうする? 材料を買いなおすか?」

「いや、大丈夫だろ? 割れたのは卵だけだしさ?」

「そんなもんか?」

 アクセスは唸るように考え込みながら、結局の所行き着いた先は肯定の意だった。

「そんなもんだ」


「それで? なんで卵が割れているのよ?」

 前言撤回、王宮に帰ってきた俺達は早速フィンからお叱りの言葉を頂く羽目となる。

「「すみませんでした」」

 二人揃って部屋のど真ん中で正座をさせられながらくどくどと説教を受け入れている。部屋の装飾はどうやらすべてフィンが済ませたようで、女の子らしい部屋の飾りつけとなっていた。

 入隊おめでとう! という文字をでかでかと書かれており、その上にはくす玉が吊り下げられていた。俺たちが座る席には一本のクラッカーが用意されており、多分くす玉の紐が垂れ下がっている所がファイの席だろう。

「まぁ、いいわ。無くても元々味が付いているんだし、なんとか割れていない奴もあるわけだし」

 ファイは俺たちが買い込んできた今晩の飯の材料が入っている布袋を漁りながら整理をしている。

 さて、俺達はなにをしていこうかと思った時だ。

「あんたたち、ぼーっとしているくらいなら、手伝いなさいよ!」

「でもよぉ、正直後は何をすればいいんだよ?」

 フィンは俺たちを交互に見やった後。

「それじゃあ、アクセスは私と一緒にこの部屋の手伝いね。ミリはアインを呼んで来てよ。どうせ、もうすぐ出来るだろうし」

「うげ、奴隷かよ」

 アクセスは留守番と言い渡されるや、露骨に表情を歪める。そんなことをしていると、フィンが怒るぞ? って、もう遅いか。

「なんか、文句ある?」

 腰に差している愛用の軍刀の刃をフィンはチラつかせる。忘れてはいるが、こいつの剣術は、竜騎士の中だと頭を飛びぬけているほどに速い。

 十年前にも同じ軍刀使いがいたらしいが、その人は殉職してしまっているので、一番早いのはフィンと言う事になる。

 神速の使い手という固有名称が付けられるほどなのだから、よっぽどの剣の使い手で無い限りは、フィンには勝てないといってもいい。

 かく言う俺も、剣同士での相手になると、フィンには一回も勝っていない。

「アインを呼んでこればいいんだな?」

 俺は立ち上がって再度自分が行う仕事を確認すると、フィンは一言返事して頷いた。

「それで、今あいつが何処にいるか分かるよな?」

 フィンに問いただしながら、部屋の入り口で靴を履き変えてドアノブに手をかけて準備する。

「わかんないわよ、自分で探して頂戴」

 あっけらかんと言い放たれた言葉にこけるような勢いで、俺は部屋を出たのだった。



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