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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第三章~王宮~
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~王宮での日常~

「………まだ体は痛む?」

 病室で横たわっている二人の少年の安否を確認するように僕は聞いた。

「当たり前だろ馬鹿! こうして口を動かす事以外をやると痛いんだよ。そうそうお前に受けた傷は治らないわ!」

 悪態をつくのはミリだ。患者用の服の隙間からはぐるぐるに固定されていた包帯が巻かれていて、自分が行った攻撃のダメージの深さがよく分かる。

「そもそも“大蛇”って言っていたけどよ? 俺がくらったやつと、ミリに当てたアレと違わないか?」

 どうやらアクセスの傷はまだ浅かったらしく、体を起こす程度には問題がないらしい。だとしても、二人は歩くことも出来ないほどに痛めつけたのかと思うと心が痛い。

「あ~うん、あれは、ちょっと訂正があったから、直したの」

 失笑混じりに僕は笑う。

 どうやらアクセスは僕とミリの試合を無理やりでもいいから見ていたのだと言う。そのことを聞かされたのは試合が終わり、一週間後くらい経ってからフィンの口から聞いた。

 竜騎士試験から二週間が経過した。

 兵士風情の身分でありながらも、隊長の二人とこうして面会を許されているのはフィンのおかげらしい。

 本当なら、用があるとき以外は話をするのはよろしくないらしいが、確かに思うところがあるとすれば、ついこないだ入隊したばかりの新人が、そう簡単に隊長たちと和気藹々していたらおかしいか。

 交流をしたかったら武道場にでも行かないと交流関係は深くならないようだ。

「しっかし、アインの技はなんなんだ? どこの流派だよ?」

 使った技が武術だからか、興味津々に聞いてくるのはアクセスだ。素手を使っているのは二週間の間でざっくりと他の竜騎士たちの武器を把握したので分かったのだが、唯一アクセスだけが徒手空拳だ。

 同じ使い手である僕の技に興味が湧くのも分からないでもない。

 実はこの王宮に付く前に都を渡り歩きながら、武闘家の門を叩いたこともある。なんでそんなことをしにいったのかと言うと、型を知らなかった僕は、勉強をしたくて行ったのだが、残念な事に教わるためにはお金が必要だったのだ。

 結局の所、僕は型を教わることもできずにミーナから教えてもらったこの武術を使っている。

 そういえば、この無名の型に名前とかあるのだろうか? 聞くことも出来ないままにミーナと別れてしまったので無名の武術だ。

 そう思っていると、アイツの声が響き渡った。変わらない重苦しい声に体がビクつく。

「な……なんで?」

 一人で動揺している所を二人は奇異な目で見ている。

「どうしたアイン?」

「だれかいるのか?」

 心配でもしてくれているのか、ミリにいたっては首しか動かせないので誰か部屋にでも入ってきたのかと勘違いしている。

「あ、ううん。なんでもないよ」

 二人にはなんでもないそぶりを促して出来るだけ心配させないようにすると、一言だけ呟いて何事も無いように会話を二人は続けた。

 頭の中では今の出来事を失笑しながら叔父さんは笑う。

「そういえば俺の名前を教えていなかったな。白竜人シュクラだ。よろしくな」

 勝手に自己紹介をさせられたが、どことなく気前の良さそうな印象を受けた。

「シュクラ?」

「覚えていないか? 始まりの樹の入り口で爺に言われなかったか? 久しいなって」

 思い出した、ミーナが血相を変えて来る前に、お爺さんに一言だけ言われたっけ。

 久しいと、そして、竜人の生まれ変わりでもあると。

 生まれ変わりって………僕が、この人の生まれ変わりなのか?

「あぁそういえば、そう言われたなあの爺に。残念だけど解釈が違う。お前が俺の生まれ変わりであるのなら、初めからお前の意識自体は俺のものになる。考えても見ろ? お前は俺の過去の映像を見たことがあるか? 無いだろ? そこから繋がる答えとしてだが、お前はお前個人として、しっかり生きているよ」

 ………頭が痛くなってきた。

「ははは! そんな顔をするなアイン。どうせ理解できるような話ではないくらいは分かっているさ。まあ、簡単に結論を言うとだな? 俺はお前に憑依しているんだよ」

「………はっ?」

 憑依? え? 僕は竜人に取り憑かれているということなのか?

 色々と考えなければいけないことが多くなった。だけど、シュクラが僕に憑依をしているからと言って、問題点があるのは自分の体を乗っ取られるか取られないかの一つだけだ。

 もしかしたら、あんまり考えなくてもいいのかもしれない。

「それでさ、何で出てきたの?」

「おお、悪い悪い。いやなに、名前を知らないままでは何かと不便だと思ってな。そうだな、あれは蛇竜拳って名前にしとくか」

 今命名されたよ。作った本人もまだ決めてなかったのか。

「まぁ、そんな邪険にするな。良いじゃないか。世界最古の武術だぜ? 使い手は俺とお前しかいないんだぜ? あ、もう一人いたか」

「もう一人?」

 シュクラは鼻で笑うように話を続ける。

「ああ、一番下の妹にな? 蒼竜人カイナっているんだが、こいつも蛇竜拳を使う。といっても、アイツの場合は少し改良が入っているがな。いや、そうなると、お前も少しだけ変わるか。まぁ、かっこいいから問題は無いがな」

 カカカと高笑いをするだけして、声は消えてしまった。

 一体、あの人はなんなのだろうか。この前は、僕の体を乗っ取ると言っていたが、本当にそうなのだろうか?

 なんだか優しそうな雰囲気しかないので、僕はなんとなく好きになりつつはあった。

「えっと、蛇竜拳?」

「ん? 何が?」

「僕の使っている武術……かな?」

「なんでそこで疑問系なんだよ?」

「あぁ、えっとその、なんか世界最古の武術らしいから、あまり知らなくて」

「なぁるほど、俺が知らないはずだぜ。最古の武術だってよ!」

「喜ぶのはお前ぐらいだよ」

 三人で笑い合いながら僕らは色々なことを喋りあった。なんだかんだで竜騎士に入隊した僕は、ミリとアクセス、それにフィンとも仲良くなったが、他の竜騎士達からは敬遠されているのも現実問題としてあった。

 なぜか、避けられる。

 年が離れているからなのかと思ったのだが、それは違うと皆の目が語っていた。

 それは恐怖を感じていた瞳だ。僕を恐がっていたのだ。

 二人の隊長を負かしてしまった事に周りが恐怖しているのだろうか? 竜騎士の隊長は王都でも名が知れ渡っている。総長の名は大陸全土まで知れ渡っている。

 名前を知られている人を倒してしまった事が、少しだけ僕の履歴的なものに入ってしまっているということなのだろう。

「それじゃ、二人とも」

 僕は立ち上がって病室から出ようとドアに手をかけて振り返る。

「また明日ね」

 手を振って僕は二人と別れて病室から出て行った。


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