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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第二章~謎の竜使い~
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~力の使い方~

 竜は気絶したであろう、人間の子供を消し炭にしようと火炎袋に力を入れて吐き出そうとした。

 初動作から最後まで力を込めて。自分の体をここまで傷を付けた人間は初めてだった。しかもそれが子供だという事に激しく激情に駆られながら、冷静にも竜はアインのことを危険だと本能が悟ったのだろう。だから、骨まで残さないように持てる力を出しつくそうとした瞬間だった。

 むくりと、何事も無かったかのようにアインは立ち上がって竜を見つめる。徐々に色素が無くなるように白く染め上がると、先ほどの凛々しいと思えた顔立ちが、邪悪な笑みで酷く歪んでいた。

 それ以上に竜が目を見張ったのは、黒く炭化したはずの半身が再生していることだ。人間の回復力ではない。そう思うのと同時に竜は溜め込んでいた炎をアインに容赦なく浴びせた。

 部屋が一瞬で電飾が付いたように明るくなる。燃え盛る炎は消えることなく、この階層を燃やすだろう。

 竜の口からは吐き出したあとの残り火が立っている。避けるような素振りもしなかった事を確認した竜は安堵の息を吐く。

「それじゃあ、遅いな」

「――!!?」

 耳元で囁かれた声に、反射的に振り向いた瞬間、竜の片目から光が消える。

「ギャウウウウウウッッ!!?」

 アインはミーナの剣を、無慈悲に竜の片眼に突き刺したのだ。痛みで後ずさる竜の姿を嘲笑いながら、先ほどの竜みたくゆったりと歩を進めていた。

 歩みながらアインの手のひらからは六本の光り輝く細身の剣が作り出される。

 ミーナと同じような容量で作り出されたそれは、アインが竜人として使える魔法の一種だ。

 雷撃と、物質硬化。そして破壊と再生。

 白竜としての力が破壊と再生であり、雷撃と物質硬化は付加されたモノだ。それはいつの日か、母が息子にお守りとして授けた力だろう。

「弱いかと思っていたが、なんだ……十分すぎるほどの器だ」

 にやりと笑いながら、怯える竜をその赤い瞳で射すくめる。

「力の使い方が分かっていないからな、この体に覚えさせてしまおう。そして貴様は生贄だ」

 アインは両手の細剣を竜に投げ放つ。放った先から次々と両手いっぱいに細剣を作っては竜へと容赦なく突き刺さっていく。

「ギャルルルルルル!!!! ガルルルルァァァ!!」

 竜は雨のように降り注ぐ猛攻から、尾を使って反撃した。だが、尾はアインに当たる手前で簡単に切り伏せられた。

 空中に放り投げられるように弧を描いて壁にぶつかって地面に落ちる。

「無駄だ、たかが竜如きに、この俺を殺すことができると思っていたのか?」

 嘲笑と侮蔑。

 アインは笑うことを止めない。

 自分とは違う種族を決して認めはしないという考えを持っているアインは、人もしかり、竜であっても嫌悪感しか抱いていなかった。

「紛い物はさっさと失せろ」

  アインは暴れる竜の額に軽く触れる。

「白雷」

 アインが呟くのと同時、竜の体からは無数に白く輝いた剣が、内側から突き上げるように飛び出していた。

 既に竜の意識は驚愕の一色で染まっていただろう。苦しみの声を上げる間もなく、巨大な体躯を揺らしながら地にひれ伏した。

「これで一段落ってことか」

 竜人のアイン――白竜は、アインとの記憶が共有できる。元々が同じ体なので白竜にとっては造作もないことなのだろう。

「さて………」

 白竜は、はじまりの樹を登り始めた。真っ暗なのは変わりないのだが、最初から構造を知っているように足取りは軽やかだ。

 行き着く場所に着いた白竜は足を止め、ある一つのモノを拾い上げた。

 それは、先ほどの竜の卵だった。

「ふん、こんなので証拠にはなるだろうよ」

 白竜は失笑しながらそう言った。本来ならこんな紛い物が産み落とした卵などは、情を与えずに壊してしまう。

 それ以前に、アインの体を早く乗っ取って純潔に戻ろうとしたかった白竜だったが、出来なかった。

 以前、白竜が表に出てきた時、ミーナが白竜の半身を奪い取っていったのだ。今では本来の力が半減されており、たかが子供の体を乗っ取ることさえもできないという事になっている。

「はっ、この俺が、なんつーザマだ」

 白竜は自分が今置かれている状況に文句を言いつつ、この体自身の持ち主に意識を返すことにした。

 まだアイン自体は白竜との記憶を共有できない。今意識を取り戻せば何が起こったのか分からない状態のままで卵を抱えていることになるだろう。

「せいぜい頭を回せばいいさ」

 まるでアインの反応を遠くから傍観する他人のように白竜は卵を置いて目を瞑り、意識を深く沈みこませたのだった。


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