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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第三章~王宮~
34/99

~王宮~中

 次の朝からは王宮の中身を見学させてもらうことになった。普段なら王都に戻らなければならないのだけれど、どうやらフィンが気を聞かせてくれたらしい。

 寝床はフィンの部屋でいっときの間は同居という形で住まわしてくれるという話を先ほど聞かされた。

「そう言えば、アインって何歳なの?」

「僕? えっと、一三歳くらいだと思うけど」

「えっ!? 私たちと同い年なの!?」

 少しオーバーなリアクションのような気もしたが、次にフィンから聞いた話を聞くと納得がいった。

「同い年の子ってさ、私と、アクセスとミリだけなのよね? あっ、ちなみに今言った子は、二番隊と一番隊の隊長を張っている子。勿論、私よりすごく強いから」

 数がゼロに近いほど強さの順が増すということなのだろうか。ということは一番が最高クラスということか。

「竜騎士って、僕みたいな年齢でも受けられるものなの?」

「それを許可してもらうために、今アインを総長の所に連れて行っているわ」

 許可? なんで許可なんかがいるのだろうか? 昨日フィンが言っていた事故と関係があるからなのだろうか?

「私やアイツ等みたいに、両親が竜騎士とかだったら、あんまり関係がないのだけれど、アインみたいに一般の子だと事故が起こったあとだと取り返しがつかないのよ。本来なら、一五歳からエントリーを受け付けているのだけれどね」

「え、そうなの?」

 フィンは頷いて足を止めた。

 立派に装飾されている扉。ここに来るまでに気がつかなかったけれど、石煉瓦だけの通路が、いつの間にか赤い絨毯で埋まっていた。

「ここが、竜騎士の全員を束ねる総長のお部屋よ…」

 少しだけフィンの声が上ずりながら扉に手を付ける。総長というだけであって、やはりすごい人なのだろう。

「あぁ、緊張するわぁ。ミリの親父さんだからって緊張が抜けるわけもないからなぁ。あぁ、怖い」

 ドアの前で何度も深呼吸しているのだが、正直僕はどういう人なのか知りもしないので気楽だ。

「叩けばいいの?」

「えっ!?」

 コンコンと軽くドアを叩くと、向こうの部屋から「誰だ?」と声が響く。

「あ、三番隊のフィン・ミーアナードです!」

「……入りなさい」

「失礼します!」

 フィンの額から薄らと汗が滲んでいる。そんなに緊張するものなのだろうか。

 ドアノブを捻ってドアを開ける。フィンに続いて僕も部屋の中に入ると、大きな机の前で、書類に記入している姿と、その向かい側で見守るような形で総長を腕組みしている少年がいた。

「なんだ、珍しいなフィン?」

「珍しいって、ミリもここにいるのは久しぶりな気もするけれど…」

「まぁ、ちょっと用事があってな。それじゃあ、パトロールに行ってきますかねっと」

 語尾に皮肉を込めたような言い方で僕たちを素通りする。多分、総長に何かの相談をしていたのだけれど、通らなかったという感じだろうか。

 ちらりと、素通りした少年――ミリが、ちらりとこちらに目配せをした。

 ただ、なんだか嫌がるような感じの目だった。久しく感じたことのなかった侮蔑の目だった。

 僕が彼に何かをしたと言われると、何もしていないはずなのだが、あれだろうか? 人質の際に何か迷惑をかけてしまったのだろうか?

 椅子が軋む音で今回の目的を思い出し、前にいる総長に頭を向ける。

「さてと、なんの用だったかなフィンちゃん?」

「あ、えっとですね。今回の竜騎士試験に出場したいという彼のことで、判断を伺いたくて」

「ふむ? 君の名は?」

 僕が名前を言う前にフィンが対処をテキパキとこなしていく。

「アインと言います、年齢は私たちと同じ一三歳なのですが、規定では一五歳ということで、出場は出来ないという風に促したのですが、どうやら、彼自身ここに何らかの目的があるらしく、どうしても出場したいということだったので――」

「まぁ、いいんじゃない? 君たちも同じ歳なんだからさ?」

 と、軽く流すような感じで総長はそう言い放った。

「へっ?」

 フィンは、まだ総長が何を言ったのかを整理がついていない様子だ。顔が呆けたままで現実に戻ってきていないのだ。

「まぁ、フィンちゃん。試験は明日だからね。こういう飛び入り参加的なモノも余興としてはありなんだよ。って、王だったらこういう風に言うね。君が俺に断られたあと、王に同じ質問をしたところでだ」

「は、はぁ」

「話はそれで終わりでしょ? 明日まで時間があるんだし、王宮の中を案内させてあげなさい」

「は、はい。それでは失礼します。行くわよアイン」

 どうやら話は終わったようでフィンの言葉でようやく気がついた。フィンを追いかけるように扉まで歩いて外にでようとした時だ。

「ま、待て!!」

 急に大声を張り上げられたのでびっくりして立ち止まり、総長に振り向く。

「はい?」

「スーリヤさ――いや、何でもなかった。引き止めて悪かったな」

 僕は疑問しか思い浮かばなかったけれど、とりあえず部屋に出た。

 スーリヤ? 誰かの名前だろうか? なんでそれで僕を呼ぼうとしたのだろうか?

 部屋の前ではフィンが、どうかしたのか? という表情をしてきたのだが、僕は何事も無く頭を振って通路を歩きだした。

「ここが、武道場。私たち竜騎士が訓練する場でもあるの」

 掛け声と混じりながら金属同士のぶつかる音が場内に響き渡っている。あそこにいるのは全員が平の竜騎士なのだろうか。

「皆がちゃんと修練に励んでくれればいいんだけどね? 隊長のトップ三って、私たちのような子供が取り仕切っているから、大人たちはよく思ってくれないわ。だからああして私の部隊は副隊長と仲が良いのよね。多分十対零の割合で対立しているしさ」

 だが、フィンは悲しいような素振りで話すわけでもなく、むしろ諦めきっているようだった。

「カリスマ性って言う奴ね。その点だと、アルマさんを尊敬していたなぁ」

「………アルマ?」

「アインでも知っているでしょ? あの人、一五歳で王宮の総長になったんだってさ。しかも、全部隊の竜騎士はアルマさんについていったっていうのよね。ほんと、尊敬しちゃうなぁ」

 アルマか…フィンは何かアルマについて知っているのだろうか? でも、ここで聞き込みをするのはタイミングが悪い気がした。

 色々と聞きたい衝動に駆られたけれど、まずは明日の竜騎士の試験に合格してからだ。

「おっ! フィンじゃねえか」

「あ、出たなバカ」

「馬鹿とは何だ馬鹿とは。一応、俺の方が上司なんだけど?」

「………」

 ぎらりと、腰にさしていた細長い剣が妖しく光る。サーベルと類別される刀剣は、細い上に白兵戦では攻防共に早さが随一だ。

「悪い、悪い、それで? お前が昨日の奴か?」

「そゆこと、すごいでしょ?」

 男の子はうんうんと頷きながら腰に両手を当てる。

「俺は、死んだなって思ったんだけどっ――!!?」

 フィンのボディブローが男の子の中心を的確に捉えていて、言葉が途中で途切れてしまう。

「本人を目の前に、アンタはデリカシーがなさすぎなのよ」

「わ、わるいわるい。でも、フィンだって思っただろ?」

「うむっ…」

 そこで押し黙ってしまったら意味がないですよフィンさん?

「まぁ、改まって自己紹介っと。俺の名前はアクセス。アクセス・フロイミーダだ。お前のことは昨日フィンから聞いたぜ? よろしくなアイン」

「うん、よろしくね。えーっと、アクセス」

 僕たちはお互いに握手をしあうと。

「ところで、アインは組手とかってできるか?」

「組手?」

「ちょっとアクセス! 相手は一般人よ?」

「でも、竜騎士の試験に出るんだろ? それだったら、肩慣らしにやろうや!」

 アクセスは中腰に構えをとって、既にやる気満々だ。

 ここまで来られると僕だって後には引けなくなるし、そもそも組手とか久しぶりだ。三年前以降、誰ともできなかったので自分がどれだけ鈍っているかも確認したかったのでちょうど良い。

「うん、いいよ。お手柔らかにお願いします」

「ちょっとアインも!?」

「いいねぇ、俺はそういうの嫌いじゃないぜ!」

 フィンもこの二人が止まることは無いと悟ったのだろう、ため息を吐いて二人から離れ、掛け声役だけをアクセスに頼まれた。

 組手前には礼をして、もう一度アインとアクセスは見合う。

 周りの喧騒が気にならなくなる位に、既に二人は目の前の敵を屠ることを意識していた。

「いいの? いいんでしょ。それでは始めっ!!」

 始めに動いたのはアクセスだった。

 会場に響くほどの大声を上げながらアインへと真っ直ぐに拳を突き出す。

「……あ、遅いなぁ」

 ボソリとアインは呟きながら、アクセスから突き出された右手を背負い込む。その動作は自然な流れだ。武術をやるものにとっては滑らかな、いなし技に見られただろう。

 地面に叩きつけられたアクセスは、自分が投げ飛ばされたことを理解するまで五秒くらい掛かっていた。

 それくらい、アインのカウンターは気持ち悪く、武術の境地に達している。

「あ…れ?」

「い……一本?」

「ありがとうございました」

 一本という言葉で掴んでいたアクセスの腕を離して、礼をする。

「どう…だったかな?」

「あ? うん、すごかったわよ?」

 ズボンの埃を払うように立ち上がったアクセスは僕を見てニッコリと笑顔を見せた。

「すっげえなお前!! 俺、こんな簡単に投げ飛ばされたの初めてだぞ?」

 バンバンと背中を叩きながらスキンシップを取るアクセスの声が、なんとなく震えているように聞こえるのは勘違いだろうか?

「明日、出場するんだろ? お前なら絶対に受かるって」

「あ、うん。ありがとう」

 お礼をアクセスに言うと、フィンが間を割るように口を挟む。

「それじゃあ、アイン行きましょうか?」

「え、どこに?」

「決まっているでしょ? エントリーしにいかないと出場できないんだから、受付会場までよ。案内してあげるわ」

 そそくさと、何やらこの場から急いで離れるような動作だったが、僕は気にすることなくフィンと武道場を離れて受付会場まで行くことにした。



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