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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第三章~王宮~
38/99

~バトルロワイヤル~

 昨日フィンと一緒に連れてきてもらったところとは少しだけ違う闘技場に、僕と百番台の人たちはぞろぞろと会場へと入った。

 周りは高い塀で逃げられないようになっており、観客席からは悲鳴のような歓声が飛び交っている。

 お祭り騒ぎとはこういうことだろう。王宮の一大イベントである竜騎士の試験。出場者の戦いなんかを見て、感じるものはあるのだろうか。

 それとも、ただの野次馬的な何かなのだろうか。

「それでは出場者の方たちは一度こちらを見てください、王様から一言だけ話してもらいますので静かに願います」

 そう言うと、先ほどまでの歓声はピタリと止めて、カーテンの隙間から姿を現した王様の言葉を聞くために、全員の息を呑む音が聞こえた。

 白いひげに王冠、如何にも王様という風貌がぴったりな顔をしている。

「諸君、頑張ってくれたまえ」

 王様は一言だけ激励の言葉を述べて椅子に座った。

 静まり返った会場に、先ほどのお姉さんの声が響き渡る。

「ありがとうございました、それでは次に竜騎士三代目総長からのお話をいたします」

 出番が来た総長は、同じように王様の後ろから静かに姿を現した。世界最強の称号が与えられた竜騎士の総長。

 他の騎士のように鎧を着用していない。重装備というよりは、最低限しか必要のない軽装備での格好。

 今の時期が冬だったらどうするのだろうかと、疑問に思うような格好に、似つかわしくない槍を背負っていた。

 長い柄の先にくっついているような形状の槍。薙ぎ払いをするような槍ではなく、刺突だけに特化された槍の部類だ。

「竜騎士の試験に来てくれた皆さんには感謝する。世界の秩序を守ろうとしてくれている同士が増えるのは俺としてもありがたい。だが、今我々竜騎士は一人の人間を追っている。その一人は君たちも知るように、世界の重罪人だ。力あるものよ、決戦まで残り、共に一人を捉えよう」

 総長の話はそれで終わり、観客たちや、試験に望んで出場した選手たちも手を挙げて吠えた。

「重罪人…か」

 世間ではその名で通ってしまった一人の女性。王宮に歯向かった四代目の総長だった人。そして、僕が追いかけている人。

 世界はアルマの存在を許してはいない。帰るところである家がこうして拒み続けているのだ。

 非情な世界だと、素直に僕は思った。

「それでは、試験を始めますので、百番台以降の選手の方々は控え室でお待ちください」

 受付の人が選手たちを控え室へと促し、僕たち百番台までの選手たちは会場に取り残されたような感じになった。

「お待たせいたしました、選手の皆さん。それでは始めますよ? 竜騎士試験第一次選考、バトルロワイヤルを始めます!」

 歓声を圧倒するようなドラムの音が耳に届く、これが合図だったのか、周りの選手たちは一斉に周りの人たちを殴り始めた。

 武器を持っている人はその武器で人々を圧倒していく。だが、竜を使ってもいいというこの条件の中、誰一人としてパートナーを使わないのは、少しだけ変に感じた。

 大人たちよりも低い身長のせいか、誰一人として僕を倒そうと来る輩が――

「見つけたぞ、このクソガキがぁ!」

「…えっと」

 居た。しかも、見たこともない人なのに、何故か向こうのおじさんは僕を知っているようだった。

「誰ですか?」

「知らないとは言わせねえ、てめえが抜かしたおかげで俺は二番の番号を貰っちまった! 試験が始まる前の三日前から並んで一番の札を貰いたかったのによぉ!」

 おじさんはすごくどうでもいいような理由で僕に突っかかってきたのか。まあ、確かに後ろめたい気持ちもあったけれど、やったのはフィンなのだから、フィンに言って欲しいなあ。

「めんどくさいなぁ…」

 おじさんは僕の一言にカチンときた様子で、予備動作もなしに殴りかかってきた。

 昨日相手したアクセスという子の方が断然に早かったのに対し、このおじさんのパンチはスローで飛んでくるように見えるから、あくびがでそうだった。

 自分の髪の毛に掠らせるように避けてやると、おじさんは嵐のような殴打を開始した。

「おらおらおらぁ!」

 威勢がいいのは掛け声だけ、躱しているだけでも飽きてくるので、そろそろ見逃してくれないかな?

 ああ、でもおじさんの標的は僕だから逃してくれそうにも思えないしどうしようか。

「くそっ! 避けるんじゃねぇ!」

「嫌だよ、当たったら痛いじゃん」

「ったりめえだろうが、ふざけたことを言いやがって、死ねぇ!!」

 これだから大人は嫌なんだ。この間のハバキさんみたいにいい人が満ち溢れていれば、僕だって安心して生活ができるというのに。

 大振りのパンチを交わして足元を払う。簡単におじさんはすっ転ぶと、顔を赤くして僕を睨みつけてきた。

「もう許さねえ! モンド!!」

 名前を呼ばれて気がついたが、おじさんの後ろにはモンドと呼ばれて反応した竜がいた。四つん這いの竜なので陸竜だろうと予想してみる。

「ぶっ殺しちまえ!」

 鼻息を大きく鳴らして、こちらに体当たりを開始。早いとは思うけれど、避けられないという程の早さではないので、僕は真正面から向かってくる陸竜の頭を踏みつけておじさんに向かって跳んだ。

「馬鹿め! くらいやがれ!」

 腰に隠していたナイフをチラつかせ、ナイフは空を裂きながら、服を掠め取った。無論これも掠らせた行為だ。

 舐めていると言うとそうなのかもしれない。今までいじめてきた大人たちが、こんな子供に負かされている姿を考えると、酷く滑稽だ。

 ああ、そうだよ、大人は嫌いだ。僕に優しくしてくれない大人は大嫌いだ。皆、理不尽に脅して、暴力で解決して、見返りは無いに等しい。

 弱者に対して、非情な生き物だ。

 自分の思い通りにならなければ、こうして襲いかかってくるんだもの。今回は僕のせいかもしれないけれど………まぁいいや。どうせここにいる全員を倒さなければいけないことだし、観客たちは狂気に満ちている。

 血を求めているのだろうか?

 自分たちができないから、人を使ってのストレスの発散なのだろうか。

 そう言えば、竜騎士の総長がさっきアルマについて言っていたっけ。重罪人を共に捕まえようとか、そういう風に聞こえた。

「あ…ちょっと、イラついた」

 誰に聴かせるわけでもなく、不意にこぼれてしまった呟きが聞こえたのか、おじさんはナイフをよけて、迫ってくる僕を驚いた表情で見上げていた。

 避けた勢いで体を回転させながらおじさんの顔を思い切り蹴り払う。面白いように流れに沿うようにおじさんの巨大な体躯が地に伏せた。

「ガルルルルゥゥ!!」

 主人が倒されたことに怒ったモンドは体当たりをしに来る。さっきよりも助走を付けて僕を轢き殺すかのように走ってくる。

 それは見境がなく真っ直ぐにだ。

 単調な動きは対処が簡単だ。

 僕はとにかく後ろに下がり、壁が背に当たったところで準備は整った。後は避けるだけだが、念には念を押してみよう。

 両手に一本ずつ剣を精製し投げる用意をしたところで。

「クルルゥ!」

「ナーガ?」

 耳元でナーガが鳴いたので振り向こうと背中に視線を向けようとする前にナーガは翼を羽ばたかせてモンドの眼に覆いかぶさった。

 モンドはナーガを振りほどこうと走りながら僕に向かってくる。目が見えていないのであれば僕がやろうとしていたことと似ていたので結果オーライだ。

 ゆっくりとモンドの進行方向から離れ、ナーガはギリギリまでモンドを壁際まで詰め寄ったところで逃げた。

 解放されたモンドは思い切り壁に激突し、会場全体が揺れる程の勢いだった。壁に亀裂が走り、瓦礫がモンドの体に積み上がっていく。ピクピクと痙攣しているあたり、生きていたのでホッと胸を撫で下ろすと、ナーガはまたもや僕の背中にしがみついた。

「ナーガ…それ、結構疲れる――あいたたた!?」

 ペシペシとナーガのしっぽが叩いてくる。そんなに重いと言われるのが嫌なら乗らなければいいのに。

「さてと、まずはひと組かぁ」

 倒れている戦果を見てから他の状況を確認する。ちらほらと残ってくる人も出始めた。

 それでも、約半数が倒れていないので、少しだけナーガに一仕事を買って出てもらおう。

「ナーガちょっといい?」

 ペンペンと肩に頭を乗せていたナーガを小突いて起こしてやる。元々起きているのだから起こしてやるというのも変な話ではあるが。

「ちょっとばかり吐いてくれない?」

 ナーガは露骨に面倒くさそうに顔をしかめるが、僕から離れて口を大きく開いた。

 ガスくさい。そう思ってからナーガが何をやろうとしているのか分かった瞬間、僕は出来るだけ壁によじ登って剣を突き刺して体を安定させた。

 準備が終わったナーガは僕の元へと戻ってくると、会場に向かって火を噴いた。

 その瞬間、会場全てが炎に包まれた。僕が居たところでさえ炎の渦に巻き込まれているので熱さは半端じゃない。

 それでもなんとなしに熱さが芯にまで来ていないのはナーガが僕の前で守ってくれているからだ。

 溜まっていたガスがナーガの火の息吹によって引火したのだ。ガスくさいと思ったのもナーガが下準備に自分の中で生成したガスを吐き出して、下にいたものを火で焼いたのだろう。

 瞬く間に火の渦は沈下し、残ったのは丸焦げになって倒れている人たちと竜だけになった。

 観衆達がポカンと呆けている間に僕は壁から下りて周りを見渡していると、受付の人が脇から現れて。

「あ、あまりにも唐突だったので宣言を忘れてしまいましたが、貴方が勝ち残りました。おめでとうございます」

 僕は腕を上げられて勝利宣言を受付の人がすると、ポカンとしていた観客は一斉に歓声の嵐に変わった。

 どうやら僕は予選はクリアして、次の試験に行けるようだ。

「良かった、一歩全身だ」

 握りこぶしを作って軽くガッツポーズをしたところで、本線に行ける人だけの控え室に僕は案内された。

 

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